71 / 138
第三章 王立学校
郷愁
しおりを挟む
「人間にやばい奴が多い……か」
濡れた体をタオルで拭きながら、先程の話を思い出していた。
この世界で俺が恐ろしいと感じる点は、常識の違いだ。この世界の人間と触れ合うという経験が不足している以上、些細な齟齬で身に危険が及ぶかもしれない。
おそらくフリードは、そんな思想の違いを念頭に置かせるためにそう言ったのだろう。
「とにかく、行ってみないとだな」
どんな障害があろうと上手くやってみせる。アイツのために……
▷▶▷
「はぁ、長風呂したせいでもう眠いわ」
大きなあくびを天井へと吐き、ゆっくりと目を閉じる。湯疲れとでも言うべきか、気持ちのいい気だるさが体中に巡っている。
そういえば友人と行った卒業旅行でもこんな感じだったなと思い出す。あいつらは元気に大学生活を送っているのだろうか。
「まさか、俺が異世界生活を送っているとは思わないだろうな」
向こうでの俺は一体どんな扱いになっているのだろう。普通に考えれば行方不明だろうが、存在しない俺の幻影をいつまでも追わせるのは心が痛い。会いたくても、もう会えないんだ。
「父さんに母さん、それに姉ちゃんも……心配してるだろうな……」
出来ることなら、「俺は大丈夫。今まで育ててくれてありがとう」と言いたいが、それは叶わぬ願いだ。ホームシックは乗り越えたが、この手の後悔はいつまでも心に残り続けている。
「頭いてぇ……」
俺にはこの頭痛が単にのぼせただけなのか、はたまた悩みによるものなのかがわからなかった。
「……そういや、何か忘れてるような」
なんかやらなきゃいけない事があった気がするが、きっと気のせいだ。そうに違いない。
「思い出せないってことは重要なことじゃないはずだろ。寝よ……」
「おい健一! 何もう部屋を暗くして寝ようとしてるんだい!?」
「あー……」
やかましい鬼が扉をバンッ、と開けて入ってくる。その様子を見て、不本意ながら思い出してしまった。
「あー、じゃないよ! 約束を守ってくれよ!」
「えー、明日でいいか?」
「いいや、だめだね。今日食べさせてもらう」
「でもなぁ……」
正直やる気というか元気というか、活力がもう抜けきってしまっている。
「ふっふっふ、それならボクにも秘策があるんだよ」
部屋の明かりが点き鳴鬼の誇らしげな顔がはっきりと視界に映る。
「いいよ二人共。入ってきて」
「あのなぁ、どんな秘策があろうと俺は———」
言いかけたところで思わず言葉を失う。
「な……な……!」
直前までの眠気が嘘のように吹っ飛んだ。
「うぅ……やっぱり恥ずい……」
「ははは、照れますねぇ……」
これは……この格好は……
「ミニスカポリスに、ナース服だとっ!?」
「どうだいどうだい? キミの中の記憶を使って魔法で再現した服は。ちゃんと好きなジャンルからチョイスしてあげてるんだよ?」
「好きなジャンルって……おまっ、まさか!?」
思い当たる節はいっこしかない。そう、健全な男児ならお世話になるであろう、アレだ。
「おっと、口が滑った。じゃ、ごゆっくり~」
そそくさと逃げてった雷鳴鬼に言いたいことは色々あるが、まずはこう言いたい。
ありがとう。夢が叶ったよ。と
濡れた体をタオルで拭きながら、先程の話を思い出していた。
この世界で俺が恐ろしいと感じる点は、常識の違いだ。この世界の人間と触れ合うという経験が不足している以上、些細な齟齬で身に危険が及ぶかもしれない。
おそらくフリードは、そんな思想の違いを念頭に置かせるためにそう言ったのだろう。
「とにかく、行ってみないとだな」
どんな障害があろうと上手くやってみせる。アイツのために……
▷▶▷
「はぁ、長風呂したせいでもう眠いわ」
大きなあくびを天井へと吐き、ゆっくりと目を閉じる。湯疲れとでも言うべきか、気持ちのいい気だるさが体中に巡っている。
そういえば友人と行った卒業旅行でもこんな感じだったなと思い出す。あいつらは元気に大学生活を送っているのだろうか。
「まさか、俺が異世界生活を送っているとは思わないだろうな」
向こうでの俺は一体どんな扱いになっているのだろう。普通に考えれば行方不明だろうが、存在しない俺の幻影をいつまでも追わせるのは心が痛い。会いたくても、もう会えないんだ。
「父さんに母さん、それに姉ちゃんも……心配してるだろうな……」
出来ることなら、「俺は大丈夫。今まで育ててくれてありがとう」と言いたいが、それは叶わぬ願いだ。ホームシックは乗り越えたが、この手の後悔はいつまでも心に残り続けている。
「頭いてぇ……」
俺にはこの頭痛が単にのぼせただけなのか、はたまた悩みによるものなのかがわからなかった。
「……そういや、何か忘れてるような」
なんかやらなきゃいけない事があった気がするが、きっと気のせいだ。そうに違いない。
「思い出せないってことは重要なことじゃないはずだろ。寝よ……」
「おい健一! 何もう部屋を暗くして寝ようとしてるんだい!?」
「あー……」
やかましい鬼が扉をバンッ、と開けて入ってくる。その様子を見て、不本意ながら思い出してしまった。
「あー、じゃないよ! 約束を守ってくれよ!」
「えー、明日でいいか?」
「いいや、だめだね。今日食べさせてもらう」
「でもなぁ……」
正直やる気というか元気というか、活力がもう抜けきってしまっている。
「ふっふっふ、それならボクにも秘策があるんだよ」
部屋の明かりが点き鳴鬼の誇らしげな顔がはっきりと視界に映る。
「いいよ二人共。入ってきて」
「あのなぁ、どんな秘策があろうと俺は———」
言いかけたところで思わず言葉を失う。
「な……な……!」
直前までの眠気が嘘のように吹っ飛んだ。
「うぅ……やっぱり恥ずい……」
「ははは、照れますねぇ……」
これは……この格好は……
「ミニスカポリスに、ナース服だとっ!?」
「どうだいどうだい? キミの中の記憶を使って魔法で再現した服は。ちゃんと好きなジャンルからチョイスしてあげてるんだよ?」
「好きなジャンルって……おまっ、まさか!?」
思い当たる節はいっこしかない。そう、健全な男児ならお世話になるであろう、アレだ。
「おっと、口が滑った。じゃ、ごゆっくり~」
そそくさと逃げてった雷鳴鬼に言いたいことは色々あるが、まずはこう言いたい。
ありがとう。夢が叶ったよ。と
0
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~
トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。
旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。
この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。
こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる