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第三章 王立学校
俺の人生の第三章
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「この部屋ともしばらくお別れか……」
必要な荷物を詰め、慣れ親しんだ部屋に別れを告げる。永遠の別れではないにしても、どこか寂しい気持ちが押し寄せてくる。
思えば、この約半年いろいろあったな。いきなり異世界に迷い込み、右も左もわからずに死にかけ、それでもなんとか食らいついて生きてきた。濃密でかけがえのない、そんな時間だった。
今日からは俺の人生の第三章だ。
「……よし、行くか!」
窓から差し込む朝日に背中を押されるように、俺は部屋の扉を閉めた。
▷▶▷
屋敷の外には見送ってくれる人が集まっていた。自分のためにこうやって来てくれていると思うと目頭が熱くなる。
「来たか」
「おうよ。なんかほぼ全員いるな」
見渡す感じ、ざっと二、三十人いる。全員がこの屋敷に関わりのある人たちだ。
「しばらく会えなくなるからな。みな、お前の旅立ちを見送りたいと、そう思っている」
「て、照れるな……」
「この繋がりはお前自身が紡いだものだ。それに———」
と言いかけたところで、
「イスルギー!!」
「うおっ!」
メアが思いっきり突進してきたのでそれを受け止める。
「向こうでも頑張って! それと……無茶しちゃだめだよ?」
「ああ、しない。約束だ」
「うん、ならいいの。元気でね」
そんな太陽のような笑顔に「ありがとう」と返し、ゆっくり頭を撫でる。
この手に広がる温もりから離れることを惜しいと思いつつも、そっと手を離した。
「祈願。無事を願っています」
「ありがとな。メアの事、頼むぞ」
「肯定。もちろんです」
いつの間にか傍にいたロイドとレイズと握手を交わし、今一度別れを実感する。向こうではこの二人の護衛もない。俺がしっかりしなきゃな。
「じゃあ、そろそろ行くわ」
「分かった。だがその前に手を出せ」
「ん?」
疑問を感じつつ、言われた通りに手を前に出す。その掌にフリードは両手を添え、何かを施した。
「これは保険だ。もし、本当にどうしようもない程の危機的状況に陥ったのなら、心の底から俺の名を叫べ。それに呼応して、いつでも俺が駆けつけよう」
「お、おおお……!」
そんな状態をつくらないことはもちろんだが、あるとないとじゃ安心感が違う。使うつもりはないが、心の拠り所にさせてもらおう。
「さんきゅー! 安心感がダンチだわ」
「とにかく、向こうでは油断をしすぎるなよ」
「おうともさ。そんでサクッと目的達成してくるわ」
俺の軽い言い方に「ふん」と、その顔に微笑を浮かばせ、
「期待、しているぞ」
そう一言告げる。フリードの口からでたその言葉、それはこれ以上ない激励のように思えた。
「ああ……ああ! それじゃあ、またな!」
再びみんなに別れを告げ、俺は移動用の馬車に乗り込んだ。
「もう心残りはないですか?」
「ない……って言ったら嘘になるけど、ないことにするよ。今はすげぇ気分がいいんだ」
「アタシも、ひとまず厨房のみんなと話せたから満足かな」
「それなら良かった。数か月前にティアが付いてくるって言った時はまじか、って感じだったからなぁ」
「そ、それはその……イスルギが心配だったからというか、なんというか……」
「あの頃のティアは好意を言い出せずに空回りしていましたからねぇ」
「うっさい!」
「ふぁあ……ボクはまだ眠いからしばらく寝てるよ。着いたら起こしてね~」
「……そんじゃ、行きますか」
慣れ親しんだ者達との一時の別れを惜しみながら、俺達は長い旅路へと足を踏み出した。
必要な荷物を詰め、慣れ親しんだ部屋に別れを告げる。永遠の別れではないにしても、どこか寂しい気持ちが押し寄せてくる。
思えば、この約半年いろいろあったな。いきなり異世界に迷い込み、右も左もわからずに死にかけ、それでもなんとか食らいついて生きてきた。濃密でかけがえのない、そんな時間だった。
今日からは俺の人生の第三章だ。
「……よし、行くか!」
窓から差し込む朝日に背中を押されるように、俺は部屋の扉を閉めた。
▷▶▷
屋敷の外には見送ってくれる人が集まっていた。自分のためにこうやって来てくれていると思うと目頭が熱くなる。
「来たか」
「おうよ。なんかほぼ全員いるな」
見渡す感じ、ざっと二、三十人いる。全員がこの屋敷に関わりのある人たちだ。
「しばらく会えなくなるからな。みな、お前の旅立ちを見送りたいと、そう思っている」
「て、照れるな……」
「この繋がりはお前自身が紡いだものだ。それに———」
と言いかけたところで、
「イスルギー!!」
「うおっ!」
メアが思いっきり突進してきたのでそれを受け止める。
「向こうでも頑張って! それと……無茶しちゃだめだよ?」
「ああ、しない。約束だ」
「うん、ならいいの。元気でね」
そんな太陽のような笑顔に「ありがとう」と返し、ゆっくり頭を撫でる。
この手に広がる温もりから離れることを惜しいと思いつつも、そっと手を離した。
「祈願。無事を願っています」
「ありがとな。メアの事、頼むぞ」
「肯定。もちろんです」
いつの間にか傍にいたロイドとレイズと握手を交わし、今一度別れを実感する。向こうではこの二人の護衛もない。俺がしっかりしなきゃな。
「じゃあ、そろそろ行くわ」
「分かった。だがその前に手を出せ」
「ん?」
疑問を感じつつ、言われた通りに手を前に出す。その掌にフリードは両手を添え、何かを施した。
「これは保険だ。もし、本当にどうしようもない程の危機的状況に陥ったのなら、心の底から俺の名を叫べ。それに呼応して、いつでも俺が駆けつけよう」
「お、おおお……!」
そんな状態をつくらないことはもちろんだが、あるとないとじゃ安心感が違う。使うつもりはないが、心の拠り所にさせてもらおう。
「さんきゅー! 安心感がダンチだわ」
「とにかく、向こうでは油断をしすぎるなよ」
「おうともさ。そんでサクッと目的達成してくるわ」
俺の軽い言い方に「ふん」と、その顔に微笑を浮かばせ、
「期待、しているぞ」
そう一言告げる。フリードの口からでたその言葉、それはこれ以上ない激励のように思えた。
「ああ……ああ! それじゃあ、またな!」
再びみんなに別れを告げ、俺は移動用の馬車に乗り込んだ。
「もう心残りはないですか?」
「ない……って言ったら嘘になるけど、ないことにするよ。今はすげぇ気分がいいんだ」
「アタシも、ひとまず厨房のみんなと話せたから満足かな」
「それなら良かった。数か月前にティアが付いてくるって言った時はまじか、って感じだったからなぁ」
「そ、それはその……イスルギが心配だったからというか、なんというか……」
「あの頃のティアは好意を言い出せずに空回りしていましたからねぇ」
「うっさい!」
「ふぁあ……ボクはまだ眠いからしばらく寝てるよ。着いたら起こしてね~」
「……そんじゃ、行きますか」
慣れ親しんだ者達との一時の別れを惜しみながら、俺達は長い旅路へと足を踏み出した。
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