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6.ついに起こった最悪の展開
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その言葉にハッとするのと、地袋のスキマが誰もいないのにスルスル開きはじめてドキッとするのは同時だった。
だから声なんて出なかった。
地袋が全開になって、もうスキマとは呼べない。
そこからあの煙が外へ流れだした。
ぼくでもドクでもなく、ケンだけに向かって。
「ま、マジかよ……」
ケンは腰が抜けたみたいに足をモゾモゾ動かしてから、ポケットから紙切れを取り出した。
肝試しのふうとうに入っていた紙だ。
のろわれそうな人は持っておくといいらしい、お助けアイテムみたいだけれど……ぼくの見間違いでなければ、煙はその紙に向かって進んでいるように見えた。
「ケン、それを遠くに投げるんだ」
「ええっ? で、でも……」
「この煙、その紙をねらっているぞ!」
ケンはぎょっとした顔をしつつも、紙をできるだけ高く持ち上げてみた。
すると思ったとおり、煙は紙に吸い寄せられるようにして、すいと上へと持ち上がっていくじゃないか。
「うえぇぇえ!」
泣きそうな声でわめきながら、ケンは紙を遠くへ投げすてようとする。
でもヒラヒラしているから思ったようには飛ばず、自分の布団の上に落ちてしまった。
ケンは何度も紙を投げ捨てようとしたけれど、そのたびに紙は押し戻されるようにして返ってくる。
「ケン、早く! 急いで!」
ケンは半狂乱になって紙を蹴りだそうとした。
けれども煙はついに彼を飲み込んでしまったんだ。
そうかと思うと、それまでゆっくりだった動きからは想像もできないようなスピードで物入れへと吸い込まれていった。
「う、ウソだよねぇ?」
「そ……んな」
地袋のフスマが、また音もなく閉まっていく。
ぼくの隣に、ケンの姿はなかった。
煙に飲み込まれ、そのまま消えてしまったんだ。
ぼくはドクと見つめあったまま、何もいえなかった。
何が起きたのかわからなかったし、どうすればいいのかもわからなかった。
それから今度は、部屋のふすまが開いた。
立っていたのは先生じゃない。
ぼくの大声に怒って駆けつけた先生だったらどんなによかったか。
そこにいたのは、キャンプファイヤーや肝試しのときにいた、あの真っ黒の影。
それも複数。
それが直立不動でまったく動かないまま、すべるようにしてぼくらに迫ってきた。
怖い怖い怖い。
バグったゲームを見ているようだった。
ぼくもドクも、まるで金しばりにあったように身動きができなかった。
ぼくらは、黒い影に捕まった。
だから声なんて出なかった。
地袋が全開になって、もうスキマとは呼べない。
そこからあの煙が外へ流れだした。
ぼくでもドクでもなく、ケンだけに向かって。
「ま、マジかよ……」
ケンは腰が抜けたみたいに足をモゾモゾ動かしてから、ポケットから紙切れを取り出した。
肝試しのふうとうに入っていた紙だ。
のろわれそうな人は持っておくといいらしい、お助けアイテムみたいだけれど……ぼくの見間違いでなければ、煙はその紙に向かって進んでいるように見えた。
「ケン、それを遠くに投げるんだ」
「ええっ? で、でも……」
「この煙、その紙をねらっているぞ!」
ケンはぎょっとした顔をしつつも、紙をできるだけ高く持ち上げてみた。
すると思ったとおり、煙は紙に吸い寄せられるようにして、すいと上へと持ち上がっていくじゃないか。
「うえぇぇえ!」
泣きそうな声でわめきながら、ケンは紙を遠くへ投げすてようとする。
でもヒラヒラしているから思ったようには飛ばず、自分の布団の上に落ちてしまった。
ケンは何度も紙を投げ捨てようとしたけれど、そのたびに紙は押し戻されるようにして返ってくる。
「ケン、早く! 急いで!」
ケンは半狂乱になって紙を蹴りだそうとした。
けれども煙はついに彼を飲み込んでしまったんだ。
そうかと思うと、それまでゆっくりだった動きからは想像もできないようなスピードで物入れへと吸い込まれていった。
「う、ウソだよねぇ?」
「そ……んな」
地袋のフスマが、また音もなく閉まっていく。
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煙に飲み込まれ、そのまま消えてしまったんだ。
ぼくはドクと見つめあったまま、何もいえなかった。
何が起きたのかわからなかったし、どうすればいいのかもわからなかった。
それから今度は、部屋のふすまが開いた。
立っていたのは先生じゃない。
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そこにいたのは、キャンプファイヤーや肝試しのときにいた、あの真っ黒の影。
それも複数。
それが直立不動でまったく動かないまま、すべるようにしてぼくらに迫ってきた。
怖い怖い怖い。
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ぼくもドクも、まるで金しばりにあったように身動きができなかった。
ぼくらは、黒い影に捕まった。
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