悪役令嬢になったようなので、婚約者の為に身を引きます!!!

夕香里

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第二章 アルメリアでの私の日々

授業終盤で(2)

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 この授業で扱った薬草等の材料費は学校、もっと大きくいえばこの国の税金で賄われている。知識を学ぶ子供は国の宝。だからアルメリアでは学校に通う費用は全て無料らしい。

 そして提出分以外全て廃棄するのは、学校で作った物を外で使用し、悪用するのを防ぐため。棚にある薬草や魔法薬を外に持ち出そうとすれば、アラームが鳴る仕組みらしい。
 過去に冗談半分で、持ち帰ろうとしてけたたましくアラームが鳴り、こっぴどく叱られ、反省文を書かされた生徒もいるとか。

 他にも至る所に色んな仕掛けがあるのだとマーガレット王女は追加で教えてくれた。

「セキュリティが厳しいのですね」

「そうね。破るのは至難の技だし、破る前にどこからともなくヴィアリナ先生がやってきて終わりよ」

 洗い終わった道具を布巾で拭きながらマーガレット王女は続け、私も水で濡らした布でテーブルを拭いた。

「真面目に生活していたらそんなことにはならないのに……全く馬鹿なことをする者が現れるものだわ」

「そういうマーガレットだって、一度規則破ったじゃないか。私が誤魔化してあげたの忘れたのかい?」

 鍋を戻しに行っていたアレクシス殿下が、私とマーガレット王女の間に割って入った。

「~~~っ! お兄様! 言わなくていいのよ!」

 真っ赤になって膨れっ面になったマーガレット王女は濡れた手でアレクシス殿下を叩く。

「マーレは何を?」

 私は好奇心が湧いた。マーガレット王女は教えてくれなさそうなので、アレクシス殿下に聞く。

「知りたいかい?」

「知りたいです」

「ダメダメダメーっ! 絶交よ。ターシャなんて嫌いっ!」

 キッと睨み付けているが、全然怖くない。これくらいならソルリアにいた頃に令嬢たちからの嫉妬の視線の方がキツかった。

「嫌いですか……それに絶交と」

(少しだけ……意地悪をしてもいいかしら?)

 そう考えて声のトーンを落として言えば、アレクシス殿下も私の意図に気が付いたのか笑いをこらえている。

「何よ。ターシャは何が言いたいの?」

「…………仮に絶交したら私、マーガレット王女と友人ではいられませんね。寂しいですが仕方ありません。短い間でしたが今までありが────」

「待って、ストーップっ!」

「なにか?」

 マーガレット王女が急に慌て始める。

「どうしました? 絶交なのですよね」

 悲しそうに惚けてみれば、アレクシス殿下は抑えきれなくなったようで、机に手を付いて小刻みに震えていた。多分笑ってる。

「その、本気で、言ったわけでは……」

 後半になるにつれて声が小さくなっている。

「──一緒にいるのは嫌だと思うので。席を変えますね」

 荷物を形だけ纏め、抱えた。

「それでは」

 頭を下げる際に、こっそりとマーガレット王女を盗み見れば、どうしようと動揺している。

「行ったら嫌っ! 撤回撤回てーっかい!」

 腕を掴まれ、ぐいっと引き寄せられる。

「私が悪かったわ。ねえ、そんな、冗談よ。本気ではないわ。許して?」

 瞳に涙をためて縋りついてきた。最初から本気ではないのは分かっていたけれど、少しやりすぎてしまっただろうか。

「冗談だとしても、前振りなしに絶交などと言われたら私も傷つきます」

「ごめんなさい。あの、ほんと、距離感が掴めなくて……大体こういう時って絶交というかそんなことしか今までなかったから……。嫌いにならないで」

 先程までの勢いは最初からなかったかのようで、一回り小さく見えた。

「今のはマーガレット、君が悪い」

 笑いから復活したらしいアレクシス殿下が、何事も無かったかのように厳かに告げた。

(殿下、笑ってたじゃないの。私も私であれだけれど……)

「本気ではないのだと分かっていたのに私もからかいすぎました。ごめんなさい。嫌いではありませんよ」

「本当? ターシャ許してくれる?」

「許すも何も怒ってないので」

 抱えていた教材をテーブルに置いた。すると心底安心したかのようにマーガレット王女はほっと息を吐いたので、2人で拭き終わった道具を元の場所に戻してエプロンを脱いだ。

 そうこうしているうちに、気が付けば時間が経っていて、授業終了のベルが鳴ったのだった。
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