異世界転移に夢と希望はあるのだろうか?

雪詠

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第三章 王立学校

交友関係

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「じゃ、今日の魔法実践はここまで。怪我した人は遠慮なく言ってね」

 それぞれが二試合ずつ出て、授業が終わった。俺個人の戦績は一勝と一分けだから上々だろう。

「健一君すごいなぁ、まさか負けるなんて」

「ん、編入試験を通ったのも納得」

「そういえば、健一は誰かに戦いを教わっているのかい?」

「あー……えっと……」

 ここは何て言うのが正解だ?  

 口が裂けても吸血鬼の王だとは言えない。おなじく、ロイドと言う訳にもいかないな。

「基本は独学……だな。本読むのとか好きだし」

 魔法の根幹は想像力だ。それを補うために、本を読む人が多いらしい。俺の場合は漫画とかがベースだがな。

「おっ、お前らも終わったのか! どうだったー?」

 教室に向かって歩いていると、別の会場へと行かされていたキリヤが合流する。

「僕は一勝一敗。まぁまぁだね」

「俺は全勝だぜ! あたりまえだけどな!」

「別に戦いがすべてじゃないから。キリヤはもっとちゃんと勉強した方がいいよ?」

「うるさい! 俺は軍人になるからいいし!」

「学力試験もあるのになぁ」

 グラントはそう呟くが、都合の悪いことは聞こえないのか、キリヤはそれをガン無視する。

「は、ハナビはどうだったんだ?」

 少し上ずった声でキリヤはハナビに話しかける。この反応……もしかして……

「私はねぇ~、一勝一敗だった。なんとこの健一君に負けてしまったのです!」

「そ、そうなんだー! ケンイチって強いんだなぁー!」

 やはりキリヤがおかしい。なんといか、リアクションがわざとらしいというか。

「キリヤはね、彼女のことが好きなんだ」

 グラントは小声で俺にそう伝えてくる。

 いや、まぁなんとなく想像通りだけど、それにしたって分かりやすすぎないか?

「ん、でもハナビ、気づいてない。そういう子だから」

「キリヤ……頑張れよ」

 天然な子相手は難易度が高いかもしれないが勝算はあるはずだ。密かに応援してやろう。

「そうだ、レインって子って分かるか?」

 昨日の事があったし、情報収集をと思って話題に出したのだが、途端にグラントの顔が曇る。

「……彼女と何かあったのかい?」

「あ、いや、何か勘違いされてるっぽくて……その」

「恋人だと思われている、と」

「なんで分かった!?」

 俺の悩みをピタリと当て、心を読んでいるのではと錯覚する。

「僕も一時期そう思われてたからね。なんというか、こう、話が嚙み合わないだろ」

「そう、そうなんだよ!」

 まさかここにも被害者がいるとは。一時期ということから、今は平気っぽいな。

「どうやって分かってもらったんだ?」

「時間経過」

「え?」

「ただただ、彼女が諦めるまで待つしかない」

 あまりにお先真っ暗な返答が返ってくる。

「なっ、そんな。でもちゃんと話せば———」

「ボクも色々試みたさ。でも、どんなに嫌われることをしても、彼女はそれを妄想で好意的に受け取るんだ。全部裏目に出て、かえって執着が強くなっちゃうんだよ」

「おいおい、まじかよ……」

「僕は一か月くらいで解放されたけど、ある人は半年かかったらしいからね」

「他にも被害者が……」

 これはかなりの長期戦になりそうだ。シャロ達のためにもいち早く止めてもらいたいが、どうしよう。

「ま、彼女は基本言葉が通じないって思った方がいいよ。あれは重症だ」

 今すぐに付きまとうのをやめさせるのは無理ということか。だが、俺が接触する前にそれが知れて良かった。

 やんわり避けるようにしよう。

「はいはーい! 提案! 今から皆でお昼食べない?」

「さ、賛成だ! ほら、お前らも行くぞ!」

 こうして、この日から五人で昼食を取るようになった。ひとまず、学校生活でグループに属することはできた。



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