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第三章 王立学校

不吉な未来

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 世界が切り替わったと思ったら、急に何も見えなくなった。しかし、音は聞こえる。クチュクチュと、聞きなじみのない音が響いて、とてつもなく不快な気分だ。

(この感じ……前にも……)

 そう、あれは雷鳴鬼と初めて会ったときだ。何かがずっと引っかかっていたが、確かに俺は雷鳴鬼を見たことがあった。あの場所も見覚えがあったし、やり取りにも既視感があった。すっかり記憶から抜け落ちてしまっていたが、今思い出した。

『もう……やめてくれ……』

 真っ暗な場所に男の声が微かに漏れる。とても弱々しくて、絶望に染まったかのような声色だ。それでもまだ、不快な音が鳴り続け、ボソボソと男とは別の声が聞こえる。

(男は俺か……? でももう一人はわからねぇな……)

 耳打ちをされているのだろうか、俯瞰視点にいる俺には誰かが何かを耳元で話していることくらいしかわからない。

(一体何をしてるんだ?)

 具体的な内容は一切わからない。憔悴した俺がいて、誰かに何かをやられていると考えるのが妥当だろう。以前の経験、夢にしては思考がはっきりしているこの状況、ここから考えるに——―

 周囲から光が湧き出て、意識が現実へと戻った。


 ※※※※※※※※※※※※


「———ってのが俺が夢で見た内容だ。……なぁ、これってやっぱり……」

「……未来予知、それに近い能力だろう」

 前回とは違って、今回は起きた後に明確に夢の記憶が残っていた。そしてそのことをフリードに話したのだが、結論は俺と同じだった。

「前にあった夢のループも関係してんのかな」

「時間の概念が関わっているからその可能性はある。例えばだが、幾つもある分岐した過去や未来を切り取って見ることができる、とかだな」

「な、なんか難しいな……」

 単純に未来視であれば能力として申し分ないし、分かりやすいのだが、どうやら過去も覗けるときたもんだ。しかもありえたかもしれない可能性を見るといったもので、かなり複雑だ。詳細なことを把握するのが難しい以上、外殻を知れただけでよしとするべきだろうか。

「あとは……まぁこれはまだか」

「ん、何のことだ?」

「いや、何でもない。気にするな」

「逆にもっと気になるだろ!」

「……その時がくれば分かる。そしたらあらためて話してやろう」

「なんだそれ」

 意味深なことを言いかけてそのままとか、気になって夜寝れなくなったらどうしてくれるんだ。

「とにかく、それがこれから起こる未来だとすると……言いたいことは分かるな?」

「俺が誰かに襲われるから気をつけろってことだな」

 本当ならそれが誰かとかが分かれば対策のしようがあるのだが、生憎切り取られた場面が悪かった。暗くてロクに見えなかったし、声も聞こえなかった。

「事が起こる可能性が高いのは人間の国にいるときだろう。くれぐれも油断はするな」

「ああ、わかってるよ」

 不吉な未来が待ち構えているという事実は認めたくはないが、それを事前に知れたということを喜ぶべきだろう。

「……そうだ、フリード」

「なんだ?」

「もう一個話したいことがあるんだ———」


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