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第三章 王立学校

術式の仕組み

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「はい、じゃあ魔法理論の授業に入っていくよ。二年次からは応用ってことで、それぞれの属性の魔法の仕組みをもっと詳細に説明するから、頑張って付いてきてね」

 登校二日目

 今日から本格的に授業が始まる。

「そういやケンイチは何属性が使えるんだ?」

 自由席で隣に座っているキリヤが小声で話しかけてくる。

「俺は基本的に光と雷かな。使い物になるのはその二つくらい」

 実際には雷しか使えないが、吸血鬼の自己再生能力の説明のためにこう言うしかない。それに、今後使える属性も増えるかもしれない。ある程度の含みはもたせて話した方がいいだろう。

「雷に光か……俺とダダ被りだな」

「そうなのか?」

「それプラス土も使える。つまり俺の勝ちだな!」

「はは……」

 段々と大きくなるキリヤの声に、先生の視線が突き刺さる。別にそれを咎めるようなことは言わないが、確かに睨んでいた。

 なるほど、フォルト先生は注意せずに成績に反映させるタイプか。

「で、今日取り扱う内容だけど、特殊魔法にしようかな」

 特殊魔法、光と闇の二種類で、攻撃というより支援よりの力だ。

「まずは光から。これは大体、強化がメインだね。教科書にあるとおり、攻撃力を上げる『アームズ』だったり、防御力を上げる『アーマー』とかが基本だね」

 俺はオリジナルの詠唱で魔法を唱えているが、この世界ではある程度体系化されてるようだ。屋敷の連中はこぞって無詠唱しかしていなかったけど。

「反対に闇魔法は妨害が主軸だね。右のページの『ブラインド』が一番わかりやすいかな」

 右のページに目を移し、その説明を読む。

 視界を奪う能力って強すぎだろ、と思ったが、よくよく見ると視界をぼやけさせるくらいらしい。まぁそれでも強力なことに変わりはないだろうがな。

「さて、ここからが応用だ。この二つの属性の究極形態として、『術式』というものがある」

 その単語を聞いて、思わず身を乗り出しそうになる。なんだかんだ詳しくは知らない仕組みだから、前々から気になっていたのだ。

「これはある特定の縛りを設けることで相応の効果を得られる力だ。例えば、この部屋に居る限り、ミツヤ・フォルトは常時『アームズ』が掛けられる、とかだね」

 説明しながら、先生は黒板に魔法陣を描いていく。

「それでその起動に必要なのがこういった魔法陣なのさ。でも結構これが大変でね。今は簡易的に描いたけど、実際はもっと複雑になる。それに、厄介なのは対価の部分だ」

 術式がどれほど強力かは経験済みだ。あのシルバーでさえ、その影響を受けたほどだしな。

「術式効果をより広範囲に、かつ指定の対象を増やせば増やすほど、対価が重くなるのはみんなも想像できると思う。じゃあ具体的にどんなものが対価として消費されるかなんだけど、基本は魔力になることが多いかな」

 やはり魔力か。基本的にはという言い方から察するに、他でも代用ができるということか? 

 そんな疑問に答えるように先生は続ける。

「魔力で賄えない場合、つまり術式の効果が強力すぎると、別のものが消費される。寿命……とかね」

 予想はしていたが、妥当なところだろう。

「後は対象が自分より格上だと、もちろんその分対価は大きくなる。ま、術式を組める人自体がめちゃくちゃに強いから、そこはあまり関係ないかなぁ」

 俺の知る限り、術式を扱えるのは三人。フリードにシルバー、そしてソルヴァだ。彼らレベルからすると、俺らなんて蟻んこも同然なんだろうな。

 てか、今の話から考えると、あの時のソルヴァは相当無茶していたのではないのだろうか。力の序列的にソルヴァの上にシルバーがいる。そのシルバーを無力化する程の術式を組んだうえで、屋敷内の音を減少するのも起動していたのだ。ソルヴァってマジで何者だ?

「最近だと魔石を媒介にして持ち運びができる術式なんてのもあるらしい。けど、これを作るのには最低でも一年はかかるから、頻繁に使われることはないね。豆知識くらいな感じで覚えておいて」

 その後は複数の術式の例が紹介された。その中には吸血鬼を発見するというものもあって、この国全体にそれがかけられているらしい。

「―――お、ちょうど時間だね。これで授業はおしまいだ。次の時間は魔法実践だから、闘技場に集まるように」

 そう言い残し、先生は教室を後にした。

 学校の授業、正直舐めていた。想像以上に分かりやすく、それでいて面白い。この調子なら魔法理論の座学は眠くならなさそうだ。






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