57 / 133
第三章 王立学校
諦めは早い方が良い時もある
しおりを挟む
今、俺がするべき最適解は何であろうか。そもそも、正解なんてものがあるのかさえ分からない。偶然だとか事故だとか、そんな言い訳が通るとは到底思えない。逃げも悪手、開き直りはリスクが高い。こんなの八方塞がりだ。ゆえに、どう転ぶか分からないので、
「あー……」
完全に受け身になり、出方を窺って臨機応変に。これが最善だろう。
「ご主人様? 帰宅して早々それは、いくら何でもないんじゃないでしょうか」
「アタシ達にはもう怒る理由もある。言い訳は無用だぜ?」
「えっ、それってどういう……」
メアが別のことに食いついている。しかし、そんなことは関係ない。問題はこの二人だ。傍から見ればこれは完全に浮気現場だ。未遂とはいえ、ここからの逆転は無理に等しい。
「これは……その……だな」
「とりあえず……離れたらどうですか?」
「ご、ごもっともで……」
シャロは不気味なくらいに笑顔だ。だが、その眼には何か黒いものが宿っているように見える。
「で、説明してもらえますか?」
「は、はい……」
とりあえず、この部屋に来てからあったことを洗いざらい全て話した。俺と雷鳴鬼は正座をして、俯きながら話す。嘘を言おうにも、何故かすぐにバレる気がしてそんな余裕ができなかった。
「———で、その時にドアが開いたということです」
「ふーん、でもやめるタイミングはいつでもあったよな」
「恋人のいる殿方相手にそんな挑発をする雷鳴鬼さんもいけないですけど、それにまんまと乗るご主人様もご主人様です」
「え、恋人? えぇ?」
ごめんなメア。今その説明はできそうにない。自分の身でいっぱいいっぱいなんだ。
「本当にごめんなさい。なんでもします、だからどうかお慈悲を」
頭をぴったりと床につけ、反省のポーズをしっかりと取る。これで許されるとは思っていないが、まずは謝意を示すところからだ。
「だってよ、どうするシャロ?」
「何でもって、本当に何でもですか?」
「あ、ああ。もちろんだ」
口から滑り落ちただけだが、ここで引くわけにはいかない。
「何でも喜んでやらせていただきます」
「……いいでしょう。では、こういうのはどうですか?」
目の前に人差し指を立て、シャロは提案する。
「仮にもわたくし達はご主人様の奴隷という立場でもあります。なのでそれを一日だけ逆転させるのはどうでしょうか」
「えっと……それってどういう……」
「つまり、アタシ達がそれぞれ一日ずつ、イスルギを好きにしていい日をもらうってことか」
「はい、そうです。あ、ちなみにその日に限り、ご主人様の拒否権は無くなりますので」
「それはあまりにも———」
「何か?」
「いえ、何でもないです……」
何でもとは言ったが、お願いを一つ聞くくらいの心づもりでいた。だが、どうやらそれでは足りないらしい。これも戒めとして受け入れるしかないのか。
「はは、健一かわいそー」
「お前な……」
「雷鳴鬼さんはちょっとこっちに来てください」
「えっ」
「いいですね?」
「う、分かった……」
シャロとティアに雷鳴鬼が連れていかれ、部屋には俺とメアの二人が残る。さて、何から話したものか。
「えぇっと……いろいろ聞きたいことはあるけど、まずは合格おめでとう!」
「お、おお……」
予想外の祝福に戸惑う。でも、こうして言われるとやっぱ嬉しい。
「ありがとうな。受かったのは紛れもなくメアのおかげだ」
「そ、そうだよ! 私のおかげなんだから、もっとありがたく思って!」
「ああ、今度お礼がしたい。何かして欲しい事とかあるか?」
「して欲しい事……」
「思いついたときでいいから。考えといてくれ」
「……その前に」
「ん?」
「さっきのティアさん達との事を教えて」
頬を膨らませ、幼い表情のままそう聞いてくる。俺はそんなメアに、向こうであった出来事を掻い摘んで話し始めた。
「あー……」
完全に受け身になり、出方を窺って臨機応変に。これが最善だろう。
「ご主人様? 帰宅して早々それは、いくら何でもないんじゃないでしょうか」
「アタシ達にはもう怒る理由もある。言い訳は無用だぜ?」
「えっ、それってどういう……」
メアが別のことに食いついている。しかし、そんなことは関係ない。問題はこの二人だ。傍から見ればこれは完全に浮気現場だ。未遂とはいえ、ここからの逆転は無理に等しい。
「これは……その……だな」
「とりあえず……離れたらどうですか?」
「ご、ごもっともで……」
シャロは不気味なくらいに笑顔だ。だが、その眼には何か黒いものが宿っているように見える。
「で、説明してもらえますか?」
「は、はい……」
とりあえず、この部屋に来てからあったことを洗いざらい全て話した。俺と雷鳴鬼は正座をして、俯きながら話す。嘘を言おうにも、何故かすぐにバレる気がしてそんな余裕ができなかった。
「———で、その時にドアが開いたということです」
「ふーん、でもやめるタイミングはいつでもあったよな」
「恋人のいる殿方相手にそんな挑発をする雷鳴鬼さんもいけないですけど、それにまんまと乗るご主人様もご主人様です」
「え、恋人? えぇ?」
ごめんなメア。今その説明はできそうにない。自分の身でいっぱいいっぱいなんだ。
「本当にごめんなさい。なんでもします、だからどうかお慈悲を」
頭をぴったりと床につけ、反省のポーズをしっかりと取る。これで許されるとは思っていないが、まずは謝意を示すところからだ。
「だってよ、どうするシャロ?」
「何でもって、本当に何でもですか?」
「あ、ああ。もちろんだ」
口から滑り落ちただけだが、ここで引くわけにはいかない。
「何でも喜んでやらせていただきます」
「……いいでしょう。では、こういうのはどうですか?」
目の前に人差し指を立て、シャロは提案する。
「仮にもわたくし達はご主人様の奴隷という立場でもあります。なのでそれを一日だけ逆転させるのはどうでしょうか」
「えっと……それってどういう……」
「つまり、アタシ達がそれぞれ一日ずつ、イスルギを好きにしていい日をもらうってことか」
「はい、そうです。あ、ちなみにその日に限り、ご主人様の拒否権は無くなりますので」
「それはあまりにも———」
「何か?」
「いえ、何でもないです……」
何でもとは言ったが、お願いを一つ聞くくらいの心づもりでいた。だが、どうやらそれでは足りないらしい。これも戒めとして受け入れるしかないのか。
「はは、健一かわいそー」
「お前な……」
「雷鳴鬼さんはちょっとこっちに来てください」
「えっ」
「いいですね?」
「う、分かった……」
シャロとティアに雷鳴鬼が連れていかれ、部屋には俺とメアの二人が残る。さて、何から話したものか。
「えぇっと……いろいろ聞きたいことはあるけど、まずは合格おめでとう!」
「お、おお……」
予想外の祝福に戸惑う。でも、こうして言われるとやっぱ嬉しい。
「ありがとうな。受かったのは紛れもなくメアのおかげだ」
「そ、そうだよ! 私のおかげなんだから、もっとありがたく思って!」
「ああ、今度お礼がしたい。何かして欲しい事とかあるか?」
「して欲しい事……」
「思いついたときでいいから。考えといてくれ」
「……その前に」
「ん?」
「さっきのティアさん達との事を教えて」
頬を膨らませ、幼い表情のままそう聞いてくる。俺はそんなメアに、向こうであった出来事を掻い摘んで話し始めた。
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
男女比1:10000の貞操逆転世界に転生したんだが、俺だけ前の世界のインターネットにアクセスできるようなので美少女配信者グループを作る
電脳ピエロ
恋愛
男女比1:10000の世界で生きる主人公、新田 純。
女性に襲われる恐怖から引きこもっていた彼はあるとき思い出す。自分が転生者であり、ここが貞操の逆転した世界だということを。
「そうだ……俺は女神様からもらったチートで前にいた世界のネットにアクセスできるはず」
純は彼が元いた世界のインターネットにアクセスできる能力を授かったことを思い出す。そのとき純はあることを閃いた。
「もしも、この世界の美少女たちで配信者グループを作って、俺が元いた世界のネットで配信をしたら……」
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた
楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。
この作品はハーメルン様でも掲載しています。
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…
小桃
ファンタジー
商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。
1.最強になれる種族
2.無限収納
3.変幻自在
4.並列思考
5.スキルコピー
5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。
これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅
聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。
Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~
トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。
旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。
この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。
こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。
豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜
自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成!
理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」
これが翔の望んだ力だった。
スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!?
ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる