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第三章 王立学校
郷愁
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「人間にやばい奴が多い……か」
濡れた体をタオルで拭きながら、先程の話を思い出していた。
この世界で俺が恐ろしいと感じる点は、常識の違いだ。この世界の人間と触れ合うという経験が不足している以上、些細な齟齬で身に危険が及ぶかもしれない。
おそらくフリードは、そんな思想の違いを念頭に置かせるためにそう言ったのだろう。
「とにかく、行ってみないとだな」
どんな障害があろうと上手くやってみせる。アイツのために……
▷▶▷
「はぁ、長風呂したせいでもう眠いわ」
大きなあくびを天井へと吐き、ゆっくりと目を閉じる。湯疲れとでも言うべきか、気持ちのいい気だるさが体中に巡っている。
そういえば友人と行った卒業旅行でもこんな感じだったなと思い出す。あいつらは元気に大学生活を送っているのだろうか。
「まさか、俺が異世界生活を送っているとは思わないだろうな」
向こうでの俺は一体どんな扱いになっているのだろう。普通に考えれば行方不明だろうが、存在しない俺の幻影をいつまでも追わせるのは心が痛い。会いたくても、もう会えないんだ。
「父さんに母さん、それに姉ちゃんも……心配してるだろうな……」
出来ることなら、「俺は大丈夫。今まで育ててくれてありがとう」と言いたいが、それは叶わぬ願いだ。ホームシックは乗り越えたが、この手の後悔はいつまでも心に残り続けている。
「頭いてぇ……」
俺にはこの頭痛が単にのぼせただけなのか、はたまた悩みによるものなのかがわからなかった。
「……そういや、何か忘れてるような」
なんかやらなきゃいけない事があった気がするが、きっと気のせいだ。そうに違いない。
「思い出せないってことは重要なことじゃないはずだろ。寝よ……」
「おい健一! 何もう部屋を暗くして寝ようとしてるんだい!?」
「あー……」
やかましい鬼が扉をバンッ、と開けて入ってくる。その様子を見て、不本意ながら思い出してしまった。
「あー、じゃないよ! 約束を守ってくれよ!」
「えー、明日でいいか?」
「いいや、だめだね。今日食べさせてもらう」
「でもなぁ……」
正直やる気というか元気というか、活力がもう抜けきってしまっている。
「ふっふっふ、それならボクにも秘策があるんだよ」
部屋の明かりが点き鳴鬼の誇らしげな顔がはっきりと視界に映る。
「いいよ二人共。入ってきて」
「あのなぁ、どんな秘策があろうと俺は———」
言いかけたところで思わず言葉を失う。
「な……な……!」
直前までの眠気が嘘のように吹っ飛んだ。
「うぅ……やっぱり恥ずい……」
「ははは、照れますねぇ……」
これは……この格好は……
「ミニスカポリスに、ナース服だとっ!?」
「どうだいどうだい? キミの中の記憶を使って魔法で再現した服は。ちゃんと好きなジャンルからチョイスしてあげてるんだよ?」
「好きなジャンルって……おまっ、まさか!?」
思い当たる節はいっこしかない。そう、健全な男児ならお世話になるであろう、アレだ。
「おっと、口が滑った。じゃ、ごゆっくり~」
そそくさと逃げてった雷鳴鬼に言いたいことは色々あるが、まずはこう言いたい。
ありがとう。夢が叶ったよ。と
濡れた体をタオルで拭きながら、先程の話を思い出していた。
この世界で俺が恐ろしいと感じる点は、常識の違いだ。この世界の人間と触れ合うという経験が不足している以上、些細な齟齬で身に危険が及ぶかもしれない。
おそらくフリードは、そんな思想の違いを念頭に置かせるためにそう言ったのだろう。
「とにかく、行ってみないとだな」
どんな障害があろうと上手くやってみせる。アイツのために……
▷▶▷
「はぁ、長風呂したせいでもう眠いわ」
大きなあくびを天井へと吐き、ゆっくりと目を閉じる。湯疲れとでも言うべきか、気持ちのいい気だるさが体中に巡っている。
そういえば友人と行った卒業旅行でもこんな感じだったなと思い出す。あいつらは元気に大学生活を送っているのだろうか。
「まさか、俺が異世界生活を送っているとは思わないだろうな」
向こうでの俺は一体どんな扱いになっているのだろう。普通に考えれば行方不明だろうが、存在しない俺の幻影をいつまでも追わせるのは心が痛い。会いたくても、もう会えないんだ。
「父さんに母さん、それに姉ちゃんも……心配してるだろうな……」
出来ることなら、「俺は大丈夫。今まで育ててくれてありがとう」と言いたいが、それは叶わぬ願いだ。ホームシックは乗り越えたが、この手の後悔はいつまでも心に残り続けている。
「頭いてぇ……」
俺にはこの頭痛が単にのぼせただけなのか、はたまた悩みによるものなのかがわからなかった。
「……そういや、何か忘れてるような」
なんかやらなきゃいけない事があった気がするが、きっと気のせいだ。そうに違いない。
「思い出せないってことは重要なことじゃないはずだろ。寝よ……」
「おい健一! 何もう部屋を暗くして寝ようとしてるんだい!?」
「あー……」
やかましい鬼が扉をバンッ、と開けて入ってくる。その様子を見て、不本意ながら思い出してしまった。
「あー、じゃないよ! 約束を守ってくれよ!」
「えー、明日でいいか?」
「いいや、だめだね。今日食べさせてもらう」
「でもなぁ……」
正直やる気というか元気というか、活力がもう抜けきってしまっている。
「ふっふっふ、それならボクにも秘策があるんだよ」
部屋の明かりが点き鳴鬼の誇らしげな顔がはっきりと視界に映る。
「いいよ二人共。入ってきて」
「あのなぁ、どんな秘策があろうと俺は———」
言いかけたところで思わず言葉を失う。
「な……な……!」
直前までの眠気が嘘のように吹っ飛んだ。
「うぅ……やっぱり恥ずい……」
「ははは、照れますねぇ……」
これは……この格好は……
「ミニスカポリスに、ナース服だとっ!?」
「どうだいどうだい? キミの中の記憶を使って魔法で再現した服は。ちゃんと好きなジャンルからチョイスしてあげてるんだよ?」
「好きなジャンルって……おまっ、まさか!?」
思い当たる節はいっこしかない。そう、健全な男児ならお世話になるであろう、アレだ。
「おっと、口が滑った。じゃ、ごゆっくり~」
そそくさと逃げてった雷鳴鬼に言いたいことは色々あるが、まずはこう言いたい。
ありがとう。夢が叶ったよ。と
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