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31 発生源と侵入経路

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新型のウィルスによるインフルエンザと賢者が呼称し対策に追われてる・・・

また死者が出たという報告・・・

いかん・・・このままでは・・・

そんな焦る賢者の心を置いて国民達への感染も広がっていく・・・

効果的にウィルスを死滅させるワクチンが欲しい・・・

元々医学の知識なんてないが、スキルのおかげでなんとか実験をしていく・・・

サンプルはハルヒトの所に3人もいる・・・

体内のウィルスを採取させてもらい、薬の研究にあけくれていた。


俺は・・・フィリアン達3人の看病をしながらとりあえず店を開けてる・・・

客なんて来ないがな・・・

こうなって来ると俺のできる事なんてないわけで・・・

何故発生したのか、どこから?なんてのをインフルエンザに言っても仕方がないわけだ。

必要なのは特効薬という事になるわけだが・・・

回復魔法が役に立たない時点で神の存在を疑わしく思うな・・・


そんな中いつぞやの衛兵君が来る。

「いらっしゃいませ」

「あぁ、気付けにキツイの一杯もらおうか」

無言でショットグラスにテキーラを注ぎ、小皿に塩を少し盛りライムを切って出す

ライムを直接口に絞ってからテキーラを流し込む最後に塩をペロリと一舐めして次の杯へ

順番はともかくこんなスタイルで飲むのが本場流


飲み方まで説明してお出しするわけだが、これがまた癖になるんだよなぁ・・・

「マスターは店を開いてて大丈夫なのかい?」

「俺はいたって健康ですからね、うちの者がやられてますが・・・」

「そうですか・・・どうにかならないんでしょうかね・・・」

そう暗い顔で呟く・・・

「近隣の風土病で似たような症状を起こす病気は無いんですか?」

「俺も詳しいわけじゃないからなぁ・・・」

まぁ、普段から医療に携わってない限り知らんか・・・

そう納得する俺だが、

「その辺りにヒントがあって薬とか手に入らないですかね・・・」

「!?上の者に申告してみるわ」

テキーラ一杯だけ飲んで彼は走って出て行きました・・・

お勘定・・・貰ってませんが・・・

「まぁ、後で払いに来るだろ・・・」

その辺りは心配してない。

国民の為に思いつくことがあったのだろう、この未曽有の危機だ、気持ちはわかる。

それで動き出したのかは知る由も無いが、衛兵や冒険者に向けて、

文献を調べる者、直接向かって調べる者が緊急クエストとして公募された。

勇者達も調べるらしい・・・

そういえば・・・あいつ見てないな・・・

店内を見渡すが誰もいない・・・

ケイン、なにしてんだろ?

こんな自由奔放なところがフェアリーなんだろうが、一言くらい欲しい物だ。

「ケインは何してるんだか・・・」

「呼んだ?」

いたのかよ・・・

「最近見ないなって思ってさ」

「なんか邪魔しちゃ悪いかなって思ってさ」

確かに看病でバタバタしてたし、雰囲気も良くなかった・・・

気まずそうな表情のケインだが、口元がにやけてる・・・

こいつ・・・なんか知ってるな・・・

「ケインは今流行りの病気を知ってるのか?」

かまをかけてみる・・・期待を込めて・・・

「病気自体は知らないよ、どう見ても風邪だし~」

なるほど、確かにその通りだ・・・

更にニコニコするケイン・・・こいつは何を知っている?

「何を知ってるんだ?どうすればいい?」

「色々知ってるけど何を話せばいいかわかんない~」

すっとぼけやがったな・・・俺をからかってるのか?

「例えば・・・治す薬とか?」

「薬っていうのかなぁ~あれ?」

ふむ・・・俺が正しい質問をしないと答えないつもりか・・・

少し考える・・・

最終的に治療法を知っていると仮定・・・それが正しいかは別問題として・・・

その治療法の出所はどこだ?同じような病気に対して、この国とは違う対処をして治しているのか?

つまり、民間療法レベルの病気の治療法が伝わってる?

だんだん訳が分からなくなってきた・・・

一旦落ち着こう・・・俺はインベントリから缶コーヒーを出す。

「何か飲むの?僕にもなんか出してよ、珍しい奴」

珍しい・・・か、ペットボトルでファンタオレンジを出す・・・召喚されてから初登場だ・・・

「これならどうだ?」

そう言ってグラスに入れてケインに渡す。

「へぇ、初めて見る・・・面白いね」

そうだろうそうだろう・・・

俺は缶コーヒーを一口飲み思案する・・・

病気を治すって考え方が違うのか?

ならば・・・病気にかからない者がいる?

何故かからない?普段から何を食べている?飲んでいる?

予防で食ってる物が抗生物質なのか?

深読みしすぎか?

「ケイン、この手の風邪にかからない種族や動物っているのか?」

「うん、いるね」

ニヤリと笑う

「それってどちらさんだ?」

「森の動物達やゴブリンとかの魔物かな、人間やエルフドワーフグラスランド辺りはかかってるけど」

「フェアリーは?」

「僕ら?う~ん、風邪ひいた話は聞かないなぁ、だって抵抗値高いし」

種族的な関係による病気抵抗値か・・・そういう見方もあるのか

「病気にならない連中の共通点を知ってるな?食べ物か?」

ニコニコ笑顔のケイン

「概ね正解かな、町で暮らす人以外が共通で摂取してる物、それは岩塩だよ」

「岩塩ならこっちでも摂取してると思うが・・・違うのか?」

残念な人を見る目で俺を見る・・・

「実は岩塩は摂りすぎるとお腹を壊すってんで街では海で取れた塩ばっかりだよ」

・・・岩塩に含まれてる成分が風邪の予防になるって事か・・・

「今の話本当か?」

賢者が後ろから声をかけてくる

「え?嘘つくならもっと楽しい嘘つくけど?」

ケインらしい・・・

「とりあえず実証してくる・・・」

賢者は走って出っていった・・・忙しい奴らだ・・・

「僕的には、どこでこの病気の元が発生してどうやって入ってきたかが気になるけど?」

確かに・・・気にはなる・・・が、俺には見当もつかん!この街以外はロクに外を出歩かない引きこもりなのだ。

グラスランドの集落や先日のワイロアーナが特別なのだ・・・後は、レベリングで迷宮や森くらいか?

大体、空気感染系のウィルスの侵入経路なんて解るか!

ってか、なんで俺が悩んでるんだ?

俺が考える事はフィリアンやハンティとフェルの病気を治す事だろ・・・

こうも熱が続くと俺の方も精神的に疲れてくる・・・

「ねぇ、いい情報だったみたいだからおかわり貰ってもいい?」

・・・結果は出てないが前進したとみて1.5リットルのペットボトルを渡してやりました・・・

「やた!これって他の味は無いの?」

ありますよ・・・色々とね・・・

「病気が治まったら色々と提供するよ・・・」





数日後・・・

死者の数は増える一方で・・・死の町と化しつつあるスラム街・・・

そんな中、賢者が走り込んでくる

「ハル!三人にこれを飲ませて!多分効くはず」

うちの店員で臨床試験かよ・・・と思わなくもなかったが、藁にも縋る思いで三人に飲ませる。

いきなり全快なんて奇跡が起こるわけもなかったが、とりあえず食後には飲ませる事にして様子を見る。


ギルドの方でも緊急クエストで岩塩採集が本格的に始まったが、まだまだ品薄で、

薬の作成が追い付かないようだ。

賢者曰く

「分解の魔法と除去の魔法で作ってるから大量生産できてないんだ・・・多分含まれてるミネラルや酵素なんかが効いてるんだと思うが完全に特定できてないんだ」

との事

その出来上がった物を優先的にうちの三人に回してくれてる賢者に感謝だな・・・

熱も下がってきてるし・・・


賢者の指導の元魔術師ギルドの方でも薬が作られ始めて、少しずつ薬が出回り始めると沈静化し始めた・・・


そして、数日後

元気になったフィリアン、ハンティ、フェル

休んでたのは10日くらいか?

どうにか落ち着いたようだ。病み上がりだからと無理はさせないように注意深く見守る。

食欲も出てきたようで、リクエストされたクリームシチューを怒涛の勢いで流し込む姿に安堵した。

「もう大丈夫みたいだな、安心したよ」

「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」

「気にするな、老後は介護してもらうから・・・万倍返しで・・・」

そんな話をしていると、ケインも来る

「ハルさ~~~ん、約束の物は~~~?」

覚えてたようだな・・・

ファンタのオレンジ、グレープ、レモン、白桃を渡す。

個人的にはフルーツパンチが好きだった・・・

「とりあえずこんな所で」

「ありがと~、しばらく楽しめるよ~」

嬉しそうに飛び回る

「ん~っと、サービスで追加情報ね、そこから見える井戸に悪い気が見えるよ~」

そう言って姿が見えなくなった

井戸・・・だと?

地下水脈が汚染されてるのか?その井戸単体か?

「フェル!賢者呼んでくれ!」

そう指示を出す。


忙しそうにやってきた賢者だが、ケインからの情報を聞き青い顔ですっ飛んでいった・・・




そして・・・

他の井戸からも他と同様にウィルスに汚染された水が出た事から地下水脈そのものが汚染されていると判断される

水を使う際は煮沸消毒が義務付けられた・・・

お湯を沸かすための薪は国が負担してくれた。

これが発生源・・・

調査中の事だが、複数の井戸から瓶が見つかった。

内容物を鑑定した結果、例のウィルスを培養したゼリー状の物と判明

今は出所を探っているらしい・・・

ウィルスを開発培養する技術、動機、現在の状況から恐らく魔族だろう・・・という所が落し所になるようだ。

侵入した魔族に対して特別警戒といった状況だ。

そして徐々にこの病気騒動が治まっていった・・・



追記・・・

この騒動の最後に

ケインは連日満面のドヤ顔で色々とねだりに来る・・・

俺にねだるのは筋違いじゃないか?・・・と思わなくも無いが、今回はケインが居て助かった。

うちの子達が回復したのもケインが一役買っているのも事実。

そう思って歓待してやりましたさ!

なんか腑に落ちない俺だった・・・
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