【完結】染髪マン〜髪色で能力が変わる俺はヒーロー活動を始めました〜

仮面大将G

文字の大きさ
上 下
29 / 51
二人目のヒーロー登場!

第29話 決着!ヘナゾーメ!

しおりを挟む
 俺が走り出すと同時に、ヘナゾーメは視界から消えた。と思った瞬間、俺の目の前に現れて日本刀で斬りかかって来る。動きを予想していた俺は咄嗟に仰け反って躱した。
 あっぶねえなおい!!武器が今までの冗談みたいな敵とは全然違って、殺傷力の高い日本刀を使ってるから怖さが段違いだ。


「ちょこまかと小賢しいねえ。さっさと殺されてくれればいいものを」


「そんなサクッとやられて堪るか!」


 軽口で返しながらも内心焦る俺。スピードと殺意が今までの敵と大きく違う。明確に俺を殺しにかかっているのを肌で感じるな。銀子はこんな敵とどうやって渡り合ったのだろうか。

 とりあえずこの劇場で俺が有利に戦うには、染髪マンの能力を最大限使うしか無い。


「まずはこれだ!凍れ!」


 俺はステージを凍らせ、スケートリンクのようにする。これでヘナゾーメの動きも制限されたはずだ。


「小癪な真似を……!」


「バラバラにされるのは勘弁なんでな。俺に有利な状況を作らせて貰ったぜ!」


 ヘナゾーメは動こうとする度に足を取られ、バランスを崩しかけている。対して俺は足の裏にブレードを出し、スケートの要領で移動できる。かなり有利な状況を作り出せたぞ。


「これぐらい、どうってことはないねえ。どうせあんたは私に近づかないと攻撃できない。近づいて来た瞬間叩き斬ってやるよ」


「やってみろ!その瞬間俺がハンマーをぶち込む!」


 とは言ったものの、剣の達人であるヘナゾーメに攻撃のスピードで勝てるとは思えない。かと言って俺の武器はハンマー。近づかないと攻撃はできない。さあどうする?


「どうしたんだい?さっさとかかって来な!」


「うるせえ!今考えてんだから黙ってろ!」


 ヘナゾーメの挑発に返事をしつつ、頭をフル回転させる。どうする?どうすれば奴に遠距離から攻撃ができる?

 そんな時、ふとさっき大輔から受け取ったスプレー缶のことを思い出した。あれなんかに使えないかな?取り出してみると、スプレー缶に説明文が書いてあった。
 おい使い方書いてあんじゃねえか!ちゃんと見ろよ大輔のやつ!!

 大輔への怒りを抑えて説明文を読む。そこには『これはヘアカラースプレーです。一度だけ想像した色に髪色を変えることができます。ただし、制限時間は3分です』
 と書いてあった。
 お、これめっちゃ使えるんじゃないか?まずはあの日本刀をなんとかしないといけないから、あれを叩き折れる何か、それも遠距離から攻撃できる武器が必要だ。その条件を満たす髪色は……。


「よし!決めた!」


 俺はスプレー缶を頭の方へ持っていき、ボタンを押した。すると俺の髪色は一瞬にして鮮やかな緑色へと変化する。同時に俺の体を覆っている装甲も緑色へと変わった。


「緑の染髪マン……?何をしようっていうんだい?」


「見てりゃ分かるよ!大人しくそこで待ってろ!」


 俺がベルトに手をやると、ベルトが光り、装甲と同じく緑色の銃が出現した。予想通り!ちゃんと変化した髪色の能力が使えるってわけだな!
 なら話は早い。さっさとあの日本刀を叩き折ってやらないと!

 俺は銃に力を込め始める。すると周囲の空気が渦巻き、銃口へと集まっていくのが分かった。
 数秒してから狙いを定め、引き金を引いた。


「ハリケーンブラストおおおお!!」


 物凄い勢いの竜巻がヘナゾーメの方へ向かっていく。ヘナゾーメは咄嗟に躱そうとするも、凍った地面に足を取られて転倒してしまう。計算通り!転んだヘナゾーメが握る日本刀に竜巻が直撃した。竜巻に巻き込まれ、ヘナゾーメの体は宙に舞い上がる。それでもヘナゾーメの手は日本刀を離さない。

 そうだろうな。ここまでの執念を持って計画的に俺を殺そうとした奴だ。そう簡単に得物を手放すはずがない。
 そこまで想定して、俺は次の手を打っていた。再び引き金を引くと、荒れる空気の中でヘナゾーメの右手が切り落とされる。


「ぐああっ!!な、何をしたんだい!?」


「お前に教える必要は無い!さあ、これで武器は無くなったぜ?」


 俺が発射したのは鎌鼬。真空の刃がヘナゾーメの手を切り落としたんだ。流石の達人も手が無けりゃ刀の使いようが無い。後はトドメを刺すだけだ!


「痛いねえ……。この恨み、どうしてくれようか!!」


 ヘナゾーメはそう言うと緑色のドロっとした物体を発射してきた。なんだこれ!?いや分かってる。ヘナなんだよな。
 さっき大輔が櫛にかかっていたヘナに触れた時、その指先は黒く染まっていた。あのまま行くと大輔はどうなっていたか分からない。とりあえず避けるしか無い!

 俺が飛んできたヘナを躱すと、さらに続いて大量のヘナが飛んでくる。視界一面ヘナだ。
 いや多いって!!こんなもんどうやって避ければいいんだよ!?


「染髪マン!そのヘナに髪が触れると黒く染まっちゃうの!変身能力が奪われちゃう!」


 カラーリングガールが俺に向かって叫ぶ。なるほど、こいつは攻撃というより俺の能力を奪いに来てるんだな。それが分かっても対処のしようが無いんだけども。
 飛んで来るヘナから背走で逃げながら、俺は対処法を考える。が、飛んで来るヘナの量は増えるばかりだ。

 上から降ってくるヘナを髪にかからないよう躱すのは至難の業。どうにかしてヘナの染める力を無くせれば良いんだけど……。

 そうこうしているうちに俺の髪はアイスブルーに戻っていった。しまった!3分経ったのか!マズいぞ、これで遠距離攻撃はできなくなった。どうする!?


「聞いて染髪マン!ヘナは熱に弱いの!90℃以上になると、染料としての力を失うよ!」


「黙ってな小娘!余計なことを……!」


 ヘナゾーメが恨み節を吐くが、時既に遅し。対処法が熱なら、アイスブルーでも勝ち目がある!

 俺は周囲の温度を一気に90℃まで上げた。凍っていたステージから湯気が上がってくる。これでヘナゾーメは自由に動けるようになったが、同時にヘナの染める力も無くなったはずだ!

 俺はそのままヘナゾーメに突っ込んで行く。奴は左手で刀を拾おうと動き出すが、俺の方が速い。

 俺はハンマーの温度を思いっきり上げ、真っ赤になるまで熱した。
 そのハンマーをヘナゾーメの頭に向かって全力で振り下ろす。


「これで終わりだ!!ヒートクラッシュ!!!」


 落ちていた日本刀を間一髪で拾い上げたヘナゾーメは、俺のハンマーを刀で受けようとした。だがその勢いは刀の強度を遥かに上回っている。更に熱してあることで刀の強度を下げ、刀を叩き折りながらヘナゾーメの頭まで到達した。


「ぎゃああああああ!!!!」


 ヘナゾーメは地面に叩き込まれ、半身がステージに埋まってしまった。
 その体はだんだんとひび割れて行き、抵抗しようとする動きは完全に止まった。


「くっ……ここまでかねえ……。悔しいねえ、私の可愛い怪人たちを殺してきた染髪マンに制裁をと思ったんだけどねえ……」


「制裁を下されたのはお前の方だったな、ヘナゾーメ。俺はクロゾーメ軍団には屈しない!」


 ひび割れて行く体を見ながら、ヘナゾーメは再び口を開いた。


「いい気になってるあんたに良いことを教えておいてあげようねえ。あんたが倒したと思ってるヘアマニキュアゾーメだけどねえ、生きてるよ。今も虎視眈々とあんたとの再戦を狙っているよ」


「何だと……!?」


 ヘアマニキュアゾーメが生きてるだって!?あの時俺は確実にぶっ飛ばしたはずだ。急所を外したのか……?
 何にせよ、危険な敵がまだいるということだ。ヘナゾーメを倒したからと言って油断はできなくなったな。


「ヘアマニキュアゾーメは、どこにいるんだ……?」


「それは私も知らないねえ。どこかで元気にやってるんじゃないかねえ」


 嘘つけこいつ、絶対知ってんだろ。適当なことを言いやがって……。流石ベテラン幹部、どこからヘアマニキュアゾーメが襲って来るか分からない状況を作ってから死ぬつもりだ。


「おや、そろそろタイムリミットのようだねえ。さらばだよ染髪マン!あんたは必ず我がクロゾーメ軍団が殺してみせるからねえ!」


 そう言い残してヘナゾーメは爆散。ステージ上には枯れた葉っぱのようなものがパラパラと落ちてきていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ
ファンタジー
現実世界で普通の高校生として過ごしていた「白崎レナ」は謎の空間の亀裂に飲み込まれ、狭間の世界と呼ばれる空間に移動していた。彼はそこで世界の「管理者」と名乗る女性と出会い、彼女と何時でも交信できる能力を授かり、異世界に転生される。 次に彼が意識を取り戻した時には見知らぬ女性と男性が激しく口論しており、会話の内容から自分達から誕生した赤子は呪われた子供であり、王位を継ぐ権利はないと男性が怒鳴り散らしている事を知る。そして子供というのが自分自身である事にレナは気付き、彼は母親と供に追い出された。 時は流れ、成長したレナは自分がこの世界では不遇職として扱われている「支援魔術師」と「錬金術師」の職業を習得している事が判明し、更に彼は一般的には扱われていないスキルばかり習得してしまう。多くの人間から見下され、実の姉弟からも馬鹿にされてしまうが、彼は決して挫けずに自分の能力を信じて生き抜く―― ――後にレナは自分の得た職業とスキルの真の力を「世界の管理者」を名乗る女性のアイリスに伝えられ、自分を見下していた人間から逆に見上げられる立場になる事を彼は知らない。 ※タイトルを変更しました。(旧題:不遇職に役立たずスキルと馬鹿にされましたが、実際はそれほど悪くはありません)。書籍化に伴い、一部の話を取り下げました。また、近い内に大幅な取り下げが行われます。 ※11月22日に第一巻が発売されます!!また、書籍版では主人公の名前が「レナ」→「レイト」に変更しています。

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

処理中です...