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第三章 王立学校
夢の検証
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武闘祭最終日
いまいちすっきりしない頭の中のまま顔を洗い、昨日見た夢を整理していく。
ガルドが現れるのは閉会式の王の挨拶のタイミング。そこで無謀にも真正面から攻撃をしかけ、捕らえられる。
そしてその結果、反逆の罪が着せられ死刑となってしまう。
やはり、あらためて考えても、どうも引っかかる。
ガルドがあそこまで激昂しているのを初めて見た、というのもある。
そして、もし仮にこの国の王を殺すつもりならば、もっと理性的な手段を選ぶはずだ。
ましてや、あんな風に正面から堂々と、とか一番選ばなそうな方法だ。
「……はぁ」
だからといって、夢を無視することもできない。
何としても閉会式までにガルドに接触をしなければ。
でも、どうすればいい?
そもそもこんな与太話に誰が付き合ってくれる?
俺の能力が未来予知だと決まったわけではない。
俺自身、まだ半信半疑だ。
「くそ、どうするべきだ?」
「うーん……うるさいなぁ。さっきからぶつぶつと」
不満を漏らしながら、雷鳴鬼が顕現してくる。
「お前っ! いいタイミングで起きてきてくれた!」
「え、な、なんだい?」
ひとまず雷鳴鬼に俺の夢の話、そしてガルドを探す手伝いを頼む。
「……なるほど。つまり、無条件に信じて、手伝ってくれる人材が欲しい、と」
「まぁ大体そうだ。頼めるか?」
「いや、流石にボクも心までは鬼じゃないからね。そのくらいお安い御用さ」
「ありがとな! 助かる!」
事情を分かって、それでいて助けてくれる者がいると心強い。それに、今回のガルドの件は少なからず俺の秘密も関わっている気がしてならないしな。
だから下手に外部に協力を頼みずらい。もちろん、しばらく見つからなければグラントあたりにも話して頼むつもりだが。
「とにかく、時間が惜しい。手分けして探そう。もし、見つかったら俺のとこに連れてきてくれ。大体場所は分かるだろ?」
使い魔の側は主人の場所を感覚で分かるらしい。
反対に、こちらも知覚できるようにするのにはかなりの時間がかかるとのことだ。まだ使い魔との契約歴の浅い俺では、その気配を感じ取ることさえできない。
「おっけー。あ、もしかしたら戦闘になるかもだから、一応刀は持ってっときな」
「戦闘?」
「もしもの話。けど、彼は普段の感じだとそんな事しないだろ? だから用心に越したことはないと思うよ」
「そ、そうか……」
話が通じないとは全く考えていなかったが、その可能性もあるのか。
「よし、じゃあ行こうか」
俺と雷鳴鬼はガルドを探しに、広い学校の敷地に繰り出した。
▷▶▷
「くそっ、見つかる気がしねぇ!」
探し始めて一時間、未だにその姿を見れないでいる。
あの巨体だから人混みでも分かると踏んでいたのだが、そもそもここにいるのか?
ガルドも敗退をしたから、もはや出場することもない。なんなら、自室に籠っている可能性だってある。
ここは一旦寮に戻って、ガルドの部屋を訪ねるべきか?
「やぁ石動健一、そんなに急いでどうしたんだい?」
「キルバス……!」
両手に焼き鳥を持ったキルバスが声をかけてきた。
「そうだお前、ガルドを見なかったか?」
「ガルド氏かい? うーん……あ、そういえばさっき、校舎の方に歩いて行くのが見えたぞ!」
「ほんとかっ!?」
思わぬ収穫に俺の中のキルバスの株が高騰する。こいつ、なんてタイミングの良い男なんだ。
「それにしてもどうしたんだい? ガルド氏が何か?」
「あーいや、なんでもねぇ。ただ話しておきたいことがあったんだ」
「ふぅむ、そうかい? ま、こちらで見つけたら探していたと伝えておくよ」
「悪い、助かる!」
キルバスの目撃証言を確かめるべく、俺は校舎に向かう。
それにしてもなぜ校舎に?
この武闘祭の間は特に中ですることもないはずだ。
もし、用があるとすればそれは―――
その一つ浮かんだ考えを胸に、階段を駆け上がっていき、ある部屋の扉を開ける。
予想通り、空き教室の中には俺より一回り大きい男が立っていた。
「よぉ、ガルド。何でここにいるんだ?」
「イスルギ……」
以前に俺がガルドに全てを打ち明けた教室、そこにいた男はひどく冷たい口調で俺の名を呼ぶのだった。
いまいちすっきりしない頭の中のまま顔を洗い、昨日見た夢を整理していく。
ガルドが現れるのは閉会式の王の挨拶のタイミング。そこで無謀にも真正面から攻撃をしかけ、捕らえられる。
そしてその結果、反逆の罪が着せられ死刑となってしまう。
やはり、あらためて考えても、どうも引っかかる。
ガルドがあそこまで激昂しているのを初めて見た、というのもある。
そして、もし仮にこの国の王を殺すつもりならば、もっと理性的な手段を選ぶはずだ。
ましてや、あんな風に正面から堂々と、とか一番選ばなそうな方法だ。
「……はぁ」
だからといって、夢を無視することもできない。
何としても閉会式までにガルドに接触をしなければ。
でも、どうすればいい?
そもそもこんな与太話に誰が付き合ってくれる?
俺の能力が未来予知だと決まったわけではない。
俺自身、まだ半信半疑だ。
「くそ、どうするべきだ?」
「うーん……うるさいなぁ。さっきからぶつぶつと」
不満を漏らしながら、雷鳴鬼が顕現してくる。
「お前っ! いいタイミングで起きてきてくれた!」
「え、な、なんだい?」
ひとまず雷鳴鬼に俺の夢の話、そしてガルドを探す手伝いを頼む。
「……なるほど。つまり、無条件に信じて、手伝ってくれる人材が欲しい、と」
「まぁ大体そうだ。頼めるか?」
「いや、流石にボクも心までは鬼じゃないからね。そのくらいお安い御用さ」
「ありがとな! 助かる!」
事情を分かって、それでいて助けてくれる者がいると心強い。それに、今回のガルドの件は少なからず俺の秘密も関わっている気がしてならないしな。
だから下手に外部に協力を頼みずらい。もちろん、しばらく見つからなければグラントあたりにも話して頼むつもりだが。
「とにかく、時間が惜しい。手分けして探そう。もし、見つかったら俺のとこに連れてきてくれ。大体場所は分かるだろ?」
使い魔の側は主人の場所を感覚で分かるらしい。
反対に、こちらも知覚できるようにするのにはかなりの時間がかかるとのことだ。まだ使い魔との契約歴の浅い俺では、その気配を感じ取ることさえできない。
「おっけー。あ、もしかしたら戦闘になるかもだから、一応刀は持ってっときな」
「戦闘?」
「もしもの話。けど、彼は普段の感じだとそんな事しないだろ? だから用心に越したことはないと思うよ」
「そ、そうか……」
話が通じないとは全く考えていなかったが、その可能性もあるのか。
「よし、じゃあ行こうか」
俺と雷鳴鬼はガルドを探しに、広い学校の敷地に繰り出した。
▷▶▷
「くそっ、見つかる気がしねぇ!」
探し始めて一時間、未だにその姿を見れないでいる。
あの巨体だから人混みでも分かると踏んでいたのだが、そもそもここにいるのか?
ガルドも敗退をしたから、もはや出場することもない。なんなら、自室に籠っている可能性だってある。
ここは一旦寮に戻って、ガルドの部屋を訪ねるべきか?
「やぁ石動健一、そんなに急いでどうしたんだい?」
「キルバス……!」
両手に焼き鳥を持ったキルバスが声をかけてきた。
「そうだお前、ガルドを見なかったか?」
「ガルド氏かい? うーん……あ、そういえばさっき、校舎の方に歩いて行くのが見えたぞ!」
「ほんとかっ!?」
思わぬ収穫に俺の中のキルバスの株が高騰する。こいつ、なんてタイミングの良い男なんだ。
「それにしてもどうしたんだい? ガルド氏が何か?」
「あーいや、なんでもねぇ。ただ話しておきたいことがあったんだ」
「ふぅむ、そうかい? ま、こちらで見つけたら探していたと伝えておくよ」
「悪い、助かる!」
キルバスの目撃証言を確かめるべく、俺は校舎に向かう。
それにしてもなぜ校舎に?
この武闘祭の間は特に中ですることもないはずだ。
もし、用があるとすればそれは―――
その一つ浮かんだ考えを胸に、階段を駆け上がっていき、ある部屋の扉を開ける。
予想通り、空き教室の中には俺より一回り大きい男が立っていた。
「よぉ、ガルド。何でここにいるんだ?」
「イスルギ……」
以前に俺がガルドに全てを打ち明けた教室、そこにいた男はひどく冷たい口調で俺の名を呼ぶのだった。
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