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第三章 王立学校
雷の鬼
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「お、鬼?」
魔法陣から現れた少女は、和装で特徴的な二本の角が生えていた。その角はまさに、以前に本で見たモノと同じだ。
「ふむ、人型が呼び出されるなんて珍しいね」
「結構いい感じなんですか?」
「稀少だが……危うくもあるかな」
「ま、まじか……」
想像の斜め上の存在が出てきてしまった。もっとモンスターっぽいのを考えていたのだが、これはなんというか……
「あー……俺は石動健一だ。お前、名前は?」
「ボクの名前は雷鳴鬼だ。それ以上でも、以下でもない」
本には確か、氷冷鬼やら紅炎鬼やら、とにかく属性で種族が分けられていた。そこから考えると、名前という文化がないのだろうか。
「ないってことか? それだと困らねぇのか?」
「ああ、困らないね。でも、前に名前があった気がする」
「気がする?」
「はは、ボクには記憶がないんだ。気づいたらこうして呼び出されてた」
呼び出されるまでどこかで暮らしていたとしたら、悪いことをした。ならばせめて、
「うーん……じゃあ俺が思い出すの手伝ってやるよ。俺が名付ける……ていうのは流石にあれだしな」
自分で名付けようと思えるほどの勇気はないし、ネーミングセンスもない。それに、雷鳴鬼なんてかっこいいじゃないか。
「キミ、面白いね」
ニヤリと笑い、上目遣いでこちらを見てくる。
「馬鹿にしてる?」
「違う違う、気に入ったってことだよ。契約に従い、キミを主と認めよう。これから宜しくね、健一」
「ああ、よろしく。雷鳴鬼」
一連のやり取りに既視感を覚えつつ、俺に使い魔……いや、使い鬼ができた。
「さて、儀式も終わったことだし、簡単に編入までの流れを説明しようか」
▷▶▷
こうして、制服やら寮やらの話を一通り聞いて、学校を出てきた。詳しくは伝書鳩で送ってくるらしい。
「ねぇ、健一。ボクは今、こうやって外に顕現してるけどいいのかい?」
「え、普通はそうなんじゃないのか?」
「う~ん……他がどうかは知らないけど、ほら、こうして好きにどっかにいけちゃうからさ」
「なるほどな……」
使い魔は自発的に主人へ危害を加えることができない。だがもし仮に、目の届かない場所で別の者と繋がれば、暗殺を企てることもできるだろう。
「ま、別にいいかな」
「へぇ、それはどうしてだい?」
「んー、一つは俺をどうにかしようと考えてなさそうだと思ったからかな」
友好的に接してくれている相手には相応な態度をなるべく取るべきだ。この世界ではそんな甘い考えは通らないかもしれないが、自分に近い存在まで俺は疑いたくはない。要するに、ただの願いだ。
「もう一つは?」
「俺の体の中に入られとると思うと、なんかこう、ムズムズしそうだからだな……」
正直こちらの理由のほうが大きい。なんでも、使い魔は基本、霊体になって主人の体内で眠っているらしい。そのとき、様々な感覚が共有され、人型の場合その親和性が高いらしい。
「えぇー、別にボクは君がトイレに行こうと、お風呂に入ろうと構わないよ?」
「その二つが真っ先に出てくる時点でアウトだよ……」
とは言っても、一日に一回は俺の体内に入ってもらわなきゃならない。食事のために必要らしいが、使い魔にとっての食事とは主の欲求らしい。悪魔と契約してるみたいに思えるが、たとえ精霊だとしてもそれは変わらないとのことだ。
「試しに入ってみてもいいかい?」
「え、ちょっ」
「ごめん、答えはいいや」
俺が了承する前に、雷鳴鬼は光の粒子になって体へ染み込んでくる。ふわっとした感覚が一瞬訪れるが、途端に元に戻った。
『気分はどうだい?』
『不快感とか異物感はないな」
なんならちょっと気分がいいくらいだ。これはひょっとすると、
『はは、健一とは親和性が高すぎるみたいだ。感情が混ざってる。君は本当に人間かい』
『まぁ……隠す必要もないか』
どうせこれから長い付き合いになる。知っておいてもらったほうがいいだろう。
俺が吸血鬼の因子を持っていること、異世界からきた存在であること、当面の目的もろもろを掻い摘んで話した。
『なるほどね……だからか』
『分かっていると思うがこの事は———』
『他言無用、だよね?』
『ああ、頼むぜ。バレたら確実に殺されっからな』
『そうだねぇ。たぶん異様にシンクロ率の高いボクも、君が死んだら道連れになっちゃうかな』
『え……』
再び雷鳴鬼は顕現し、ニヤリとした表情を浮かべる。
「一蓮托生ってことさ。末永くよろしくねぇ」
「お、おう……」
思わぬ爆弾発言を受け動揺しつつも、ホテルへと帰ってきた。
あ、そういえばシャロ達にどう説明するか考えてなかったわ。まぁ、なんとかなるか……
魔法陣から現れた少女は、和装で特徴的な二本の角が生えていた。その角はまさに、以前に本で見たモノと同じだ。
「ふむ、人型が呼び出されるなんて珍しいね」
「結構いい感じなんですか?」
「稀少だが……危うくもあるかな」
「ま、まじか……」
想像の斜め上の存在が出てきてしまった。もっとモンスターっぽいのを考えていたのだが、これはなんというか……
「あー……俺は石動健一だ。お前、名前は?」
「ボクの名前は雷鳴鬼だ。それ以上でも、以下でもない」
本には確か、氷冷鬼やら紅炎鬼やら、とにかく属性で種族が分けられていた。そこから考えると、名前という文化がないのだろうか。
「ないってことか? それだと困らねぇのか?」
「ああ、困らないね。でも、前に名前があった気がする」
「気がする?」
「はは、ボクには記憶がないんだ。気づいたらこうして呼び出されてた」
呼び出されるまでどこかで暮らしていたとしたら、悪いことをした。ならばせめて、
「うーん……じゃあ俺が思い出すの手伝ってやるよ。俺が名付ける……ていうのは流石にあれだしな」
自分で名付けようと思えるほどの勇気はないし、ネーミングセンスもない。それに、雷鳴鬼なんてかっこいいじゃないか。
「キミ、面白いね」
ニヤリと笑い、上目遣いでこちらを見てくる。
「馬鹿にしてる?」
「違う違う、気に入ったってことだよ。契約に従い、キミを主と認めよう。これから宜しくね、健一」
「ああ、よろしく。雷鳴鬼」
一連のやり取りに既視感を覚えつつ、俺に使い魔……いや、使い鬼ができた。
「さて、儀式も終わったことだし、簡単に編入までの流れを説明しようか」
▷▶▷
こうして、制服やら寮やらの話を一通り聞いて、学校を出てきた。詳しくは伝書鳩で送ってくるらしい。
「ねぇ、健一。ボクは今、こうやって外に顕現してるけどいいのかい?」
「え、普通はそうなんじゃないのか?」
「う~ん……他がどうかは知らないけど、ほら、こうして好きにどっかにいけちゃうからさ」
「なるほどな……」
使い魔は自発的に主人へ危害を加えることができない。だがもし仮に、目の届かない場所で別の者と繋がれば、暗殺を企てることもできるだろう。
「ま、別にいいかな」
「へぇ、それはどうしてだい?」
「んー、一つは俺をどうにかしようと考えてなさそうだと思ったからかな」
友好的に接してくれている相手には相応な態度をなるべく取るべきだ。この世界ではそんな甘い考えは通らないかもしれないが、自分に近い存在まで俺は疑いたくはない。要するに、ただの願いだ。
「もう一つは?」
「俺の体の中に入られとると思うと、なんかこう、ムズムズしそうだからだな……」
正直こちらの理由のほうが大きい。なんでも、使い魔は基本、霊体になって主人の体内で眠っているらしい。そのとき、様々な感覚が共有され、人型の場合その親和性が高いらしい。
「えぇー、別にボクは君がトイレに行こうと、お風呂に入ろうと構わないよ?」
「その二つが真っ先に出てくる時点でアウトだよ……」
とは言っても、一日に一回は俺の体内に入ってもらわなきゃならない。食事のために必要らしいが、使い魔にとっての食事とは主の欲求らしい。悪魔と契約してるみたいに思えるが、たとえ精霊だとしてもそれは変わらないとのことだ。
「試しに入ってみてもいいかい?」
「え、ちょっ」
「ごめん、答えはいいや」
俺が了承する前に、雷鳴鬼は光の粒子になって体へ染み込んでくる。ふわっとした感覚が一瞬訪れるが、途端に元に戻った。
『気分はどうだい?』
『不快感とか異物感はないな」
なんならちょっと気分がいいくらいだ。これはひょっとすると、
『はは、健一とは親和性が高すぎるみたいだ。感情が混ざってる。君は本当に人間かい』
『まぁ……隠す必要もないか』
どうせこれから長い付き合いになる。知っておいてもらったほうがいいだろう。
俺が吸血鬼の因子を持っていること、異世界からきた存在であること、当面の目的もろもろを掻い摘んで話した。
『なるほどね……だからか』
『分かっていると思うがこの事は———』
『他言無用、だよね?』
『ああ、頼むぜ。バレたら確実に殺されっからな』
『そうだねぇ。たぶん異様にシンクロ率の高いボクも、君が死んだら道連れになっちゃうかな』
『え……』
再び雷鳴鬼は顕現し、ニヤリとした表情を浮かべる。
「一蓮托生ってことさ。末永くよろしくねぇ」
「お、おう……」
思わぬ爆弾発言を受け動揺しつつも、ホテルへと帰ってきた。
あ、そういえばシャロ達にどう説明するか考えてなかったわ。まぁ、なんとかなるか……
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