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1.旅立ちの朝
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きみって、遠足の前の日に眠れなくなるタイプ?
ほかにも、楽しみにしているテレビゲームや本の発売日前なんかは、楽しみでコーフンしてなかなか寝られなかったりするよね。
それじゃあ、林間学校の前の日はどう?
林間学校がない学校もあるのかな。
どういうものかっていうと、山の中にある施設に1日か2日、学年全員でお泊りするんだよ。
行き先によって呼び方が変わって、海なら臨海学校、高原なら高原学校になる。
林間学校のばあいは、昼間は山をハイキングして、夜はみんなでトランプしたりハンカチ落とししたり……ほかにもイロイロ!
だから、遠足で寝られなくなるタイプならまちがいなく、さらに楽しみすぎて寝られなくなるに違いないんだ。
ぼく、残念ながらこのタイプなんだよね……。
だから林間学校前日は、放課後遊びの時間ギリギリまで全力でドッジボールしてからダッシュで家に帰り、さらに近所の公園を意味もなくかけまわって、とにかくいそがしくすごした。
ふつうは学校行事前は体力を温存しておくべきなんだろうけれどさ。
わざわざクタクタに疲れることで、すぐに寝つけるって作戦をとった。
寝不足で林間学校に行くのはイヤだったからね。
そんな努力のかいあって、ぼくは目ざまし時計が鳴る、ほんの二秒前にとび起きた。
それに気づいたかのように、大あわてで鳴ろうとする目覚まし時計の頭をポンとたたく。
フッフッフ、うんともすんとも言わせないぞ。
「やった、ぼくの勝ち!」
窓から見える空は真っ青! 雲は真っ白! 天気は絶好調で本日は晴天なり!
気温は……うん、暑すぎも寒すぎもしないちょうど良い具合。
まさに行楽日和ってやつだね。
ふとんの中でひとつ伸びをしてから、ぼくは勢いよくベッドから起き上がる。
いつになくさわやかに目がさめた。
あと五分……なんてズルズル思わずにスッキリ起きられたことなんて、今までに何回あったっけ?
ある有名なゲームの主人公は旅立ちの朝、お母さんに起こしてもらっていたんだよね。
それにくらべたら、ぼくのほうが主人公にむいているんじゃないかな、なんて。
今日は、待ちに待った特別な日。
だからまず、気合いを入れて装備を整えないとね!
ゲーム好きな人ならわかると思うけど、装備っていうのは、身につけるものをいうんだ。
いつもはTシャツにハーフパンツが定番スタイルだけれど、山の中をハイキングするにはちょっとばかり防御力が低い――つまり頼りない。
Tシャツとハーフパンツで原っぱへの遠足に行ったら、気づかないうちに手足に切り傷ができていたっけ。
たぶん、ギザギザした草や突き出た木の枝かなんかにひっかけたんだと思う。
だから今朝は、ドラゴン柄のTシャツに、ちょっとやそっとの雨なら弾いてしまえるジャンパー、厚手のジーンズという、野外活動にぴったりな服に着替えた。
このTシャツは先週お母さんと出かけたとき、今日のために買ってもらったんだ。
今ハマっているテレビゲーム『ドラゴン・ブレイド』のグッズさ!
家を出るときはさらに、赤いキャップと、いつものスニーカーもフル装備する。
これなら、どんな場所を冒険するにも不安はないからね。
ついでだから言われる前に顔をあらってからリビングに行くと、お母さんは目をまるくして「カズキ、はりきってるわね!」と、笑顔になった。
ぼくは高橋一樹、小学三年生。
特にあだ名はなくて、家族も友だちもカズキって呼んでいる。
そう、ぼくは今までにないくらいはりきっている。
運動会よりクリスマス会より、林間学校が楽しみでしょうがなかった。
去年の集団登校でに当時の三年生――つまり、今の四年生だね――から林間学校の話を聞かせてもらったときから、今日という日が待ち遠しかったんだ。
ええと……なに県だったっけ?
とにかく、富士山のほど近くにある山中湖というところへ一泊旅行に出かける。
そこではハイキングやキャンプファイヤー、キモ試しといった、たくさんのイベントが用意されているんだってさ。
考えただけでもワクワクしてくるなあ!
お母さんの作ったハムエッグを食べてライフ――つまり体力は満タン!
ぼくは出発前に最後の確認をすることにした。
玄関にドーンと置かれているのは、でっかいリュック。
ふだん使うサイズとくらべて倍以上大きい。
両サイドにも荷物が入るポケットがついていて、着がえ、おやつ、洗面具、そのほかいろいろなアイテムがつまってパンパンだ。
「林間学校のしおり」と書かれた小冊子は、なんども開いて読み直したからボロボロ。
たとえばそうだな……森にすむ生き物のページなんかはすぐに開いて読めるように、ページの端を折って目印をつけてある。
カミキリムシやクワガタ、サワガニなど、ラッキーだったら出会えるかもしれない生き物がイラストつきでしょうかいされているんだ。
このイラスト、もしかして先生がかいたのかな? けっこう上手なんだよね。
危険な生き物のページは面白いよ。
アシナガバチとか、チャドクガの幼虫なんかは「見つけても絶対にさわってはいけません!」だってさ。
もしカミキリムシやクワガタを見つけたらどうしよう。
せっかくつかまえても、最後の日には「自然に返しましょう」って言われる気がする。
連れ帰るためには、持ち物リストにはないけれど、虫かごになるような小さいハコをもって行ったほうがいいかな?
そして、そう。持ち物リスト。
服装からリュックの中身まで、林間学校の当日までに用意しなければならないたくさんの物の名前がズラズラとならんでいる。
「水筒(水かお茶)」なんて注意書きがあったり。
名前の横にはチェックマークを書き入れる四角があるんだけれど、もちろん、ひとつ残らずチェックずみ。
つまり、忘れ物はないってこと!
さらに、四角からはみ出た横っちょに、お母さんが書き入れたチェックマークまであるんだ。
そう、二人がかりで忘れ物のチェックをしたんだ。
だから持ち物についてはカンペキだと思う。
ほかにも、楽しみにしているテレビゲームや本の発売日前なんかは、楽しみでコーフンしてなかなか寝られなかったりするよね。
それじゃあ、林間学校の前の日はどう?
林間学校がない学校もあるのかな。
どういうものかっていうと、山の中にある施設に1日か2日、学年全員でお泊りするんだよ。
行き先によって呼び方が変わって、海なら臨海学校、高原なら高原学校になる。
林間学校のばあいは、昼間は山をハイキングして、夜はみんなでトランプしたりハンカチ落とししたり……ほかにもイロイロ!
だから、遠足で寝られなくなるタイプならまちがいなく、さらに楽しみすぎて寝られなくなるに違いないんだ。
ぼく、残念ながらこのタイプなんだよね……。
だから林間学校前日は、放課後遊びの時間ギリギリまで全力でドッジボールしてからダッシュで家に帰り、さらに近所の公園を意味もなくかけまわって、とにかくいそがしくすごした。
ふつうは学校行事前は体力を温存しておくべきなんだろうけれどさ。
わざわざクタクタに疲れることで、すぐに寝つけるって作戦をとった。
寝不足で林間学校に行くのはイヤだったからね。
そんな努力のかいあって、ぼくは目ざまし時計が鳴る、ほんの二秒前にとび起きた。
それに気づいたかのように、大あわてで鳴ろうとする目覚まし時計の頭をポンとたたく。
フッフッフ、うんともすんとも言わせないぞ。
「やった、ぼくの勝ち!」
窓から見える空は真っ青! 雲は真っ白! 天気は絶好調で本日は晴天なり!
気温は……うん、暑すぎも寒すぎもしないちょうど良い具合。
まさに行楽日和ってやつだね。
ふとんの中でひとつ伸びをしてから、ぼくは勢いよくベッドから起き上がる。
いつになくさわやかに目がさめた。
あと五分……なんてズルズル思わずにスッキリ起きられたことなんて、今までに何回あったっけ?
ある有名なゲームの主人公は旅立ちの朝、お母さんに起こしてもらっていたんだよね。
それにくらべたら、ぼくのほうが主人公にむいているんじゃないかな、なんて。
今日は、待ちに待った特別な日。
だからまず、気合いを入れて装備を整えないとね!
ゲーム好きな人ならわかると思うけど、装備っていうのは、身につけるものをいうんだ。
いつもはTシャツにハーフパンツが定番スタイルだけれど、山の中をハイキングするにはちょっとばかり防御力が低い――つまり頼りない。
Tシャツとハーフパンツで原っぱへの遠足に行ったら、気づかないうちに手足に切り傷ができていたっけ。
たぶん、ギザギザした草や突き出た木の枝かなんかにひっかけたんだと思う。
だから今朝は、ドラゴン柄のTシャツに、ちょっとやそっとの雨なら弾いてしまえるジャンパー、厚手のジーンズという、野外活動にぴったりな服に着替えた。
このTシャツは先週お母さんと出かけたとき、今日のために買ってもらったんだ。
今ハマっているテレビゲーム『ドラゴン・ブレイド』のグッズさ!
家を出るときはさらに、赤いキャップと、いつものスニーカーもフル装備する。
これなら、どんな場所を冒険するにも不安はないからね。
ついでだから言われる前に顔をあらってからリビングに行くと、お母さんは目をまるくして「カズキ、はりきってるわね!」と、笑顔になった。
ぼくは高橋一樹、小学三年生。
特にあだ名はなくて、家族も友だちもカズキって呼んでいる。
そう、ぼくは今までにないくらいはりきっている。
運動会よりクリスマス会より、林間学校が楽しみでしょうがなかった。
去年の集団登校でに当時の三年生――つまり、今の四年生だね――から林間学校の話を聞かせてもらったときから、今日という日が待ち遠しかったんだ。
ええと……なに県だったっけ?
とにかく、富士山のほど近くにある山中湖というところへ一泊旅行に出かける。
そこではハイキングやキャンプファイヤー、キモ試しといった、たくさんのイベントが用意されているんだってさ。
考えただけでもワクワクしてくるなあ!
お母さんの作ったハムエッグを食べてライフ――つまり体力は満タン!
ぼくは出発前に最後の確認をすることにした。
玄関にドーンと置かれているのは、でっかいリュック。
ふだん使うサイズとくらべて倍以上大きい。
両サイドにも荷物が入るポケットがついていて、着がえ、おやつ、洗面具、そのほかいろいろなアイテムがつまってパンパンだ。
「林間学校のしおり」と書かれた小冊子は、なんども開いて読み直したからボロボロ。
たとえばそうだな……森にすむ生き物のページなんかはすぐに開いて読めるように、ページの端を折って目印をつけてある。
カミキリムシやクワガタ、サワガニなど、ラッキーだったら出会えるかもしれない生き物がイラストつきでしょうかいされているんだ。
このイラスト、もしかして先生がかいたのかな? けっこう上手なんだよね。
危険な生き物のページは面白いよ。
アシナガバチとか、チャドクガの幼虫なんかは「見つけても絶対にさわってはいけません!」だってさ。
もしカミキリムシやクワガタを見つけたらどうしよう。
せっかくつかまえても、最後の日には「自然に返しましょう」って言われる気がする。
連れ帰るためには、持ち物リストにはないけれど、虫かごになるような小さいハコをもって行ったほうがいいかな?
そして、そう。持ち物リスト。
服装からリュックの中身まで、林間学校の当日までに用意しなければならないたくさんの物の名前がズラズラとならんでいる。
「水筒(水かお茶)」なんて注意書きがあったり。
名前の横にはチェックマークを書き入れる四角があるんだけれど、もちろん、ひとつ残らずチェックずみ。
つまり、忘れ物はないってこと!
さらに、四角からはみ出た横っちょに、お母さんが書き入れたチェックマークまであるんだ。
そう、二人がかりで忘れ物のチェックをしたんだ。
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