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第三章 王立学校
VS雷鳴鬼
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「それはお前とメアの関係のことか?」
「な、なんでわかった?」
「昨日の夜、メアが俺のところに来て話したんだ」
「そ、そっか……」
疲れてすぐに寝てしまったが、もうメアが報告済みだったのか。
「こうなるとは思っていた。それにメアに血を分け与えてやれるお前が、メアと婚約するのは好都合だしな」
「婚約……はまだ早いけど、もちろんメアには俺の一生を捧げるつもりだ」
「ならば別にいい。俺も他に誰かに嫁がせるくらいなら、お前に任せたかった」
両肘を机につき、いつもと変わらない態度でそう言う。認められて嬉しい気持ちもあるが、俺をここまで信頼してくれていることに喜びと疑念が渦巻く。
「……」
「なんだ?」
「いやぁ、なんかお前って、異様に俺への評価が高いよな……」
「否定はしない。だが、ちゃんと考えたうえで判断している」
「お、おう……なんか照れるな」
フリードはツンツンしてるわけではないが、節々にツンデレの波動を感じる。ツンデレというより、クーデレという言葉の方が適切か。とにかく、この顔面でそうやって言うものだから、俺が女だったらきっとイチコロだった。性別が変わってもきっとチョロいだろうしな。
「あ、そうだ。後で訓練場使っていいか? 雷鳴鬼と手合わせがしたい」
「構わん。好きに使え」
「サンキュー」
▷▶▷
「てなわけで、白黒はっきりつけようじゃねぇか」
「お願いまだ決まってないなぁ~どうしよっかなぁ~」
「なめやがって……」
お互いにどちらが強いのかをはっきりさせるべく、雷鳴鬼と訓練場へ来た。試合の立会人にはそこら辺にいたロイドをとっつかまえて任せた。
「審判。私がこの試合の勝敗を判断します。どちらかが降参、または戦闘不能になったら試合終了です」
「オーケーだ」
「ボクはいつでも構わないよ」
余裕の顔ぶりで着物をひらひらとさせ、こちらを煽る。その様子にイラっとしながらも、戦闘準備に入る。
「—————————纏雷」
いつものルーティンを決め、魔法を行使する。その間にも雷鳴鬼には動きがない。こいつの戦闘スタイルは未知だが、あの着物姿で近接ができそうには見えない。警戒すべきは魔法だろう。
「よし、行くぞ」
刀を構えて、なりふり構わず突進をする。初見でこの速度を完全に見切るのは至難の業だ。俺は確実に横薙ぎで捉えた……はずだったが、目に映ったのは信じられない光景だった。
「……なるほどね。雷を纏って速度をあげたのか。使い勝手はよさそうだね」
「なっ!?」
急に消えたと思ったら、切っ先に雷鳴鬼が立っていた。それは大道芸のような驚異のバランス力で、一切のブレがない。
「ぐはっ!」
そのまま刀を蹴り飛ばし、顔面に膝蹴りを食らわせられる。ひるんで潰れた視界を利用し、胴体へ蹴りを一発。その華奢な体からは想像もできない程の威力だ。
「くっ——————雷槍!」
得物を失った俺は魔法攻撃へシフトする。洗練された俺の魔法。詠唱時の速さと威力にはそれなりの自信があったのだが、余裕の笑みで躱された。
「随分と速い技だね。……こうかな?」
「な……馬鹿な……」
俺と同じ、いやそれ以上の大きさを持つ雷の槍。それを周囲に五つも浮かべて両手をこちらへ向ける。
「そーれ」
掛け声とともに一斉に射出される。防御はあまり意味がない。躱すしかないのだが、
「があぁぁぁぁぁ!!」
速度も俺と桁違い。一発目をなんとか避けるが、二の槍、三の槍と次々に迫る魔法を完全に避けることもできず、残りを全て受けてしまった。
「が……ぁ……」
「雷はボクの専売特許さ。同じ土俵で戦えるわけがないだろ」
雷鳴鬼は勝ちを確信したのか、自慢げに話す。だが、俺は攻撃を耐えきった。纏雷のおかげで雷には耐性があったのが功を奏した。このチャンスを逃すわけにはいかない。
「―――雷砲」
速度、威力で負けるなら、さらにその上をいくまでだ。
「ん?」
「―――雷槍」
一発限りの大技。距離は十分。詠唱は間に合う。
「あー、それはちょっとまずいかも……ねっ!」
「疾雷照―――!!」
「――――――雷霆」
「……………!?」
詠唱が完了する直前、信じられない速度で接近し、腹に掌底を食らった。意識がふっとぶ程の痛み。雷鳴鬼の腕にもたれる形でその場に倒れこみ、俺は敗北を悟った。
「君のネーミングに合わせて今作ったんだけど、どうかな?」
「く……もう、少し、、手加減、しろ」
「いやいやぁ、流石にあれはボクでも肝を冷やしたよ。でも、詠唱が長すぎるね。相手がよっぽど油断してるか、弱いかのどっちかじゃないと実用には向かないと思うよ。あと燃費悪すぎ」
あらゆる攻撃のさらに上をいかれ、完膚なきまでにやられた。そのうえ、アドバイスもされるとか完敗もいいとこだ。
「く……俺の負けだ」
「決着。この勝負、雷鳴鬼様の勝ちとします」
「へっへーんだ。ほら、ボクの方が強いだろ? だろだろ~?」
「ああ、認めるよ。お前は強い。悔しいけどな」
「やけに素直だね」
「ま、いい意味でも悪い意味でも俺は負け続けてるからな」
雷鳴鬼の強さは本物だ。体感だが、ロイドとかともいい勝負しそうだ。まぁロイドの場合は俺と違って魔法をたくさん使えるから、違った結果になりそうだけど。
「てことで……お願いを聞いてもらおうかねぇ?」
今日一番のにやけ面をして、何かを企む。掌底を食らった腹をさすりながら、俺は息を飲むのだった。
「な、なんでわかった?」
「昨日の夜、メアが俺のところに来て話したんだ」
「そ、そっか……」
疲れてすぐに寝てしまったが、もうメアが報告済みだったのか。
「こうなるとは思っていた。それにメアに血を分け与えてやれるお前が、メアと婚約するのは好都合だしな」
「婚約……はまだ早いけど、もちろんメアには俺の一生を捧げるつもりだ」
「ならば別にいい。俺も他に誰かに嫁がせるくらいなら、お前に任せたかった」
両肘を机につき、いつもと変わらない態度でそう言う。認められて嬉しい気持ちもあるが、俺をここまで信頼してくれていることに喜びと疑念が渦巻く。
「……」
「なんだ?」
「いやぁ、なんかお前って、異様に俺への評価が高いよな……」
「否定はしない。だが、ちゃんと考えたうえで判断している」
「お、おう……なんか照れるな」
フリードはツンツンしてるわけではないが、節々にツンデレの波動を感じる。ツンデレというより、クーデレという言葉の方が適切か。とにかく、この顔面でそうやって言うものだから、俺が女だったらきっとイチコロだった。性別が変わってもきっとチョロいだろうしな。
「あ、そうだ。後で訓練場使っていいか? 雷鳴鬼と手合わせがしたい」
「構わん。好きに使え」
「サンキュー」
▷▶▷
「てなわけで、白黒はっきりつけようじゃねぇか」
「お願いまだ決まってないなぁ~どうしよっかなぁ~」
「なめやがって……」
お互いにどちらが強いのかをはっきりさせるべく、雷鳴鬼と訓練場へ来た。試合の立会人にはそこら辺にいたロイドをとっつかまえて任せた。
「審判。私がこの試合の勝敗を判断します。どちらかが降参、または戦闘不能になったら試合終了です」
「オーケーだ」
「ボクはいつでも構わないよ」
余裕の顔ぶりで着物をひらひらとさせ、こちらを煽る。その様子にイラっとしながらも、戦闘準備に入る。
「—————————纏雷」
いつものルーティンを決め、魔法を行使する。その間にも雷鳴鬼には動きがない。こいつの戦闘スタイルは未知だが、あの着物姿で近接ができそうには見えない。警戒すべきは魔法だろう。
「よし、行くぞ」
刀を構えて、なりふり構わず突進をする。初見でこの速度を完全に見切るのは至難の業だ。俺は確実に横薙ぎで捉えた……はずだったが、目に映ったのは信じられない光景だった。
「……なるほどね。雷を纏って速度をあげたのか。使い勝手はよさそうだね」
「なっ!?」
急に消えたと思ったら、切っ先に雷鳴鬼が立っていた。それは大道芸のような驚異のバランス力で、一切のブレがない。
「ぐはっ!」
そのまま刀を蹴り飛ばし、顔面に膝蹴りを食らわせられる。ひるんで潰れた視界を利用し、胴体へ蹴りを一発。その華奢な体からは想像もできない程の威力だ。
「くっ——————雷槍!」
得物を失った俺は魔法攻撃へシフトする。洗練された俺の魔法。詠唱時の速さと威力にはそれなりの自信があったのだが、余裕の笑みで躱された。
「随分と速い技だね。……こうかな?」
「な……馬鹿な……」
俺と同じ、いやそれ以上の大きさを持つ雷の槍。それを周囲に五つも浮かべて両手をこちらへ向ける。
「そーれ」
掛け声とともに一斉に射出される。防御はあまり意味がない。躱すしかないのだが、
「があぁぁぁぁぁ!!」
速度も俺と桁違い。一発目をなんとか避けるが、二の槍、三の槍と次々に迫る魔法を完全に避けることもできず、残りを全て受けてしまった。
「が……ぁ……」
「雷はボクの専売特許さ。同じ土俵で戦えるわけがないだろ」
雷鳴鬼は勝ちを確信したのか、自慢げに話す。だが、俺は攻撃を耐えきった。纏雷のおかげで雷には耐性があったのが功を奏した。このチャンスを逃すわけにはいかない。
「―――雷砲」
速度、威力で負けるなら、さらにその上をいくまでだ。
「ん?」
「―――雷槍」
一発限りの大技。距離は十分。詠唱は間に合う。
「あー、それはちょっとまずいかも……ねっ!」
「疾雷照―――!!」
「――――――雷霆」
「……………!?」
詠唱が完了する直前、信じられない速度で接近し、腹に掌底を食らった。意識がふっとぶ程の痛み。雷鳴鬼の腕にもたれる形でその場に倒れこみ、俺は敗北を悟った。
「君のネーミングに合わせて今作ったんだけど、どうかな?」
「く……もう、少し、、手加減、しろ」
「いやいやぁ、流石にあれはボクでも肝を冷やしたよ。でも、詠唱が長すぎるね。相手がよっぽど油断してるか、弱いかのどっちかじゃないと実用には向かないと思うよ。あと燃費悪すぎ」
あらゆる攻撃のさらに上をいかれ、完膚なきまでにやられた。そのうえ、アドバイスもされるとか完敗もいいとこだ。
「く……俺の負けだ」
「決着。この勝負、雷鳴鬼様の勝ちとします」
「へっへーんだ。ほら、ボクの方が強いだろ? だろだろ~?」
「ああ、認めるよ。お前は強い。悔しいけどな」
「やけに素直だね」
「ま、いい意味でも悪い意味でも俺は負け続けてるからな」
雷鳴鬼の強さは本物だ。体感だが、ロイドとかともいい勝負しそうだ。まぁロイドの場合は俺と違って魔法をたくさん使えるから、違った結果になりそうだけど。
「てことで……お願いを聞いてもらおうかねぇ?」
今日一番のにやけ面をして、何かを企む。掌底を食らった腹をさすりながら、俺は息を飲むのだった。
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