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第三章 王立学校
決意の夜
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二人からはいつも通りの、いや、いつもとは少し違った、真剣さを孕んだ言葉が発せられる。そこには確かに覚悟のようなものが感じられて、俺も改めて向き合い直す。
「ああ、俺も話したいことがあるんだ」
もう後回しにするのはナシだ。真正面から気持ちをぶつける……と思ったがうまく言葉が出てこない。
「…………」
「…………」
「…………」
何をどう話すか、どこから話せばいいか、お互いに様子を窺っていて一時の静寂が訪れる。そんな中、シャロが切り出した。
「夕食前に雷鳴鬼さんが言っていたことなんですけど……」
雷鳴鬼が勝手に俺の心を暴露したあれだ。第三者を通じた告白、俺にとっては苦い記憶だ。
「……あんな伝え方になったのはアレだけど、紛れもない俺の本心だ」
「それって……アタシたち二人とも好きってことか?」
「ああ、そうだ」
濁さずにありのままの気持ちを伝える。
同時に二人を好きになるのは間違っているかもしれない。でも、俺は二人が好きだ。たまらなく好きなんだ。
シャロは俺を何度も励まして、慰めて、それで背中を押してくれた。いつも傍にいて、それがとても心地が良くなっていた。小悪魔的で献身的、そんな姿に惹かれた。
ティアは初め、友達という感覚が近かった。でも、夢で、目の前で失ってから気が付いた。いつの間にか、俺には無くてはならない存在になっていたんだ。
「好きだ。誰にも渡したくない。これからも俺の傍にいて欲しい。だから―――」
言いかけたところで、シャロが口をはさむ。
「わたくしは……シャロはご主人様に求められるなら何番目でもいいと思っていました」
「……」
「ですが今は、一番がいい。一番に愛して、一番に考えて、一番に求めてほしいと、そう思います」
「シャロ……」
その思いは俺が一番分かる。誰かに気持ちが向いていると思うだけで胸が苦しくなる。なのに自分だけがそれを認めてもらおうだなんて、強欲で虫が良い話なんてことは理解している。
「アタシも……こうして面と向かって言うのは初めてだけど、シャロと同じだ」
「ティア……」
ティアから今まで、直接思いを告げられたことはない。ないのだが、流石の俺でもその気持ちは察していた。
「正直、こうやってご主人様の返事を急いだのは、焦っていたというのもあります」
「焦っていた?」
「はい。四月から学校に行き始めて、もしそこで誰かに告白されたら、誰かにご主人様の心の一番を取られたら……と考えたら、いてもたってもいられず……」
「なる……ほどな……」
人と関わるから、もちろん出会いもあるわけで、シャロはそれが気がかりなのだろう。
「ご主人様が誰を、何人を愛そうと、シャロは構いません。ですが、最初はシャロがいい。なのでどうしても、学校へ行く前に決めて欲しかったんです」
なんだかんだいつも有耶無耶になっていた話を、こうしてちゃんとするのはそういった理由があったのか。シャロらしくない、とは思ったがそれなら納得だ。
「アタシは……シャロほど受け入れられたわけじゃない。昔から恋人ができるなら一対一がいいって思ってた。この世界では結構珍しいけど、それでもそっちの方がいいって」
「ご、ごめん……」
無理もない。仮にこの世界で一夫多妻、一妻多夫、愛人を持つことが一般的だったとしても、みんながみんな、その考えではないだろう。
「でもっ……だけど、そんなことどうでもいいくらいにイスルギが好きだ。特別な存在になりたい。自覚したのは最近だけど、アタシを受け入れて、引き寄せて、抱きしめて欲しいんだ」
「シャロは、前々からティアの気持ちに気づいていました。なので提案したんです。誰よりも先に二人で席を奪って、それから一番を取り合おうって」
「アタシは……アタシ達は、たとえ後から何人増えようと、揺るがない絶対が欲しかったんだ」
「ええと……つまり、どういうことだ?」
「つまり……返事はこうです」
「アタシを———」
「シャロを———」
「「あなたの恋人にしてください」」
二人を好きだと言い、求めた俺を認めると、そう返事をする。宣言したからには責任をとるつもりだったが、そうだとしてもやはり申し訳なさはあるので、
「いい……のか? 自分でも結構最低な事言ったつもりだけど……」
「一夫多妻なんてよくあります。それでも、ちゃんと平等に扱ってくれなきゃ駄目ですよ?」
「ないがしろにしたら許さないからな」
「ああ……ああ、二人をきっと幸せにする! だから……これからもよろしく頼む!」
こんなにも俺を考えて、好いて、愛してくれている。俺はこの二人を絶対に離さない。そう決意した。
「……ところで」
「ん、なんだ?」
「晴れて恋人同士になったという事で、もういいですよね?」
「いいって何が……」
「あ、アタシもやる……のか?」
「あら、初めてはシャロがもらってもいいんですかぁ?」
「わ、分かったよ!」
「ふ、二人とも……?」
シャロとティアはゆっくりと浴衣を脱ぎ、下着のみの姿になる。
「愛して……くれるんですよね?」
「に、逃がさないからなっ」
魅惑的な姿に胸がドキドキする。今までとは違う関係、触れても、抱きしめてもいいんだという現実が脳を刺激して、理性を支配する。
「……ここで逃げるのも違うな」
はぐらかして、言い訳して、何度も避け続けた行為。でも、もうそんなことはしない。責任を取ると決めたんだ。
俺は二人をそっと抱き寄せ、ベッドに押し倒した。
「ああ、俺も話したいことがあるんだ」
もう後回しにするのはナシだ。真正面から気持ちをぶつける……と思ったがうまく言葉が出てこない。
「…………」
「…………」
「…………」
何をどう話すか、どこから話せばいいか、お互いに様子を窺っていて一時の静寂が訪れる。そんな中、シャロが切り出した。
「夕食前に雷鳴鬼さんが言っていたことなんですけど……」
雷鳴鬼が勝手に俺の心を暴露したあれだ。第三者を通じた告白、俺にとっては苦い記憶だ。
「……あんな伝え方になったのはアレだけど、紛れもない俺の本心だ」
「それって……アタシたち二人とも好きってことか?」
「ああ、そうだ」
濁さずにありのままの気持ちを伝える。
同時に二人を好きになるのは間違っているかもしれない。でも、俺は二人が好きだ。たまらなく好きなんだ。
シャロは俺を何度も励まして、慰めて、それで背中を押してくれた。いつも傍にいて、それがとても心地が良くなっていた。小悪魔的で献身的、そんな姿に惹かれた。
ティアは初め、友達という感覚が近かった。でも、夢で、目の前で失ってから気が付いた。いつの間にか、俺には無くてはならない存在になっていたんだ。
「好きだ。誰にも渡したくない。これからも俺の傍にいて欲しい。だから―――」
言いかけたところで、シャロが口をはさむ。
「わたくしは……シャロはご主人様に求められるなら何番目でもいいと思っていました」
「……」
「ですが今は、一番がいい。一番に愛して、一番に考えて、一番に求めてほしいと、そう思います」
「シャロ……」
その思いは俺が一番分かる。誰かに気持ちが向いていると思うだけで胸が苦しくなる。なのに自分だけがそれを認めてもらおうだなんて、強欲で虫が良い話なんてことは理解している。
「アタシも……こうして面と向かって言うのは初めてだけど、シャロと同じだ」
「ティア……」
ティアから今まで、直接思いを告げられたことはない。ないのだが、流石の俺でもその気持ちは察していた。
「正直、こうやってご主人様の返事を急いだのは、焦っていたというのもあります」
「焦っていた?」
「はい。四月から学校に行き始めて、もしそこで誰かに告白されたら、誰かにご主人様の心の一番を取られたら……と考えたら、いてもたってもいられず……」
「なる……ほどな……」
人と関わるから、もちろん出会いもあるわけで、シャロはそれが気がかりなのだろう。
「ご主人様が誰を、何人を愛そうと、シャロは構いません。ですが、最初はシャロがいい。なのでどうしても、学校へ行く前に決めて欲しかったんです」
なんだかんだいつも有耶無耶になっていた話を、こうしてちゃんとするのはそういった理由があったのか。シャロらしくない、とは思ったがそれなら納得だ。
「アタシは……シャロほど受け入れられたわけじゃない。昔から恋人ができるなら一対一がいいって思ってた。この世界では結構珍しいけど、それでもそっちの方がいいって」
「ご、ごめん……」
無理もない。仮にこの世界で一夫多妻、一妻多夫、愛人を持つことが一般的だったとしても、みんながみんな、その考えではないだろう。
「でもっ……だけど、そんなことどうでもいいくらいにイスルギが好きだ。特別な存在になりたい。自覚したのは最近だけど、アタシを受け入れて、引き寄せて、抱きしめて欲しいんだ」
「シャロは、前々からティアの気持ちに気づいていました。なので提案したんです。誰よりも先に二人で席を奪って、それから一番を取り合おうって」
「アタシは……アタシ達は、たとえ後から何人増えようと、揺るがない絶対が欲しかったんだ」
「ええと……つまり、どういうことだ?」
「つまり……返事はこうです」
「アタシを———」
「シャロを———」
「「あなたの恋人にしてください」」
二人を好きだと言い、求めた俺を認めると、そう返事をする。宣言したからには責任をとるつもりだったが、そうだとしてもやはり申し訳なさはあるので、
「いい……のか? 自分でも結構最低な事言ったつもりだけど……」
「一夫多妻なんてよくあります。それでも、ちゃんと平等に扱ってくれなきゃ駄目ですよ?」
「ないがしろにしたら許さないからな」
「ああ……ああ、二人をきっと幸せにする! だから……これからもよろしく頼む!」
こんなにも俺を考えて、好いて、愛してくれている。俺はこの二人を絶対に離さない。そう決意した。
「……ところで」
「ん、なんだ?」
「晴れて恋人同士になったという事で、もういいですよね?」
「いいって何が……」
「あ、アタシもやる……のか?」
「あら、初めてはシャロがもらってもいいんですかぁ?」
「わ、分かったよ!」
「ふ、二人とも……?」
シャロとティアはゆっくりと浴衣を脱ぎ、下着のみの姿になる。
「愛して……くれるんですよね?」
「に、逃がさないからなっ」
魅惑的な姿に胸がドキドキする。今までとは違う関係、触れても、抱きしめてもいいんだという現実が脳を刺激して、理性を支配する。
「……ここで逃げるのも違うな」
はぐらかして、言い訳して、何度も避け続けた行為。でも、もうそんなことはしない。責任を取ると決めたんだ。
俺は二人をそっと抱き寄せ、ベッドに押し倒した。
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