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番外編
初恋の相手(1)
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「──え、私の話ですか?」
突然話を振られたメイリーンは、食べようとしていたクッキーを取り落とした。
今日は城下にある今人気のスイーツ店で、エリナ、エレーナ、メイリーンの三人で談笑していた。
主に話題に上がるのは社交界でのことや、紆余曲折を経て、ようやく婚約したリチャードとエレーナの話だ。
友人に尋ねられ、幸せそうに頬を紅色に染めながら話すエレーナに、ほっこりしていたのだったが──どうしてこうなった。
(え、何で私の話?)
心の中で同じことをもう一回呟く。
「そうよ。前、言っていたでしょう? リー様と似ている声を持った殿方に助けてもらったから、お礼を言いたいと」
問いかけた本人──エレーナがにっこりと笑えば、一緒にいたエリナも食い付いてくる。
「メイリーン様、もしかして慕う方がいらっしゃるの? その話詳しく聞きたいわ」
「え、あ、違うというか……誰にでもあるものです。面白い話では無いのでリチャード殿下とエレーナ様の話をしましょう」
やんわりと拒絶する。だが、目の前に好物を置かれたようなものだったエリナは、簡単には引き下がらない。むしろエレーナと団結してメイリーンから聞き出そうとしている。
(何で舞踏会でのことエレーナ様はここで出すの!!!)
チラッとエレーナの方を見れば、口元が上がっていた。どうやらメイリーンの反応を見て楽しんでいるらしい。面白がっている。
──貴女もエリナの餌食よ。私だけは卑怯だわ。
ゆっくりと彼女の口元は動いた。
メイリーンは顔を顰める。餌食ってなんだ。餌食って。ここにいるのは、令嬢として楽しんでいるのもあるが、職務でもあるのだ。
あの事件によって、薄らと自分が何をしているのかエレーナに把握されてしまったメイリーン。
今は主であるリチャードから最愛を守れと命令を受けている。
それはもちろん見える形でも、見えない、見せられない形でも、だ。
ゆえに今、職務をまっとうしようとメイリーンはここにいる。
「それでもいいわ。レーナと殿下の話は甘ったるくてずっと聞いてると胃もたれしてしまうもの」
「その言い方は酷い。エリナが根掘り葉掘り聞いてくるから話したのに」
口を尖らせて膨れっ面をしたエレーナは、紅茶の入ったカップをソーサーに置く。
「ほんとうに、そんな面白い話ではないですよ? ほら、違う話題にしましょう」
そう言ってメイリーンはどうにか話題をずらそうと苦心したが、結局グイグイと押し負け、内心嫌だなと思いつつ口を開くことになった。
◇◇◇
自分がリチャードに会う一年前、九歳の時のこと。
メイリーンはその歳にして両親──尤も父から王家の影としての手ほどきを受けていた。
それは彼女の生まれたクロフォード伯爵家の成り立ちが関係している。
伯爵家の誕生は建国当初に遡る。初代伯爵はこの国を作った初代国王の影として、建国の裏で暗躍した。その功績を称え、国王は伯爵の爵位を授けた。
当初は公爵位を与えようとしていたらしいが、初代伯爵がそれを断り、この爵位になった。
そのため現代までクロフォード家に生を受けると性別を問わず、王家に仕える者が多い。ほとんどの場合裏で活動するが、たまに陽の光が当たる表で活躍する者もいる。
メイリーンも外れず、将来が決まっていた。別にそれに関して不満を持ってはいなかった。家系がそうだったのと、年の離れた自分の兄二人が活躍している姿を見て、かっこいいと思ったから。
今思えば刷り込みもあったかもしれない。なんせメイリーンは閉鎖的な世界で育ったのだから。他に比べるものがなかったのだ。
デビュタントを迎える前までは、病弱などと謳い、極力貴族との交流を持たなかった。つまり同じ年頃の令嬢と話す機会もなかっということで。
もっぱらの遊び玩具は刃物や縄であったし、相手は父か兄か悪党であった。
木を登り、山を駆け抜け、運悪くメイリーンに遭遇してしまった悪党を懲らしめ、時には兄の任務に付いて行って一緒に敵の懐に飛び込み壊滅させる。
一般の令嬢からしたら経験することも無い波乱万丈の人生だ。
そのせいか顔を貴族の前に出すようになった今、ちょくちょく周りとの感性がズレてるな……とは感じる。
誕生日プレゼントに何が欲しいかと聞かれれば、お人形やドレスではなくて暗器が欲しいと答える。
ドレスを着れば、可愛いと思うよりも先に動きにくくて仕方ないと思ってしまう。
別の令嬢に成りすまし、潜入した舞踏会では、近寄ってくる子息たちは貧相な体付き。その弱々しさに冷え切った瞳が、相手に知られないよう取り繕うので精一杯。
影として育てられてきたメイリーンは気付かぬうちに普通の令嬢から逸脱し、父は自分の育て方を間違えてしまったのかと最近では頭を抱えている。
そんなことを言っても自分の待遇に不満はないし、そこそこ楽しい生活を送っていたのだ。
王家直属といっても、あくまで自分が動くのは国と民にとって害となる人物を制裁するためである。
功績が表に出てくることは無いけれど、それによって誰かが助かる、幸せになれる手伝いができたと思えば嬉しいのだった。
そんな自分はほぼ反抗期なしですくすく成長していたが、逆らいたい時期は来る。それが九歳の時だった。
いつもいつも、外には出ては行けない。
一人でどこかに行ってはいけない。
行動範囲は森と邸の周りだけ。
大きな不満を持ったことはなかったが、どこかでそういう類のものが溜まっていたのだろう。
退屈で仕方なかった彼女が思い付いたのが屋敷から抜け出すのことだった。
メイリーンはその日、街で祭りが開かれていることを侍女達の立ち話で知った。普段ならそんなことに興味を示さないのだが、何故かその時はとても心惹かれたのだ。
メイリーンはその手のものに、任務以外で連れて行ってもらったことがなかった。だからのんびり「見てみたい」と思った。
あの日兄二人は家庭教師の授業を受け、父と母は出掛けていた。短時間で戻ってくれば森に出ていたのだと思うだろうし、侍女にバレることもない。
それからのメイリーンの行動は素早かった。
まず一目散に自室へと戻り、いちばん質素で人の中に紛れ込める洋服に着替えて、上から黒いローブを着用する。
ポケットには彼女がこっそり隠していた金貨の入った巾着を滑り込ませ、頭をフードで覆う。
「髪の毛……バレちゃう」
鏡の前に立って最終確認をしている時に気が付く。もし、途中でフードから髪の毛が出てしまったら……銀髪は目立つ。
自分がクロフォード家の人間だと外の人達にバレてしまうのは避けなければならない。そう思ったメイリーンは、一旦ローブを脱いで兄達の寝室に侵入した。
すれ違う侍女たちはお嬢様は何をしようとしているのだろう? と奇妙そうに彼女を見たが、声をかける者はいなかった。
「あった! これよこれ」
迷わずに目的のものを見つけると、自室まで戻る。
彼女が兄の部屋から盗んできたのは金髪の鬘だった。鏡の前に立って頭にかぶせれば、少し大きいが、肩くらいまでしか無かった銀髪は隠れる。
「よし」
ローブを着て、手首を解して、屈伸して、メイリーンは今度こそ二階の窓から飛び降りる。
そのまま受け身の体勢を取り、身体を丸めながら地面を転がり、立ち上がる。
このようなことメイリーンには朝飯前だった。赤子の手をひねるよりも簡単だ。目をつぶっていても出来る。
パパっと服に付いた落ち葉や埃を払えばもう彼女を止めるものはない。
「お祭りって何があるのかしら。ああ、楽しみ!」
小躍りしながら一人の少女は街に向かって走り出した。
突然話を振られたメイリーンは、食べようとしていたクッキーを取り落とした。
今日は城下にある今人気のスイーツ店で、エリナ、エレーナ、メイリーンの三人で談笑していた。
主に話題に上がるのは社交界でのことや、紆余曲折を経て、ようやく婚約したリチャードとエレーナの話だ。
友人に尋ねられ、幸せそうに頬を紅色に染めながら話すエレーナに、ほっこりしていたのだったが──どうしてこうなった。
(え、何で私の話?)
心の中で同じことをもう一回呟く。
「そうよ。前、言っていたでしょう? リー様と似ている声を持った殿方に助けてもらったから、お礼を言いたいと」
問いかけた本人──エレーナがにっこりと笑えば、一緒にいたエリナも食い付いてくる。
「メイリーン様、もしかして慕う方がいらっしゃるの? その話詳しく聞きたいわ」
「え、あ、違うというか……誰にでもあるものです。面白い話では無いのでリチャード殿下とエレーナ様の話をしましょう」
やんわりと拒絶する。だが、目の前に好物を置かれたようなものだったエリナは、簡単には引き下がらない。むしろエレーナと団結してメイリーンから聞き出そうとしている。
(何で舞踏会でのことエレーナ様はここで出すの!!!)
チラッとエレーナの方を見れば、口元が上がっていた。どうやらメイリーンの反応を見て楽しんでいるらしい。面白がっている。
──貴女もエリナの餌食よ。私だけは卑怯だわ。
ゆっくりと彼女の口元は動いた。
メイリーンは顔を顰める。餌食ってなんだ。餌食って。ここにいるのは、令嬢として楽しんでいるのもあるが、職務でもあるのだ。
あの事件によって、薄らと自分が何をしているのかエレーナに把握されてしまったメイリーン。
今は主であるリチャードから最愛を守れと命令を受けている。
それはもちろん見える形でも、見えない、見せられない形でも、だ。
ゆえに今、職務をまっとうしようとメイリーンはここにいる。
「それでもいいわ。レーナと殿下の話は甘ったるくてずっと聞いてると胃もたれしてしまうもの」
「その言い方は酷い。エリナが根掘り葉掘り聞いてくるから話したのに」
口を尖らせて膨れっ面をしたエレーナは、紅茶の入ったカップをソーサーに置く。
「ほんとうに、そんな面白い話ではないですよ? ほら、違う話題にしましょう」
そう言ってメイリーンはどうにか話題をずらそうと苦心したが、結局グイグイと押し負け、内心嫌だなと思いつつ口を開くことになった。
◇◇◇
自分がリチャードに会う一年前、九歳の時のこと。
メイリーンはその歳にして両親──尤も父から王家の影としての手ほどきを受けていた。
それは彼女の生まれたクロフォード伯爵家の成り立ちが関係している。
伯爵家の誕生は建国当初に遡る。初代伯爵はこの国を作った初代国王の影として、建国の裏で暗躍した。その功績を称え、国王は伯爵の爵位を授けた。
当初は公爵位を与えようとしていたらしいが、初代伯爵がそれを断り、この爵位になった。
そのため現代までクロフォード家に生を受けると性別を問わず、王家に仕える者が多い。ほとんどの場合裏で活動するが、たまに陽の光が当たる表で活躍する者もいる。
メイリーンも外れず、将来が決まっていた。別にそれに関して不満を持ってはいなかった。家系がそうだったのと、年の離れた自分の兄二人が活躍している姿を見て、かっこいいと思ったから。
今思えば刷り込みもあったかもしれない。なんせメイリーンは閉鎖的な世界で育ったのだから。他に比べるものがなかったのだ。
デビュタントを迎える前までは、病弱などと謳い、極力貴族との交流を持たなかった。つまり同じ年頃の令嬢と話す機会もなかっということで。
もっぱらの遊び玩具は刃物や縄であったし、相手は父か兄か悪党であった。
木を登り、山を駆け抜け、運悪くメイリーンに遭遇してしまった悪党を懲らしめ、時には兄の任務に付いて行って一緒に敵の懐に飛び込み壊滅させる。
一般の令嬢からしたら経験することも無い波乱万丈の人生だ。
そのせいか顔を貴族の前に出すようになった今、ちょくちょく周りとの感性がズレてるな……とは感じる。
誕生日プレゼントに何が欲しいかと聞かれれば、お人形やドレスではなくて暗器が欲しいと答える。
ドレスを着れば、可愛いと思うよりも先に動きにくくて仕方ないと思ってしまう。
別の令嬢に成りすまし、潜入した舞踏会では、近寄ってくる子息たちは貧相な体付き。その弱々しさに冷え切った瞳が、相手に知られないよう取り繕うので精一杯。
影として育てられてきたメイリーンは気付かぬうちに普通の令嬢から逸脱し、父は自分の育て方を間違えてしまったのかと最近では頭を抱えている。
そんなことを言っても自分の待遇に不満はないし、そこそこ楽しい生活を送っていたのだ。
王家直属といっても、あくまで自分が動くのは国と民にとって害となる人物を制裁するためである。
功績が表に出てくることは無いけれど、それによって誰かが助かる、幸せになれる手伝いができたと思えば嬉しいのだった。
そんな自分はほぼ反抗期なしですくすく成長していたが、逆らいたい時期は来る。それが九歳の時だった。
いつもいつも、外には出ては行けない。
一人でどこかに行ってはいけない。
行動範囲は森と邸の周りだけ。
大きな不満を持ったことはなかったが、どこかでそういう類のものが溜まっていたのだろう。
退屈で仕方なかった彼女が思い付いたのが屋敷から抜け出すのことだった。
メイリーンはその日、街で祭りが開かれていることを侍女達の立ち話で知った。普段ならそんなことに興味を示さないのだが、何故かその時はとても心惹かれたのだ。
メイリーンはその手のものに、任務以外で連れて行ってもらったことがなかった。だからのんびり「見てみたい」と思った。
あの日兄二人は家庭教師の授業を受け、父と母は出掛けていた。短時間で戻ってくれば森に出ていたのだと思うだろうし、侍女にバレることもない。
それからのメイリーンの行動は素早かった。
まず一目散に自室へと戻り、いちばん質素で人の中に紛れ込める洋服に着替えて、上から黒いローブを着用する。
ポケットには彼女がこっそり隠していた金貨の入った巾着を滑り込ませ、頭をフードで覆う。
「髪の毛……バレちゃう」
鏡の前に立って最終確認をしている時に気が付く。もし、途中でフードから髪の毛が出てしまったら……銀髪は目立つ。
自分がクロフォード家の人間だと外の人達にバレてしまうのは避けなければならない。そう思ったメイリーンは、一旦ローブを脱いで兄達の寝室に侵入した。
すれ違う侍女たちはお嬢様は何をしようとしているのだろう? と奇妙そうに彼女を見たが、声をかける者はいなかった。
「あった! これよこれ」
迷わずに目的のものを見つけると、自室まで戻る。
彼女が兄の部屋から盗んできたのは金髪の鬘だった。鏡の前に立って頭にかぶせれば、少し大きいが、肩くらいまでしか無かった銀髪は隠れる。
「よし」
ローブを着て、手首を解して、屈伸して、メイリーンは今度こそ二階の窓から飛び降りる。
そのまま受け身の体勢を取り、身体を丸めながら地面を転がり、立ち上がる。
このようなことメイリーンには朝飯前だった。赤子の手をひねるよりも簡単だ。目をつぶっていても出来る。
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