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第三章 王立学校
妄想ガール
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「君は……」
この目立つエメラルドグリーンの髪に翡翠色の瞳、不健康そうな眼の下の隈。見覚えがある気がする。
「私、は、レイン。レイン・フォリア……だよ? ほっ、ほら、二ヶ月前に、話した……」
二ヶ月前……ということは俺が試験を受けに来た時だ。
「ハンカチ、拾ってくれて、だから、その……」
「あー、あの時の!」
確か彼女が落としたハンカチを俺が追いかけて渡した奴だ。そして、少し変な様子の彼女に段々と記憶が蘇ってくる。
「約束通り、学校、案内しようって、思って、それで、その……」
「あー……ね」
そこまでお願いしたっけか? というか昔の俺、絶対未来の俺に丸投げしただろ!
「今日、ずっと、後ろ、いた」
「……え?」
突然の狂気的な内容に思わず声が漏れる。ずっと後ろにいただと?
「グライダー君達と、一緒、だったでしょ? あの時も近く、いたんだよ?」
「そ、そっか、気づかなかったな……」
「いつになったら、私のこと、紹介、してくれるのかなって」
「……紹介?」
「う、うん。私って、健一君の、さ、彼女、だからさ」
「……は?」
意味が分からない。付き合っているだと? この子と、俺が?
一度会ったっきりだし、しかもちゃんと会話したのこれが初めてだぞ? あまりに話が飛躍しすぎている。
「あのー……それって人違いじゃ……」
「違わない……よ? ほら、私にハンカチ拾ってくれて、それで……」
「いやいや確かに拾ったけど、別にそれは関係なくないか?」
「それで、その日から、話すようになって……」
「お、おい」
「何度も何度も、昼も夜の寝る前も話して……」
「えと、レイン?」
「私を求めてくれて私を受け入れてくれて私を抱きしめてくれて私を必要としてくれて……」
まるで自分の世界に入ったかのように饒舌に話し始める。しかも、そのどれもが俺の知らない俺の話だ。
「だからっ! だから……さ、いつ、紹介してくれるのかーって、心配で心配で」
こ、こえぇぇぇぇ!
なんだこの子!? 一体なんの話をしているんだ??
「あの、さ。悪いんだけど、その話俺知らないなーって」
「―――え?」
「いや、たぶんそれ人違いか君の妄想じゃ……」
「ちがわない」
俺の否定の言葉を遮って、彼女はそう冷酷な声で否定を被せてくる。
「何も違わない。健一君は私の彼氏様だから。それは変わらないから、
ずっと。ずっとずっとずっとずっとずっとずっと」
「ま、まってくれ! 俺は君に告白してもないし、されてもない。だから恋人関係ってのはおかしいだろ!」
「ふふっ、照れちゃって。そこまで健一君が言うんなら、仕方ないなぁ」
「分かってくれたか?」
「秘密の交際ってのも燃えるね。あ、じゃあ学校案内も今はやめた方がいっか。見られて、バレたら良くないもんね」
「いやっ、違う違う! そうじゃないって!」
「それじゃ、私は戻るね。分かっていると思うけど、部屋は1004号室だから。待ってるね?」
「おい、ちょっと!」
「じゃあ、ばいばい。ダーリン」
そう言い残すと、レインはそのまますぐにどこかへ行ってしまった。
「クソ、何なんだよ一体。フリードが言ってたのガチじゃねぇか……」
今になってあの忠告の意味が分かる。
『あの国の人間は正直頭のおかしい連中が多い』
アイツがこれを見越してそう言ったかは定かではないが、概ねあっていそうな気がしてならない。
『やぁ、大変な事になってるみたいだねぇ』
『はぁ……まじでどうすりゃいいんだこれ……』
『しらなーい。君が蒔いた種だろ、このハーレム大王』
『変なあだ名つけるな! しかも今回はマジで知らねぇぞ!』
『ま、ボクは口出ししないから、せいぜい頑張りなぁ~』
『んのクソやろう……!』
俺はひょっとして、とんでもない国に来てしまったのではないだろうか。あの二人もまだ本性が出てないだけで、裏ではやばい奴なんてこともあるかもしれない。せめて、キリヤ達は普通であってくれ……。
俺はそう、ただただ願うのだった。
この目立つエメラルドグリーンの髪に翡翠色の瞳、不健康そうな眼の下の隈。見覚えがある気がする。
「私、は、レイン。レイン・フォリア……だよ? ほっ、ほら、二ヶ月前に、話した……」
二ヶ月前……ということは俺が試験を受けに来た時だ。
「ハンカチ、拾ってくれて、だから、その……」
「あー、あの時の!」
確か彼女が落としたハンカチを俺が追いかけて渡した奴だ。そして、少し変な様子の彼女に段々と記憶が蘇ってくる。
「約束通り、学校、案内しようって、思って、それで、その……」
「あー……ね」
そこまでお願いしたっけか? というか昔の俺、絶対未来の俺に丸投げしただろ!
「今日、ずっと、後ろ、いた」
「……え?」
突然の狂気的な内容に思わず声が漏れる。ずっと後ろにいただと?
「グライダー君達と、一緒、だったでしょ? あの時も近く、いたんだよ?」
「そ、そっか、気づかなかったな……」
「いつになったら、私のこと、紹介、してくれるのかなって」
「……紹介?」
「う、うん。私って、健一君の、さ、彼女、だからさ」
「……は?」
意味が分からない。付き合っているだと? この子と、俺が?
一度会ったっきりだし、しかもちゃんと会話したのこれが初めてだぞ? あまりに話が飛躍しすぎている。
「あのー……それって人違いじゃ……」
「違わない……よ? ほら、私にハンカチ拾ってくれて、それで……」
「いやいや確かに拾ったけど、別にそれは関係なくないか?」
「それで、その日から、話すようになって……」
「お、おい」
「何度も何度も、昼も夜の寝る前も話して……」
「えと、レイン?」
「私を求めてくれて私を受け入れてくれて私を抱きしめてくれて私を必要としてくれて……」
まるで自分の世界に入ったかのように饒舌に話し始める。しかも、そのどれもが俺の知らない俺の話だ。
「だからっ! だから……さ、いつ、紹介してくれるのかーって、心配で心配で」
こ、こえぇぇぇぇ!
なんだこの子!? 一体なんの話をしているんだ??
「あの、さ。悪いんだけど、その話俺知らないなーって」
「―――え?」
「いや、たぶんそれ人違いか君の妄想じゃ……」
「ちがわない」
俺の否定の言葉を遮って、彼女はそう冷酷な声で否定を被せてくる。
「何も違わない。健一君は私の彼氏様だから。それは変わらないから、
ずっと。ずっとずっとずっとずっとずっとずっと」
「ま、まってくれ! 俺は君に告白してもないし、されてもない。だから恋人関係ってのはおかしいだろ!」
「ふふっ、照れちゃって。そこまで健一君が言うんなら、仕方ないなぁ」
「分かってくれたか?」
「秘密の交際ってのも燃えるね。あ、じゃあ学校案内も今はやめた方がいっか。見られて、バレたら良くないもんね」
「いやっ、違う違う! そうじゃないって!」
「それじゃ、私は戻るね。分かっていると思うけど、部屋は1004号室だから。待ってるね?」
「おい、ちょっと!」
「じゃあ、ばいばい。ダーリン」
そう言い残すと、レインはそのまますぐにどこかへ行ってしまった。
「クソ、何なんだよ一体。フリードが言ってたのガチじゃねぇか……」
今になってあの忠告の意味が分かる。
『あの国の人間は正直頭のおかしい連中が多い』
アイツがこれを見越してそう言ったかは定かではないが、概ねあっていそうな気がしてならない。
『やぁ、大変な事になってるみたいだねぇ』
『はぁ……まじでどうすりゃいいんだこれ……』
『しらなーい。君が蒔いた種だろ、このハーレム大王』
『変なあだ名つけるな! しかも今回はマジで知らねぇぞ!』
『ま、ボクは口出ししないから、せいぜい頑張りなぁ~』
『んのクソやろう……!』
俺はひょっとして、とんでもない国に来てしまったのではないだろうか。あの二人もまだ本性が出てないだけで、裏ではやばい奴なんてこともあるかもしれない。せめて、キリヤ達は普通であってくれ……。
俺はそう、ただただ願うのだった。
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