悪役令嬢になったようなので、婚約者の為に身を引きます!!!

夕香里

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第二章 アルメリアでの私の日々

学校生活の始まり(1)

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「ソルリアから来ました。アタナシア・ラスターです。こちらの国に来たのは初めてでして、不手際があるかもしれませんが、これからどうぞよろしくお願い致します」

 講堂の中、アルメリア魔法学校の新第3学年が集っている。彼らの好奇な視線が一身に集まる。

 私は前々から考えた挨拶を述べながら頭を下げた。

 ぱちぱちと拍手の音が聞こえて頭を上げれば、殆どの人が歓迎してくれているようだ。幾分か緊張がほぐれる。

「アタナシア嬢も自己紹介してくれましたが、彼女はソルリアからの留学生です。今のところ最終学年まで在籍される予定だから仲良くしてあげて下さいね」

 一緒に来ていたヴィアリナ先生も補足してくれる。

「じゃあパートナーは誰に? 全員埋まってますが」

 1人の生徒が声を上げ、私は目敏いなぁと思った。気がつかなくていい所を指摘してくる人っているわよね……聞かれずに済むと思ったけど無理か。

「あっそれは……」

 チラリとヴィアリナ先生はこちらを見てきた。それだけで、即座に先生が答えなかった理由が分かってしまって、どうするべきか悩んでしまう。

 先生は私が困ると思っているのだろう。どちらに転んでも厄介になるのは分かっている。

(どうせバレてしまうし、ここで言った方が手間が省けるかしら……)

「先生言ってくださいませ」

「いいの?」

「はい。おそらく嫉妬の対象にはならないので」

 生徒がこんなに興味を向けているのは、この学年で残っている人がアレクシス殿下しかいないから。

 多分私のパートナーはアレクシス殿下なのではないか? と思っている人がいるに違いない。

 パートナーになる相手とは必然的に一緒にいる時間が長くなる。つまり、相手のことを他の人よりよく知れるし、仲を深められる。

 そうなるとやはりなれなかった令嬢は嫉妬や妬みを持ってしまう。だから今までアレクシス殿下にパートナーはいなかったし、周りも抜け駆けする人が出てくるくらいなら……と思っていたに違いない。

 だがそれがこの国の人間ではなくて、しかも同じ地位の者との婚約者が決まっている人がパートナーになるならば話は変わってくるだろう。

 さりげなく左手につけている指輪を見せれば、ヴィアリナ先生は納得した。
 邪魔になるなら外そうと思ったのだが、ギルバート殿下に肌身離さず付けていてと言われたので、外すのを止めたのだ。

 まさかここで役に立つとは思ってなかった。

「アタナシア嬢のパートナーはアレクシス殿下よ」

「えっ!!!」

 眠そうにしてた人も目を見開き、一斉に女子が鋭い視線を向けてきた。その圧に思わず1歩後ろに下がってしまう。

「…………どうしてアタナシア様はアレクシス殿下のパートナーになれるのですか? 今まで誰もなりたくてもなれなかったのに!」

 続けざまに他の人が言った。私は面倒くさくなる臭いがした。

「それは彼女には婚約者がいらっしゃって、魔力の波長的にも合いそうだったからよ」

「婚約者?」

「私の婚約相手はソルリアの王太子、ギルバート殿下です。こちらに滞在する間、アレクシス殿下のパートナーを務めさせていただきます」

 見せびらかしのようになってしまうが、左手の甲を前に出す。これで光る指輪が見えるだろう。

 数年後にはどうなっているか分からないが、今のところは婚約者だ。

 ザワつく室内。場を纏めようとヴィアリナ先生は一拍、手を叩いた。

「はい、それでは今年度もよろしくね。昨年よりもビシバシ鍛えていくから覚悟していて」

 まばらに「よろしくおねがいします」と返ってくる。まだ納得いかない人もいるみたいだが……。

 どうやら始業式はないようで、このまま授業が始まるようだ。ヴィアリナ先生に席に着くよう促され、何処に座ろうか考える。

(自由席のようね……マーガレット王女と一緒に座らせてもらおうかしら)

 マーガレット王女が何処にいるか探すと、1番後方の左隅に座っていた。隣にはアレクシス殿下がいる。

 黒板に近い方から遠くなるほど徐々に座る位置が高くなっていく座席。周りの視線を無視して段差を昇る。

 留学生として来ている以上、ソルリアの評価は私の品位で決まる。粗相をしてはいけない。できる限りお淑やかに見えるよう、歩幅を狭め、背筋を伸ばし、優雅に歩く。

「アタナシア様、お隣如何ですか」

 途中で声を掛けられた。どうやら1人の令嬢が空いている席を教えてくれたらしかった。
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