異世界転移に夢と希望はあるのだろうか?

雪詠

文字の大きさ
上 下
61 / 138
第三章 王立学校

VS雷鳴鬼

しおりを挟む
「それはお前とメアの関係のことか?」

「な、なんでわかった?」

「昨日の夜、メアが俺のところに来て話したんだ」

「そ、そっか……」

 疲れてすぐに寝てしまったが、もうメアが報告済みだったのか。

「こうなるとは思っていた。それにメアに血を分け与えてやれるお前が、メアと婚約するのは好都合だしな」

「婚約……はまだ早いけど、もちろんメアには俺の一生を捧げるつもりだ」

「ならば別にいい。俺も他に誰かに嫁がせるくらいなら、お前に任せたかった」

 両肘を机につき、いつもと変わらない態度でそう言う。認められて嬉しい気持ちもあるが、俺をここまで信頼してくれていることに喜びと疑念が渦巻く。

「……」

「なんだ?」

「いやぁ、なんかお前って、異様に俺への評価が高いよな……」

「否定はしない。だが、ちゃんと考えたうえで判断している」

「お、おう……なんか照れるな」

 フリードはツンツンしてるわけではないが、節々にツンデレの波動を感じる。ツンデレというより、クーデレという言葉の方が適切か。とにかく、この顔面でそうやって言うものだから、俺が女だったらきっとイチコロだった。性別が変わってもきっとチョロいだろうしな。

「あ、そうだ。後で訓練場使っていいか? 雷鳴鬼と手合わせがしたい」

「構わん。好きに使え」

「サンキュー」

 ▷▶▷

「てなわけで、白黒はっきりつけようじゃねぇか」

「お願いまだ決まってないなぁ~どうしよっかなぁ~」

「なめやがって……」

 お互いにどちらが強いのかをはっきりさせるべく、雷鳴鬼と訓練場へ来た。試合の立会人にはそこら辺にいたロイドをとっつかまえて任せた。

「審判。私がこの試合の勝敗を判断します。どちらかが降参、または戦闘不能になったら試合終了です」

「オーケーだ」

「ボクはいつでも構わないよ」

 余裕の顔ぶりで着物をひらひらとさせ、こちらを煽る。その様子にイラっとしながらも、戦闘準備に入る。

「—————————纏雷」

 いつものルーティンを決め、魔法を行使する。その間にも雷鳴鬼には動きがない。こいつの戦闘スタイルは未知だが、あの着物姿で近接ができそうには見えない。警戒すべきは魔法だろう。

「よし、行くぞ」

 刀を構えて、なりふり構わず突進をする。初見でこの速度を完全に見切るのは至難の業だ。俺は確実に横薙ぎで捉えた……はずだったが、目に映ったのは信じられない光景だった。

「……なるほどね。雷を纏って速度をあげたのか。使い勝手はよさそうだね」

「なっ!?」

 急に消えたと思ったら、切っ先に雷鳴鬼が立っていた。それは大道芸のような驚異のバランス力で、一切のブレがない。

「ぐはっ!」

 そのまま刀を蹴り飛ばし、顔面に膝蹴りを食らわせられる。ひるんで潰れた視界を利用し、胴体へ蹴りを一発。その華奢な体からは想像もできない程の威力だ。

「くっ——————雷槍!」

 得物を失った俺は魔法攻撃へシフトする。洗練された俺の魔法。詠唱時の速さと威力にはそれなりの自信があったのだが、余裕の笑みで躱された。

「随分と速い技だね。……こうかな?」

「な……馬鹿な……」

 俺と同じ、いやそれ以上の大きさを持つ雷の槍。それを周囲に五つも浮かべて両手をこちらへ向ける。

「そーれ」

 掛け声とともに一斉に射出される。防御はあまり意味がない。躱すしかないのだが、

「があぁぁぁぁぁ!!」

 速度も俺と桁違い。一発目をなんとか避けるが、二の槍、三の槍と次々に迫る魔法を完全に避けることもできず、残りを全て受けてしまった。

「が……ぁ……」

「雷はボクの専売特許さ。同じ土俵で戦えるわけがないだろ」

 雷鳴鬼は勝ちを確信したのか、自慢げに話す。だが、俺は攻撃を耐えきった。纏雷のおかげで雷には耐性があったのが功を奏した。このチャンスを逃すわけにはいかない。

「―――雷砲」

 速度、威力で負けるなら、さらにその上をいくまでだ。

「ん?」

「―――雷槍」

 一発限りの大技。距離は十分。詠唱は間に合う。

「あー、それはちょっとまずいかも……ねっ!」

「疾雷照―――!!」

「――――――雷霆」

「……………!?」

 詠唱が完了する直前、信じられない速度で接近し、腹に掌底を食らった。意識がふっとぶ程の痛み。雷鳴鬼の腕にもたれる形でその場に倒れこみ、俺は敗北を悟った。

「君のネーミングに合わせて今作ったんだけど、どうかな?」

「く……もう、少し、、手加減、しろ」

「いやいやぁ、流石にあれはボクでも肝を冷やしたよ。でも、詠唱が長すぎるね。相手がよっぽど油断してるか、弱いかのどっちかじゃないと実用には向かないと思うよ。あと燃費悪すぎ」

 あらゆる攻撃のさらに上をいかれ、完膚なきまでにやられた。そのうえ、アドバイスもされるとか完敗もいいとこだ。

「く……俺の負けだ」

「決着。この勝負、雷鳴鬼様の勝ちとします」

「へっへーんだ。ほら、ボクの方が強いだろ? だろだろ~?」

「ああ、認めるよ。お前は強い。悔しいけどな」

「やけに素直だね」

「ま、いい意味でも悪い意味でも俺は負け続けてるからな」

 雷鳴鬼の強さは本物だ。体感だが、ロイドとかともいい勝負しそうだ。まぁロイドの場合は俺と違って魔法をたくさん使えるから、違った結果になりそうだけど。

「てことで……お願いを聞いてもらおうかねぇ?」

 今日一番のにやけ面をして、何かを企む。掌底を食らった腹をさすりながら、俺は息を飲むのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~

トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。 旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。 この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。 こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

処理中です...