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迷子になりました
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しおりを挟む長身から伸びる長い手足に鍛え抜かれた胸板と腹筋。彫刻のような見事な上半身を惜しげもなくさらしあくびをしながら肩を超え長く伸びる輝く金髪を掻きあげると澄んだ空の蒼色をした切れ長の瞳が覗く。
テレビや映画でしか見たことのないイケメンにしばらく見惚れてしまった。
彼は後ろから来たビートからシャツを受取ると渋々身につけながらマートに話しかける。
「なんだよマート、せっかく寝てたのに。」
「悪ィな、ちょっとソイツ、トーヤっていうんだがギルド連れてって登録してきて欲しいんだ。仕事依頼しようと思って。」
マートに言われたクラウスは俺をチラリと見た。
「登録は成人からだ。知ってるだろう。」
とすぐにマートに向き直る。
「そんな事は言われなくても知ってる。大丈夫だトーヤは成人越えてるから。18歳だ。」
クラウスは少しだけ近づくと頭からつま先までゆっくり俺を見た。
すごい、マートより更にでっかい。2メートルは越えてるのかな?
「登録時に嘘はバレるぞ?」
ビートがニヤニヤ笑ってるコンニャロ!覚えてろ!
あとちょっと前にコイツをイケメンと思った俺を返せ。
でもこの世界で生きる為には仕方ない。
「はじめまして。僕は冬夜と言います。間違いなく18歳なので大丈夫です。ギルドまで連れていって下さいよろしくお願いします」
18年間で身に着けたいい子ちゃんスマイルで胸の内なる不満を押さえつけ挨拶した。
クラウスはそんな俺を暫く凝視した。
「こんな小さいのになにを依頼するんだ?」
ちいさい言うな!
「ヘレナのいない間手伝いを頼もうと思って。あ、ついでに依頼の届けもクラウスに頼んでいいか?」
クラウスは面倒くさそうに溜息をつくと
「わかった、準備してくる」
と言って部屋へ戻って行った。
「かっこいいだろクラウス。父ちゃんの『昔なじみ』?ってやつらしくてうちを常宿にしてくれてるんだ。すげぇ強えんだって!」
「ふーん。」
「昔は王都の騎士団にいたってとーちゃんが話てたけどな。剣術大会で優勝した事もあるって言ってた」
ビートが瞳をキラキラさせながらクラウスの事を教えてくれる。尊敬してるのがわかる。強くてイケメン、羨ましい。
クラウスはさっきまでのラフなシャツとパンツの上に1枚ジャケットを着て荷物を持って降りてきた。編み上げブーツもにあってる。
「じゃあ行くか。」
クラウスの呼び掛けられそばによる。……からの凝視。
ん?なんだろ?
「よろしくお願いします?」
合ってるかな?
「お前今からギルドいくのにその格好なんとかならないか?」
ギルドに行くのに服装大事なんだ。でも無理だ。
「僕これしか持ってません。……だめでしょうか」
そんなに変な格好はしていないと思う。
シンプルな白い長袖のシャツに黒のスキニーだ。
買い物に出たときは秋晴れの空で日中はまだ少し日射しが暑い。そんな日に丁度いい格好で家を出たのだから上着1枚持ってはいない。
「悪くはないが良くもないな」
そう言うとクラウスは持っていた小さなリュックみたいな鞄から大きな黒い布を1枚取り出した。
「わわっ!すごい!」
明らかに容量がおかしい。ラノベ名物マジックバックかな?知っていても実際に見ると驚くもんだな。ちょっとはしゃいでしまった。
でもそれは布じゃなくて俺がすっぽり収まるマントだった。
「とりあえず今日だけこれを着ておけ」
そういってマントをきせてフードを目深に被せて来た。
「ありがとうございます。」
「じゃあ行ってくる。」
「おう頼むな。で、早くもどってくれな~。」
マートが手をヒラヒラ振って見送ってくれた。
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