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第三章 王立学校

諦めは早い方が良い時もある

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 今、俺がするべき最適解は何であろうか。そもそも、正解なんてものがあるのかさえ分からない。偶然だとか事故だとか、そんな言い訳が通るとは到底思えない。逃げも悪手、開き直りはリスクが高い。こんなの八方塞がりだ。ゆえに、どう転ぶか分からないので、

「あー……」

 完全に受け身になり、出方を窺って臨機応変に。これが最善だろう。

「ご主人様? 帰宅して早々それは、いくら何でもないんじゃないでしょうか」

「アタシ達にはもう怒る理由もある。言い訳は無用だぜ?」

「えっ、それってどういう……」

 メアが別のことに食いついている。しかし、そんなことは関係ない。問題はこの二人だ。傍から見ればこれは完全に浮気現場だ。未遂とはいえ、ここからの逆転は無理に等しい。

「これは……その……だな」

「とりあえず……離れたらどうですか?」

「ご、ごもっともで……」

 シャロは不気味なくらいに笑顔だ。だが、その眼には何か黒いものが宿っているように見える。

「で、説明してもらえますか?」

「は、はい……」

 とりあえず、この部屋に来てからあったことを洗いざらい全て話した。俺と雷鳴鬼は正座をして、俯きながら話す。嘘を言おうにも、何故かすぐにバレる気がしてそんな余裕ができなかった。

「———で、その時にドアが開いたということです」

「ふーん、でもやめるタイミングはいつでもあったよな」

「恋人のいる殿方相手にそんな挑発をする雷鳴鬼さんもいけないですけど、それにまんまと乗るご主人様もご主人様です」

「え、恋人? えぇ?」

 ごめんなメア。今その説明はできそうにない。自分の身でいっぱいいっぱいなんだ。

「本当にごめんなさい。なんでもします、だからどうかお慈悲を」

 頭をぴったりと床につけ、反省のポーズをしっかりと取る。これで許されるとは思っていないが、まずは謝意を示すところからだ。

「だってよ、どうするシャロ?」

「何でもって、本当に何でもですか?」

「あ、ああ。もちろんだ」

 口から滑り落ちただけだが、ここで引くわけにはいかない。

「何でも喜んでやらせていただきます」

「……いいでしょう。では、こういうのはどうですか?」

 目の前に人差し指を立て、シャロは提案する。

「仮にもわたくし達はご主人様の奴隷という立場でもあります。なのでそれを一日だけ逆転させるのはどうでしょうか」

「えっと……それってどういう……」

「つまり、アタシ達がそれぞれ一日ずつ、イスルギを好きにしていい日をもらうってことか」

「はい、そうです。あ、ちなみにその日に限り、ご主人様の拒否権は無くなりますので」

「それはあまりにも———」

「何か?」

「いえ、何でもないです……」

 何でもとは言ったが、お願いを一つ聞くくらいの心づもりでいた。だが、どうやらそれでは足りないらしい。これも戒めとして受け入れるしかないのか。

「はは、健一かわいそー」

「お前な……」

「雷鳴鬼さんはちょっとこっちに来てください」

「えっ」

「いいですね?」

「う、分かった……」

 シャロとティアに雷鳴鬼が連れていかれ、部屋には俺とメアの二人が残る。さて、何から話したものか。

「えぇっと……いろいろ聞きたいことはあるけど、まずは合格おめでとう!」

「お、おお……」

 予想外の祝福に戸惑う。でも、こうして言われるとやっぱ嬉しい。

「ありがとうな。受かったのは紛れもなくメアのおかげだ」

「そ、そうだよ! 私のおかげなんだから、もっとありがたく思って!」

「ああ、今度お礼がしたい。何かして欲しい事とかあるか?」

「して欲しい事……」

「思いついたときでいいから。考えといてくれ」

「……その前に」

「ん?」

「さっきのティアさん達との事を教えて」

 頬を膨らませ、幼い表情のままそう聞いてくる。俺はそんなメアに、向こうであった出来事を掻い摘んで話し始めた。

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