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彼女の今世
episode20
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慌ただしくノルン様とモルス様が帰り、一日が終わった。就寝準備を終え、さあ寝ようと寝台へに向かった時だった。ひらひらと手紙が青い薔薇と共に降ってきた。
「……ノルン様?」
手紙が上から降ってくる時点で大方誰からなのか予測はつくが、差出人を見ると「ノルン」と記載されていた。
『リティへ
今日は貴方のところに行けて楽しかったわ! これからもどんどん貴方に会いに行くから覚悟しててね! (サボりがてら)
それに、前世よりも顔色が良くなってて安心したわ。前世の時は、表情が抜けていて氷のようで怖かったから。
今は私、サボってた分の書類を捌ききらないと椅子から立ち上がれないよう、モルスに魔法をかけられて死にそうです……ちょっとぐらいサボってもいいと思わない? 人って息抜きしないと無理だと思うの! まあ私人間じゃないけど!』
「ノルン様……これはモルス様に同情するわ」
初っ端から女神モード(?)全開でクスクスと笑ってしまう。
『モルスが外に出た瞬間を狙って今リティに手紙を書いてます。こういう手紙は何年ぶりかしら……数百年ぶりかな? だからすっごいワクワクしてます。あとモルスにバレないかのスリルも感じてます。
で、本題です。今日私たちがあげたイヤリングはブレスレットに変化させることが出来るの。七歳でイヤリングはちょっとおかしいかなって……それに重いしね。
イヤリングに願えばブレスレットに変化するのでお試しあれ!
あとあと! 私も貴方のことを気にかけているけど、モルスも私と同じくらい気にかけているのを知っておいてください。あの子、無愛想だから他の神様達にも勘違いされてしまうことがあるの。
本人は気にしてないようだけど、私からしたら良い気分にはならないからね。リティは脅えたり怖がったりしてなかったから大丈夫だと思うけど!
あっやばいモルス帰ってきた。ニコニコしながら怒ってるわ。モルスは笑いながら怒っている時が一番怖いの。また様子を見にそっちに行くね』
まるで友人宛のような文体で書かれている。そんな手紙を読み終わると心が暖かくなる。
「ノルン様、貴女のおかげで毎日が楽しいです。全部全部ノルン様のおかげです」
ここにはノルン様はいないので代わりに青い薔薇に向かって感謝を伝える。
初めて私に送られてきた私的な手紙の差出人はノルン様。
心配してくれて気にかけてくれたのもノルン様。
私の嬉しい事の「初めて」は今のところほとんどノルン様からだ。
そんなノルン様はこの世界の人々の想像────慈しみ、静かに人間を見守っている姿とはかけ離れている。しかし、私が知っているノルン様の方が親しみ深くて大好きだ。
「こんなに気にかけてくれている。私を見てくれる人がいる。だから今世は幸せになりたい。それがノルン様達への恩返しにもなるから。もうこの時点で十分幸せだけど」
私は耳に付けていたイヤリングを外す。
そして願いを込めるとイヤリングは一瞬光に包まれ、光が収束すると雫と月──この世の物とは思えないほど神秘的なブレスレットに変化していた。
私はブレスレットをサイドテーブルにそっと置いた後、優しく撫でる。
ブレスレットは、窓から差し込む月光を吸収してより一層その美しさを際立たせる。
それを見て私は前世の薔薇の栞のように、今世での御守りとして肌身離さず付けることを心に決めたのだった。
「……ノルン様?」
手紙が上から降ってくる時点で大方誰からなのか予測はつくが、差出人を見ると「ノルン」と記載されていた。
『リティへ
今日は貴方のところに行けて楽しかったわ! これからもどんどん貴方に会いに行くから覚悟しててね! (サボりがてら)
それに、前世よりも顔色が良くなってて安心したわ。前世の時は、表情が抜けていて氷のようで怖かったから。
今は私、サボってた分の書類を捌ききらないと椅子から立ち上がれないよう、モルスに魔法をかけられて死にそうです……ちょっとぐらいサボってもいいと思わない? 人って息抜きしないと無理だと思うの! まあ私人間じゃないけど!』
「ノルン様……これはモルス様に同情するわ」
初っ端から女神モード(?)全開でクスクスと笑ってしまう。
『モルスが外に出た瞬間を狙って今リティに手紙を書いてます。こういう手紙は何年ぶりかしら……数百年ぶりかな? だからすっごいワクワクしてます。あとモルスにバレないかのスリルも感じてます。
で、本題です。今日私たちがあげたイヤリングはブレスレットに変化させることが出来るの。七歳でイヤリングはちょっとおかしいかなって……それに重いしね。
イヤリングに願えばブレスレットに変化するのでお試しあれ!
あとあと! 私も貴方のことを気にかけているけど、モルスも私と同じくらい気にかけているのを知っておいてください。あの子、無愛想だから他の神様達にも勘違いされてしまうことがあるの。
本人は気にしてないようだけど、私からしたら良い気分にはならないからね。リティは脅えたり怖がったりしてなかったから大丈夫だと思うけど!
あっやばいモルス帰ってきた。ニコニコしながら怒ってるわ。モルスは笑いながら怒っている時が一番怖いの。また様子を見にそっちに行くね』
まるで友人宛のような文体で書かれている。そんな手紙を読み終わると心が暖かくなる。
「ノルン様、貴女のおかげで毎日が楽しいです。全部全部ノルン様のおかげです」
ここにはノルン様はいないので代わりに青い薔薇に向かって感謝を伝える。
初めて私に送られてきた私的な手紙の差出人はノルン様。
心配してくれて気にかけてくれたのもノルン様。
私の嬉しい事の「初めて」は今のところほとんどノルン様からだ。
そんなノルン様はこの世界の人々の想像────慈しみ、静かに人間を見守っている姿とはかけ離れている。しかし、私が知っているノルン様の方が親しみ深くて大好きだ。
「こんなに気にかけてくれている。私を見てくれる人がいる。だから今世は幸せになりたい。それがノルン様達への恩返しにもなるから。もうこの時点で十分幸せだけど」
私は耳に付けていたイヤリングを外す。
そして願いを込めるとイヤリングは一瞬光に包まれ、光が収束すると雫と月──この世の物とは思えないほど神秘的なブレスレットに変化していた。
私はブレスレットをサイドテーブルにそっと置いた後、優しく撫でる。
ブレスレットは、窓から差し込む月光を吸収してより一層その美しさを際立たせる。
それを見て私は前世の薔薇の栞のように、今世での御守りとして肌身離さず付けることを心に決めたのだった。
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