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休暇と告白
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しおりを挟むこれまでの3人のお姉さんも美人揃いだけど今度のお姉さんは肌の露出は少ないのになんだかとっても色っぽい。
髪が俺が見慣れた黒に近いからだろうか。きれいなストレートの髪は灯りに透けると緑色に光る。涼し気な目元にアンバランスな程真っ赤な唇は持ち込んだグラスの飲み物を含んだ口を拭う指先に歪んでもその色香を引き立てた。
「誰だ。」
「やだ。忘れられてる。前はよくキールとうちの店に飲みにてたじゃない。遠征の行き帰りにも顔も見せないで随分じゃないのさ。」
そのきれいな指先がするりとクラウスの形のいい顎を撫でたのにドキッとして顔が赤くなってしまった。なんだかいけないものを覗き見してる気分だ。
うっかり見とれてしまっていた自分に気がついてまだ半分近く残っているお皿の料理に集中することにした。
クラウスの連れてきてくれたお店は割と威勢のいい居酒屋さんみたいな所、だと思う。テレビドラマで見たくらいだけど店全体がにぎやかでお酒の入った人達の楽しそうな話し声も聞こえていてあまり隣も気にならない。
そんなお店の奥のテーブルでクラウスが薦めてくれた魚のムニエルは相変わらず量が多いけど美味しかった。
初めから食べれる分だけをお皿に取り分けて置いたから今ある量は食べ切れるけれど『桜の庭』にいる間にすっかり食べる速度がゆっくりになっていたみたいだ。
おかげでクラウスが次々声を掛けられてしまって急いで片付けようとしたところでこのお姉さんの登場だった。
知り合いみたいだから逆にゆっくり食べた方がいいのかな?
「ねぇサービスするからさ。うちで遊んできなよ。何なら私が相手をするよ?」
「そんな予定はない。悪いトウヤ、食べ終わったか?」
急に言われてなりを潜めてた俺は慌ててしまう。
「待って、あと少し。」
残りの2口分をまとめて放おりこんで果実水で流し込んだ。
「なんだ。子供のお守りなの?冒険者をしてる間に随分腑抜けちまったんじゃないか?ねぇお嬢ちゃん、後でクラウス貸して頂戴?夜まで子守は必要ないだろう。」
「いい加減にしろ。勝手に話しかけるな。行くぞ。」
女の人にそう言われてクラウスが少し乱暴に俺の手を取って立たせた。うん、いくら知った仲でも今のはないよね。
「あの、俺お嬢ちゃんじゃないです。それに子供でもないですからクラウスは子守をしてるわけじゃありません。」
『腑抜け』だなんて失礼な。しかも俺のせいでクラウスがとやかく言われるなんてなんか嫌だ。そっちが先に失礼なこと言ったんだから俺の態度もおあいこだ。
「あら…ごめんなさい?なら…お嬢ちゃんもこの後どう?」
クラウスに手を引かれ横を通り過ぎるタイミングで腕を掴まえられ最後は耳元で囁かれた。
「何ならベッドまで一緒でも構わないわよ。いい男を独り占めなんてズルいわ。」
「ひゃう」
囁やきとともに吹きかけられた吐息がくすぐったくて身をよじる。
すぐにクラウスが抱き込んでくれた。けどディノとかによくやって遊ぶのを自分がされて同じリアクションするなんてたった今子供じゃないと言ったくせに恥ずかしい。
「あらぁ随分と初心じゃない?そんなんで満足できるのかしら。」
「うるさい。そもそもこっちは相手にした覚えもない。二度と話しかけるな。」
残った感覚が消えるように耳をごしごししながら店の外に連れ出された。
「悪い、俺のせいでゆっくり食べられなかったな。」
「ううん、俺こそ食べるの遅くてごめん。でも今の人って知り合いだったんでしょ良かったの?」
「いいも何も一方的に話しかけられて迷惑してた。」
そう言ったクラウスは眉間にシワが入って俺があんまり見ないような少し不機嫌な顔をしていた。
「そっか。かっこよすぎるのも大変なんだね。」
「格好良い?俺が?」
「ん?う、うん。」
軽口のつもりなのに急にじっと見つめられたら困ってしまう。まあ事実格好良いんだけど。うっかり見とれたいたらそのままきれいな顔が近づいてきた。
「初めて聞いた。」
耐えきれず目を瞑った俺の当てていた手をわざわざ外して耳元で囁いてきた。
びっくりして目を開けると何故か満足げに笑うクラウスがいてそのまま抱きあげられる。
せっかく消えていたくすぐったさがぶり返してしまう。ううん、さっきよりたちの悪い甘いしびれがクラウスの声と一緒に耳の奥に残ったまま俺達は宿まで戻った。
それにしても昨日の夜から移動した距離の割に全然歩いてない。何故かカウンターで鍵をもらった後まで抱き上げようとしたクラウスに断りを入れて4階まで自分の足で登りながら今日1日の運動不足を感じていた。
そして開けられた部屋の扉の中の景色に驚く。ベッドだけの部屋だと思ってたのに凄く広くて奥の窓際にはソファーセットまである。
「ひろっ。何で?」
ナイデルの領主様が用意してくれた部屋に比べたら小さいけれど無駄に広い。
「言ったろ?観光地だって。冒険者以外の客を相手にする宿の方が多いんだ。」
「そうなんだ。」
「何で観光地なんだと思う?」
そう言って凄く不自然に窓際の壁に立つ。で、その横に更に不自然な扉。普通そんな所に扉なんてない。バルコニーまでついてる部屋なんて初めてだ。
誘われるままその扉を開けて、閉めた。
「何で閉めた。」
「だって〰〰〰〰〰〰〰お風呂がある〰〰〰」
クラウスにしたら俺の行動は予想外かも知れないけど驚きすぎて扉を閉めちゃった。夢じゃないかともう1度扉を開ける。
「これ何?ご褒美?まさか温泉?外なの?なか?室内露天風呂?え、ちょっと待って先入っていい?あ、でもゆっくり入りたいからやっぱりクラウス先入って?あ~でもでもやっぱり先?でもでもでもい、い、いい……」
「落ち着けトウヤ。」
そう言われてもお風呂を目の前に落ち着いてなんかいられない。でも遠征明けで朝早くから起きて馬車や宿の手配もして俺を運んでたクラウスにシャワーは先に譲ろうと決めていた、なのに欲望がまったく抑えられない。
「い、一緒に入ろうクラウス!」
「い、いいけど。いいのか?」
「────?何で?」
まだ脱いですらなかったクラウスのコートの合わせを引っ張って最上級の提案を出した。だって合理的でしょ?3ヶ月ぶりのしかも大きなお風呂に頭のネジの飛びかけてた上、小さい子組と散々入り慣れた俺はこの時クラウスが困った顔をしてる理由をあんまり深く考えれなかった。
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