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第三章 王立学校

息子

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 時は試合後に遡る

「……お前は……異世界人だな?」

「……え?」

 突然ガルドから突き付けられた事実。しかし、それは決して誰にも気づかれない、気づかれてはならないものだった。

「異世界人って……あの紛れ込んでくるっていう奴か? なんで俺が……」

 誤魔化す以外に方法はない。だが、

「……ヘルド・ローズベルトという名前に聞き覚えはないか?」

「……ッ!?」

 彼の口からその名が告げられ、衝撃が走る。

「その顔……やはりか……」

 しまった。顔に出てしまった。ガルドは確信を持って聞いてきている気がするが、どうにか言い訳をしなければ。

「い、いや、知らない。たまたま知り合いに似た名前の人がいて驚いただけだ」

 少々苦しいか?

「……」

「そ、それでその人がどうかしたのか?」

「……名前の通り、俺の父の事だ。少し前に死んだ」

「そう……なのか……」

 やはり俺の見立ては正しかったようだ。あの男の……ヘルドの息子とまさか会うなんて。

「俺はその死の真相を知りたい。もし何か知っているなら教えてくれないか」

 自分の親の死の理由を知りたいと思うのは当然だ。だが、俺は話すことが出来ない。

「……ごめん、俺は分からない」

 苦し紛れでも、たとえ教えたくても、しらを切り続けるしかないのだ。

「…………そうか」

 結局、俺の返答に少し不満な顔をしつつもガルドはそれ以上追及してくることはなかった。

 去り際、「他の者に話すつもりはない」とだけ残し、一足先に上へとあがっていった。

 大きな後ろ姿を記憶の者に重ね、彼の言葉が脳内で何度も再生される。

「……くそ、どうすりゃいいんだよ」

 ▷▶▷

「ん? どうした、ケンイチ」

「……いや、なんでもねぇ。それより、決着がついたみたいだぞ」

 人形を操る薄紫の髪の少女と、金髪ロールのいかにもな感じのお嬢様系の女子の試合が終わった。

「このアタクシが勝つのは当然ですわ!」

 見た目通りの口調で高らかに勝利を宣言する。

「ですわ……って、まじでテンプレのお嬢様みたいな感じだな」

「リスカちゃんもすごいよねぇ。ケンイチ君とはまた違った雷魔法を使ってて」

 彼女は雷を軸にした檻をつくりあげ、無数の人形を無力化していた。それだけでなく、四方八方から雷の矢を飛ばし、常に優位をとりながら戦い続けていた。

「リスカ、また練度上がってる」

「だねぇ。今戦ったら勝てないかも……」

 そう言う二人だが、俺としては正直この二人の方が恐ろしい。ハナビは使い魔との連携、魔法の合体が脅威だ。そして、カペラは広域の氷魔法が凄まじい。
 どちらもできれば戦いたくないのだが……

 そうして試合は進み、第四回戦でガルドとグラントが選ばれた。

「うっ……これは無理だなぁ」

「お前の勇姿、この目に焼き付かせてもらうわ」

 とはいえ、結果は想像の通り。一分も経たずにガルドが勝利を手にした。

 そして、いよいよ最後の試合。残ったのは———

「よろしくね! 健一君!」

 黒髪をかきあげ、天真爛漫を擬人化したような少女が、屈託のない笑顔でこちらを覗いていた。
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