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第三章 王立学校
二試合目
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「くっそ! やべぇやべぇやべぇ!」
魔法と魔法がぶつかり合う轟音が響き渡る。
俺は右へ左へと動きながら相手の魔法を相殺するが、向こうは一歩も動かずに一方的な攻撃を仕掛けてくる。
「まだまだ行くよっ!」
掛け声と共に更に弾幕が追加され、俺の方に追尾してくる。ギリギリまで寄せてから回避をしても、幾つかは確実に俺を捉えている。それを無詠唱の雷槍で弾けさすが、こんなことをいつまでもやっていられるわけがない。
厄介なのはあの宙に浮かんでいるカーバンクルだ。あいつが吐く火の弾丸をハナビが風魔法で操り、自由自在にタイミングを変えて襲ってくるのだ。
威力自体はそこまでだが、なにぶん数が多い。それにカーバンクルを狙っても的が小さくて小回りの利くあの小動物に当てることができない。
だからといって術者を直接狙うにも、周囲に停滞させたままにしている弾丸がそれを阻む。
「可愛い顔して攻撃が容赦ねぇ!」
「あはは、可愛いだなんて照れる」
最初は女の子を攻撃とかちょっとな、と思っていたが、そうも言ってられない。というか普通に負ける。魔力がもう半分もない。
被弾覚悟で突っ込むしかないか?と考えた矢先、回避先に打ち込まれ体勢が崩れる。
「まずっ―——」
「そこっ!」
魔法が間に合わない。これはもう———
ドカンという爆発と共に、俺は反射的に目をつぶった。だが、俺の体に痛みはない。ゆっくり目を開けると着物姿の白髪の鬼が、俺を守るように立っていた。
「雷……鳴鬼?」
「あまりにも君が他の使い魔を褒めるから、今一度ボクのすばらしさを見せつけてやろうと思ってね」
「馬鹿が、だったらもっと早く出て来いよ」
「ヒーローは遅れてやってくるらしいからね」
雷鳴鬼はそんな定番の展開を語り不敵に笑う。しかし、今はそんな姿が頼もしい。
「え!? 健一君も使い魔がいたの!? しかも人型!?」
ハナビは驚いた様子を見せるが、すぐさま戦闘態勢に戻る。その切り替えの早さに恐ろしさを感じつつも、俺も構え直す。
「行くぞ、雷鳴鬼」
「足ひっぱらないでねぇ~」
第二ラウンドが始まる。
「—————————纏雷」
真っすぐ、ただただ最短で相手を捉えるべく俺は走り出す。後ろで雷鳴鬼は俺の障害となる火球をすべて撃ち落としていく。恐ろしい精度だ。
「わわっ、すごい! でも」
ハナビが杖を上に振り上げ、目の前に土の壁ができる。すごい生成速度だ。思わず速度が落ち、そこに壁の奥から、
「——————炎魔双撃」
火の柱が壁を突き破り、空を焼く。
咄嗟に屈んだから直撃は免れた。髪が少し焦げた気がする。
だが、近づくことができた。刀に雷を集中させ、彼女の近くへと———
「——————水牢」
俺の足元から水が発生し、瞬く間に俺を取り込む。
「……!?」
身動きが取れない。まずい、このままじゃ、
「——————樹操滅」
地面からぐんぐん太い木の根が、まるでタコの足のように動きながら生えてくる。そのまましなりをつけて俺が閉じ込められた水の球体ごと潰そうと———
「———ぇ?」
閃光が包み、すべてを薙ぎ払う。解放された俺は何かに掴まれた。
「まったく、世話が焼けるね」
「悪い、助かった」
「ほら、ボクの魔力少しわけてやるから」
雷鳴鬼から魔力がながれてくる。
「ハナビの魔力量ハンパなくね?」
「あれはきっと、使い魔のおかげだね。カーバンクルは太陽の光から魔力を生み出すことができるから」
「なるほどな。なぁ、どうすればいいと思う?」
「そうだねぇ……まぁ厄介な使い魔から片付けるべきかな」
「……一つ作戦がある」
▷▶▷
「———てな感じで頼む」
「ま、いいんじゃない。ほぼボク頼みだけど」
「うるせぇ! やるぞ!」
改めて向かいあうが、今のやりとりの内にさらに弾幕が増やされている。今度こそ量で押しつぶすつもりだ。
「——————雷装」
「——————纏雷」
「「—————————龍虎雷帝」」
『纏雷』を発展させた魔法。雷鳴鬼に半分肩代わりしてもらって初めてこれは使える。
「行ってくる」
圧倒的スピード。慣れない速度で動くのはかなりしんどい。
だが、向こうの攻撃は俺を捉えることはできない。
「わわっ! あぶなっ!」
「くっ!」
これだけで決着がつけば良かったが、そううまくはいかない。しかし、布石は打っておいた。後はその時を俺が作り出すだけだ。
「速い……けど、全部燃やしちゃえば関係ない!」
ハナビは周りの火球を全て爆発させ、焼き払う。
その前に下がった俺はすかさず、カーバンクルに魔法を撃ち込む。ゆっくり、だが着実に追い込めている。
「あっ、キューちゃん!」
俺の手を止めるべく、風の刃が容赦なく命を刈り取りにくる。それを避け、今度はハナビに攻撃をしかける。そして、隙ができたら使い魔を……という手順を何回か繰り返し、ようやく、
「……来たね。——————遠雷」
俺が打った布石、中央に突き刺さった刀から雷が生まれ、一直線に上へと上昇する。その行先はもちろんあの使い魔だ。
こちらに気をとられていたカーバンクルは直前まで気づかない。そのまま直撃し、撃ち落とした。
「んなっ!」
空間に浮かんでいた火球が消えていく。これで動きやすくなった。それに、二対一だ。
「やるよ、健一」
「おい、お前もかよ」
二人同時に『龍虎雷帝』を発動させている状態だ。まぁ、負担がかかるのは雷鳴鬼なので、彼女がそれをしたのならきっと大丈夫なのだろう。
「まっ、まだまだ!」
向こうも諦める気はないらしい。俺と雷鳴鬼はその速度をもって、強襲する。
土の壁、水の牢、火の障壁、あらゆる手段を尽くして防御をするが、
「——————煌雷」
雷鳴鬼がそれを打ち破り、そして、
「—————————雷霆」
木人形が爆発する音が響いた。
魔法と魔法がぶつかり合う轟音が響き渡る。
俺は右へ左へと動きながら相手の魔法を相殺するが、向こうは一歩も動かずに一方的な攻撃を仕掛けてくる。
「まだまだ行くよっ!」
掛け声と共に更に弾幕が追加され、俺の方に追尾してくる。ギリギリまで寄せてから回避をしても、幾つかは確実に俺を捉えている。それを無詠唱の雷槍で弾けさすが、こんなことをいつまでもやっていられるわけがない。
厄介なのはあの宙に浮かんでいるカーバンクルだ。あいつが吐く火の弾丸をハナビが風魔法で操り、自由自在にタイミングを変えて襲ってくるのだ。
威力自体はそこまでだが、なにぶん数が多い。それにカーバンクルを狙っても的が小さくて小回りの利くあの小動物に当てることができない。
だからといって術者を直接狙うにも、周囲に停滞させたままにしている弾丸がそれを阻む。
「可愛い顔して攻撃が容赦ねぇ!」
「あはは、可愛いだなんて照れる」
最初は女の子を攻撃とかちょっとな、と思っていたが、そうも言ってられない。というか普通に負ける。魔力がもう半分もない。
被弾覚悟で突っ込むしかないか?と考えた矢先、回避先に打ち込まれ体勢が崩れる。
「まずっ―——」
「そこっ!」
魔法が間に合わない。これはもう———
ドカンという爆発と共に、俺は反射的に目をつぶった。だが、俺の体に痛みはない。ゆっくり目を開けると着物姿の白髪の鬼が、俺を守るように立っていた。
「雷……鳴鬼?」
「あまりにも君が他の使い魔を褒めるから、今一度ボクのすばらしさを見せつけてやろうと思ってね」
「馬鹿が、だったらもっと早く出て来いよ」
「ヒーローは遅れてやってくるらしいからね」
雷鳴鬼はそんな定番の展開を語り不敵に笑う。しかし、今はそんな姿が頼もしい。
「え!? 健一君も使い魔がいたの!? しかも人型!?」
ハナビは驚いた様子を見せるが、すぐさま戦闘態勢に戻る。その切り替えの早さに恐ろしさを感じつつも、俺も構え直す。
「行くぞ、雷鳴鬼」
「足ひっぱらないでねぇ~」
第二ラウンドが始まる。
「—————————纏雷」
真っすぐ、ただただ最短で相手を捉えるべく俺は走り出す。後ろで雷鳴鬼は俺の障害となる火球をすべて撃ち落としていく。恐ろしい精度だ。
「わわっ、すごい! でも」
ハナビが杖を上に振り上げ、目の前に土の壁ができる。すごい生成速度だ。思わず速度が落ち、そこに壁の奥から、
「——————炎魔双撃」
火の柱が壁を突き破り、空を焼く。
咄嗟に屈んだから直撃は免れた。髪が少し焦げた気がする。
だが、近づくことができた。刀に雷を集中させ、彼女の近くへと———
「——————水牢」
俺の足元から水が発生し、瞬く間に俺を取り込む。
「……!?」
身動きが取れない。まずい、このままじゃ、
「——————樹操滅」
地面からぐんぐん太い木の根が、まるでタコの足のように動きながら生えてくる。そのまましなりをつけて俺が閉じ込められた水の球体ごと潰そうと———
「———ぇ?」
閃光が包み、すべてを薙ぎ払う。解放された俺は何かに掴まれた。
「まったく、世話が焼けるね」
「悪い、助かった」
「ほら、ボクの魔力少しわけてやるから」
雷鳴鬼から魔力がながれてくる。
「ハナビの魔力量ハンパなくね?」
「あれはきっと、使い魔のおかげだね。カーバンクルは太陽の光から魔力を生み出すことができるから」
「なるほどな。なぁ、どうすればいいと思う?」
「そうだねぇ……まぁ厄介な使い魔から片付けるべきかな」
「……一つ作戦がある」
▷▶▷
「———てな感じで頼む」
「ま、いいんじゃない。ほぼボク頼みだけど」
「うるせぇ! やるぞ!」
改めて向かいあうが、今のやりとりの内にさらに弾幕が増やされている。今度こそ量で押しつぶすつもりだ。
「——————雷装」
「——————纏雷」
「「—————————龍虎雷帝」」
『纏雷』を発展させた魔法。雷鳴鬼に半分肩代わりしてもらって初めてこれは使える。
「行ってくる」
圧倒的スピード。慣れない速度で動くのはかなりしんどい。
だが、向こうの攻撃は俺を捉えることはできない。
「わわっ! あぶなっ!」
「くっ!」
これだけで決着がつけば良かったが、そううまくはいかない。しかし、布石は打っておいた。後はその時を俺が作り出すだけだ。
「速い……けど、全部燃やしちゃえば関係ない!」
ハナビは周りの火球を全て爆発させ、焼き払う。
その前に下がった俺はすかさず、カーバンクルに魔法を撃ち込む。ゆっくり、だが着実に追い込めている。
「あっ、キューちゃん!」
俺の手を止めるべく、風の刃が容赦なく命を刈り取りにくる。それを避け、今度はハナビに攻撃をしかける。そして、隙ができたら使い魔を……という手順を何回か繰り返し、ようやく、
「……来たね。——————遠雷」
俺が打った布石、中央に突き刺さった刀から雷が生まれ、一直線に上へと上昇する。その行先はもちろんあの使い魔だ。
こちらに気をとられていたカーバンクルは直前まで気づかない。そのまま直撃し、撃ち落とした。
「んなっ!」
空間に浮かんでいた火球が消えていく。これで動きやすくなった。それに、二対一だ。
「やるよ、健一」
「おい、お前もかよ」
二人同時に『龍虎雷帝』を発動させている状態だ。まぁ、負担がかかるのは雷鳴鬼なので、彼女がそれをしたのならきっと大丈夫なのだろう。
「まっ、まだまだ!」
向こうも諦める気はないらしい。俺と雷鳴鬼はその速度をもって、強襲する。
土の壁、水の牢、火の障壁、あらゆる手段を尽くして防御をするが、
「——————煌雷」
雷鳴鬼がそれを打ち破り、そして、
「—————————雷霆」
木人形が爆発する音が響いた。
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