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第三章 王立学校
お前は
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「この勝負、引き分けとする!」
下された試合結果に、観客席にいる生徒達のざわめきが聞こえてくる。
もしかしなくとも、大健闘したのではないか?
「いやぁ、二人共良かったよ。ガルド君は対応が的確かつ迅速なのが良かった。健一クンは多様な攻撃を上手く使ってたのが特に輝いていたね」
先生の講評を聞き、自分の成長を実感する。
「……いい動きだった。次は負けない」
ガルドは少し悔しさを表情に乗せながら笑い、手を前に出した。
「ああ、またよろしく」
その大きな手を受け入れ、最後の試合が終わった。
「まだ全員一試合はできそうだから、これから僕が呼ぶ人は下に来てねー」
授業はまだ半分ほど時間が残っている。最大限有効活用するようだ。
「あ、とりあえず二人の出番はまだだから上行っちゃっていいよん」
流石に連続……というのは勘弁してくれるらしい。これは純粋にありがたい。
ガルドと二人で歩いていくが、気まずい。思えば顔を覚えていても、話したのは今日が初めてだ。それにこの男も寡黙な雰囲気が漂っていて、話しかけづらい。
無理に話すこともないかと、二つの足音だけが虚空に響く。途中、呼ばれた生徒とすれ違ったが、どうやら俺の話をしていた。
決して悪口というわけではなく、純粋に褒めてくれていた。照れくさいような嬉しいような、そんな気持ちに浸っていると、前を歩くガルドが足を止め振り返る。
「ん、どうした?」
「……イスルギ・ケンイチ、一つ聞いてもいいか?」
「あ、ああ」
まさか話しかけてくるとは思わなかったから少し焦る。
「……お前は……異世界人だな?」
「……え?」
▷▶▷
「おつかれ、健一。まさかあのガルドと引き分けだなんてすごいじゃん」
「まぁ手の内が知られてなかったし、たまたまだ」
実際、もう一回やったら即殺される気がする。なんというか、獰猛な獣の匂いがした。
「でもでも! 健一君すごかったよ! ばっちし見てた!」
グラントと共に、黒髪の少女がそう話す。
「あ、えっと、君は……」
「おっと、ごめんごめん、自己紹介がまだだったね。私はセリザワ・ハナビ。健一君と同じヤクモ出身だよ!」
ヤクモ出身……ということは名前がハナビか。やっぱ日本人みたいな名前が多いみたいだな。
「そうなんだ。よろしく」
「で、こっちが———」
「カペラ・フロスティア……よろしく」
黒髪の彼女とは違って、こちらはクール系といった感じだ。金髪ツインテールに、垂れ目でやる気のなさそうな表情をしている。なんとなく思考が読めなくて少し苦手なタイプだ。
「それにしても、ほんとにすごかったなぁ、さっきの試合。あれってオリジナルの魔法だよね?」
「ああ、うん。一応は」
「だってさ、やっぱり! ほら、カペラ!」
「ん、すごかった。詠唱、自分で考えてる」
「それほどでも。逆に二人の試合もすごかったよ。えっと、セリザワさんは使い魔と一緒に戦ってて———」
「ハナビでいいよ! 私のこの子の事だね」
そういって彼女の掌からウサギのような生物が出てくる。
「カーバンクルのキューちゃん! かわいいでしょ!」
「ああ、めっちゃかわいい!」
宝石のような瞳に艶がある毛並み、そしてその愛らしい顔を見るとほっこりする。しかし忘れてはならないのが、このカーバンクルは見た目によらず強いということだ。前の試合で飛びながら火を吹く姿を俺は見ている。
見た感じかなり人懐っこい。俺が普通に撫でることを許してくれている。それどころか、すり寄ってきてくれている。
そうだ。これこそ俺の求めていた使い魔像だ。どこかの食っちゃ寝ポンコツ厄介鬼とは正反対だ。
「でも驚いたよ。ケンイチがまさかあんなに強いなんて」
「そう……なのか? あんまわかんないんだが」
「ガルドっていったらうちのクラスの上位だからね。キリヤに言ったらきっと驚くよ」
「そう、か……」
賞賛は嬉しいが、その名前が引っかかり、思わず口ごもってしまった。
「ガルド……ローズベルト……か」
みんなと話している間もずっと、俺の頭の中はさっきの会話でいっぱいになっていた。
下された試合結果に、観客席にいる生徒達のざわめきが聞こえてくる。
もしかしなくとも、大健闘したのではないか?
「いやぁ、二人共良かったよ。ガルド君は対応が的確かつ迅速なのが良かった。健一クンは多様な攻撃を上手く使ってたのが特に輝いていたね」
先生の講評を聞き、自分の成長を実感する。
「……いい動きだった。次は負けない」
ガルドは少し悔しさを表情に乗せながら笑い、手を前に出した。
「ああ、またよろしく」
その大きな手を受け入れ、最後の試合が終わった。
「まだ全員一試合はできそうだから、これから僕が呼ぶ人は下に来てねー」
授業はまだ半分ほど時間が残っている。最大限有効活用するようだ。
「あ、とりあえず二人の出番はまだだから上行っちゃっていいよん」
流石に連続……というのは勘弁してくれるらしい。これは純粋にありがたい。
ガルドと二人で歩いていくが、気まずい。思えば顔を覚えていても、話したのは今日が初めてだ。それにこの男も寡黙な雰囲気が漂っていて、話しかけづらい。
無理に話すこともないかと、二つの足音だけが虚空に響く。途中、呼ばれた生徒とすれ違ったが、どうやら俺の話をしていた。
決して悪口というわけではなく、純粋に褒めてくれていた。照れくさいような嬉しいような、そんな気持ちに浸っていると、前を歩くガルドが足を止め振り返る。
「ん、どうした?」
「……イスルギ・ケンイチ、一つ聞いてもいいか?」
「あ、ああ」
まさか話しかけてくるとは思わなかったから少し焦る。
「……お前は……異世界人だな?」
「……え?」
▷▶▷
「おつかれ、健一。まさかあのガルドと引き分けだなんてすごいじゃん」
「まぁ手の内が知られてなかったし、たまたまだ」
実際、もう一回やったら即殺される気がする。なんというか、獰猛な獣の匂いがした。
「でもでも! 健一君すごかったよ! ばっちし見てた!」
グラントと共に、黒髪の少女がそう話す。
「あ、えっと、君は……」
「おっと、ごめんごめん、自己紹介がまだだったね。私はセリザワ・ハナビ。健一君と同じヤクモ出身だよ!」
ヤクモ出身……ということは名前がハナビか。やっぱ日本人みたいな名前が多いみたいだな。
「そうなんだ。よろしく」
「で、こっちが———」
「カペラ・フロスティア……よろしく」
黒髪の彼女とは違って、こちらはクール系といった感じだ。金髪ツインテールに、垂れ目でやる気のなさそうな表情をしている。なんとなく思考が読めなくて少し苦手なタイプだ。
「それにしても、ほんとにすごかったなぁ、さっきの試合。あれってオリジナルの魔法だよね?」
「ああ、うん。一応は」
「だってさ、やっぱり! ほら、カペラ!」
「ん、すごかった。詠唱、自分で考えてる」
「それほどでも。逆に二人の試合もすごかったよ。えっと、セリザワさんは使い魔と一緒に戦ってて———」
「ハナビでいいよ! 私のこの子の事だね」
そういって彼女の掌からウサギのような生物が出てくる。
「カーバンクルのキューちゃん! かわいいでしょ!」
「ああ、めっちゃかわいい!」
宝石のような瞳に艶がある毛並み、そしてその愛らしい顔を見るとほっこりする。しかし忘れてはならないのが、このカーバンクルは見た目によらず強いということだ。前の試合で飛びながら火を吹く姿を俺は見ている。
見た感じかなり人懐っこい。俺が普通に撫でることを許してくれている。それどころか、すり寄ってきてくれている。
そうだ。これこそ俺の求めていた使い魔像だ。どこかの食っちゃ寝ポンコツ厄介鬼とは正反対だ。
「でも驚いたよ。ケンイチがまさかあんなに強いなんて」
「そう……なのか? あんまわかんないんだが」
「ガルドっていったらうちのクラスの上位だからね。キリヤに言ったらきっと驚くよ」
「そう、か……」
賞賛は嬉しいが、その名前が引っかかり、思わず口ごもってしまった。
「ガルド……ローズベルト……か」
みんなと話している間もずっと、俺の頭の中はさっきの会話でいっぱいになっていた。
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