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ふしぎなせかいのローヴァ
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しばらくいくと、のらネコがみちばたにたちどまっていた。
ぼくらがちかづいても、とおりすぎても、ピクリともうごかない。
上をみると、でんせんにスズメが、今まさにとまろうとつばさをひろげている。
カッコよくひらいたつばさはそのまま、でんせんのてまえでピタリととまってうごかない。
ほんとう、にじかんがとまっているんだ。
ローヴァは、みちをずんずんすすんでいく。
だいじょうぶかな?
「ローヴァ、この先はいきどまりだよ」
「だいじょうぶ!
ローヴァにおまかせ!」
ふりかえって、うしろあるきしながら、ローヴァはようきにいった。
ちかくでよくみても、やっぱりいくつなのかぜんぜんわからない。
すぐに、しらない人の家がみえてきた。
門の横のかきねには、あながあいている。
どうするのかと思ってみていると、ローヴァは体をかがめてあなに入ろうとするんだ。
「いいの?
しらない人におこられちゃうよ?」
「へいきへいき!
じかんはとまっているし、このさきはしらない人の家じゃないから」
ほんとうに、ローヴァはよくわからない。
でも、すくなくともおこられることはなさそうだから、ぼくもあなにはいってみることにした。
かきねって、木というには小さいしょくぶつで作ったかこいみたいなものでしょう?
だから、すぐにむこうがわにぬけられると思ったんだ。
でも、すすんでもすすんでも小さなはっぱと木のえだのトンネルがつづく。
しゃがみながら歩くのに、そろそろひざがいたくなってきたころ、やっと前にむらさきっぽい明かりがみえた。
「とくちゃく!」
ひとあし先にかきねをぬけたローヴァが、おしりをフリフリおどっていった。
「まってよ、ここはどこ?」
すくなくとも、しらない人の家のにわなんかじゃない。
だって……そらがいちめん、むらさきいろなんだよ。
ときどき、ものすごい音をたてて青いイナズマがはしっている。
じめんは先にすすむにつれてほそくなり、ずっととおくまでつづいているみたい。
そのほそいみちの先には、ゲームのなかでしかみたことのないような、おそろしげなおしろがある。
「ここはね、まおうのしろ!
ほんとうは、すごーく長いめいろをぬけないといけないんだけれど、今はちかみちしちゃった」
いたずらっぽくいわれてもなぁ。
むらさきいろのそらには、コウモリみたいななにかがとんでいるのがみえる。
ここは、じかんがとまっていないんじゃないかな。
「それじゃ、いそいでたいまのけんをとってこよう!」
ふあんでいっぱいなぼくのことなど、おかまいなし。
ローヴァはげんきいっぱいに右手を上につきあげると、スキップしながらほそいみちにすすみはじめた。
もういちどいうけれど、そのさきにあるのはまおうのしろだ。
はじめのうち、ふつうのどうろくらいあったみちはば。
今はなんと、かたはばくらい。
すこしでも足をふみはずしたら、ガケからまっさかさまだ。
おそるおそる下をみてみると……そこのみえない、すみをながしたようなまっくろいやみがひろがっている。
それなのに、それなのにだよ!
ローヴァときたら、スキップをやめないんだ。
それどころか、たまにクルッと回ってこっちをむく。
そして、こわさに足をガクガクさせているぼくにむかって、りょうてをヒラヒラさせるんだ。
そのおかげで、なんとか前にすすめるわけではあるけれど。
もっとすすむと、こんどは上からさけびごえがきこえてきた。
しょうぼうしゃのサイレンを、もっと大きくして、ヒビわれたような音にしたこえ。
とんでもなくうるさくて、そのたびにあたまがわれそうになる。
バランスをとるため左右にのばしていた両手で、思わず耳をおさえたくなるほど。
でもそんなことをすると、たちまちバランスをくずしてガケから落っこちそうになる。
そらをとんでいる、コウモリみたいなやつだ。
よくみれば、つばさのほかに長い手も足もあって、かいぶつだとわかる。
コウモリなら、手がつばさになっているから、ほかに長い手があってはおかしいんだ。
かいぶつは、また耳がばくはつしそうに大きなこえでさけぶと、あたまを下にむけてつばさをたたんだ。
ものすごいはやさで、ぼくにせまってくる!
こんなにほそいみちの上では、うまくよけられない。
かいぶつにぶつかってこられたら、ガケからおちておしまいだ。
ぼくはこわさのあまり、足がうごかなくなってしまった。
「たすけて、ローヴァ!」
「もっちろん! ……えいっ!」
こんなときに? こんなときだからこそ?
ローヴァはげんきにはずんだこえでへんじをして、人さしゆびをかいぶつにむけた。
あっ!
かいぶつはそのままの大きさの、きょだいなポップコーンになる。
ぼくにせまってくるいきおいは、ぜんぜんたいしたことなくなった。
それでもぼくのうでにぶつかったけれど、そのままはねかえされてガケにおちていく。
もちろんぼくはぶじた。
「ローヴァ、すごいね!」
「魔女だからね!」
やっぱり、魔女なんだ!
ローヴァが人さしゆびをそらにむけたまま、おどるようにあるきだす。
かいぶつたちはこまったように、そらをグルグルまわるだけになった。
ふむふむ、ポップコーンにはなりたくないようだね。
おかげでぼくは、ガケからおちないようにだけきをつけながら、ほそいみちをわたりきることができた。
まおうのしろは、目のまえだ。
ぼくらがちかづいても、とおりすぎても、ピクリともうごかない。
上をみると、でんせんにスズメが、今まさにとまろうとつばさをひろげている。
カッコよくひらいたつばさはそのまま、でんせんのてまえでピタリととまってうごかない。
ほんとう、にじかんがとまっているんだ。
ローヴァは、みちをずんずんすすんでいく。
だいじょうぶかな?
「ローヴァ、この先はいきどまりだよ」
「だいじょうぶ!
ローヴァにおまかせ!」
ふりかえって、うしろあるきしながら、ローヴァはようきにいった。
ちかくでよくみても、やっぱりいくつなのかぜんぜんわからない。
すぐに、しらない人の家がみえてきた。
門の横のかきねには、あながあいている。
どうするのかと思ってみていると、ローヴァは体をかがめてあなに入ろうとするんだ。
「いいの?
しらない人におこられちゃうよ?」
「へいきへいき!
じかんはとまっているし、このさきはしらない人の家じゃないから」
ほんとうに、ローヴァはよくわからない。
でも、すくなくともおこられることはなさそうだから、ぼくもあなにはいってみることにした。
かきねって、木というには小さいしょくぶつで作ったかこいみたいなものでしょう?
だから、すぐにむこうがわにぬけられると思ったんだ。
でも、すすんでもすすんでも小さなはっぱと木のえだのトンネルがつづく。
しゃがみながら歩くのに、そろそろひざがいたくなってきたころ、やっと前にむらさきっぽい明かりがみえた。
「とくちゃく!」
ひとあし先にかきねをぬけたローヴァが、おしりをフリフリおどっていった。
「まってよ、ここはどこ?」
すくなくとも、しらない人の家のにわなんかじゃない。
だって……そらがいちめん、むらさきいろなんだよ。
ときどき、ものすごい音をたてて青いイナズマがはしっている。
じめんは先にすすむにつれてほそくなり、ずっととおくまでつづいているみたい。
そのほそいみちの先には、ゲームのなかでしかみたことのないような、おそろしげなおしろがある。
「ここはね、まおうのしろ!
ほんとうは、すごーく長いめいろをぬけないといけないんだけれど、今はちかみちしちゃった」
いたずらっぽくいわれてもなぁ。
むらさきいろのそらには、コウモリみたいななにかがとんでいるのがみえる。
ここは、じかんがとまっていないんじゃないかな。
「それじゃ、いそいでたいまのけんをとってこよう!」
ふあんでいっぱいなぼくのことなど、おかまいなし。
ローヴァはげんきいっぱいに右手を上につきあげると、スキップしながらほそいみちにすすみはじめた。
もういちどいうけれど、そのさきにあるのはまおうのしろだ。
はじめのうち、ふつうのどうろくらいあったみちはば。
今はなんと、かたはばくらい。
すこしでも足をふみはずしたら、ガケからまっさかさまだ。
おそるおそる下をみてみると……そこのみえない、すみをながしたようなまっくろいやみがひろがっている。
それなのに、それなのにだよ!
ローヴァときたら、スキップをやめないんだ。
それどころか、たまにクルッと回ってこっちをむく。
そして、こわさに足をガクガクさせているぼくにむかって、りょうてをヒラヒラさせるんだ。
そのおかげで、なんとか前にすすめるわけではあるけれど。
もっとすすむと、こんどは上からさけびごえがきこえてきた。
しょうぼうしゃのサイレンを、もっと大きくして、ヒビわれたような音にしたこえ。
とんでもなくうるさくて、そのたびにあたまがわれそうになる。
バランスをとるため左右にのばしていた両手で、思わず耳をおさえたくなるほど。
でもそんなことをすると、たちまちバランスをくずしてガケから落っこちそうになる。
そらをとんでいる、コウモリみたいなやつだ。
よくみれば、つばさのほかに長い手も足もあって、かいぶつだとわかる。
コウモリなら、手がつばさになっているから、ほかに長い手があってはおかしいんだ。
かいぶつは、また耳がばくはつしそうに大きなこえでさけぶと、あたまを下にむけてつばさをたたんだ。
ものすごいはやさで、ぼくにせまってくる!
こんなにほそいみちの上では、うまくよけられない。
かいぶつにぶつかってこられたら、ガケからおちておしまいだ。
ぼくはこわさのあまり、足がうごかなくなってしまった。
「たすけて、ローヴァ!」
「もっちろん! ……えいっ!」
こんなときに? こんなときだからこそ?
ローヴァはげんきにはずんだこえでへんじをして、人さしゆびをかいぶつにむけた。
あっ!
かいぶつはそのままの大きさの、きょだいなポップコーンになる。
ぼくにせまってくるいきおいは、ぜんぜんたいしたことなくなった。
それでもぼくのうでにぶつかったけれど、そのままはねかえされてガケにおちていく。
もちろんぼくはぶじた。
「ローヴァ、すごいね!」
「魔女だからね!」
やっぱり、魔女なんだ!
ローヴァが人さしゆびをそらにむけたまま、おどるようにあるきだす。
かいぶつたちはこまったように、そらをグルグルまわるだけになった。
ふむふむ、ポップコーンにはなりたくないようだね。
おかげでぼくは、ガケからおちないようにだけきをつけながら、ほそいみちをわたりきることができた。
まおうのしろは、目のまえだ。
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