異世界転移に夢と希望はあるのだろうか?

雪詠

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第三章 王立学校

クラスメイト

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「にしてもよぉ、女の子の奴隷に使い魔なんて流石に羨ましすぎねぇか?」

「うちのクラスでも奴隷持ってるのはゲルニカ君くらいだしね」

「ゲルニカ君?」

「そう、ゲルニカ・ユーストン君。貴族の子なんだけど、なんというか、彼は個性が強くてね……」

「ユーストン……」

 今初めて聞いたはずのその家名に何故か聞き覚えがある。人間の知り合いは限られているから、忘れることなんてないと思っていたのだが……誰だっけ?

「あいつなぁ、あの下心丸出しの言動がだめだ。この前も他の奴の彼女にちょっかいかけてたしなぁ」

「まぁそんな感じ。ケンイチも気を付けた方がいいかも。顔さえ良ければ、誰のものでもおかまいなしに狙ってくるからね」

「あ、ああ。わかった」

 クラスメイトにここまで言われるなんて、よっぽど態度が悪いのだろう。それにしてもやはり名前が気になる。同じクラスだし明日にでも顔を見てみるか。

 クラスの内情を二人から聞きつつ食事を終え、食器を片付けた。

「この後、僕達は鍛錬してから帰るけど、ケンイチもどうだい?」

「鍛錬?」

「まぁ鍛錬という名の模擬戦闘なんだけどね」

「行こうぜ! 俺がぼこぼこにしてやるよ!」

 キリヤは目を輝かせて言うが、登校初日で戦闘か……。

 別に俺は特別戦いが好きなわけではない。しかし、そうは言っていられない現実があるのも事実で、だからこそこの学校生活は戦いとは縁遠いものにしたいのだ。

 それが難しいことは良く分かっているし、受け入れているつもりだ。なのでせめて初日くらいは平和に過ごさせてほしい。噂によれば授業でも戦闘関連は入ってくるらしいしな。

「あー、いや、今日はやめておくわ。また誘ってくれ」

「わかった。それじゃ、僕達は訓練所に寄ってくからここで」

「また明日な! ケンイチ!」

「ああ、また……な」

 二人が訓練所に行く後ろ姿を、俺は見えなくなるまで見つめていた。

 そっか、友達ってこんな感じだったな。

 久方ぶりのこの何気ない会話が、深く心に沈み込む。期待と後悔が混ぜ合わさったような、形容し難い気持ち悪さが生まれた。

「友達……か」

 嫌でも重なって見えてしまう。もう会えないのに———

 ▷▶▷

「帰るか……って、そういえば……」

 例の勘違いのくだりを思い出し、どうしたらいいかと頭を悩ませる。ノープランで帰るのは得策ではない。何か考えてから万全の態勢で帰還しなくては。

「あ、あ、あのっ!」

「うおっ!」

 急に傍で話かけられ、思わず声をあげてしまった。

「健一君……だよね……ふふっ、私のこと、おぼ、えてる、よね?」

 後ろを振り返るとそこには、不健康そうな眼をした、エメラルドグリーンの髪の少女が、不気味な笑みで佇んでいた。
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