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第二章 再来の悪夢
寿司と誘惑
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「ふぅ……やっぱ風呂だなぁ」
疲れた体にはやはりこれが効く。
体力が回復するわけではないが、気持ちがリラックスできる。
俺の元気の源なのだ。
「不眠2日目か……」
前の世界では中学生のときに3日間寝なかった時があったが、今思えば大馬鹿だ。元気の証拠ともとれるが、それにしてもよくやったものだ。
高校生になってからはとてもじゃないが、そんなに起きてられなかった。確かできて一徹くらいだっただろう。大半は寝落ちで終了した。
大人になるにつれ、睡眠の大切さが身に染みて分かった。
それにしても因子の力は凄い。眠気や空腹感がどっかに行ってしまう。フルで稼働させるのは、重いリュックを背負い続けるくらいのキツさだが、それを耐えるだけでいいのだ。
懸念点があるとすれば、下半身だ。何がとは言わないが、因子を長時間使いっぱなしにしていると、こちらもフル稼働し始める。
「吸血衝動の代わり……ってことか?」
フリードは俺に吸血衝動が出てくるか分からないと言っていた。別の形で出てくる可能性があるとも言っていた。それがこれなのだろうか。
「盛りすぎだろ……」
今は風呂に入っているから平静としているが、いずれタガが外れるかもしれない。
その時、俺は自分を抑えられるのだろうか。
「そのための娼館でもあるしな」
溜め込み続けるのは流石に毒だ。
それにその……現状だと抑えるタイミングがない。四六時中誰かと一緒にいるので解放できないのだ。
「風呂でって訳にもいかねぇしな」
俺にとって風呂は神聖な場所だ。俺が汚していいことがあろうか。いや、ない。
ともあれ、この意思とかけ離れた元気なモノを早急にどうにかしたいのだが、手配に時間がかかるときたもんだ。
「風俗なんて行ったことねぇしなぁ」
正真正銘の純血なのだ。
高校では彼女さえ出来なかったので、経験がまるでない。
大切にしていた……なんてただの言い訳だが、少し怖い。
それこそ、フリードとのキスが初めてだったのだ。人生で初めてのキス……。
あれをノーカンにするにしても、次はクラリスだ。
彼女の容姿は整っているとは思うが、俺には刺さらない。俺の好みは黒髪ロングのストレートなのだ。
ただ、この世界にはそんな子が滅多にいない。というか見た事がない。
もし、学校に入学したら会えるのだろうか。
思えば、俺以外の若い人間を見た事がないな。村は老人だけだったし、1番若かったのはヘルドだろう。
「指名とかできんのかなぁ」
初めて行く風俗。そして、初めての経験。知らない相手とするなら、俺の理想の女性がいいなと思う。
「何で娼館に行こうとしてるんですかぁ?」
「うわぁぁッ!」
既視感しかないこの状況。
だが、シャロの顔がいつもより曇っている。
「だからなんで入ってきてんだよ!」
「そんなことは今は関係ありません」
「はぁ?」
「シャロがいるのに、何で娼館なんか行こうとしてるんですか!」
いつにもなく怒っているシャロだが、タオル一枚越しなので目のやり場に困る。
「そ、そういう訳にはいかないんだよ!」
俺がシャロに抱いている気持ちはきっと恋愛感情なんかじゃない。もっと欲にまみれた、醜くておぞましい、真っ黒な気持ちだ。
シャロを欲望の捌け口にする気は毛頭ない。とはいえ、理性で抑えるには限界がある。こんな状態で長時間話し続けるのは危険だ。
「でっ、出るから!」
「あっ、ちょっと待っ――」
静止を振り切って風呂を出る。いつもならもう少し耐えれるが、今はそうはいかない。因子のせいで俺のヒットポイントが限りなく少なくなっているのだ。
ここで離脱しなければ、今度は風呂で自分に雷撃を与えなければならなかった。流石にそんなことは避けたいので、この判断は正しい。
速攻で着替えを終え、俺は何とか自室へ戻った。
「……どうして」
――――――――――――――――――――
「おお、今日は寿司か!」
「ああ、これ結構高いんだぜ?」
食卓には沢山の寿司が並んでいる。初めて見るネタや以前店で食べたものもある。
「やっぱりティアも寿司を握れるのか」
ここに来る前に働いていたと聞いていたので作れるとはおもっていたが、実際に出てきたのはこれが初めてだ。
「シャロのお母さんに習ったからな。シャロも出来るはずなのに、めんどくさがってやらないんだよ」
「そうなのか……」
「別にめんどくさがってる訳じゃありませんけど」
いつの間にかシャロも風呂からこの部屋に来ていた。
「店で手伝いだって全然してなかったじゃねーか」
「あれは別に……適材適所ってことですよ。シャロには掃除が向いているので」
「喧嘩すんなって。早く食べようぜ」
2人が仲がいいのはよく分かるが、度々こうして喧嘩をする。内容はかわいいものだが、念の為に俺は毎回止めに入る。
それにしても、だ。
久しぶりの寿司。それに心が踊る。
確かマグロの見た目の奴がサーモンだったよな?
そんなことを思い出しながら、口に運ぶ。
「うん、美味い!」
あの時は見た目と味の相違に脳がおかしくなったが、今は分かっているので平気だ。
それでサーモンの見た目のやつがアナゴだったはず……
「アナゴだ……」
2匹とも正式名称は覚えてないが、そんなことどうだっていい。美味しければいいのだ。
「……それにしても、何で急に寿司なんだ?」
「あー……」
ティアに聞くが、何か言いたくなさげだ。
俺が不思議そうな顔をしていると、ポツポツと話し始めた。
「……最近さ、イスルギがなんか落ち込んでるように見えたから。それで前に喜んでたお寿司を食べれば元気付くんじゃないかって……」
「お、おぉ」
予想外の理由に思わず戸惑う。
え、なにこれ。超恥ずかしいんだけど
「あら、ティアったら顔真っ赤」
シャロがそう、ニヤニヤしながらティアの方を見る。
びっくりした。一瞬俺に言われたのかと思った。
「う、うるさい! 早く食べないとアタシが全部食べちゃうからな!」
「あー、ずるいですよぉ」
「せめて全部1種類ずつ残してくれ……」
こうして食も進み、きれいさっぱり食べ終わった。
「それにしても、シャロはまだイスルギと一緒に寝てるのか?」
「ええ、もちろん。ご主人様からそれはもう、毎晩のように求められて……」
チラッと俺の方を見て、意味深な表情を浮かべる。
「な、な、なぁぁぁ!」
「いや全然嘘だからな! 俺は1ミリも触ってねぇよ!」
からかうシャロもだが、簡単に信じるティアも如何なものか。
「羨ましいなら、あなたも一緒に添い寝すればいいじゃない。ご主人様の片手はまだ空いてますよ」
「べ、別に羨ましくなんかないし!」
「いや、シャロももう自分の部屋で寝ていいって言っただろ」
「いえいえ、そんなこと仰らずに抱き枕として使ってくださいな」
なるほど、抱き枕か。前の世界ではそこそこいい値段をするのを買ったが、あれは良かった。
「……いや抱き枕にしないからな」
「なんか今、間があったよな」
ティアがすごい睨んでくる。俺はただ、思い出に浸っていただけなのに。
「とにかく、もう今日から平気だから1人で寝させてくれ」
「えぇー…………分かりました」
もっと渋るかと思っていたが、案外すんなり受け入れた。
「では、今日だけは一緒に寝させてください! これで最後にするので!」
と思ったが、そんな事はなかった。やはりあざといままだ。
「えぇ……うーん」
正直、耐えれるかどうかは分からない。でも、これから変に夜這いをかけられても厄介だ。それなら、一度許して徹底的に拒否をすれば諦めるのではないだろうか。
「……今日だけだぞ」
「なッ! いいのかよ!」
これは仕方がないことなのだ。俺は耐えてみせる。
「ふふふ……」
シャロが小悪魔のような……いや、もはや悪魔とも言える笑みを浮かべている。
いざとなれば、俺には電撃という最終手段がある。どうにかなるだろう。
疲れた体にはやはりこれが効く。
体力が回復するわけではないが、気持ちがリラックスできる。
俺の元気の源なのだ。
「不眠2日目か……」
前の世界では中学生のときに3日間寝なかった時があったが、今思えば大馬鹿だ。元気の証拠ともとれるが、それにしてもよくやったものだ。
高校生になってからはとてもじゃないが、そんなに起きてられなかった。確かできて一徹くらいだっただろう。大半は寝落ちで終了した。
大人になるにつれ、睡眠の大切さが身に染みて分かった。
それにしても因子の力は凄い。眠気や空腹感がどっかに行ってしまう。フルで稼働させるのは、重いリュックを背負い続けるくらいのキツさだが、それを耐えるだけでいいのだ。
懸念点があるとすれば、下半身だ。何がとは言わないが、因子を長時間使いっぱなしにしていると、こちらもフル稼働し始める。
「吸血衝動の代わり……ってことか?」
フリードは俺に吸血衝動が出てくるか分からないと言っていた。別の形で出てくる可能性があるとも言っていた。それがこれなのだろうか。
「盛りすぎだろ……」
今は風呂に入っているから平静としているが、いずれタガが外れるかもしれない。
その時、俺は自分を抑えられるのだろうか。
「そのための娼館でもあるしな」
溜め込み続けるのは流石に毒だ。
それにその……現状だと抑えるタイミングがない。四六時中誰かと一緒にいるので解放できないのだ。
「風呂でって訳にもいかねぇしな」
俺にとって風呂は神聖な場所だ。俺が汚していいことがあろうか。いや、ない。
ともあれ、この意思とかけ離れた元気なモノを早急にどうにかしたいのだが、手配に時間がかかるときたもんだ。
「風俗なんて行ったことねぇしなぁ」
正真正銘の純血なのだ。
高校では彼女さえ出来なかったので、経験がまるでない。
大切にしていた……なんてただの言い訳だが、少し怖い。
それこそ、フリードとのキスが初めてだったのだ。人生で初めてのキス……。
あれをノーカンにするにしても、次はクラリスだ。
彼女の容姿は整っているとは思うが、俺には刺さらない。俺の好みは黒髪ロングのストレートなのだ。
ただ、この世界にはそんな子が滅多にいない。というか見た事がない。
もし、学校に入学したら会えるのだろうか。
思えば、俺以外の若い人間を見た事がないな。村は老人だけだったし、1番若かったのはヘルドだろう。
「指名とかできんのかなぁ」
初めて行く風俗。そして、初めての経験。知らない相手とするなら、俺の理想の女性がいいなと思う。
「何で娼館に行こうとしてるんですかぁ?」
「うわぁぁッ!」
既視感しかないこの状況。
だが、シャロの顔がいつもより曇っている。
「だからなんで入ってきてんだよ!」
「そんなことは今は関係ありません」
「はぁ?」
「シャロがいるのに、何で娼館なんか行こうとしてるんですか!」
いつにもなく怒っているシャロだが、タオル一枚越しなので目のやり場に困る。
「そ、そういう訳にはいかないんだよ!」
俺がシャロに抱いている気持ちはきっと恋愛感情なんかじゃない。もっと欲にまみれた、醜くておぞましい、真っ黒な気持ちだ。
シャロを欲望の捌け口にする気は毛頭ない。とはいえ、理性で抑えるには限界がある。こんな状態で長時間話し続けるのは危険だ。
「でっ、出るから!」
「あっ、ちょっと待っ――」
静止を振り切って風呂を出る。いつもならもう少し耐えれるが、今はそうはいかない。因子のせいで俺のヒットポイントが限りなく少なくなっているのだ。
ここで離脱しなければ、今度は風呂で自分に雷撃を与えなければならなかった。流石にそんなことは避けたいので、この判断は正しい。
速攻で着替えを終え、俺は何とか自室へ戻った。
「……どうして」
――――――――――――――――――――
「おお、今日は寿司か!」
「ああ、これ結構高いんだぜ?」
食卓には沢山の寿司が並んでいる。初めて見るネタや以前店で食べたものもある。
「やっぱりティアも寿司を握れるのか」
ここに来る前に働いていたと聞いていたので作れるとはおもっていたが、実際に出てきたのはこれが初めてだ。
「シャロのお母さんに習ったからな。シャロも出来るはずなのに、めんどくさがってやらないんだよ」
「そうなのか……」
「別にめんどくさがってる訳じゃありませんけど」
いつの間にかシャロも風呂からこの部屋に来ていた。
「店で手伝いだって全然してなかったじゃねーか」
「あれは別に……適材適所ってことですよ。シャロには掃除が向いているので」
「喧嘩すんなって。早く食べようぜ」
2人が仲がいいのはよく分かるが、度々こうして喧嘩をする。内容はかわいいものだが、念の為に俺は毎回止めに入る。
それにしても、だ。
久しぶりの寿司。それに心が踊る。
確かマグロの見た目の奴がサーモンだったよな?
そんなことを思い出しながら、口に運ぶ。
「うん、美味い!」
あの時は見た目と味の相違に脳がおかしくなったが、今は分かっているので平気だ。
それでサーモンの見た目のやつがアナゴだったはず……
「アナゴだ……」
2匹とも正式名称は覚えてないが、そんなことどうだっていい。美味しければいいのだ。
「……それにしても、何で急に寿司なんだ?」
「あー……」
ティアに聞くが、何か言いたくなさげだ。
俺が不思議そうな顔をしていると、ポツポツと話し始めた。
「……最近さ、イスルギがなんか落ち込んでるように見えたから。それで前に喜んでたお寿司を食べれば元気付くんじゃないかって……」
「お、おぉ」
予想外の理由に思わず戸惑う。
え、なにこれ。超恥ずかしいんだけど
「あら、ティアったら顔真っ赤」
シャロがそう、ニヤニヤしながらティアの方を見る。
びっくりした。一瞬俺に言われたのかと思った。
「う、うるさい! 早く食べないとアタシが全部食べちゃうからな!」
「あー、ずるいですよぉ」
「せめて全部1種類ずつ残してくれ……」
こうして食も進み、きれいさっぱり食べ終わった。
「それにしても、シャロはまだイスルギと一緒に寝てるのか?」
「ええ、もちろん。ご主人様からそれはもう、毎晩のように求められて……」
チラッと俺の方を見て、意味深な表情を浮かべる。
「な、な、なぁぁぁ!」
「いや全然嘘だからな! 俺は1ミリも触ってねぇよ!」
からかうシャロもだが、簡単に信じるティアも如何なものか。
「羨ましいなら、あなたも一緒に添い寝すればいいじゃない。ご主人様の片手はまだ空いてますよ」
「べ、別に羨ましくなんかないし!」
「いや、シャロももう自分の部屋で寝ていいって言っただろ」
「いえいえ、そんなこと仰らずに抱き枕として使ってくださいな」
なるほど、抱き枕か。前の世界ではそこそこいい値段をするのを買ったが、あれは良かった。
「……いや抱き枕にしないからな」
「なんか今、間があったよな」
ティアがすごい睨んでくる。俺はただ、思い出に浸っていただけなのに。
「とにかく、もう今日から平気だから1人で寝させてくれ」
「えぇー…………分かりました」
もっと渋るかと思っていたが、案外すんなり受け入れた。
「では、今日だけは一緒に寝させてください! これで最後にするので!」
と思ったが、そんな事はなかった。やはりあざといままだ。
「えぇ……うーん」
正直、耐えれるかどうかは分からない。でも、これから変に夜這いをかけられても厄介だ。それなら、一度許して徹底的に拒否をすれば諦めるのではないだろうか。
「……今日だけだぞ」
「なッ! いいのかよ!」
これは仕方がないことなのだ。俺は耐えてみせる。
「ふふふ……」
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