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戸惑う友人達
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「…………」
「ちょっちょーと待って、私にはレーナが言ったことが理解できなかったわ。もう一回お願い」
クエッションマークが頭に浮かんでいるのがわかり易すぎるアレクサンドラに対して、エレーナはため息をついた。
「わたしは、婚約は、するつもりだけど、相手は、決まってなくて、いま、探している、最中」
一言一言区切って答える。
「待って理解できない」
パッと手を上げて口を開いたのはまたアレクサンドラだ。
「は?」
思わず口調が悪くなる。
「いや、言いたいことは理解できるの。だけど、なぜその考えにたどり着いたのか理解できない」
「サーシャの言う通りだわ。レーナには探さなくても最適な人がいるじゃない」
イヴォナがアレクサンドラに口添える。
「何の話をしているの? 最適な人なんていないわよ。第一に私が親しい子息って幼馴染のギルベルトや貴方達の御相手だけよ?」
目を見合わせて友人達は固まる。
「それとも見ず知らず又は社交界で一言二言交わすぐらいの子息方のことを言っているの?」
「リチャード殿下がいるじゃない」
声を潜めてサリアが言って、エレーナは思いっきり顔を顰めた。
小さい頃から親しいこの四人は、自分が殿下に抱いていた感情を言わなくても悟っているはずなのに、何故傷を抉るようなことを言ってくるのか。
「なんでみんな殿下を出すのよ……あの方は……他に好きな人がいるそうよ」
リチャードには他の人に言ってはいけないと言われたが、親友達なら大丈夫だろう。話し方だと口が軽いように見えるが、長年の付き合いでとても固いということを知っているから。
「え? リチャード殿下がエレーナに対して仰ったの?」
内心もやもやとしているエレーナの気持ちも知らずにサリアは尋ねてくる。
「言ったわ。慕う人がいるって直接聞いたもの」
「「「「あ~!!!!」」」」
全員(エレーナを除く)が脱力した。エリナなんて茹でダコのようにテーブルの上に腕を伸ばしているし、「どうしてよ! なんでそうなるの!」とテーブルに向かって嘆いている。
「レっレーナ、かっ確認だけど貴女はリチャード殿下が慕う人は誰だと思っているの」
「そんなの知らないわ……今滞在しているジェニファー王女では無いらしいけど……」
不機嫌そうに返答すればサリアはエリナと、イヴォナはアレクサンドラと目を合わせた。そして四人で集まり、小声で何かを話し始める。
「ダメだ。まっっったくこの子気づいてない」
「そうね。鈍感すぎるわ」
「私達が教えちゃう?」
「やめなさいよ! 可哀想だけどこれはレーナが自分で気が付かなくては意味ないじゃない!」
「じゃあ殿下に頑張ってもらうしかないわ」
「何も行動してこなかった殿下が悪いのよ。この子、自分の恋愛には疎いんだから」
「私を除け者して何の話しをしているの」
尋ねれば四人ともこちらを向いた。
「うん、レーナはそのままでいいわよ。あちらがどうにかしてくるはずだから。というか焦ってもらわないと見守ってるこちらも困るわ」
全く答えになっていない返答が返ってきて、エリナはエレーナの肩を優しく叩く。
「そうよ、レーナは婚約したいと思える殿方を探せばいいわ」
「私たちはレーナの味方だから」
「あっありが……とう?」
よく分からないまま感謝だけ伝える。
「はぁなんでこんなに可愛いエレーナが最後まで残ってるのよ。最後はサーシャだと思ってたのに」
「しっ失礼ね!」
エリナの言葉に音を立てながらアレクサンドラが立ち上がった。
「だって本当だもの」
一瞬アレクサンドラを見たエリナは、エレーナの絹のような金の髪を掬って弄び始めた。少しだけウェーブがついている髪は滑るように手のひらからこぼれる。
エレーナがやめてほしいとその手を掴むとエリナはふくれっ面をする。
「まあまあ、今週末は舞踏会よ。次は舞踏会の話をしない?」
イヴォナがさり気なく話を逸らす。きっとエレーナがこの話題の話をしたくないのを悟って助け船を出してくれたのだろう。そう思って目を合わせれば微かにイヴォナは笑ったのだった。
「ちょっちょーと待って、私にはレーナが言ったことが理解できなかったわ。もう一回お願い」
クエッションマークが頭に浮かんでいるのがわかり易すぎるアレクサンドラに対して、エレーナはため息をついた。
「わたしは、婚約は、するつもりだけど、相手は、決まってなくて、いま、探している、最中」
一言一言区切って答える。
「待って理解できない」
パッと手を上げて口を開いたのはまたアレクサンドラだ。
「は?」
思わず口調が悪くなる。
「いや、言いたいことは理解できるの。だけど、なぜその考えにたどり着いたのか理解できない」
「サーシャの言う通りだわ。レーナには探さなくても最適な人がいるじゃない」
イヴォナがアレクサンドラに口添える。
「何の話をしているの? 最適な人なんていないわよ。第一に私が親しい子息って幼馴染のギルベルトや貴方達の御相手だけよ?」
目を見合わせて友人達は固まる。
「それとも見ず知らず又は社交界で一言二言交わすぐらいの子息方のことを言っているの?」
「リチャード殿下がいるじゃない」
声を潜めてサリアが言って、エレーナは思いっきり顔を顰めた。
小さい頃から親しいこの四人は、自分が殿下に抱いていた感情を言わなくても悟っているはずなのに、何故傷を抉るようなことを言ってくるのか。
「なんでみんな殿下を出すのよ……あの方は……他に好きな人がいるそうよ」
リチャードには他の人に言ってはいけないと言われたが、親友達なら大丈夫だろう。話し方だと口が軽いように見えるが、長年の付き合いでとても固いということを知っているから。
「え? リチャード殿下がエレーナに対して仰ったの?」
内心もやもやとしているエレーナの気持ちも知らずにサリアは尋ねてくる。
「言ったわ。慕う人がいるって直接聞いたもの」
「「「「あ~!!!!」」」」
全員(エレーナを除く)が脱力した。エリナなんて茹でダコのようにテーブルの上に腕を伸ばしているし、「どうしてよ! なんでそうなるの!」とテーブルに向かって嘆いている。
「レっレーナ、かっ確認だけど貴女はリチャード殿下が慕う人は誰だと思っているの」
「そんなの知らないわ……今滞在しているジェニファー王女では無いらしいけど……」
不機嫌そうに返答すればサリアはエリナと、イヴォナはアレクサンドラと目を合わせた。そして四人で集まり、小声で何かを話し始める。
「ダメだ。まっっったくこの子気づいてない」
「そうね。鈍感すぎるわ」
「私達が教えちゃう?」
「やめなさいよ! 可哀想だけどこれはレーナが自分で気が付かなくては意味ないじゃない!」
「じゃあ殿下に頑張ってもらうしかないわ」
「何も行動してこなかった殿下が悪いのよ。この子、自分の恋愛には疎いんだから」
「私を除け者して何の話しをしているの」
尋ねれば四人ともこちらを向いた。
「うん、レーナはそのままでいいわよ。あちらがどうにかしてくるはずだから。というか焦ってもらわないと見守ってるこちらも困るわ」
全く答えになっていない返答が返ってきて、エリナはエレーナの肩を優しく叩く。
「そうよ、レーナは婚約したいと思える殿方を探せばいいわ」
「私たちはレーナの味方だから」
「あっありが……とう?」
よく分からないまま感謝だけ伝える。
「はぁなんでこんなに可愛いエレーナが最後まで残ってるのよ。最後はサーシャだと思ってたのに」
「しっ失礼ね!」
エリナの言葉に音を立てながらアレクサンドラが立ち上がった。
「だって本当だもの」
一瞬アレクサンドラを見たエリナは、エレーナの絹のような金の髪を掬って弄び始めた。少しだけウェーブがついている髪は滑るように手のひらからこぼれる。
エレーナがやめてほしいとその手を掴むとエリナはふくれっ面をする。
「まあまあ、今週末は舞踏会よ。次は舞踏会の話をしない?」
イヴォナがさり気なく話を逸らす。きっとエレーナがこの話題の話をしたくないのを悟って助け船を出してくれたのだろう。そう思って目を合わせれば微かにイヴォナは笑ったのだった。
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