林間学校に待ち受ける異次元のワナ

Ryo

文字の大きさ
上 下
2 / 21
1.旅立ちの朝

2

しおりを挟む
 そうそう、ぜったいに忘れるわけにはいかないのが……食料つまり、おやつだよね!
 みんなは遠足のとき、先生から「おやつは三百円まで」というナゾの命令が下されなかった?
 簡単に三百円って言ってくれるけれど、消費税もあるから計算が大変なんだよね。
 だから昨日、スーパーのおかしコーナーをグルグルしながらなやんでいた。
 そこにサツキがぐうぜん通りかかったんだ。

 サツキっていうのは、ぼくと同じクラスの女の子。
 けっこうキツいところがあって、男子からも女子からも怖がられている。
 でも間違ったことはいわないし、ヘンなところで意見が合ったりもするんだ。
 だから女子のなかでは、まあまあ話すほうかな。
 それに『ドラゴン・ブレイド』仲間でもあるし、林間学校の行動班がいっしょだったりする。

 で、サツキはぼくのところまで来ると、いきなりこう切りだしたんだ。
 「好きなおかしをたくさん持っていける、とっておきの方法があるんだけど、協力しない?」って。
 いいかげん、三百円におさめる計算をするのにもつかれていたから、話をきいてみることにしたんだ。
 その結果……ぼくのリュックには、駄菓子だがしのつめ合わせセットが3パック分もつめこまれることになった。

 えーと……だまされていないよね?
 たしかに一セットに入っているおかしの数は、ひとつずつ買っていたら百円をオーバーする量で、かなりお得なのはわかる。
 ただ、中身は決まっていて選べないから、好きじゃないものも入っているわけ。
 ぼく、ラムネみたいなすっぱいおかし、あまり得意じゃないんだよね。
 あーあ、こんなことならおとなしくポテチを3つ買っておけばよかった……って、今はちょっと思っていたりする。

「カズキ、お待たせー!」

 お母さんがスキップでやってきて、リュックの一番上に弁当を置いた。
 これで、すべての準備が完了した。
 いよいよ冒険の旅が始まる!

「それじゃ、行ってきます。
 おみやげ楽しみにしてて!」

「はいはい、気をつけて行ってくるのよ。
 先生のおっしゃることをよく聞いてね」

「はーい」

 ううん……伝説のユウシャの旅立ちみたいにならなくて、あまりカッコがつかないな。
 お母さんに大きなリュックを背負うのを手伝ってもらって、ぼくは出発した。

 家の中で練習のために何回か背負ってみたけれど、やっぱり重いや、このリュック。
 大きさもあってバランスを取るのがむずかしいから、もし少しでもつまずいたら、いつもみたいにふんばれずにそのままコケてしまいそう。
 これは通いなれた道と油断せず、いつもより気をつけて歩かないとね。
 最初の目的地は、集合場所になっている学校のグラウンドだ。

 学校まであと半分くらいのところで、横の道から大きなリュックが出てきて、ぼくの前を歩きはじめた。
 体が小さいからすがたがほとんど見えず、リュックに足が生えているみたいに見える。
 顔はまったく見えなかったけれど、リュックについているドラゴンのキーホルダーに見覚えがあったので声をかけてみる。

「おーい、ドク」

 すると、前を歩くリュックは急に止まろうとしたものだから大きくバランスをくずし、そのまま前につんのめりそうになった。

「うわっ、大丈夫?」

 あわててリュックをつかんでひっぱり、何とか転ばずにふみとどまれた。
 ぼくにリュックをつかまれた小がらな人物は、小きざみに足ぶみしながら少しずつ向きをかえてこっちを向いた。

「やあ、カズキか。きぐうだねぇ」

「やっぱドクだったか。いよいよだな」

 こいつは体は小さいけれど物知りな、ぼくの親友。
 小二までは「マメはかせ」と呼ばれていたけれど、小三になったころにテレビでやっていた映画で、ハカセっぽいキャラがドクと呼ばれていたことから「ドク」というあだ名になった。

「しかしカズキ、これはそうとうな荷物だね。重すぎてボクは学校までたどり着けるかあやしいよ……」

「しっかりしなよ、ドク。山中湖に着いたら、昼メシ後にハイキングだぞ」

「ハイキングか……先生たちは子供の体力をカダイヒョウカしているにちがいない」

 ドクはときどき、大人みたいなむずかしい言葉を使う。でも大丈夫。
 なんてったって、ぼくたちは親友だからね。いいたいことは、なんとなく伝わるんだ。
 カダイヒョウカって、きっとアレだよね……本当よりも多めに考える、みたいなことだと思う。

 それからぼくとドクはいつもどおり、『ドラゴン・オデッセイ』や昨日テレビでやっていた怪談特番の話をしながら学校に向かった。
 学校に着くだいぶ手前で、ぼくらは今日がいつもとはちがう日なんだと思い知る。
 学校の敷地を囲むコンクリートのカベにそって、大きな観光バスが五台も並んでいたんだ。
 予定では、グラウンドに集合して出席をとったら、クラスごとにこのバスに乗りこんで山中湖へと出発する。

 ドクに合わせてゆっくり歩いていたから、ぼくらがグラウンドに着いたのはクラスで最後のほうだった。
 担任の石原先生にあいさつをして、今日のために作った行動班で固まる。
 行動班っていうのは、林間学校のあいだいつもいっしょに行動するグループだ。
 ぼくはもちろんドクと同じ班。
 メンバーはほかに、さっきも話したサツキと、その友だちのユリコ、それから変わり者として有名なケンの合計五人。
 ほかの三人がしゃがんで出発を待っている所へ、ぼくとドクも合流した。

 ぼくらはクラスで、はっきりいうと浮いているグループなんだ。
 べつに、いじめられているわけじゃないよ。
 ただ、ぼくらは人気のアイドルとか動画配信者にあまり興味がないから、ほかのみんなとちょっと話が合わないんだよね。
 ゲームをするにしても、学校ではやっているスマートフォンのガンシューティングじゃなくて、家のゲーム機でオンライン協力プレイするゲームだからさ。
 班でユリだけはゲームをまったくしないんだけれど、サツキとはようちえんからの友だちだから、ぼくらと行動することが多い。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【総集編】日本昔話 パロディ短編集

Grisly
児童書・童話
❤️⭐️お願いします。  今まで発表した 日本昔ばなしの短編集を、再放送致します。 朝ドラの総集編のような物です笑 読みやすくなっているので、 ⭐️して、何度もお読み下さい。 読んだ方も、読んでない方も、 新しい発見があるはず! 是非お楽しみ下さい😄 ⭐︎登録、コメント待ってます。

絆の輪舞曲〜ロンド〜

Ⅶ.a 
児童書・童話
キャラクター構成 主人公:水谷 陽太(みずたに ようた) - 年齢:30歳 - 職業:小説家 - 性格:おっとりしていて感受性豊かだが、少々抜けているところもある。 - 背景:幼少期に両親を失い、叔母の家で育つ。小説家としては成功しているが、人付き合いが苦手。 ヒロイン:白石 瑠奈(しらいし るな) - 年齢:28歳 - 職業:刑事 - 性格:強気で頭の回転が速いが、情に厚く家族思い。 - 背景:警察一家に生まれ育ち、父親の影響で刑事の道を選ぶ。兄が失踪しており、その謎を追っている。 親友:鈴木 健太(すずき けんた) - 年齢:30歳 - 職業:弁護士 - 性格:冷静で理知的だが、友人思いの一面も持つ。 - 背景:大学時代から陽太の親友。過去に大きな挫折を経験し、そこから立ち直った経緯がある。 謎の人物:黒崎 直人(くろさき なおと) - 年齢:35歳 - 職業:実業家 - 性格:冷酷で謎めいているが、実は深い孤独を抱えている。 - 背景:成功した実業家だが、その裏には多くの謎と秘密が隠されている。瑠奈の兄の失踪にも関与している可能性がある。 水谷陽太は、小説家としての成功を手にしながらも、幼少期のトラウマと向き合う日々を送っていた。そんな彼の前に現れたのは、刑事の白石瑠奈。瑠奈は失踪した兄の行方を追う中で、陽太の小説に隠された手がかりに気付く。二人は次第に友情と信頼を深め、共に真相を探り始める。 一方で、陽太の親友で弁護士の鈴木健太もまた、過去の挫折から立ち直り、二人をサポートする。しかし、彼らの前には冷酷な実業家、黒崎直人が立ちはだかる。黒崎は自身の目的のために、様々な手段を駆使して二人を翻弄する。 サスペンスフルな展開の中で明かされる真実、そしてそれぞれの絆が試される瞬間。笑いあり、涙ありの壮大なサクセスストーリーが、読者を待っている。絆と運命に導かれた物語、「絆の輪舞曲(ロンド)」で、あなたも彼らの冒険に参加してみませんか?

【総集編】童話パロディ短編集

Grisly
児童書・童話
❤️⭐️お願いします。童話パロディ短編集

【総集編】アリとキリギリスパロディ集

Grisly
児童書・童話
❤️⭐️お願いします。 1分で読める! 各話読切 アリとキリギリスのパロディ集

王女様は美しくわらいました

トネリコ
児童書・童話
   無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。  それはそれは美しい笑みでした。  「お前程の悪女はおるまいよ」  王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。  きたいの悪女は処刑されました 解説版

お姫様の願い事

月詠世理
児童書・童話
赤子が生まれた時に母親は亡くなってしまった。赤子は実の父親から嫌われてしまう。そのため、赤子は血の繋がらない女に育てられた。 決められた期限は十年。十歳になった女の子は母親代わりに連れられて城に行くことになった。女の子の実の父親のもとへ——。女の子はさいごに何を願うのだろうか。

マサオの三輪車

よん
児童書・童話
Angel meets Boy. ゾゾとマサオと……もう一人の物語。

鎌倉西小学校ミステリー倶楽部

澤田慎梧
児童書・童話
【「鎌倉猫ヶ丘小ミステリー倶楽部」に改題して、アルファポリスきずな文庫より好評発売中!】 https://kizuna.alphapolis.co.jp/book/11230 【「第1回きずな児童書大賞」にて、「謎解きユニーク探偵賞」を受賞】 市立「鎌倉西小学校」には不思議な部活がある。その名も「ミステリー倶楽部」。なんでも、「学校の怪談」の正体を、鮮やかに解明してくれるのだとか……。 学校の中で怪奇現象を目撃したら、ぜひとも「ミステリー倶楽部」に相談することをオススメする。 案外、つまらない勘違いが原因かもしれないから。 ……本物の「お化け」や「妖怪」が出てくる前に、相談しに行こう。 ※本作品は小学校高学年以上を想定しています。作中の漢字には、ふりがなが多く振ってあります。 ※本作品はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。 ※本作品は、三人の主人公を描いた連作短編です。誰を主軸にするかで、ジャンルが少し変化します。 ※カクヨムさんにも投稿しています(初出:2020年8月1日)

処理中です...