異世界転移に夢と希望はあるのだろうか?

雪詠

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第三章 王立学校

王の根底

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 話し終えたフリードの顔は決して晴れ晴れとしたものではなかったが、俺にはどこかすっきりしたように見えた。そう思いたいのは、話したことで少しでも肩の荷を下ろしてほしいと願う俺の勝手な妄想だろうか。

 頼りがいがあって何でも出来そうな、無敵で不敵な吸血鬼の王の根本に初めて触れた気がした。

「これがお前と出会う前の話だ」

「そう……か……」

 果たして、俺はなんて声を掛けるべきだ?
 メアのお母さんと俺は実際に会ったわけじゃない。フリードが彼女をとても愛していたことは話を通して痛いほど伝わってきた。だからこそ、俺の勝手な想像で決めつけたくはないと思った。

「内容が内容だ。お前はそう深く考え込まなくていい」

「……」

 そう言うが、無関係をだと割り切るのも違う気がする。今の俺にできること、結局のところ、俺の当初の考えは変わらない。

「……俺、絶対リーリヤさんの残した物持って帰ってくるよ」

 愛した者の最後に立ち会えないという絶望は想像もつかない。想像すらしたくないものだ。

「一応手がかりとして、彼女が元々所属していた研究会を教えておこう」

「研究会?」

「王立高校では、二年次から研究会への所属が勧められる。リーリヤもその中の一つに所属していた」

「ああ、だから編入なのか」

「今となっては急ぐ必要もなかったのだがな」

「まぁまぁ。で、その研究会ってのは?」

「生態研究会というらしい。もっとも、当時はそこまで参加人数がいなかったらしい、今も残っているかは分からん」

「おいおい……なかったら困るぜ……」

 研究会が無ければ実質、手がかりがリーリヤさんの名前のみになる。最初はそれだけで臨むつもりだったが、他にヒントになりそうなものがあるなら別だ。

「とにかく、研究会があれば参加しろ。そこに恐らく金庫があるはずだ」

「仮によ、金庫が見つかってもどうやって持ち帰ればいいんだ?」

「壊せ」

「いやいやいや! 流石にそんな大胆にはできないだろ!」

「残っていたとしても、開けられる奴はもういない。気にせず無理やりこじ開けろ」

「たしかに……そうだけどさ……」

 向こうのシステムがいまいちわかっていない以上、ここであれこれ考えても無駄か。金庫が部屋になってたり、なんてこともあるかもしれない。俺に求められてるのは臨機応変に対応することだ。

「後は……そうだな、人間には気をつけろ」

「それは安心してくれ。これでもバレないようにするのは得意な方なんだ。それに、お前の強制命令もあるしな」

「いや、それもそうだが、そちらではない」

「うん?」

「俺が懸念しているのは人間自体の事だ」

「どういうことだってばよ?」

「あの国の人間は正直頭のおかしい連中が多い。王立の学校だと、その色はさらに濃いだろうな」

「頭がおかしいって……」

「これは比喩でもなんでもない。とにかく、危機管理だけは怠るなよ」

「お、おう……」

 最後に釘を刺して、フリードは先に風呂を出た。随分と長話を湯の中でしていたから、指がふやけてしまっている。それに、のぼせる寸前だ。流石にここまで長湯をするのはキツイ。

 火照った体を水風呂でクールダウンして、俺も風呂を出た。
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