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第二章 再来の悪夢
蛇足② リーメア
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今日は11月11日
前の世界ではポッキーの日だが、生憎俺はトッポ派なので気にしたことはない。
そんな今日なのだが、一つ大きなイベントがある。それは―――
「誕生日おめでとう、今日で16歳だな」
「えへへ、ありがとう」
この桃色の髪をした少女、リーメアの誕生日なのだ。本当は皆で祝いたかったのだが、それはまた別でやる事になり、ひとまず俺が勉強の前に祝うことになった。
「はいこれ、プレゼントってことなんだけど……」
「わぁ、なにこれ!」
「おっ、やっぱり知らなかったのか。それはフロランタンっていうお菓子だ」
「へぇ~、初めて見たかも」
昨日、ティアに厨房を貸してもらい、自分で作ったのだ。正直レシピの記憶が曖昧だったが、試行錯誤のうえ何とか思い出し、こうして完成させることができた。
「食べてみてもいい?」
「ああ、是非とも食べてくれ。自信作だ」
この世界には、地球と共通するようなお菓子が聞いた感じだとあった。例えばマカロンやシュークリーム。一方で、特徴を伝えても似たようなお菓子がないものもあったので、俺はそれを作ることを決めた。
母親がお菓子を作るのが好きだったので、つられて俺も作ることがあったのだがその経験が功を奏した。
「ん! 苦味と甘さがちょうど良くて、すごい美味しい!」
「へへ、だろ? 今回焦がすのがいい感じにいったんだよ」
アーモンドプードルやそれに付随する必要な材料は軒並み街にあったので、特に困ることはなかった。
「……それにしても、イスルギってお菓子作れたんだ」
「まぁ、ぼちぼちだな。もうあんま作り方覚えてないんだよ」
何度も作ったものは覚えているのだが、そんなたくさん作っていた訳では無い。作れてあと2、3種くらいだろう。
「そっかぁ、私も教わってつくってみたかったんだけどなー」
「俺じゃ無理だけど、ティアならきっと分かりやすく教えてくれるぞ?」
「ティアさんかぁ……怒られない?」
「メアには甘いだろ、きっと」
ちょっと前から、俺とティア達の夕食に度々メアが混ざるようになった。
初めは少しギクシャクしていたのだが(主にメアが)何回か一緒にする内に仲良くなり、この間は一緒に風呂に入っていた。
「じゃあシャロに頼むか? 何だかんだ料理は出来るぞ」
シャロは日常的に料理をしないのだが、一度だけ作ったことがある。ティアが熱を出した時なのだが、流石はレストランの娘といったところか、ティアにも負けず劣らずの料理が出てきた。
「シャロさんは……ちょっと怖いから遠慮しておく……」
メアはティアとは波長が合うようだが、シャロとはどうも違うらしい。まぁそれもほとんどシャロのせいなのだが、合わないのなら仕方がない。
「そういえば、イスルギって好きな人できたことある?」
「な、なんだよ急に……」
いつにも増してメアがモジモジし始める。
「いいから答えて!」
「好きな人かぁ。出来たことはないけど、彼女なら出来たことあるぜ?」
「え、それって好きでもない人と付き合ってたってこと?」
「んー、まぁそうなるのか?」
正確には好きということがあまり分からないままOKしたので、好きでもなかったかどうかは今は知る由もない。当時の記憶は曖昧で、悪いことしか覚えていない。
「そう……なんだ……」
そう呟いて、メアは肩を落とす。
「じゃっ、じゃあもし、私が告白したらOKする、の?」
その質問をされ、心がザワつく。
え? メアって俺の事……
そんな考えが浮かんでくる。
この表情、そして質問。ここから導き出されることはそれだ。
自意識過剰と言われても構わない。だが、俺は人一倍そのような類に敏感なのだ。思えば、高校の時に自衛のために身についた力だと思う。
ともかく、俺が今なんて答えるべきだ?
脳をフル回転させて穏便に済む最適解を検索する。
そして、俺が出す答えは―――
「今はOKしないかもだけど、メアがもっと大人っぽくなったら絶対するな」
「絶対……OK……ほんと?」
「ああ、きっとするぜ? 俺って結構チョロいんだ」
我ながらいい答えだったと思う。後半に絶対と付けることでそこを強調し、前半には触れさせない。
未来の俺に丸投げすることになるが、大丈夫だ。俺は俺を信じている。だから頑張ってくれ。
「や、約束ね!」
そう言ってメアは小指を差し出してきた。
「あ、ああ」
流されるままに指をきるが、これって実質告白だよな?
まぁ、未来は俺にも分からない。メアがとてつもなく美人になって、逆に俺が追いかけるなんて展開も有り得る訳だ。
だって俺は占いで配偶者ゼロだと言われたから。
俺がメアをどう思っているかと聞かれれば、もちろん好きだ。でも、やっぱりこれが恋愛感情かどうかは分からない。
いずれ答えを出さなければいけない。
だがまずはメアが生きていけるようにするのが先決だ。
それからまた考えればいいさ。
前の世界ではポッキーの日だが、生憎俺はトッポ派なので気にしたことはない。
そんな今日なのだが、一つ大きなイベントがある。それは―――
「誕生日おめでとう、今日で16歳だな」
「えへへ、ありがとう」
この桃色の髪をした少女、リーメアの誕生日なのだ。本当は皆で祝いたかったのだが、それはまた別でやる事になり、ひとまず俺が勉強の前に祝うことになった。
「はいこれ、プレゼントってことなんだけど……」
「わぁ、なにこれ!」
「おっ、やっぱり知らなかったのか。それはフロランタンっていうお菓子だ」
「へぇ~、初めて見たかも」
昨日、ティアに厨房を貸してもらい、自分で作ったのだ。正直レシピの記憶が曖昧だったが、試行錯誤のうえ何とか思い出し、こうして完成させることができた。
「食べてみてもいい?」
「ああ、是非とも食べてくれ。自信作だ」
この世界には、地球と共通するようなお菓子が聞いた感じだとあった。例えばマカロンやシュークリーム。一方で、特徴を伝えても似たようなお菓子がないものもあったので、俺はそれを作ることを決めた。
母親がお菓子を作るのが好きだったので、つられて俺も作ることがあったのだがその経験が功を奏した。
「ん! 苦味と甘さがちょうど良くて、すごい美味しい!」
「へへ、だろ? 今回焦がすのがいい感じにいったんだよ」
アーモンドプードルやそれに付随する必要な材料は軒並み街にあったので、特に困ることはなかった。
「……それにしても、イスルギってお菓子作れたんだ」
「まぁ、ぼちぼちだな。もうあんま作り方覚えてないんだよ」
何度も作ったものは覚えているのだが、そんなたくさん作っていた訳では無い。作れてあと2、3種くらいだろう。
「そっかぁ、私も教わってつくってみたかったんだけどなー」
「俺じゃ無理だけど、ティアならきっと分かりやすく教えてくれるぞ?」
「ティアさんかぁ……怒られない?」
「メアには甘いだろ、きっと」
ちょっと前から、俺とティア達の夕食に度々メアが混ざるようになった。
初めは少しギクシャクしていたのだが(主にメアが)何回か一緒にする内に仲良くなり、この間は一緒に風呂に入っていた。
「じゃあシャロに頼むか? 何だかんだ料理は出来るぞ」
シャロは日常的に料理をしないのだが、一度だけ作ったことがある。ティアが熱を出した時なのだが、流石はレストランの娘といったところか、ティアにも負けず劣らずの料理が出てきた。
「シャロさんは……ちょっと怖いから遠慮しておく……」
メアはティアとは波長が合うようだが、シャロとはどうも違うらしい。まぁそれもほとんどシャロのせいなのだが、合わないのなら仕方がない。
「そういえば、イスルギって好きな人できたことある?」
「な、なんだよ急に……」
いつにも増してメアがモジモジし始める。
「いいから答えて!」
「好きな人かぁ。出来たことはないけど、彼女なら出来たことあるぜ?」
「え、それって好きでもない人と付き合ってたってこと?」
「んー、まぁそうなるのか?」
正確には好きということがあまり分からないままOKしたので、好きでもなかったかどうかは今は知る由もない。当時の記憶は曖昧で、悪いことしか覚えていない。
「そう……なんだ……」
そう呟いて、メアは肩を落とす。
「じゃっ、じゃあもし、私が告白したらOKする、の?」
その質問をされ、心がザワつく。
え? メアって俺の事……
そんな考えが浮かんでくる。
この表情、そして質問。ここから導き出されることはそれだ。
自意識過剰と言われても構わない。だが、俺は人一倍そのような類に敏感なのだ。思えば、高校の時に自衛のために身についた力だと思う。
ともかく、俺が今なんて答えるべきだ?
脳をフル回転させて穏便に済む最適解を検索する。
そして、俺が出す答えは―――
「今はOKしないかもだけど、メアがもっと大人っぽくなったら絶対するな」
「絶対……OK……ほんと?」
「ああ、きっとするぜ? 俺って結構チョロいんだ」
我ながらいい答えだったと思う。後半に絶対と付けることでそこを強調し、前半には触れさせない。
未来の俺に丸投げすることになるが、大丈夫だ。俺は俺を信じている。だから頑張ってくれ。
「や、約束ね!」
そう言ってメアは小指を差し出してきた。
「あ、ああ」
流されるままに指をきるが、これって実質告白だよな?
まぁ、未来は俺にも分からない。メアがとてつもなく美人になって、逆に俺が追いかけるなんて展開も有り得る訳だ。
だって俺は占いで配偶者ゼロだと言われたから。
俺がメアをどう思っているかと聞かれれば、もちろん好きだ。でも、やっぱりこれが恋愛感情かどうかは分からない。
いずれ答えを出さなければいけない。
だがまずはメアが生きていけるようにするのが先決だ。
それからまた考えればいいさ。
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