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第三章 王立学校
違反行為
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次に来たところは団体戦の会場。
キリヤ達は果たして勝ち上がったのだろうか。
グラント曰く、勝算は高いらしいので期待が高まる。
のだが、映し出されている結果には‘‘違反行為により敗退‘‘という文字が書かれていた。
「どういうことだ!?」
普通に負けたのなら分かる。しかし、違反行為って何のことだ?
「やぁ、石動健一。調子はいかがかな?」
「お前……キルバス、なんでここに」
「いやはや、ここに君が来る気がしてね」
返答にゾワッとしつつも、気色の悪いセンサーの事は一度スルーし、キルバスに問いかける。
「そうだ、これ違反行為ってどういうことか知ってるか?」
「ああ、もちろんだとも。何せ、見ていたからね」
自身の眼を指差し、顔をうざいほど近づけてくる。額にデコピンを一発入れ、再度詳しく聞く。
「……それで、何があったんだ」
キルバスは顔を少し下に下げ、なにやら重大な何かが起こったことをこちらに感じさせる。
珍しくおちゃらけないキルバスと、その不気味な間に固唾を飲んで返答を待っていると、重々しく口を開き、
「……キリヤが……木人形の登録を忘れたのだ」
「は?」
「今は魔法を食らって怪我をしたので医務室にいるだろうね」
予想外も予想外。いや、ある意味では予想通りではあるが、まさかキリヤがそこまでやらかすとは思わなかった。
「あんの馬鹿、何やってんだ!?」
散々浮かれ続けて、俺もグラントもそれが油断に繋がることを懸念していたのだが、実際にやらかすなんて誰も思わないだろ。
「怪我の状態は?」
「全治一週間だそうだ。特別強い魔法を食らったという訳ではないからね」
「そっか……ならまぁ、良かったけど……」
しかし、回復魔法というものがありながら全治一週間って、まぁまぁ重症なのではないか? 命に別状はなさそうだから、その点は安心だが。
「ところで石動健一よ」
「ん、なんだ?」
「君の隣にいる美人な女性は一体誰だい?」
「あー、俺の恋人のシャロだ」
そういや、キルバスもシャロと会うのは初めてだっけか。
というか、なんなら他の人にすら紹介していないな。タイミング……というのもあるが、なんとなく他の人に会わせるのに抵抗があるのだ。
うーむ……これが独占欲という奴か。
「なるほどなるほど、君も隅に置けないなぁ、このこのっ!」
「やめろ、気持ち悪ぃ」
またもや変なキャラでこちらを小突いてくるキルバスにデコピンを入れて、俺から離れさす。
狼狽えたキルバスは一度態勢を立て直し、制服をピンと張ってシャロに視線を向け、
「お嬢さん、俺さんの名前はキルバス・クロムウェル。以後お見知りおきを」
また一転した口調で自己紹介をする。
「そんな丁寧なキャラだったか、お前……って、どうしたシャロ?」
キルバスの挨拶を前に、固まったままのシャロ。何か思い当たることがあるのか、少し顔が険しくなっている。
「え、いやその……」
「どうしたのかね、お嬢さん。俺さんの名前にでも聞き覚えがあったり?」
「家の中でお前の話題なんて出さねぇよ」
「そ、それは結構傷つくのだが……」
「で、どうしたんだ、シャロ?」
何かキルバスが俺の知らないところでやらかしたのか? と思ったりもしたのだが、
「あ、いえ。勘違いでした。すみません」
そう一言謝り、またいつもの調子に戻る。そして、例のごとくメイド服の裾を掴み、
「あらためまして、シャロと申します」
慣れた感じでキルバスへと自己紹介を済ませた。
「一応、キリヤのとこに顔出すか?」
自業自得とはいえ、やはり心配なのだが、
「いや、今はやめた方がいいと思うよ。‘‘クラスの皆に頭下げねぇと‘‘って、傷だらけの状態で暴れ回ったから、今は一時的に眠らされているのさ」
「そ、そうか……」
そういうところはなんというか、キリヤらしいと言えばらしいな。てか、暴れて眠らされるって熊みたいだな。
それならば今日のところは行かないで、明日にでもお見舞いに行けばいいか。
そろそろシャロとのデートを再開しようと思い、
「教えてくれてありがとな。そんじゃ、俺達もう行くわ」
そう言ってキルバスと別れようとするが、
「まぁまぁ、待ちたまえ」
俺の肩をガシッと掴み、キルバスは引き留めてくる。
思ったよりもその力が強くて少し驚きつつ、
「なんだよ」
「俺さんもご一緒してもいいかな?」
「駄目に決まってんだろ!」
「ふぅむ、どうしてだい?」
「これから俺とシャロはデートなんだよ! 邪魔すんじゃねぇ!」
せっかくの二人の時間なのに、どうしてコイツも連れて行かなきゃならないのだ。学校が忙しくて中々出かける機会もないし、こういう時間は大切にしたいのだが、なおもキルバスは食らいついてくる。
「と、いっているがお嬢さん、俺さん付いて行っちゃだめ?」
俺への説得は不可能だと察したのか、今度は標的をシャロに変え、キルバスはお願いしてくる。
シャロも久々のデートを楽しみにしていたから、断ると踏んでいたのだが、
「……ええ、まぁいいですよ」
少し変な間が空いた後、意外にも許可を出した。
「シャロ!?」
「ご主人様の日頃の様子を聞くいい機会ですしねぇ」
ニヤニヤとこちらに顔を向け、シャロは俺の顔を下から覗きこむ。俺としては二人でのデートを楽しみたかったのだが、シャロが良いと言うならば仕方あるまい。
「く……はぁ、分かった、いいよ」
こうして、謎にキルバス加えて、祭りに繰り出すことになった。
キリヤ達は果たして勝ち上がったのだろうか。
グラント曰く、勝算は高いらしいので期待が高まる。
のだが、映し出されている結果には‘‘違反行為により敗退‘‘という文字が書かれていた。
「どういうことだ!?」
普通に負けたのなら分かる。しかし、違反行為って何のことだ?
「やぁ、石動健一。調子はいかがかな?」
「お前……キルバス、なんでここに」
「いやはや、ここに君が来る気がしてね」
返答にゾワッとしつつも、気色の悪いセンサーの事は一度スルーし、キルバスに問いかける。
「そうだ、これ違反行為ってどういうことか知ってるか?」
「ああ、もちろんだとも。何せ、見ていたからね」
自身の眼を指差し、顔をうざいほど近づけてくる。額にデコピンを一発入れ、再度詳しく聞く。
「……それで、何があったんだ」
キルバスは顔を少し下に下げ、なにやら重大な何かが起こったことをこちらに感じさせる。
珍しくおちゃらけないキルバスと、その不気味な間に固唾を飲んで返答を待っていると、重々しく口を開き、
「……キリヤが……木人形の登録を忘れたのだ」
「は?」
「今は魔法を食らって怪我をしたので医務室にいるだろうね」
予想外も予想外。いや、ある意味では予想通りではあるが、まさかキリヤがそこまでやらかすとは思わなかった。
「あんの馬鹿、何やってんだ!?」
散々浮かれ続けて、俺もグラントもそれが油断に繋がることを懸念していたのだが、実際にやらかすなんて誰も思わないだろ。
「怪我の状態は?」
「全治一週間だそうだ。特別強い魔法を食らったという訳ではないからね」
「そっか……ならまぁ、良かったけど……」
しかし、回復魔法というものがありながら全治一週間って、まぁまぁ重症なのではないか? 命に別状はなさそうだから、その点は安心だが。
「ところで石動健一よ」
「ん、なんだ?」
「君の隣にいる美人な女性は一体誰だい?」
「あー、俺の恋人のシャロだ」
そういや、キルバスもシャロと会うのは初めてだっけか。
というか、なんなら他の人にすら紹介していないな。タイミング……というのもあるが、なんとなく他の人に会わせるのに抵抗があるのだ。
うーむ……これが独占欲という奴か。
「なるほどなるほど、君も隅に置けないなぁ、このこのっ!」
「やめろ、気持ち悪ぃ」
またもや変なキャラでこちらを小突いてくるキルバスにデコピンを入れて、俺から離れさす。
狼狽えたキルバスは一度態勢を立て直し、制服をピンと張ってシャロに視線を向け、
「お嬢さん、俺さんの名前はキルバス・クロムウェル。以後お見知りおきを」
また一転した口調で自己紹介をする。
「そんな丁寧なキャラだったか、お前……って、どうしたシャロ?」
キルバスの挨拶を前に、固まったままのシャロ。何か思い当たることがあるのか、少し顔が険しくなっている。
「え、いやその……」
「どうしたのかね、お嬢さん。俺さんの名前にでも聞き覚えがあったり?」
「家の中でお前の話題なんて出さねぇよ」
「そ、それは結構傷つくのだが……」
「で、どうしたんだ、シャロ?」
何かキルバスが俺の知らないところでやらかしたのか? と思ったりもしたのだが、
「あ、いえ。勘違いでした。すみません」
そう一言謝り、またいつもの調子に戻る。そして、例のごとくメイド服の裾を掴み、
「あらためまして、シャロと申します」
慣れた感じでキルバスへと自己紹介を済ませた。
「一応、キリヤのとこに顔出すか?」
自業自得とはいえ、やはり心配なのだが、
「いや、今はやめた方がいいと思うよ。‘‘クラスの皆に頭下げねぇと‘‘って、傷だらけの状態で暴れ回ったから、今は一時的に眠らされているのさ」
「そ、そうか……」
そういうところはなんというか、キリヤらしいと言えばらしいな。てか、暴れて眠らされるって熊みたいだな。
それならば今日のところは行かないで、明日にでもお見舞いに行けばいいか。
そろそろシャロとのデートを再開しようと思い、
「教えてくれてありがとな。そんじゃ、俺達もう行くわ」
そう言ってキルバスと別れようとするが、
「まぁまぁ、待ちたまえ」
俺の肩をガシッと掴み、キルバスは引き留めてくる。
思ったよりもその力が強くて少し驚きつつ、
「なんだよ」
「俺さんもご一緒してもいいかな?」
「駄目に決まってんだろ!」
「ふぅむ、どうしてだい?」
「これから俺とシャロはデートなんだよ! 邪魔すんじゃねぇ!」
せっかくの二人の時間なのに、どうしてコイツも連れて行かなきゃならないのだ。学校が忙しくて中々出かける機会もないし、こういう時間は大切にしたいのだが、なおもキルバスは食らいついてくる。
「と、いっているがお嬢さん、俺さん付いて行っちゃだめ?」
俺への説得は不可能だと察したのか、今度は標的をシャロに変え、キルバスはお願いしてくる。
シャロも久々のデートを楽しみにしていたから、断ると踏んでいたのだが、
「……ええ、まぁいいですよ」
少し変な間が空いた後、意外にも許可を出した。
「シャロ!?」
「ご主人様の日頃の様子を聞くいい機会ですしねぇ」
ニヤニヤとこちらに顔を向け、シャロは俺の顔を下から覗きこむ。俺としては二人でのデートを楽しみたかったのだが、シャロが良いと言うならば仕方あるまい。
「く……はぁ、分かった、いいよ」
こうして、謎にキルバス加えて、祭りに繰り出すことになった。
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