異世界転移に夢と希望はあるのだろうか?

雪詠

文字の大きさ
上 下
88 / 138
第三章 王立学校

言い訳の場

しおりを挟む
「ただいまぁ」

 部屋の鍵を開け、中に入る。普通ならシャロかティアのどちらかが出迎えてくれるのだが、その様子はない。なんなら、声すらかえってこない。

 そんな状況を不審に思いつつ、奥の方へと足を運んだ。

「な、なんでこんな部屋が暗いんだ?」

 まだ太陽は昇ったままだというのに。それに、部屋の明かりがついていない。

「シャロ? ティア?」

 人の気配をまるで感じない。ひとまず明かりをつけたのだが、

「ご主人様」

「うぉっ!?」

 明かりがついた瞬間、俺のすぐ真横にシャロが立っていた。

「お、驚かせんなよ……って、なんでこんな暗く―——」

「ご主人様」

「は、はい。なんでしょう……」

 俺の言葉を遮り、シャロは少し怒気を纏った声色で、

「わたくしが何を言いたいか、分かりますか?」

「あ……えと」

 そう言われてようやく思い出す。勘違いが解けていない。とはいえ、俺は全くの無実だ。一緒に食事をしたのは男だし、ちゃんと説明すれば分かってもらえるはずだ。

「ま、まぁ一旦落ち着け。まず、俺は男としか昼飯を食ってない。一緒に昼食が取れなかったのは悪かったが、そこは初日だから許してくれ」

 これならと思い、シャロの次の言葉を待つが、

「……ティア」

「おう」

 シャロの呼びかけに反応したティアが、俺の死角から現れ、羽交い絞めにされる。

「なっ、おい。なにを———」

「……黒だ。女の匂いがする」

「あぇ?」

「はぁ……どういうことですか?」

 俺から女の匂いだと? そんなものするわけが……

「あ」

 ついさっきまで、全然話してたわ。

「待って待って、説明する。しますから。だからちょっ、力入れないで!」

 羽交い絞めからハグへと体勢が変わり、そしてその拘束が段々と力を強めていって、あばらが粉砕されそうになる。

「ティア、とりあえず離してください」

 解放はされたが、依然として冷やかな目は変わらない。俺は誠意を伝えるべく、自ら視線をさげ、正座の構えに入った。

「えぇとですね———」

 こうして、レインの事を初対面の時に遡って話し始めた。

 ▷▶▷

「……なるほど。つまり、早速厄介なストーカーが生まれたというわけですか」

「ったく、隙を見せるからそうなるんだよ」

「いや、まじで話通じなかったんだって! 俺がどれだけ怖い思いしたか」

「とにかく、その方には正式にわたくし達という存在がいることを伝えるのがベストな気がします。現実を分からせてやりましょう」

「それで逆上されたらたまったもんじゃねぇけどな」

 逆切れで刺される、なんてことも起こり得そうだ。とにかく怖い。ただただ怖い。

「だとしてもです。曖昧な態度ではぐらかすのは、わたくし達への裏切りのようなものですよ」

「そうだぜ。きちんとそこの区別はつけてもらわなきゃな」

「ご、ごもっともです」

 次レインに会ったらこの事実を告げよう。逆上されても細心の注意を払えば学生の一人くらい何とかなるだろう。

「はい。これでこの話はおしまいです」

 そう言って、カーテンを開き、窓から眩しい光が差し込んでくる。このカーテンの遮光能力すごいな。

「そういうわけでぇ、ご主人様にはしっかりと罰を受けてもらわなきゃですねぇ」

 うってかわって、シャロの声の調子が聞きなじみのある、小悪魔ボイスへと変貌する。

「あ、あれ? この話はおしまいって」

「それはそれ、これはこれ、ですよ。相応の罰を受けてもらいましょうか」

「ははっ、何にしてやろうか……」

 二人が容赦のない笑みを浮かべ、あれやこれやと妄想を捗らせている。結局下された命は、立場逆転とのことだった。この日は一日中、彼女達の手足となり勤勉に働いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~

トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。 旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。 この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。 こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

処理中です...