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第三章 王立学校

翡翠色の出会い

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 試験が終わり、校舎から出てきた。沈みかけの太陽達が辺りをオレンジ色に照らしている。気温もだいぶ下がり、冷たい風が髪を揺らす。

 この異世界では、四季があっても日本ほどの寒暖差はないのだが、冬はやっぱりそれなりに寒い。暑いのが嫌いな身としては助かるのだが、この風の強さは少々体にこたえる。

 伸びる影を横目に安堵と開放感からため息が漏れた。

「受かるといいな……」

 校門を目指して歩いていくと、何歩か先に制服を着た、エメラルドグリーンの髪で猫背の少女がトボトボと歩いていた。その緑の髪が夕日を浴び、幻想的な光を纏っている。
 きっとこの学校の学生なのだろう。興味本位で眺めていると、その子のポケットからハンカチが落ちた。重力に任せ自然に落ちたため気づいていない。俺はそれを拾い上げ、急いで駆け寄った。

「あの、これ落としましたよ」

「……えっ」

 声を掛けられた少女はびくっとしながら後ろを振り返る。翡翠色の目をしていて、その目の下にはクマができていた。

「えっ、あっ……私に、話しかけ、てます?」

「え……はい、そうですけど……」

「あっ、そ、それ……」

 ようやく状況を理解したようなので、俺はハンカチを手渡した。少女はそのハンカチを受け取るとジッとそれを、否、それを通してどこか虚空を見つめるように黙り込んでいる。

 すると次第に「ふふふ……」と不気味な笑みを浮かべ、そのハンカチを大事そうに握りしめる。

 その様子からはどこか危険な雰囲気が漂っていて、即座に離れることを決めた。

「じゃ、じゃあこれで……」

「ちょ、ちょっと、ま、待ってくだ、さい……ふふっ。お、お礼だけ、でも……」

「いやいや、大丈夫です。偶々拾っただけですし」

「でっ、でもっ……」

「あー……えっと、あなたはここの生徒さんですよね?」

「は、はひっ。そ、そう、です」

「自分、来年度ここに編入するつもりなので、もし受かったら色々教えて下さい」

 この場を乗り切るために未来の自分に丸投げして、渾身の営業スマイルを炸裂する。これは俺が、知り合いのいない高校でどうにか周りに馴染もうと編み出した必殺技だ。俺はそこそこ人見知りなのだが、こうして違う自分を演じるとあまり気にすることなく話すことができるのだ。
 もっとも、これをする相手には良くも悪くも、これから深く関わろうとは思っていないのだが。

「わ、わかりまし……た。あのっ、名前を……」

「石動健一って言います。それじゃ、また……」

 さっきから少女の目にハイライトがない。その様子に危機感を覚え、名を告げるなり早々に別れた。
 あの目は前にも見覚えがある。俺の勘違いならいいのだが……


「け、健一君……か……ふふ、ふひっ」
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