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第三章 王立学校
トウヤ
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「あれ、そういやティアと一緒じゃなかったのか?」
「先ほどまで居たのですが、試合結果を見るなり飛んで家に帰りましたよ。なんでも、祝う準備をしてくるそうです」
「そっか、そりゃ楽しみだ」
ここ数日間、ティアの料理がグレードアップしている。
もちろん、いつもめちゃくちゃ美味しい料理を作ってくれている訳だが、毎日がパーティーなのだ。
これも武闘祭のお祭り気分の影響だろうか。
「で、す、の、でぇ……夕食までデートですよぉ」
笑いかけながら腕を絡めてくるシャロ。
ティアがここにいないのは残念だが、久しぶりのデートだ。今日の残りは楽しむとしよう。
「あ、その前に俺のクラスの奴らの結果が見てぇ。行っていいか?」
「もう、しょうがないですねぇ。いいですよ、行きましょう」
行き交う人の視線を度々浴びながら、俺とシャロは個人戦の会場へと向かった。
個人戦で準々決勝に上がったガルドとトウヤは、どちらも生徒会の先輩と当たっている。そこを勝ち上れば優勝に大きく近づくことになるが、相手は手練れも手練れ、圧倒的な強者だ。
この学校の強さランクをつけるならば、三年の通り名持ち⇒四天王⇒生徒会 となる。つまり、この学校の実質的トップの人間なのだ。
生徒会と聞いたとき、最初は日本の学校と同様のものを思い浮かべていたのだが、どうやらその実態は学内の治安警察のような役割とのことだ。
揉め事を仲裁し、暴れる生徒を鎮圧する。
それが主な業務であるため、実力至上主義が取られているのだ。
なので、メンバーのほとんどを三年生が占めている。確か二年からも一人入ってるんだっけか。
ともあれ、それほどまでに強い者とあたってしまったので、いくらガルド達だとはいえ厳しい戦いになるだろう。
「お、もう出てるな」
個人戦会場の前に表示されている画面を人混みの後ろから覗きこむ。
「えーと……あぁ……」
やはり二人ともここで敗退となってしまった。でも準々決勝まであがったのだ。ベスト8に入っているだけでもすごい。
「お友達はどうでした?」
「だめだったっぽいな。くそ、俺も見たかったぜ……」
あの二人のことだ。たとえ勝てなかったとしても、かなり善戦したはずだ。それに、この学校のトップの人間の戦いにも興味がある。
結果が見えたので、次は団体戦の会場に行こうと離れかけたところで、黒髪の青年が声をかけてきた。
「石動」
「ん……おぉ、トウヤじゃん」
日本人のような顔立ちにサラサラとした黒髪のストレート、その腰に下げられている刀も相まって猶更日本人に思えてくる。
ミコシバ・トウヤ
日本語っぽくするなら、御子柴 刀也、とかだな。
ガルドに続き、俺のクラスで二番目に強い男だ。
使う魔法は光の一種類のみ。というより、使える魔法が光しかないらしい。
にも関わらず、その剣技や身のこなしで不足を補い、その強さを周りに知らしめている。
かく言う俺も、今のところ負け越しているのだ。
悔しいが、それ以上にこの男の努力量が戦いを通して伝わってきて、なので俺は結構尊敬している。
「三位に残ったらしいな」
「ああ、なんとかな。トウヤは、その……残念だったな」
「これが俺の実力ということだ。それに———」
トウヤは虚空を見つめ、何かに言い淀む。
「―――いや、何でもない。それより、隣の奴はお前の女か?」
「え、ああ」
トウヤの質問に、シャロはメイド服の裾を掴み、
「初めまして、シャロと申します」
「俺はミコシバ・トウヤだ。よろしく頼む」
「ミコシバ……もしかして、ヤクモ出身ですか?」
「ああ、そうだ。そういえば石動もヤクモだったな。前はどのあたりに住んでいたんだ?」
唐突に俺に話を振られ、一瞬脳内に空白が生まれる。
「……ガラヤの方だ」
危ない。前にフリードと組んだ設定を忘れかけていた。
下手に喋るとボロが出そうだし、あまり地元の者に突っ込んで欲しくはないのだが。
「ガラヤか……結構田舎の方なんだな」
「あはは、そうなんだよ。トウヤはどこだったんだ?」
「俺はイナバだ」
「めっちゃ栄えてるとこじゃねぇか! ん、てことはハナビと同じ中学か?」
前に聞いた話だと、ハナビは元々ヤクモの中学に通っていて、高校進学を機にこちらへと移り住んだと言っていた。
それを考えると同中の可能性は高いと思ったのだが、
「いや、その時にはすでにこの王国に来ていた。内部進学でそのままだな」
「なるほどな」
ならば、ハナビと話す時ほど気を張る必要はないな。
以前にハナビが勝手に盛り上がって、ヤクモトークをした時に生きた心地がしなかったこと思い出す。もう、あんな胃が痛くなるような思いはしたくはないな。
「そろそろ俺は行く。引き留めて悪かったな」
「え、ああ。じゃあな」
何か用でもあるのか、話そこそこにトウヤは向こうの方へと歩いていった。
「なんか淡泊な人でしたね」
「まぁな。でもクールな感じで俺は好きだぜ?」
しかも、いけ好かないタイプのクールさではなく、天然混じりのクールなので個人的に話していると楽しいのだ。
今でこそ、こうして普通に話すのだが、初めの頃は割と厚めの壁があった。最近、あちらから話しかけてくれることが増えたのが密かな喜びだったりする。
そんな関係の進歩に思いを馳せつつ、次は団体戦を見ようと思い、
「もう一か所いいか?」
「いいですよぉ。シャロの目的もだいぶ果たせたので」
「目的?」
「大したものではありませんので、お気になさらず~」
「そ、そうか……」
何か引っかかるが考えないでおこう。
周囲への身の振り方を見た感じ、大方予想はついてしまうが……。
「先ほどまで居たのですが、試合結果を見るなり飛んで家に帰りましたよ。なんでも、祝う準備をしてくるそうです」
「そっか、そりゃ楽しみだ」
ここ数日間、ティアの料理がグレードアップしている。
もちろん、いつもめちゃくちゃ美味しい料理を作ってくれている訳だが、毎日がパーティーなのだ。
これも武闘祭のお祭り気分の影響だろうか。
「で、す、の、でぇ……夕食までデートですよぉ」
笑いかけながら腕を絡めてくるシャロ。
ティアがここにいないのは残念だが、久しぶりのデートだ。今日の残りは楽しむとしよう。
「あ、その前に俺のクラスの奴らの結果が見てぇ。行っていいか?」
「もう、しょうがないですねぇ。いいですよ、行きましょう」
行き交う人の視線を度々浴びながら、俺とシャロは個人戦の会場へと向かった。
個人戦で準々決勝に上がったガルドとトウヤは、どちらも生徒会の先輩と当たっている。そこを勝ち上れば優勝に大きく近づくことになるが、相手は手練れも手練れ、圧倒的な強者だ。
この学校の強さランクをつけるならば、三年の通り名持ち⇒四天王⇒生徒会 となる。つまり、この学校の実質的トップの人間なのだ。
生徒会と聞いたとき、最初は日本の学校と同様のものを思い浮かべていたのだが、どうやらその実態は学内の治安警察のような役割とのことだ。
揉め事を仲裁し、暴れる生徒を鎮圧する。
それが主な業務であるため、実力至上主義が取られているのだ。
なので、メンバーのほとんどを三年生が占めている。確か二年からも一人入ってるんだっけか。
ともあれ、それほどまでに強い者とあたってしまったので、いくらガルド達だとはいえ厳しい戦いになるだろう。
「お、もう出てるな」
個人戦会場の前に表示されている画面を人混みの後ろから覗きこむ。
「えーと……あぁ……」
やはり二人ともここで敗退となってしまった。でも準々決勝まであがったのだ。ベスト8に入っているだけでもすごい。
「お友達はどうでした?」
「だめだったっぽいな。くそ、俺も見たかったぜ……」
あの二人のことだ。たとえ勝てなかったとしても、かなり善戦したはずだ。それに、この学校のトップの人間の戦いにも興味がある。
結果が見えたので、次は団体戦の会場に行こうと離れかけたところで、黒髪の青年が声をかけてきた。
「石動」
「ん……おぉ、トウヤじゃん」
日本人のような顔立ちにサラサラとした黒髪のストレート、その腰に下げられている刀も相まって猶更日本人に思えてくる。
ミコシバ・トウヤ
日本語っぽくするなら、御子柴 刀也、とかだな。
ガルドに続き、俺のクラスで二番目に強い男だ。
使う魔法は光の一種類のみ。というより、使える魔法が光しかないらしい。
にも関わらず、その剣技や身のこなしで不足を補い、その強さを周りに知らしめている。
かく言う俺も、今のところ負け越しているのだ。
悔しいが、それ以上にこの男の努力量が戦いを通して伝わってきて、なので俺は結構尊敬している。
「三位に残ったらしいな」
「ああ、なんとかな。トウヤは、その……残念だったな」
「これが俺の実力ということだ。それに———」
トウヤは虚空を見つめ、何かに言い淀む。
「―――いや、何でもない。それより、隣の奴はお前の女か?」
「え、ああ」
トウヤの質問に、シャロはメイド服の裾を掴み、
「初めまして、シャロと申します」
「俺はミコシバ・トウヤだ。よろしく頼む」
「ミコシバ……もしかして、ヤクモ出身ですか?」
「ああ、そうだ。そういえば石動もヤクモだったな。前はどのあたりに住んでいたんだ?」
唐突に俺に話を振られ、一瞬脳内に空白が生まれる。
「……ガラヤの方だ」
危ない。前にフリードと組んだ設定を忘れかけていた。
下手に喋るとボロが出そうだし、あまり地元の者に突っ込んで欲しくはないのだが。
「ガラヤか……結構田舎の方なんだな」
「あはは、そうなんだよ。トウヤはどこだったんだ?」
「俺はイナバだ」
「めっちゃ栄えてるとこじゃねぇか! ん、てことはハナビと同じ中学か?」
前に聞いた話だと、ハナビは元々ヤクモの中学に通っていて、高校進学を機にこちらへと移り住んだと言っていた。
それを考えると同中の可能性は高いと思ったのだが、
「いや、その時にはすでにこの王国に来ていた。内部進学でそのままだな」
「なるほどな」
ならば、ハナビと話す時ほど気を張る必要はないな。
以前にハナビが勝手に盛り上がって、ヤクモトークをした時に生きた心地がしなかったこと思い出す。もう、あんな胃が痛くなるような思いはしたくはないな。
「そろそろ俺は行く。引き留めて悪かったな」
「え、ああ。じゃあな」
何か用でもあるのか、話そこそこにトウヤは向こうの方へと歩いていった。
「なんか淡泊な人でしたね」
「まぁな。でもクールな感じで俺は好きだぜ?」
しかも、いけ好かないタイプのクールさではなく、天然混じりのクールなので個人的に話していると楽しいのだ。
今でこそ、こうして普通に話すのだが、初めの頃は割と厚めの壁があった。最近、あちらから話しかけてくれることが増えたのが密かな喜びだったりする。
そんな関係の進歩に思いを馳せつつ、次は団体戦を見ようと思い、
「もう一か所いいか?」
「いいですよぉ。シャロの目的もだいぶ果たせたので」
「目的?」
「大したものではありませんので、お気になさらず~」
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