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幸福な日々
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「──さま、エレーナ様!」
目が覚める。どうやら話の途中でウトウトしてしまっていたらしい。
(昼間は眠気が来るのよね……)
夜は睡眠不足になるほど眠れないのに。妊娠中の身体は不思議なことばかりだ。ふわぁと手を当てながらあくびをすれば涙がでてきた。
「何の話をしていたかしら」
少し動くと肩からブランケットがずり落ちた。それをメイリーンはすぐさま拾い、新しい物と交換する。
「君が倒れた話だよ」
「そうだったわ。急に眠たくなっちゃった」
「なら、今のうちに少し寝た方がいいのではないか? 夜は眠れていないようだから。それに風が冷たくなってきたし、身重のレーナは身体を冷やしてはいけない」
茶器を片付けるよう指示を出し、リチャードは反論する暇も与えず手を取った。
転ばないようにゆっくりと立ち上がる。
「あ、スノードロップが咲いているわ」
途中、宮の中に早く入ろうとする夫の腕を引っ張って花壇の方へ誘導した。
「昨日は咲いていなかったのに。気温の関係かしら」
「今日は久しぶりに暖かかったからかな」
「多分そうね。それしか考えられないもの」
綺麗だわと言えば、リチャードは花を一輪手折り、エレーナの耳元に飾った。
「この子が産まれるのは初夏くらいかしら」
「侍医が言うにはね」
「きっと女の子よ。キースの時より静かだから」
息子の時は昼夜関係なしにお腹を蹴られ、いきなりの衝撃に息を詰まらせることも多々あった。
「私はどちらでも構わない。君の子なら全員可愛いから」
あまり関心がないような顔で夫は言う。
しかしエレーナは知っている。キースが産まれた時は執務を必要最低限にして、四六時中赤子と一緒にいたことを。その時を思い出してふふっと笑えば、リチャードは不思議そうに首をかしげた。
宮殿内に入り、廊下を進んでいると奥から一人の男性が走って来る。
「陛下ぁ! 本日中に捌かなければいけない書類が溜まってます。速攻目を通してください。そうしないと私たち帰れません」
「お前たちが見ればいいだろう?」
「無理ですよ。必要な玉璽を持ってないんですから!」
「そうか、玉璽がなくて無理なら貸してやる。ほら受け取れ」
懐から取り出したものをギルベルトに向かって投げた。驚愕しながらも彼は両手で受け取った。
「…………投げないでくださいよ?! これ、玉璽ですから!!! 世界に一つだけしかないものなのに」
ギルベルトの寿命が数年縮んだ。
「ギルベルトが落とすわけないだろう。落としても責任は追求しないさ」
「絶対に嘘ですね。陛下の性格はバレています。王妃様、キース殿下、以外には人が代わったかのように冷血ですよ。慈悲がない。もう一度言います。冷! 血! 鬼畜!」
その言葉を聞いたリチャードの目が変わった。
「ほう、無駄口を叩く暇があるのだな」
二人の間に火蓋が落とされる。廊下の人が通るような場所で口論が始まった。エレーナの左手はリチャードに握られたままなので、一人で帰ることもできない。しばらく二人の言い争いを見守ることにした。
ギルベルトが普段の不満を爆発させるようにリチャードのことを悪く言っている。本来ならば、君主と臣下が揉めているので止めに入った方がいいのだろう。だがギルベルトが折れるのがいつものオチなので、あまり心配はしていなかった。
「母上、体調は大丈夫なのですか?」
「今の所ね、キースは何をしていたの?」
振り返れば可愛い息子が駆け足に近寄って来ていた。それだけでこの状況にほとほと呆れていたエレーナは嬉しくなり、彼らの言い争いを頭から追いだした。
「図書館で父上に読んでもらう本を探していたのです。これから執務室に行こうかと思って……」
どうやら日課になりつつある絵本を読む時間だったらしい。
「お父様は今忙しいから、お母様に見せてちょうだい」
持っていた本の題名を見る。どうやら冒険ファンタジーらしい。少年の絵が表紙に大々的に描かれていた。
「よし、体調がいいからお父様の代わりにお母様が読んであげるわ」
「本当?!」
これくらいなら大丈夫だろう。後ろから付いてきていたメイリーンに視線で許可を求めると、彼女は頷いた。
さりげなくリチャードとの手を解いて、キースと握る。自分よりも一回り以上小さいその手は、一生懸命エレーナの手を握り返した。
「私の小さな王子様、お部屋に案内してくれるかしら?」
「もちろん!」
リチャードを置いて、リリアンと共にキースの部屋に行く。メイリーンは茶菓子を用意しに厨房へ行った。
部屋につくとキースは寝台に飛び乗り、いそいそとシーツを被った。
そんな息子の様子が微笑ましくて、エレーナはリリアンが用意した安楽椅子に腰かけ、絵本を開く。
「むかし、海がまだこの世界の四分の三を占めていた頃のこと────」
読み始めて直ぐに安らかな寝息が聞こえてきた。
「珍しい。こんなに早く寝てしまわれるなんて。エレーナ様のお力ですね」
そばに居たリリアンが微笑ましげに言う。
「そう言ってもらえると嬉しいわ。まだ五歳だもの。甘えたいだろうに」
前髪を梳きながら優しく撫でる。エレーナがこれくらいの年齢の時は、母であるヴィオレッタが弟のエルドレッドにかかりっきりになっていた。父のルドウィッグも仕事で忙しく、遊び相手は持っていたお人形のみ。
意図して構ってくれないのだとは思わなかったが、どうしても心細さを感じていた。
「はは……うえ……」
寝言なのに切なげな声が聞こえて申し訳なくなる。
(寂しい思いをさせてしまっている)
体質なのだろう。エレーナは妊娠中の悪阻が平均と比べて重かった。今は歩けるようになっているが、初期の頃だと寝台から起き上がれない日の方が多かった。
そうなると構ってあげたくても息子に会いに行けず……。キースは聞き分けがいい子でエレーナの体調が悪いことを理解し、甘えるのを我慢してくれていた。
その反動なのか倒れた日からは何をするのでもなく、暇があればエレーナのそばに居るけれど。
夢の中にいる息子に向かって子守唄を歌いながら、穏やかな時間を過ごした。
二時間ほど経っただろうか。にわかに廊下が騒がしくなり、扉が開かれる。
「レーナ、迎えに来た」
「執務は終わりました? ギルベルトとの言い争いは?」
「ああ、ギルベルトが折れ──」
声がいささか大きすぎだ。このままでは息子が起きてしまう。そう思ったエレーナは唇に人差し指を当てて、静かにするようジェスチャーをした。
「すまない。寝ているのか」
「ぐっすりですよ。私の手を離さないくらいにね。時間的にもうすぐ起きますが、眠りの途中を邪魔するのは嫌なので」
いつの間にか強い力で握られ、動かすことが出来なかった右手を見せれば、リチャードは微かに口元に笑みを浮かべた。
そうして優しくキースの頭を撫でる。
「レーナのこと独り占めしていたのか。贅沢だな」
少しだけ拗ねたような声色なのはエレーナの気のせいだろうか。
「──嫉妬、ですか?」
からかうように小声で言えば、リチャードは肩を竦めた。
「まさか。私の方が妻と一緒にいる時間が長い」
そう言って不意打ちでキスされる。ふわっと柑橘の匂いが鼻を掠めた。
(分かりやすい)
声を出さずに笑えばリチャードは口を尖らせ、座っているエレーナに再び顔を近づけてきた。
「父上……?」
間の悪いことにまぶたを擦りながらキースが夢から覚める。リチャードは居心地が悪そうに一瞬、キースから顔を背けた。
「おはよう」
あらぬ方向を見ている夫の代わりに声をかける。
「ずっと居てくれたのですか? 起きたら居なくなってしまっているのかと思いました」
「ずっといたわ。私の可愛いキース」
飛び起きた息子の髪を手ぐしで整えれば、擦り寄ってくる。
「キースおはよう。少し早いが一緒に夕食を食べよう」
何事も無かったかのようにリチャードは言った。
いつもならば彼が執務で忙しく、家族全員での夕食は少ないからだろう。キースはとても嬉しそうに大きく頷いた。シーツを剥いで、寝台から飛び降りる。
「母上もいくよね?」
「もちろんよ」
息子に急かされて立ち上がる。すると空いていた右手をリチャードに取られ、左手はキースに、エレーナが真ん中になる形で歩き始めた。
キースがいるのと、エレーナが転ばないように、普段よりもゆっくりとした足取りで三人は歩く。
「お肉が食べたいなぁ」
「野菜を食べないと肉は出さないよ。最近、私がいないからきちんと食べてないだろう。シェフにもそう伝える」
「うー、父上は母上と違って意地悪だ。分かるよ。どうせ僕が母上を独り占めしていたことに対してのヤキモチ……」
「違う。キースの健康を心配してのことだ。断じて嫉────」
「言い訳なんていらない。父上は母上が一番なんだ。僕も母上が一番だけどね」
そんな他愛もない親子の会話を聞きながら、愛しい人達と繋がった両手を見る。
エレーナより小さい手と大きい手。だけどどちらも同じくらい自分を惹きつけ、温かい。
「母上!」
「どうしたの?」
いつの間にか二人とも自分のことを見ていた。
「母上の一番はどっち? 僕? それとも父上?」
「それは……」
すぐには答えられなくて言葉を詰まらせてしまった。息子は瞳を輝かせ、リチャードは何とも言えない顔になっている。彼はきっと息子が一番だとエレーナが答えると思っているのだろう。
そんな様子を見たエレーナは「二人揃って私の一番よ」と微笑んだのだった。
***
本編完結です。約3ヶ月間お読み下さりありがとうございました!次話からは番外編になります。
目が覚める。どうやら話の途中でウトウトしてしまっていたらしい。
(昼間は眠気が来るのよね……)
夜は睡眠不足になるほど眠れないのに。妊娠中の身体は不思議なことばかりだ。ふわぁと手を当てながらあくびをすれば涙がでてきた。
「何の話をしていたかしら」
少し動くと肩からブランケットがずり落ちた。それをメイリーンはすぐさま拾い、新しい物と交換する。
「君が倒れた話だよ」
「そうだったわ。急に眠たくなっちゃった」
「なら、今のうちに少し寝た方がいいのではないか? 夜は眠れていないようだから。それに風が冷たくなってきたし、身重のレーナは身体を冷やしてはいけない」
茶器を片付けるよう指示を出し、リチャードは反論する暇も与えず手を取った。
転ばないようにゆっくりと立ち上がる。
「あ、スノードロップが咲いているわ」
途中、宮の中に早く入ろうとする夫の腕を引っ張って花壇の方へ誘導した。
「昨日は咲いていなかったのに。気温の関係かしら」
「今日は久しぶりに暖かかったからかな」
「多分そうね。それしか考えられないもの」
綺麗だわと言えば、リチャードは花を一輪手折り、エレーナの耳元に飾った。
「この子が産まれるのは初夏くらいかしら」
「侍医が言うにはね」
「きっと女の子よ。キースの時より静かだから」
息子の時は昼夜関係なしにお腹を蹴られ、いきなりの衝撃に息を詰まらせることも多々あった。
「私はどちらでも構わない。君の子なら全員可愛いから」
あまり関心がないような顔で夫は言う。
しかしエレーナは知っている。キースが産まれた時は執務を必要最低限にして、四六時中赤子と一緒にいたことを。その時を思い出してふふっと笑えば、リチャードは不思議そうに首をかしげた。
宮殿内に入り、廊下を進んでいると奥から一人の男性が走って来る。
「陛下ぁ! 本日中に捌かなければいけない書類が溜まってます。速攻目を通してください。そうしないと私たち帰れません」
「お前たちが見ればいいだろう?」
「無理ですよ。必要な玉璽を持ってないんですから!」
「そうか、玉璽がなくて無理なら貸してやる。ほら受け取れ」
懐から取り出したものをギルベルトに向かって投げた。驚愕しながらも彼は両手で受け取った。
「…………投げないでくださいよ?! これ、玉璽ですから!!! 世界に一つだけしかないものなのに」
ギルベルトの寿命が数年縮んだ。
「ギルベルトが落とすわけないだろう。落としても責任は追求しないさ」
「絶対に嘘ですね。陛下の性格はバレています。王妃様、キース殿下、以外には人が代わったかのように冷血ですよ。慈悲がない。もう一度言います。冷! 血! 鬼畜!」
その言葉を聞いたリチャードの目が変わった。
「ほう、無駄口を叩く暇があるのだな」
二人の間に火蓋が落とされる。廊下の人が通るような場所で口論が始まった。エレーナの左手はリチャードに握られたままなので、一人で帰ることもできない。しばらく二人の言い争いを見守ることにした。
ギルベルトが普段の不満を爆発させるようにリチャードのことを悪く言っている。本来ならば、君主と臣下が揉めているので止めに入った方がいいのだろう。だがギルベルトが折れるのがいつものオチなので、あまり心配はしていなかった。
「母上、体調は大丈夫なのですか?」
「今の所ね、キースは何をしていたの?」
振り返れば可愛い息子が駆け足に近寄って来ていた。それだけでこの状況にほとほと呆れていたエレーナは嬉しくなり、彼らの言い争いを頭から追いだした。
「図書館で父上に読んでもらう本を探していたのです。これから執務室に行こうかと思って……」
どうやら日課になりつつある絵本を読む時間だったらしい。
「お父様は今忙しいから、お母様に見せてちょうだい」
持っていた本の題名を見る。どうやら冒険ファンタジーらしい。少年の絵が表紙に大々的に描かれていた。
「よし、体調がいいからお父様の代わりにお母様が読んであげるわ」
「本当?!」
これくらいなら大丈夫だろう。後ろから付いてきていたメイリーンに視線で許可を求めると、彼女は頷いた。
さりげなくリチャードとの手を解いて、キースと握る。自分よりも一回り以上小さいその手は、一生懸命エレーナの手を握り返した。
「私の小さな王子様、お部屋に案内してくれるかしら?」
「もちろん!」
リチャードを置いて、リリアンと共にキースの部屋に行く。メイリーンは茶菓子を用意しに厨房へ行った。
部屋につくとキースは寝台に飛び乗り、いそいそとシーツを被った。
そんな息子の様子が微笑ましくて、エレーナはリリアンが用意した安楽椅子に腰かけ、絵本を開く。
「むかし、海がまだこの世界の四分の三を占めていた頃のこと────」
読み始めて直ぐに安らかな寝息が聞こえてきた。
「珍しい。こんなに早く寝てしまわれるなんて。エレーナ様のお力ですね」
そばに居たリリアンが微笑ましげに言う。
「そう言ってもらえると嬉しいわ。まだ五歳だもの。甘えたいだろうに」
前髪を梳きながら優しく撫でる。エレーナがこれくらいの年齢の時は、母であるヴィオレッタが弟のエルドレッドにかかりっきりになっていた。父のルドウィッグも仕事で忙しく、遊び相手は持っていたお人形のみ。
意図して構ってくれないのだとは思わなかったが、どうしても心細さを感じていた。
「はは……うえ……」
寝言なのに切なげな声が聞こえて申し訳なくなる。
(寂しい思いをさせてしまっている)
体質なのだろう。エレーナは妊娠中の悪阻が平均と比べて重かった。今は歩けるようになっているが、初期の頃だと寝台から起き上がれない日の方が多かった。
そうなると構ってあげたくても息子に会いに行けず……。キースは聞き分けがいい子でエレーナの体調が悪いことを理解し、甘えるのを我慢してくれていた。
その反動なのか倒れた日からは何をするのでもなく、暇があればエレーナのそばに居るけれど。
夢の中にいる息子に向かって子守唄を歌いながら、穏やかな時間を過ごした。
二時間ほど経っただろうか。にわかに廊下が騒がしくなり、扉が開かれる。
「レーナ、迎えに来た」
「執務は終わりました? ギルベルトとの言い争いは?」
「ああ、ギルベルトが折れ──」
声がいささか大きすぎだ。このままでは息子が起きてしまう。そう思ったエレーナは唇に人差し指を当てて、静かにするようジェスチャーをした。
「すまない。寝ているのか」
「ぐっすりですよ。私の手を離さないくらいにね。時間的にもうすぐ起きますが、眠りの途中を邪魔するのは嫌なので」
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そうして優しくキースの頭を撫でる。
「レーナのこと独り占めしていたのか。贅沢だな」
少しだけ拗ねたような声色なのはエレーナの気のせいだろうか。
「──嫉妬、ですか?」
からかうように小声で言えば、リチャードは肩を竦めた。
「まさか。私の方が妻と一緒にいる時間が長い」
そう言って不意打ちでキスされる。ふわっと柑橘の匂いが鼻を掠めた。
(分かりやすい)
声を出さずに笑えばリチャードは口を尖らせ、座っているエレーナに再び顔を近づけてきた。
「父上……?」
間の悪いことにまぶたを擦りながらキースが夢から覚める。リチャードは居心地が悪そうに一瞬、キースから顔を背けた。
「おはよう」
あらぬ方向を見ている夫の代わりに声をかける。
「ずっと居てくれたのですか? 起きたら居なくなってしまっているのかと思いました」
「ずっといたわ。私の可愛いキース」
飛び起きた息子の髪を手ぐしで整えれば、擦り寄ってくる。
「キースおはよう。少し早いが一緒に夕食を食べよう」
何事も無かったかのようにリチャードは言った。
いつもならば彼が執務で忙しく、家族全員での夕食は少ないからだろう。キースはとても嬉しそうに大きく頷いた。シーツを剥いで、寝台から飛び降りる。
「母上もいくよね?」
「もちろんよ」
息子に急かされて立ち上がる。すると空いていた右手をリチャードに取られ、左手はキースに、エレーナが真ん中になる形で歩き始めた。
キースがいるのと、エレーナが転ばないように、普段よりもゆっくりとした足取りで三人は歩く。
「お肉が食べたいなぁ」
「野菜を食べないと肉は出さないよ。最近、私がいないからきちんと食べてないだろう。シェフにもそう伝える」
「うー、父上は母上と違って意地悪だ。分かるよ。どうせ僕が母上を独り占めしていたことに対してのヤキモチ……」
「違う。キースの健康を心配してのことだ。断じて嫉────」
「言い訳なんていらない。父上は母上が一番なんだ。僕も母上が一番だけどね」
そんな他愛もない親子の会話を聞きながら、愛しい人達と繋がった両手を見る。
エレーナより小さい手と大きい手。だけどどちらも同じくらい自分を惹きつけ、温かい。
「母上!」
「どうしたの?」
いつの間にか二人とも自分のことを見ていた。
「母上の一番はどっち? 僕? それとも父上?」
「それは……」
すぐには答えられなくて言葉を詰まらせてしまった。息子は瞳を輝かせ、リチャードは何とも言えない顔になっている。彼はきっと息子が一番だとエレーナが答えると思っているのだろう。
そんな様子を見たエレーナは「二人揃って私の一番よ」と微笑んだのだった。
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