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第三章 王立学校
実力差
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「やばすぎるだろって!」
開戦は突然、気を抜くことは一切できない乱戦が始まった。
各々が魔法を乱発し、四方八方へと飛び交う、まさにカオスな戦況だ。その弾幕の中を一直線にこちらへ向かってくる男、『金獅子』のホフマンは他の介入を一切気に留めない。
あくまで、俺との決着をつけようとしているらしいが、いい迷惑だ。
構図としては、俺対ホフマン、その他といった感じだ。しかし、向こうの注目はあの蜥蜴に乗っている男に集中しているため、流れ弾程度で済んでいる。
ただし、流れ弾といえどその脅威は俺とホフマンとでは訳が違う。なにせあちらには、固有魔法『無敵』と呼ばれる能力が備わっているのだ。
『無敵』、その攻略法は未だ不明だ。なんらかのカラクリは絶対にあるはず。もしなければ、ホフマンがこの学校の四天王として名前が上がらないのはおかしいからな。
「おヤ、その左腕……使えないのカ?」
自慢の筋肉の威力をこれでもかと見せつけながら、ホフマンは俺のだらりと下がった腕を見て訝しむ。
「生憎、持ってかれたところだ。どうだ? 俺は全力出せないから見逃すってのは」
「ノンノン。治ってからもやればいいだけサ」
なけなしの説得を如何にも脳筋な答えでばっさりと切り捨て、爽やかに笑う。
フィジカルにものを言わせて猛攻を続けるこの男を、片手で捌き切るには限度がある。今もあたらないように後退をしながら躱しているにすぎない。
「……っ!?」
考えを巡らせていると、急に電気の檻がここにいる全員を囲うように出現する。網目状に張り巡らされ、鳥かごのような形状だ。
これは恐らくリスカの魔法だ。前に一度みたことがある。というか、食らったことがある。
魔法実践の授業でぶつかった際に使ってきたのだが、その時は雷が効きにくい雷鳴鬼を盾に優位を取り続け、普通に勝利した。
でも、全く耐性が無い人にとってはかなりきついだろうな。
ちらりと彼女の方に目を向けると、どうやらあの男に挑むつもりのようだ。ラキとアメリアの二人も、同様に立ち向かっている。流石に四天王を冠する男に単身で戦いを挑むつもりはないらしい。
現状、このサバイバルの一位はアルエルだ。まずソイツを蹴落として、ポイントをこれ以上稼がせないようにするのが賢明だろう。
実質三対一だが、アルエルの表情には一切の綻びがない。むしろ、その余裕に三人が圧倒されてしまっている。
「よそ見するとハ……いけないネ」
「くっ……」
戦況把握もそこそこに、今は目の前の戦いに集中しよう。
この男の殴りが、蹴りが、掴むという動作すべてが脅威だ。強烈なストレートを真正面から受け止めたせいで、右の掌にビリビリとした感覚が走る。
「——————雷撃!」
自身を起点に無差別の雷を周囲に放出するが、
「ちっ。クソめんどくせぇ!」
その攻撃の手を緩めるには至らない。またもや発動したままの『無敵』に一切のダメージが拒絶される。わかってはいたが、こんなのをどう攻略すればいいんだ。
ホフマン相手に打開の糸口を見つけられず、歯を食いしばっていると、
「っ!? 今度はなんだ!?」
すぐ近くから聞こえる大爆発。それと共に消え去った雷の檻を見て、戦況の傾きに気が付く。
「まずは一人目だね」
囁きに釣られるようにホフマンと離れた一瞬、そちらへと目を向けると、先ほどの爆発に巻き込まれたと思われる金髪の少女が、破裂した木人形と共に地に伏していた。
爆発を起こしたと思われる蜥蜴の口には硝煙が吐き出て、誇らしげに鼻を鳴らしている。
「さ、これで二対二だ。時間がもったいないからできれば諦めてほしいんだけど……」
「はぁ? そんなことするわけないでしょ」
「でもさぁ、力量差は明確だからこれ以上やり続ける意味ってないと思うんだけどなぁ」
アルエルは悪意なく、そうこぼす。それが火に油を注ぐとは微塵も思っていないことが、その表情から読み取れる。
「あなたの態度……とても不愉快だわ」
「あれれ。僕……嫌われちゃってる?」
そんな噛み合わないやり取りに困惑しつつ、
「ま、あともう二人控えてるし、そろそろ君たちにも退場してもらおっか」
無邪気に笑い、アルエルは両手を前にして魔法を発動する。それと共に、下の蜥蜴も連動して大きく口を開き、大きな火球が作り出される。
大地が揺れ、空気が乾く。しかも、その射線上に俺とホフマンまでいる。
「お、おい! このままじゃ俺達も巻き込まれるぞ!」
「フム……だが、ワタシには問題あるまイ。君の命が尽きるまでの間、この戦いを楽しもうじゃないカ」
「うっそだろ!」
こういうタイプの人間は戦いに横槍を許さないと思ったのだが、どうやら違うらしい。
というか、このままだと俺も脱落するぞ。レインは……逃げてるかどこかに隠れているだろうから心配ないか。
無謀か、はたまた最善手か。ラキとアメリアは水魔法を二人で発動し組み合わせて、真正面から向き合う。負けず劣らずのサイズの水球が出来上がり、迎え撃とうと手を前にかざす。
両者の激突を目前に、いよいよ俺もこれまで切らなかった手札を使う決意を決め、
「来い、雷鳴鬼!」
俺の発した叫びと共に、爆音が世界を包んだ。
開戦は突然、気を抜くことは一切できない乱戦が始まった。
各々が魔法を乱発し、四方八方へと飛び交う、まさにカオスな戦況だ。その弾幕の中を一直線にこちらへ向かってくる男、『金獅子』のホフマンは他の介入を一切気に留めない。
あくまで、俺との決着をつけようとしているらしいが、いい迷惑だ。
構図としては、俺対ホフマン、その他といった感じだ。しかし、向こうの注目はあの蜥蜴に乗っている男に集中しているため、流れ弾程度で済んでいる。
ただし、流れ弾といえどその脅威は俺とホフマンとでは訳が違う。なにせあちらには、固有魔法『無敵』と呼ばれる能力が備わっているのだ。
『無敵』、その攻略法は未だ不明だ。なんらかのカラクリは絶対にあるはず。もしなければ、ホフマンがこの学校の四天王として名前が上がらないのはおかしいからな。
「おヤ、その左腕……使えないのカ?」
自慢の筋肉の威力をこれでもかと見せつけながら、ホフマンは俺のだらりと下がった腕を見て訝しむ。
「生憎、持ってかれたところだ。どうだ? 俺は全力出せないから見逃すってのは」
「ノンノン。治ってからもやればいいだけサ」
なけなしの説得を如何にも脳筋な答えでばっさりと切り捨て、爽やかに笑う。
フィジカルにものを言わせて猛攻を続けるこの男を、片手で捌き切るには限度がある。今もあたらないように後退をしながら躱しているにすぎない。
「……っ!?」
考えを巡らせていると、急に電気の檻がここにいる全員を囲うように出現する。網目状に張り巡らされ、鳥かごのような形状だ。
これは恐らくリスカの魔法だ。前に一度みたことがある。というか、食らったことがある。
魔法実践の授業でぶつかった際に使ってきたのだが、その時は雷が効きにくい雷鳴鬼を盾に優位を取り続け、普通に勝利した。
でも、全く耐性が無い人にとってはかなりきついだろうな。
ちらりと彼女の方に目を向けると、どうやらあの男に挑むつもりのようだ。ラキとアメリアの二人も、同様に立ち向かっている。流石に四天王を冠する男に単身で戦いを挑むつもりはないらしい。
現状、このサバイバルの一位はアルエルだ。まずソイツを蹴落として、ポイントをこれ以上稼がせないようにするのが賢明だろう。
実質三対一だが、アルエルの表情には一切の綻びがない。むしろ、その余裕に三人が圧倒されてしまっている。
「よそ見するとハ……いけないネ」
「くっ……」
戦況把握もそこそこに、今は目の前の戦いに集中しよう。
この男の殴りが、蹴りが、掴むという動作すべてが脅威だ。強烈なストレートを真正面から受け止めたせいで、右の掌にビリビリとした感覚が走る。
「——————雷撃!」
自身を起点に無差別の雷を周囲に放出するが、
「ちっ。クソめんどくせぇ!」
その攻撃の手を緩めるには至らない。またもや発動したままの『無敵』に一切のダメージが拒絶される。わかってはいたが、こんなのをどう攻略すればいいんだ。
ホフマン相手に打開の糸口を見つけられず、歯を食いしばっていると、
「っ!? 今度はなんだ!?」
すぐ近くから聞こえる大爆発。それと共に消え去った雷の檻を見て、戦況の傾きに気が付く。
「まずは一人目だね」
囁きに釣られるようにホフマンと離れた一瞬、そちらへと目を向けると、先ほどの爆発に巻き込まれたと思われる金髪の少女が、破裂した木人形と共に地に伏していた。
爆発を起こしたと思われる蜥蜴の口には硝煙が吐き出て、誇らしげに鼻を鳴らしている。
「さ、これで二対二だ。時間がもったいないからできれば諦めてほしいんだけど……」
「はぁ? そんなことするわけないでしょ」
「でもさぁ、力量差は明確だからこれ以上やり続ける意味ってないと思うんだけどなぁ」
アルエルは悪意なく、そうこぼす。それが火に油を注ぐとは微塵も思っていないことが、その表情から読み取れる。
「あなたの態度……とても不愉快だわ」
「あれれ。僕……嫌われちゃってる?」
そんな噛み合わないやり取りに困惑しつつ、
「ま、あともう二人控えてるし、そろそろ君たちにも退場してもらおっか」
無邪気に笑い、アルエルは両手を前にして魔法を発動する。それと共に、下の蜥蜴も連動して大きく口を開き、大きな火球が作り出される。
大地が揺れ、空気が乾く。しかも、その射線上に俺とホフマンまでいる。
「お、おい! このままじゃ俺達も巻き込まれるぞ!」
「フム……だが、ワタシには問題あるまイ。君の命が尽きるまでの間、この戦いを楽しもうじゃないカ」
「うっそだろ!」
こういうタイプの人間は戦いに横槍を許さないと思ったのだが、どうやら違うらしい。
というか、このままだと俺も脱落するぞ。レインは……逃げてるかどこかに隠れているだろうから心配ないか。
無謀か、はたまた最善手か。ラキとアメリアは水魔法を二人で発動し組み合わせて、真正面から向き合う。負けず劣らずのサイズの水球が出来上がり、迎え撃とうと手を前にかざす。
両者の激突を目前に、いよいよ俺もこれまで切らなかった手札を使う決意を決め、
「来い、雷鳴鬼!」
俺の発した叫びと共に、爆音が世界を包んだ。
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