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1.旅立ちの朝
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そうそう、ぜったいに忘れるわけにはいかないのが……食料つまり、おやつだよね!
みんなは遠足のとき、先生から「おやつは三百円まで」というナゾの命令が下されなかった?
簡単に三百円って言ってくれるけれど、消費税もあるから計算が大変なんだよね。
だから昨日、スーパーのおかしコーナーをグルグルしながらなやんでいた。
そこにサツキがぐうぜん通りかかったんだ。
サツキっていうのは、ぼくと同じクラスの女の子。
けっこうキツいところがあって、男子からも女子からも怖がられている。
でも間違ったことはいわないし、ヘンなところで意見が合ったりもするんだ。
だから女子のなかでは、まあまあ話すほうかな。
それに『ドラゴン・ブレイド』仲間でもあるし、林間学校の行動班がいっしょだったりする。
で、サツキはぼくのところまで来ると、いきなりこう切りだしたんだ。
「好きなおかしをたくさん持っていける、とっておきの方法があるんだけど、協力しない?」って。
いいかげん、三百円におさめる計算をするのにもつかれていたから、話をきいてみることにしたんだ。
その結果……ぼくのリュックには、駄菓子のつめ合わせセットが3パック分もつめこまれることになった。
えーと……だまされていないよね?
たしかに一セットに入っているおかしの数は、ひとつずつ買っていたら百円をオーバーする量で、かなりお得なのはわかる。
ただ、中身は決まっていて選べないから、好きじゃないものも入っているわけ。
ぼく、ラムネみたいなすっぱいおかし、あまり得意じゃないんだよね。
あーあ、こんなことならおとなしくポテチを3つ買っておけばよかった……って、今はちょっと思っていたりする。
「カズキ、お待たせー!」
お母さんがスキップでやってきて、リュックの一番上に弁当を置いた。
これで、すべての準備が完了した。
いよいよ冒険の旅が始まる!
「それじゃ、行ってきます。
おみやげ楽しみにしてて!」
「はいはい、気をつけて行ってくるのよ。
先生のおっしゃることをよく聞いてね」
「はーい」
ううん……伝説のユウシャの旅立ちみたいにならなくて、あまりカッコがつかないな。
お母さんに大きなリュックを背負うのを手伝ってもらって、ぼくは出発した。
家の中で練習のために何回か背負ってみたけれど、やっぱり重いや、このリュック。
大きさもあってバランスを取るのがむずかしいから、もし少しでもつまずいたら、いつもみたいにふんばれずにそのままコケてしまいそう。
これは通いなれた道と油断せず、いつもより気をつけて歩かないとね。
最初の目的地は、集合場所になっている学校のグラウンドだ。
学校まであと半分くらいのところで、横の道から大きなリュックが出てきて、ぼくの前を歩きはじめた。
体が小さいからすがたがほとんど見えず、リュックに足が生えているみたいに見える。
顔はまったく見えなかったけれど、リュックについているドラゴンのキーホルダーに見覚えがあったので声をかけてみる。
「おーい、ドク」
すると、前を歩くリュックは急に止まろうとしたものだから大きくバランスをくずし、そのまま前につんのめりそうになった。
「うわっ、大丈夫?」
あわててリュックをつかんでひっぱり、何とか転ばずにふみとどまれた。
ぼくにリュックをつかまれた小がらな人物は、小きざみに足ぶみしながら少しずつ向きをかえてこっちを向いた。
「やあ、カズキか。きぐうだねぇ」
「やっぱドクだったか。いよいよだな」
こいつは体は小さいけれど物知りな、ぼくの親友。
小二までは「マメはかせ」と呼ばれていたけれど、小三になったころにテレビでやっていた映画で、ハカセっぽいキャラがドクと呼ばれていたことから「ドク」というあだ名になった。
「しかしカズキ、これはそうとうな荷物だね。重すぎてボクは学校までたどり着けるかあやしいよ……」
「しっかりしなよ、ドク。山中湖に着いたら、昼メシ後にハイキングだぞ」
「ハイキングか……先生たちは子供の体力をカダイヒョウカしているにちがいない」
ドクはときどき、大人みたいなむずかしい言葉を使う。でも大丈夫。
なんてったって、ぼくたちは親友だからね。いいたいことは、なんとなく伝わるんだ。
カダイヒョウカって、きっとアレだよね……本当よりも多めに考える、みたいなことだと思う。
それからぼくとドクはいつもどおり、『ドラゴン・オデッセイ』や昨日テレビでやっていた怪談特番の話をしながら学校に向かった。
学校に着くだいぶ手前で、ぼくらは今日がいつもとはちがう日なんだと思い知る。
学校の敷地を囲むコンクリートのカベにそって、大きな観光バスが五台も並んでいたんだ。
予定では、グラウンドに集合して出席をとったら、クラスごとにこのバスに乗りこんで山中湖へと出発する。
ドクに合わせてゆっくり歩いていたから、ぼくらがグラウンドに着いたのはクラスで最後のほうだった。
担任の石原先生にあいさつをして、今日のために作った行動班で固まる。
行動班っていうのは、林間学校のあいだいつもいっしょに行動するグループだ。
ぼくはもちろんドクと同じ班。
メンバーはほかに、さっきも話したサツキと、その友だちのユリコ、それから変わり者として有名なケンの合計五人。
ほかの三人がしゃがんで出発を待っている所へ、ぼくとドクも合流した。
ぼくらはクラスで、はっきりいうと浮いているグループなんだ。
べつに、いじめられているわけじゃないよ。
ただ、ぼくらは人気のアイドルとか動画配信者にあまり興味がないから、ほかのみんなとちょっと話が合わないんだよね。
ゲームをするにしても、学校ではやっているスマートフォンのガンシューティングじゃなくて、家のゲーム機でオンライン協力プレイするゲームだからさ。
班でユリだけはゲームをまったくしないんだけれど、サツキとはようちえんからの友だちだから、ぼくらと行動することが多い。
みんなは遠足のとき、先生から「おやつは三百円まで」というナゾの命令が下されなかった?
簡単に三百円って言ってくれるけれど、消費税もあるから計算が大変なんだよね。
だから昨日、スーパーのおかしコーナーをグルグルしながらなやんでいた。
そこにサツキがぐうぜん通りかかったんだ。
サツキっていうのは、ぼくと同じクラスの女の子。
けっこうキツいところがあって、男子からも女子からも怖がられている。
でも間違ったことはいわないし、ヘンなところで意見が合ったりもするんだ。
だから女子のなかでは、まあまあ話すほうかな。
それに『ドラゴン・ブレイド』仲間でもあるし、林間学校の行動班がいっしょだったりする。
で、サツキはぼくのところまで来ると、いきなりこう切りだしたんだ。
「好きなおかしをたくさん持っていける、とっておきの方法があるんだけど、協力しない?」って。
いいかげん、三百円におさめる計算をするのにもつかれていたから、話をきいてみることにしたんだ。
その結果……ぼくのリュックには、駄菓子のつめ合わせセットが3パック分もつめこまれることになった。
えーと……だまされていないよね?
たしかに一セットに入っているおかしの数は、ひとつずつ買っていたら百円をオーバーする量で、かなりお得なのはわかる。
ただ、中身は決まっていて選べないから、好きじゃないものも入っているわけ。
ぼく、ラムネみたいなすっぱいおかし、あまり得意じゃないんだよね。
あーあ、こんなことならおとなしくポテチを3つ買っておけばよかった……って、今はちょっと思っていたりする。
「カズキ、お待たせー!」
お母さんがスキップでやってきて、リュックの一番上に弁当を置いた。
これで、すべての準備が完了した。
いよいよ冒険の旅が始まる!
「それじゃ、行ってきます。
おみやげ楽しみにしてて!」
「はいはい、気をつけて行ってくるのよ。
先生のおっしゃることをよく聞いてね」
「はーい」
ううん……伝説のユウシャの旅立ちみたいにならなくて、あまりカッコがつかないな。
お母さんに大きなリュックを背負うのを手伝ってもらって、ぼくは出発した。
家の中で練習のために何回か背負ってみたけれど、やっぱり重いや、このリュック。
大きさもあってバランスを取るのがむずかしいから、もし少しでもつまずいたら、いつもみたいにふんばれずにそのままコケてしまいそう。
これは通いなれた道と油断せず、いつもより気をつけて歩かないとね。
最初の目的地は、集合場所になっている学校のグラウンドだ。
学校まであと半分くらいのところで、横の道から大きなリュックが出てきて、ぼくの前を歩きはじめた。
体が小さいからすがたがほとんど見えず、リュックに足が生えているみたいに見える。
顔はまったく見えなかったけれど、リュックについているドラゴンのキーホルダーに見覚えがあったので声をかけてみる。
「おーい、ドク」
すると、前を歩くリュックは急に止まろうとしたものだから大きくバランスをくずし、そのまま前につんのめりそうになった。
「うわっ、大丈夫?」
あわててリュックをつかんでひっぱり、何とか転ばずにふみとどまれた。
ぼくにリュックをつかまれた小がらな人物は、小きざみに足ぶみしながら少しずつ向きをかえてこっちを向いた。
「やあ、カズキか。きぐうだねぇ」
「やっぱドクだったか。いよいよだな」
こいつは体は小さいけれど物知りな、ぼくの親友。
小二までは「マメはかせ」と呼ばれていたけれど、小三になったころにテレビでやっていた映画で、ハカセっぽいキャラがドクと呼ばれていたことから「ドク」というあだ名になった。
「しかしカズキ、これはそうとうな荷物だね。重すぎてボクは学校までたどり着けるかあやしいよ……」
「しっかりしなよ、ドク。山中湖に着いたら、昼メシ後にハイキングだぞ」
「ハイキングか……先生たちは子供の体力をカダイヒョウカしているにちがいない」
ドクはときどき、大人みたいなむずかしい言葉を使う。でも大丈夫。
なんてったって、ぼくたちは親友だからね。いいたいことは、なんとなく伝わるんだ。
カダイヒョウカって、きっとアレだよね……本当よりも多めに考える、みたいなことだと思う。
それからぼくとドクはいつもどおり、『ドラゴン・オデッセイ』や昨日テレビでやっていた怪談特番の話をしながら学校に向かった。
学校に着くだいぶ手前で、ぼくらは今日がいつもとはちがう日なんだと思い知る。
学校の敷地を囲むコンクリートのカベにそって、大きな観光バスが五台も並んでいたんだ。
予定では、グラウンドに集合して出席をとったら、クラスごとにこのバスに乗りこんで山中湖へと出発する。
ドクに合わせてゆっくり歩いていたから、ぼくらがグラウンドに着いたのはクラスで最後のほうだった。
担任の石原先生にあいさつをして、今日のために作った行動班で固まる。
行動班っていうのは、林間学校のあいだいつもいっしょに行動するグループだ。
ぼくはもちろんドクと同じ班。
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ほかの三人がしゃがんで出発を待っている所へ、ぼくとドクも合流した。
ぼくらはクラスで、はっきりいうと浮いているグループなんだ。
べつに、いじめられているわけじゃないよ。
ただ、ぼくらは人気のアイドルとか動画配信者にあまり興味がないから、ほかのみんなとちょっと話が合わないんだよね。
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