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邂逅!クロゾーメ軍団!
第1話 初染め!ブロンドヘアー!
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大学デビュー。なんともむず痒い響きだ。
高校まで冴えなかったのに大学生になって急に髪型や服装に気を使い出し、「ダルい」「眠い」などと言い出したイタい人間を指す。
一般的には良くないイメージで語られる言葉だが、俺は今日、それをしに行く。
俺の名前は染谷柊吾。来週からO県Y市のK大学に通う18歳だ。
高校まで表面上は真面目に過ごしてきた。テストではそれなりに良い点数をキープし、模試でも頭が固い両親に怒られない程度に勉強して、ある程度の成績を保っていた。
部活は特に強くない野球部に所属し、県大会で敗れたものの3年間最後までやり切った。
そんな俺はこの地域で四大私立大学と呼ばれるうちの一角、K大学に合格。
地元のK県の隣に位置するO県にあるK大学に入学が決まったことで、3日前に一人暮らしを始めた。
引越しの荷解きも大体終わり余裕が出てきた俺は、今日遂に今まで貫いてきたバージンヘアを卒業することに決めたのだ。
どうせなら思い切って金髪にしてやる。意気込んだ俺はその勢いで昨日の夜美容室を予約。朝イチで美容室に向かっているというわけだ。
辿り着いた小さな美容室には、『HERO's HAIR』と書かれた看板が控えめに掲げられている。
初めての美容室。ちょっと早く着いちゃったな。もう入って良いのかな。
ええいままよ!入ってしまえ!
思い切ってドアを開けると、中にはふかふかしてそうな椅子が一つとその正面に鏡が一つ。
あの椅子はスタイリングチェアというらしい。初めての美容室だからとりあえず調べられることは調べてきた。役に立つのかは知らんけど。
「いらっしゃい。えーっと、八名で予約の大河原さん?」
「いや違いますよ!!なんで団体の予約入ってるんですか!一名で予約の染谷です!」
「冗談よ、冗談。さ、そこの椅子に座って」
いきなり冗談をかましてきたのはレジ後ろに座っていたお姉さん。紫のインナーが入った金髪で、すらっとした美人だがどこかミステリアスな雰囲気がある。
年齢はどれくらいだろうか?美容師って年齢不詳なイメージがあるけど、例に漏れずこの人もそうだ。
俺が案内された一つしかないスタイリングチェアに座ると、お姉さんが再び話しかけてくる。
「染谷柊吾くんね。私は今日担当する金森蘭よ。て言っても、私一人しかいないんだけどね」
金森さんはそう言うと横に丸椅子を持ってきて座る。
「さてと、今日初めてよね?初めての人にはカウンセリングから始めてるの。施術の前にいくつか質問させてね」
うん、これも調べてきた。初めての美容師に行くとアンケートのような紙に記入させられたり、このようにカウンセリングがあるらしい。髪質とか普段のヘアケアを聞かれたりするそうだ。
金森さんも俺が事前に調べた通り、髪質やヘアケアについて質問してくる。俺は黒髪のバージンヘアだが、少し髪にくせがある。天然パーマというやつだ。
高校まではそれがコンプレックスで、なるべくさらさらになるようヘアケアには気をつけてきた。
「ふーん、バージンヘアでくせっ毛ね。ケアもしっかりしてて髪質は良好。で、大学デビューしたくて金髪にしに来たのね」
「そうです!よろしくお願いします!」
「OK、任せて。でも最後に一ついいかしら?君、ヒーローに興味はある?」
「……はい?」
「ああちょっと聞き方が悪かったわね。うちはちょっとしたボランティアのお手伝いをしているの。すこーし体力を使うボランティアなんだけど。君がもし興味があるなら、そのボランティアを紹介しようかと思ってね」
ボランティア、か。正直なことを言うと、俺は大学に入ったらボランティアサークルに入るつもりでいた。野球はもうやり切ったし、就活に有利なボランティアでもやろうと思ったからだ。
大学のサークルでやるより、こういう企業がやってるボランティアの方が評価上がるかもな。最初に聞かれたヒーローがどうのっていうのが少し気になるけど、まあボランティアする人もある意味ヒーローみたいなもんだ。ちょっと大袈裟に言ったんだろう。
「はい!ボランティアには興味があります!高校まで野球部だったので、体力にも自信があります!」
「あらいいわね。なら紹介してあげるわ。じゃ、ボランティア用に特別な施術をさせてもらうわね」
金森さんはそう言うと施術を始めた。特別な施術?なんだろう。まあなんでも良いけどドキドキだ。ていうかそもそも俺、金髪似合うのかな。今になって心配になってきた。
そして二時間ほど経ち、俺の頭は見事な金髪になっていた。
「おお……おお!!」
「どう?気に入ってもらえたかしら?」
「最高です金森さん!なんだか強くなった気がします!!」
金髪になった自分を見るとなんだか感動するな。力が湧いてくるような気がするよ。
初めてのブリーチなので少しオレンジ味が残っていてアプリコットのような色になっているが、十分金髪に見える色だ。
「ありがとうございます!!お代はいくらですか?」
「ああ、お代は結構よ。ボランティアに参加してもらうから。その代わり、渡すものがあるの」
金森さんはレジの後ろから櫛を取り出した。
「これはボランティアをする時に使う道具。その時が来たら使いなさい」
「え?でもこれ櫛ですよね?どうやってボランティアに使うんです?」
「その時が来れば分かるわ。もしその時が来たら、一回その櫛で髪を梳かしてみなさい。そうすれば使い方は分かると思うわ」
そう言うと金森さんは俺の上着を手に取り、明らかに帰らせようとしてくる。
「ちょ、ちょっと待ってください!使い方もよく分からないし、ボランティアもちゃんと紹介されてないです!」
「ああ、それもその時が来れば分かるわ。その時が来たら、染髪マンって名乗ってね。それじゃ、頑張って。またのご利用をお待ちしてます」
背中を押され、俺は店を出された。その時その時ってどの時だよ?本当に分かるのかな?ていうか染髪マンってなんだよ?
まあいいや、とりあえずタダで金髪にしてもらえたし、それだけでも良しとしよう。せっかくお金も浮いたし、このまま服でも買いに行くかな。
俺は美容室を出たその足で服屋に向かう。
「きゃあああああああ!!!」
数分歩いていると、突然何人かの悲鳴が聞こえてきた。なんだ!?何があった!?
走って悲鳴の方へ向かう。すると全身黒タイツのような人影が数人と、なんだあれ?シャンプー?みたいなボトルの怪人が人を襲っているのが見えた。
「なーっはっは!!俺様はクロゾーメ軍団のシャンプーゾーメ!今日はお前たちの油をこそぎ落としてやる!」
そう言うと怪人は自分の頭をプッシュし、人々にかける。すると人々から油らしきものがどんどん吸い取られ、肌がカサカサになっていく。ってやばくないか!?なんか油以上にエネルギーみたいなのが吸い取られて、カサカサどころかだんだん干からびていってるような……。
「お?そこにも人間がいるな?お前もカサカサにしてやる!!」
まずい!!俺にも気づきやがった!えーっと、逃げるしかないのか?でもあの人たちはどうすれば……。
その時、俺のポケットからさっきもらった櫛が飛び出した。え?まさか今が金森さんの言うその時?
俺は試しに櫛を掴み、髪を梳かしてみる。
すると俺の腰にちょうど櫛が入るサイズの窪みがあるベルトが出現した。
うわこれあれだ、テレビで見たことあるやつだ。これに差し込めばいいのかな?
これで姿が変わらなかったら恥ずかしいけど、とりあえやってみるか!
俺は持っている櫛を高く掲げ、叫んだ。
「変身!!」
櫛をベルトに差し込むと、俺の体の周りが光り始める。
大きなハケのようなエフェクトで俺の体に何かが塗られ、光が収まった。
下を見ると、明らかに姿が変わっている。金色の装甲が俺の体を覆い、視界もマスクのようなもので覆われている。
あれ、でもなんか頭だけすーすーするな。触ってみると、普通に髪の感触があった。
ええ!?ヘルメット無し!?まあいい。これで戦うのがボランティアってことだな!うん完全にヒーロー活動だね!何がボランティアだよ!
「なんだお前!?突然姿を変えやがって!」
「悪いが俺も知らない。でもどうやら、染髪マンっていうらしいぜ」
「センパツマン……?試合で始めから投げるピッチャーのことか?」
「野球の先発じゃねえよ!髪を染める染髪!あーもういいや、行くぜ!!」
俺はシャンプー怪人に向かって走り出した。
高校まで冴えなかったのに大学生になって急に髪型や服装に気を使い出し、「ダルい」「眠い」などと言い出したイタい人間を指す。
一般的には良くないイメージで語られる言葉だが、俺は今日、それをしに行く。
俺の名前は染谷柊吾。来週からO県Y市のK大学に通う18歳だ。
高校まで表面上は真面目に過ごしてきた。テストではそれなりに良い点数をキープし、模試でも頭が固い両親に怒られない程度に勉強して、ある程度の成績を保っていた。
部活は特に強くない野球部に所属し、県大会で敗れたものの3年間最後までやり切った。
そんな俺はこの地域で四大私立大学と呼ばれるうちの一角、K大学に合格。
地元のK県の隣に位置するO県にあるK大学に入学が決まったことで、3日前に一人暮らしを始めた。
引越しの荷解きも大体終わり余裕が出てきた俺は、今日遂に今まで貫いてきたバージンヘアを卒業することに決めたのだ。
どうせなら思い切って金髪にしてやる。意気込んだ俺はその勢いで昨日の夜美容室を予約。朝イチで美容室に向かっているというわけだ。
辿り着いた小さな美容室には、『HERO's HAIR』と書かれた看板が控えめに掲げられている。
初めての美容室。ちょっと早く着いちゃったな。もう入って良いのかな。
ええいままよ!入ってしまえ!
思い切ってドアを開けると、中にはふかふかしてそうな椅子が一つとその正面に鏡が一つ。
あの椅子はスタイリングチェアというらしい。初めての美容室だからとりあえず調べられることは調べてきた。役に立つのかは知らんけど。
「いらっしゃい。えーっと、八名で予約の大河原さん?」
「いや違いますよ!!なんで団体の予約入ってるんですか!一名で予約の染谷です!」
「冗談よ、冗談。さ、そこの椅子に座って」
いきなり冗談をかましてきたのはレジ後ろに座っていたお姉さん。紫のインナーが入った金髪で、すらっとした美人だがどこかミステリアスな雰囲気がある。
年齢はどれくらいだろうか?美容師って年齢不詳なイメージがあるけど、例に漏れずこの人もそうだ。
俺が案内された一つしかないスタイリングチェアに座ると、お姉さんが再び話しかけてくる。
「染谷柊吾くんね。私は今日担当する金森蘭よ。て言っても、私一人しかいないんだけどね」
金森さんはそう言うと横に丸椅子を持ってきて座る。
「さてと、今日初めてよね?初めての人にはカウンセリングから始めてるの。施術の前にいくつか質問させてね」
うん、これも調べてきた。初めての美容師に行くとアンケートのような紙に記入させられたり、このようにカウンセリングがあるらしい。髪質とか普段のヘアケアを聞かれたりするそうだ。
金森さんも俺が事前に調べた通り、髪質やヘアケアについて質問してくる。俺は黒髪のバージンヘアだが、少し髪にくせがある。天然パーマというやつだ。
高校まではそれがコンプレックスで、なるべくさらさらになるようヘアケアには気をつけてきた。
「ふーん、バージンヘアでくせっ毛ね。ケアもしっかりしてて髪質は良好。で、大学デビューしたくて金髪にしに来たのね」
「そうです!よろしくお願いします!」
「OK、任せて。でも最後に一ついいかしら?君、ヒーローに興味はある?」
「……はい?」
「ああちょっと聞き方が悪かったわね。うちはちょっとしたボランティアのお手伝いをしているの。すこーし体力を使うボランティアなんだけど。君がもし興味があるなら、そのボランティアを紹介しようかと思ってね」
ボランティア、か。正直なことを言うと、俺は大学に入ったらボランティアサークルに入るつもりでいた。野球はもうやり切ったし、就活に有利なボランティアでもやろうと思ったからだ。
大学のサークルでやるより、こういう企業がやってるボランティアの方が評価上がるかもな。最初に聞かれたヒーローがどうのっていうのが少し気になるけど、まあボランティアする人もある意味ヒーローみたいなもんだ。ちょっと大袈裟に言ったんだろう。
「はい!ボランティアには興味があります!高校まで野球部だったので、体力にも自信があります!」
「あらいいわね。なら紹介してあげるわ。じゃ、ボランティア用に特別な施術をさせてもらうわね」
金森さんはそう言うと施術を始めた。特別な施術?なんだろう。まあなんでも良いけどドキドキだ。ていうかそもそも俺、金髪似合うのかな。今になって心配になってきた。
そして二時間ほど経ち、俺の頭は見事な金髪になっていた。
「おお……おお!!」
「どう?気に入ってもらえたかしら?」
「最高です金森さん!なんだか強くなった気がします!!」
金髪になった自分を見るとなんだか感動するな。力が湧いてくるような気がするよ。
初めてのブリーチなので少しオレンジ味が残っていてアプリコットのような色になっているが、十分金髪に見える色だ。
「ありがとうございます!!お代はいくらですか?」
「ああ、お代は結構よ。ボランティアに参加してもらうから。その代わり、渡すものがあるの」
金森さんはレジの後ろから櫛を取り出した。
「これはボランティアをする時に使う道具。その時が来たら使いなさい」
「え?でもこれ櫛ですよね?どうやってボランティアに使うんです?」
「その時が来れば分かるわ。もしその時が来たら、一回その櫛で髪を梳かしてみなさい。そうすれば使い方は分かると思うわ」
そう言うと金森さんは俺の上着を手に取り、明らかに帰らせようとしてくる。
「ちょ、ちょっと待ってください!使い方もよく分からないし、ボランティアもちゃんと紹介されてないです!」
「ああ、それもその時が来れば分かるわ。その時が来たら、染髪マンって名乗ってね。それじゃ、頑張って。またのご利用をお待ちしてます」
背中を押され、俺は店を出された。その時その時ってどの時だよ?本当に分かるのかな?ていうか染髪マンってなんだよ?
まあいいや、とりあえずタダで金髪にしてもらえたし、それだけでも良しとしよう。せっかくお金も浮いたし、このまま服でも買いに行くかな。
俺は美容室を出たその足で服屋に向かう。
「きゃあああああああ!!!」
数分歩いていると、突然何人かの悲鳴が聞こえてきた。なんだ!?何があった!?
走って悲鳴の方へ向かう。すると全身黒タイツのような人影が数人と、なんだあれ?シャンプー?みたいなボトルの怪人が人を襲っているのが見えた。
「なーっはっは!!俺様はクロゾーメ軍団のシャンプーゾーメ!今日はお前たちの油をこそぎ落としてやる!」
そう言うと怪人は自分の頭をプッシュし、人々にかける。すると人々から油らしきものがどんどん吸い取られ、肌がカサカサになっていく。ってやばくないか!?なんか油以上にエネルギーみたいなのが吸い取られて、カサカサどころかだんだん干からびていってるような……。
「お?そこにも人間がいるな?お前もカサカサにしてやる!!」
まずい!!俺にも気づきやがった!えーっと、逃げるしかないのか?でもあの人たちはどうすれば……。
その時、俺のポケットからさっきもらった櫛が飛び出した。え?まさか今が金森さんの言うその時?
俺は試しに櫛を掴み、髪を梳かしてみる。
すると俺の腰にちょうど櫛が入るサイズの窪みがあるベルトが出現した。
うわこれあれだ、テレビで見たことあるやつだ。これに差し込めばいいのかな?
これで姿が変わらなかったら恥ずかしいけど、とりあえやってみるか!
俺は持っている櫛を高く掲げ、叫んだ。
「変身!!」
櫛をベルトに差し込むと、俺の体の周りが光り始める。
大きなハケのようなエフェクトで俺の体に何かが塗られ、光が収まった。
下を見ると、明らかに姿が変わっている。金色の装甲が俺の体を覆い、視界もマスクのようなもので覆われている。
あれ、でもなんか頭だけすーすーするな。触ってみると、普通に髪の感触があった。
ええ!?ヘルメット無し!?まあいい。これで戦うのがボランティアってことだな!うん完全にヒーロー活動だね!何がボランティアだよ!
「なんだお前!?突然姿を変えやがって!」
「悪いが俺も知らない。でもどうやら、染髪マンっていうらしいぜ」
「センパツマン……?試合で始めから投げるピッチャーのことか?」
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