迷子の僕の異世界生活

クローナ

文字の大きさ
上 下
3 / 333
迷子になりました

3

しおりを挟む

「ごちそうさまでした」

満たさた。満たされすぎてお腹がパンパンで苦しい……

「腹ふくれたか?」

少し店内が落ち着いて彼が隣に腰掛けた。

「ごちそうさま、すごく美味しかったよ。ほら見て?」

膨らんだお腹をさすって見せると彼女に良く似た顔で満足げに笑う。

「助けてくれてありがとう。今更だけど名前教えてもらってもいいかな?僕の名前は『冬夜』と言います。


「俺はビートだ」

「改めてありがとうビート。君のおかけでお腹いっぱいになりました。」

「そうかよ」

ビートは鼻の下を人差し指でこすりながら照れ臭そうに目を逸した。

「彼女も紹介してもらえますか?」

「そいつは俺の妹のジェリーだ」

「ジェリーもありがとう」

隣に座るジェリーに向き直りお礼を言うとにへっと笑ってから俺に向けて両手を差し出した。

そっと下から握るとそのまま俺の手を支えにして椅子の上に立ち上がり俺の膝に乗ってきてすっぽりおさまる。……なにこれ可愛すぎる。

俺の育った養護施設の隣には同じく俺の育った乳児院があり、人手の足らないときはよくチビたちの面倒をみていたから子供の扱いにはわりと慣れている方だと思う。

けれどジェリーは今日出会ったばかりで両親(多分父親はさっきの料理人)すら知らない女の子だ。
俺の持ち合わせている常識では……うん、通報されちゃうね。

そんな事を考えながら恐る恐る視線を上げると料理人が口を開いた。

「すまんなにいちゃん、俺はそいつらの父親でマートって言うんだが昨日嫁が倒れちまって実家に帰っちまってなぁ。突然だったから朝からずっと構ってやれなかったんだ。」

腕の中のジェリーを見てみればもぞもぞと体の向きをかえて俺の胸に顔を埋めるようにして落ち着いたので背中をトントンと叩いてやれば寝息を立て始める。お昼寝の時間なのかな?

「僕は『冬夜』といいます。ご飯ごちそうさまでした。すごく美味しかったです。それで奥様は大事ないですか?」

自己紹介も兼ねてお礼を言った。


「なに、3人目が腹にいるんだが宿屋と食堂の仕事で少し無理しちまってな。あいつは『大丈夫』って言ったんだが俺がむりやり帰したのさ」

と照れながらこたえてくれた。

「いい旦那さんですね。ビートにも助けてもらいましたし、ジェリーも大人しく出来ておりこうさんで素敵なご家族ですね」

「これくらい大したことないさ困った時はお互い様ってな。ビートも買い出しありがとな、お前も今のうちに昼飯食え」

と、さっき俺が食べたのと同じものが同じ量で出て来た。
ビートはそれをあっとゆう間に平らげる……マジですか。

そうするうちに客は帰り店を一旦閉めるらしい。

俺はビートに促されすっかり寝入ったジェリーをこじんまりとした家族の住まう部屋のベットに寝かせた。

店に戻ってテーブルをビートと一緒に片付けて、マートと一緒に洗い物も終わらせるとほんのりと果物の味のついたお水を出してもらった

「ありがとうございます」

マートも飲み物を手に厨房から移動すると俺とビートを改めてテーブル席の方へ誘い向かい側に座った。

「さてと」と呟きながらビートと同じ紺色の瞳で俺を下から上までなであげると口を開いた

「トーヤだったか?そのナリで金もなくて腹も減らしてお前は何者だ?」




しおりを挟む
感想 229

あなたにおすすめの小説

異世界召喚チート騎士は竜姫に一生の愛を誓う

はやしかわともえ
BL
11月BL大賞用小説です。 主人公がチート。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 励みになります。 ※完結次第一挙公開。

キスから始まる主従契約

毒島らいおん
BL
異世界に召喚された挙げ句に、間違いだったと言われて見捨てられた葵。そんな葵を助けてくれたのは、美貌の公爵ローレルだった。 ローレルの優しげな雰囲気に葵は惹かれる。しかも向こうからキスをしてきて葵は有頂天になるが、それは魔法で主従契約を結ぶためだった。 しかも週に1回キスをしないと死んでしまう、とんでもないもので――。 ◯ それでもなんとか彼に好かれようとがんばる葵と、実は腹黒いうえに秘密を抱えているローレルが、過去やら危機やらを乗り越えて、最後には最高の伴侶なるお話。 (全48話・毎日12時に更新)

結婚式当日に「ちょっと待った」されたので、転生特典(執事)と旅に出たい

オオトリ
BL
とある教会で、今日一組の若い男女が結婚式を挙げようとしていた。 今、まさに新郎新婦が手を取り合おうとしたその時――― 「ちょっと待ったー!」 乱入者の声が響き渡った。 これは、とある事情で異世界転生した主人公が、結婚式当日に「ちょっと待った」されたので、 白米を求めて 俺TUEEEEせずに、執事TUEEEEな旅に出たい そんなお話 ※主人公は当初女性と婚約しています(タイトルの通り) ※主人公ではない部分で、男女の恋愛がお話に絡んでくることがあります ※BLは読むことも初心者の作者の初作品なので、タグ付けなど必要があれば教えてください ※完結しておりますが、今後番外編及び小話、続編をいずれ追加して参りたいと思っています ※小説家になろうさんでも同時公開中

傷だらけの僕は空をみる

猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。 生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。 諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。 身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。 ハッピーエンドです。 若干の胸くそが出てきます。 ちょっと痛い表現出てくるかもです。

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。 ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。 兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。 義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!? このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。 ※タイトル変更(2024/11/27)

兄弟がイケメンな件について。

どらやき
BL
平凡な俺とは違い、周りからの視線を集めまくる兄弟達。 「関わりたくないな」なんて、俺が一方的に思っても"一緒に居る"という選択肢しかない。 イケメン兄弟達に俺は今日も翻弄されます。

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

思い出して欲しい二人

春色悠
BL
 喫茶店でアルバイトをしている鷹木翠(たかぎ みどり)。ある日、喫茶店に初恋の人、白河朱鳥(しらかわ あすか)が女性を伴って入ってきた。しかも朱鳥は翠の事を覚えていない様で、幼い頃の約束をずっと覚えていた翠はショックを受ける。  そして恋心を忘れようと努力するが、昔と変わったのに変わっていない朱鳥に寧ろ、どんどん惚れてしまう。  一方朱鳥は、バッチリと翠の事を覚えていた。まさか取引先との昼食を食べに行った先で、再会すると思わず、緩む頬を引き締めて翠にかっこいい所を見せようと頑張ったが、翠は朱鳥の事を覚えていない様。それでも全く愛が冷めず、今度は本当に結婚するために翠を落としにかかる。  そんな二人の、もだもだ、じれったい、さっさとくっつけ!と、言いたくなるようなラブロマンス。

処理中です...