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第一章 吸血鬼の王
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「……あ、れ。俺は、一体……」
気づいたら俺は、自室のベッドで横になっていた。
どのくらい寝ていたのだろうか。
窓の外にはオレンジ色の光が見える。もう夕暮れ時だ。
「そっか、俺は、」
直前の記憶を思い出す。
そう、俺はまた負けたんだ。今迄にないほどにコテンパンに、意識を失うほど完膚なきまでにやられたのだ。
だが、今は何故だか清々しい。負け惜しみ、というわけではなく、敗北を正しく受け止められたような感覚だ。
「強く……なりてぇな。」
今までの状況に流されていた自分とは違う、心からの思い。それが新たに芽生え、自分の中で形作られていくのがわかる。
こうして俺、石動健一は新たな決意を胸に再スタートしたのだった。
――――――――――――――――――――
「目が覚めたか。」
起きてすぐ、俺はフリードの部屋に向かった。色々確かめるならコイツが1番適当だからだ。
「ああ。……それで、お前の希望通りに俺はなったのか?」
「試合には負けた。だが、お前の成長の数値が再び動き出した。それだけで十分だ」
あまり明確な変化は見られないが、どうやら俺は壁を1つ越えられたらしい。
「ならまぁ良かった。てっきり勝つまでやれとか言われるかと思ったわ」
「俺は別に構わん。やりたければやれ」
「はは、遠慮しとくわ」
今はまだ早い。やるならもっと、もっと俺が強くなってからだ。その時にまた、リベンジをしよう。
「お前には感謝してる。最初は何でって思ったけど、今なら分かる。だからありがとうだ」
「……ふん」
フリードはそれ以上何も言ってこなかったが、俺にはその顔が笑っているように見えた。
そうして俺は部屋を出て、ある場所へと向かった。ある場所とはもちろん屋敷の中なのだが、正直記憶が曖昧だ。
少し前の記憶を頼りに扉の前で立ち止まる。
「確かここ、だったよな?」
記憶が正しければここだ。でも、もし違ったら……なんてことを考えてドアの前で立ちすくんでいると、
「な、なんで入らないんですか?……じゃなくて、入らないの?」
そう言いながら、このピンク髪の少女、リーメアが顔を出した。
「おお、なんてベストタイミング」
「私は耳がいいので」
自分の耳を触りながら自慢するその顔はとても誇らしげだ。
「そういえばそうだったな。ってやっぱ夢じゃなかったんだな」
「何おかしなこと言ってるんですか……言ってるの?」
「いんや、友達の存在って大切だなぁって思って」
そうしみじみしながらリーメアの頭を撫でる。
「なっ!何するんです……するの!ちょっ!」
「あー悪い悪い。ついやっちった。うっかりだ、うっかり」
そう、これはうっかりだ。決して髪を触りたかったからとか、可愛いから触りたいだとかそんな下心は全くない。あくまで、そうしたかっただけなのだ。
「も、もう。とりあえず入ってくださ……入って。紅茶でも淹れるから」
「お邪魔しまーす、っと。おぉ、女の子の部屋って感じだ」
「一昨日も入ったじゃないですか!」
俺に対するツッコミに、口調が完全に敬語に戻る。
「まぁ一昨日は色々あったからというか、それどころじゃなかったというか……」
思い出すだけで恥ずかしい。あんな失態はもう2度としたくない。気をつけなければ。
「それで、なんで今日はここに?」
「特に理由があったわけじゃないんだけど、まぁあれだ。一応お礼言っておこうと思ってな」
「いえ、別に私はそんな……」
「だとしてもだ。ありがとう、感謝してる。試合の結果はダメダメだったけど、メアのおかげで大切な事に気づけたんだ」
リーメアはそうは思わないかもしれない。どれほど俺が救われたか分からないかもしれない。でも、それならそれでいい。俺がそう思っているということが重要なのだ。
「そういやメアは何で外出ないんだ?」
前にちらっと聞いた気がするが、正直覚えていない。
「血を吸ってないから出れないの。外に出たら全身が焼けて、生きたまま―――」
「いや怖い怖い怖い!」
想像するだけで痛々しい。ある意味吸血鬼らしいといえばらしいが、他の吸血鬼が普通に外に出ているところを見るとやはり思うところがある。
「屋敷の中とかだけでもちょっとは歩いた方がいいんじゃねぇか?」
「私……人見知りだから……」
「あぁ……」
その気持ち、分からなくもない。俺もそれなりに他人と話すのは苦手だ。高校に入ったときなんか同じ中学のやつがいなかったから、それはそれは苦労をしたのだ。
「でもお風呂だけはちゃんと入ってるよ?」
「そういや2回とも風呂出たところでのエンカだったな。……あれ、ご飯とかはどうしてるんだ?」
「ああ、それはジェイルさんが持ってきてくれるんです」
ジェイル……たしか前に俺の部屋に朝ごはんを持ってきてくれた老紳士の名前だ。そうか、あの人なら納得だ。
「もし良ければ今度から一緒に食べるか?俺はティアっていう獣人の子に作ってもらってるんだけど、2人分つくってくれって頼んどくぜ?」
それにティア達と話せるようになれば人見知りも少しはマシになるかもしれない。そんな魂胆もあるのだが、
「いや、私は……1人の方が性にあっているので」
「そう、か」
無理に誘うのも良くない。ここは一旦引いて、今度勝手に部屋へ乗り込むか。
「そういえば、お付きのメイドさんがもう1人いるよね?」
「あーシャロのことか?銀髪の猫耳メイドの」
「たぶんそうだと思う。直接見た訳じゃないから分からないけど……」
「それがどうかしたのか?」
「……よく一緒にお風呂入ってるよね?」
その指摘に俺の鼓動が早くなる。なぜ知っている?少なくとも出入りは一緒じゃないし、見た人もいないはずだ。
「その顔……何かやましい事でもあるの?」
メアの顔がどんどん曇っていく。
「いっ、いや!全然ないって!あれはアイツが勝手に入ってくるだけだから!ほんとに!」
「ふーん……それならいいけど。お風呂で変なことするのはやめてよ?全部聞こえてきちゃうんだから」
「そういうことか……はい、肝に銘じておきます。てか、やらんからな!」
俺の否定にメアはジト目で応えてくる。どうやら信用がないらしい。これ以上ここにいては不利だ。撤退を決める。
「じゃ、じゃあそろそろ戻るな!また暇なとき遊びにくるから、そんときは今日みたいに紅茶でも淹れてくれ」
「そ、そんな頻繁に来るつもりなんだ……ふーん……」
メアの表情にやや明るさが戻った気がするが、ひとまず俺は退出した。
「さてと、今日は休みだけどどうするか……」
このままダラダラと過ごしてもいいが、やはり今は自分を試したい。そう思って、俺は地下の訓練所へと向かった。
「やっぱり1人なら魔法の訓練が妥当か?」
とりあえずいつもの刀を使った練習をしつつ、今の課題である魔法の砲撃の試し打ちを始めた。
「うーん。俺の想像だと、もっとこう速くてビリッとする感じなんだけど。上手くいかねぇなぁ」
魔法は想像力が命だ。それはこれまでの経験的によく分かった。前も具体的に考えたら成功した。放出するイメージ……なにか無いか?
「銃……弓矢……どれもしっくりこないな。放出じゃなくて、形を維持する方に重点を置いてみるか?」
そう考え、ひとまず実践する。
「剣とか……いやもっと別の…槍とか、か?」
イメージを頭に巡らせ、腹の底に力を入れながら右手を突き出す。
すると、俺の手の先に雷が、雷で構成された槍が生まれた。
「こ、これは!結構いいんじゃないか!?あとは放出するだけ……」
しかし、それが上手くいかない。
「くそ、全然飛ばねぇ。アイデアは良かったと思ったんだけどなぁ。」
ずっと雷の槍を出しっぱなしにしていたせいで、疲労感を感じる。今日はこの辺りが限界だろう。
「まぁ気長にやればいいか。夕飯……の前に風呂行くか。」
――――――――――――――――――――
「おぉ、もう飯できてるぞ。」
「あぁ、ありがとう。助かる。」
風呂から帰り自室に戻ると、ティアがご飯をつくってくれていた。
「あれ、シャロは?」
「あー、なんか用事つってどっか行っちまった。まぁすぐ戻ってくるだろ。」
「そういや、2人っていつもどこでご飯食べてるんだ?出かけた時以外食べてるの見た事ないけど。」
いつも俺の分を用意してくれているのだが、一緒に食べたことはない。
「アタシ達は使用人だからそっちで食ってるんだ。作りすぎた時とかは自分で食べてるぞ?」
「それって、例えば俺が一緒に食べたいとか命令したら食べてくれるのか?」
「あ、あぁ。そりゃ従うけど……」
なるほどな。正直自分1人だけで食べるのは少し寂しい。それにいつかメアと一緒に食べる時もきっと人数が多い方がいいだろう。ならば、
「じゃあ命令……というよりお願いだ。今度から夕飯はシャロもティアも俺と一緒に食べて欲しい。だから料理は3人分頼む。いつかもうちょい増えるかもだけど、ひとまずは、だ」
ティアは呆れた表情をしているが、「わかったわかった。」と言って了承してくれた。
明日が楽しみだ。せっかくだしメアも誘うか?なんて事を考えながらもう一度風呂に入って、眠りについた。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「明日だ。向こうの準備が整った。ったく、あの野郎の首を縦に振らすのにどんだけオレが苦労したことか……。なんで野郎を口説くのにこんな必死にならなきゃいけねぇんだよ」
「――――――――――――」
「誰かって?あの『山崩し』だよ、名前くれぇ聞いた事あんだろ」
「―――――――――――――――」
「正直あいつでも時間稼ぎにしかならねぇ。でも、おびき出すにはそれくらいの大物を投下するしかねぇんだ。終える前に帰って来られちゃ即終了だからな」
「―――――――――」
「他の奴らの布石は打った。あのニンゲンはどんな感じだ?」
「―――――――」
「はははっ!!そうか!まだロクに使えないのか!それなら良い。だが、一応は手を打ってある。少々過剰かもしれないがな」
「――――――」
「こっちも大物だぜ。最近巷で噂の『狂人』だ。1度会ったが人間のくせに大したものだ」
「―――――――――」
「あん?そんな事分かってる。だが、俺の合図一つで何時でも狙えるからな?」
「――――――」
「そうしろ。そうすれば助けてやる。決行は明日だ。いいな?」
「……クク、ようやく、だ」
気づいたら俺は、自室のベッドで横になっていた。
どのくらい寝ていたのだろうか。
窓の外にはオレンジ色の光が見える。もう夕暮れ時だ。
「そっか、俺は、」
直前の記憶を思い出す。
そう、俺はまた負けたんだ。今迄にないほどにコテンパンに、意識を失うほど完膚なきまでにやられたのだ。
だが、今は何故だか清々しい。負け惜しみ、というわけではなく、敗北を正しく受け止められたような感覚だ。
「強く……なりてぇな。」
今までの状況に流されていた自分とは違う、心からの思い。それが新たに芽生え、自分の中で形作られていくのがわかる。
こうして俺、石動健一は新たな決意を胸に再スタートしたのだった。
――――――――――――――――――――
「目が覚めたか。」
起きてすぐ、俺はフリードの部屋に向かった。色々確かめるならコイツが1番適当だからだ。
「ああ。……それで、お前の希望通りに俺はなったのか?」
「試合には負けた。だが、お前の成長の数値が再び動き出した。それだけで十分だ」
あまり明確な変化は見られないが、どうやら俺は壁を1つ越えられたらしい。
「ならまぁ良かった。てっきり勝つまでやれとか言われるかと思ったわ」
「俺は別に構わん。やりたければやれ」
「はは、遠慮しとくわ」
今はまだ早い。やるならもっと、もっと俺が強くなってからだ。その時にまた、リベンジをしよう。
「お前には感謝してる。最初は何でって思ったけど、今なら分かる。だからありがとうだ」
「……ふん」
フリードはそれ以上何も言ってこなかったが、俺にはその顔が笑っているように見えた。
そうして俺は部屋を出て、ある場所へと向かった。ある場所とはもちろん屋敷の中なのだが、正直記憶が曖昧だ。
少し前の記憶を頼りに扉の前で立ち止まる。
「確かここ、だったよな?」
記憶が正しければここだ。でも、もし違ったら……なんてことを考えてドアの前で立ちすくんでいると、
「な、なんで入らないんですか?……じゃなくて、入らないの?」
そう言いながら、このピンク髪の少女、リーメアが顔を出した。
「おお、なんてベストタイミング」
「私は耳がいいので」
自分の耳を触りながら自慢するその顔はとても誇らしげだ。
「そういえばそうだったな。ってやっぱ夢じゃなかったんだな」
「何おかしなこと言ってるんですか……言ってるの?」
「いんや、友達の存在って大切だなぁって思って」
そうしみじみしながらリーメアの頭を撫でる。
「なっ!何するんです……するの!ちょっ!」
「あー悪い悪い。ついやっちった。うっかりだ、うっかり」
そう、これはうっかりだ。決して髪を触りたかったからとか、可愛いから触りたいだとかそんな下心は全くない。あくまで、そうしたかっただけなのだ。
「も、もう。とりあえず入ってくださ……入って。紅茶でも淹れるから」
「お邪魔しまーす、っと。おぉ、女の子の部屋って感じだ」
「一昨日も入ったじゃないですか!」
俺に対するツッコミに、口調が完全に敬語に戻る。
「まぁ一昨日は色々あったからというか、それどころじゃなかったというか……」
思い出すだけで恥ずかしい。あんな失態はもう2度としたくない。気をつけなければ。
「それで、なんで今日はここに?」
「特に理由があったわけじゃないんだけど、まぁあれだ。一応お礼言っておこうと思ってな」
「いえ、別に私はそんな……」
「だとしてもだ。ありがとう、感謝してる。試合の結果はダメダメだったけど、メアのおかげで大切な事に気づけたんだ」
リーメアはそうは思わないかもしれない。どれほど俺が救われたか分からないかもしれない。でも、それならそれでいい。俺がそう思っているということが重要なのだ。
「そういやメアは何で外出ないんだ?」
前にちらっと聞いた気がするが、正直覚えていない。
「血を吸ってないから出れないの。外に出たら全身が焼けて、生きたまま―――」
「いや怖い怖い怖い!」
想像するだけで痛々しい。ある意味吸血鬼らしいといえばらしいが、他の吸血鬼が普通に外に出ているところを見るとやはり思うところがある。
「屋敷の中とかだけでもちょっとは歩いた方がいいんじゃねぇか?」
「私……人見知りだから……」
「あぁ……」
その気持ち、分からなくもない。俺もそれなりに他人と話すのは苦手だ。高校に入ったときなんか同じ中学のやつがいなかったから、それはそれは苦労をしたのだ。
「でもお風呂だけはちゃんと入ってるよ?」
「そういや2回とも風呂出たところでのエンカだったな。……あれ、ご飯とかはどうしてるんだ?」
「ああ、それはジェイルさんが持ってきてくれるんです」
ジェイル……たしか前に俺の部屋に朝ごはんを持ってきてくれた老紳士の名前だ。そうか、あの人なら納得だ。
「もし良ければ今度から一緒に食べるか?俺はティアっていう獣人の子に作ってもらってるんだけど、2人分つくってくれって頼んどくぜ?」
それにティア達と話せるようになれば人見知りも少しはマシになるかもしれない。そんな魂胆もあるのだが、
「いや、私は……1人の方が性にあっているので」
「そう、か」
無理に誘うのも良くない。ここは一旦引いて、今度勝手に部屋へ乗り込むか。
「そういえば、お付きのメイドさんがもう1人いるよね?」
「あーシャロのことか?銀髪の猫耳メイドの」
「たぶんそうだと思う。直接見た訳じゃないから分からないけど……」
「それがどうかしたのか?」
「……よく一緒にお風呂入ってるよね?」
その指摘に俺の鼓動が早くなる。なぜ知っている?少なくとも出入りは一緒じゃないし、見た人もいないはずだ。
「その顔……何かやましい事でもあるの?」
メアの顔がどんどん曇っていく。
「いっ、いや!全然ないって!あれはアイツが勝手に入ってくるだけだから!ほんとに!」
「ふーん……それならいいけど。お風呂で変なことするのはやめてよ?全部聞こえてきちゃうんだから」
「そういうことか……はい、肝に銘じておきます。てか、やらんからな!」
俺の否定にメアはジト目で応えてくる。どうやら信用がないらしい。これ以上ここにいては不利だ。撤退を決める。
「じゃ、じゃあそろそろ戻るな!また暇なとき遊びにくるから、そんときは今日みたいに紅茶でも淹れてくれ」
「そ、そんな頻繁に来るつもりなんだ……ふーん……」
メアの表情にやや明るさが戻った気がするが、ひとまず俺は退出した。
「さてと、今日は休みだけどどうするか……」
このままダラダラと過ごしてもいいが、やはり今は自分を試したい。そう思って、俺は地下の訓練所へと向かった。
「やっぱり1人なら魔法の訓練が妥当か?」
とりあえずいつもの刀を使った練習をしつつ、今の課題である魔法の砲撃の試し打ちを始めた。
「うーん。俺の想像だと、もっとこう速くてビリッとする感じなんだけど。上手くいかねぇなぁ」
魔法は想像力が命だ。それはこれまでの経験的によく分かった。前も具体的に考えたら成功した。放出するイメージ……なにか無いか?
「銃……弓矢……どれもしっくりこないな。放出じゃなくて、形を維持する方に重点を置いてみるか?」
そう考え、ひとまず実践する。
「剣とか……いやもっと別の…槍とか、か?」
イメージを頭に巡らせ、腹の底に力を入れながら右手を突き出す。
すると、俺の手の先に雷が、雷で構成された槍が生まれた。
「こ、これは!結構いいんじゃないか!?あとは放出するだけ……」
しかし、それが上手くいかない。
「くそ、全然飛ばねぇ。アイデアは良かったと思ったんだけどなぁ。」
ずっと雷の槍を出しっぱなしにしていたせいで、疲労感を感じる。今日はこの辺りが限界だろう。
「まぁ気長にやればいいか。夕飯……の前に風呂行くか。」
――――――――――――――――――――
「おぉ、もう飯できてるぞ。」
「あぁ、ありがとう。助かる。」
風呂から帰り自室に戻ると、ティアがご飯をつくってくれていた。
「あれ、シャロは?」
「あー、なんか用事つってどっか行っちまった。まぁすぐ戻ってくるだろ。」
「そういや、2人っていつもどこでご飯食べてるんだ?出かけた時以外食べてるの見た事ないけど。」
いつも俺の分を用意してくれているのだが、一緒に食べたことはない。
「アタシ達は使用人だからそっちで食ってるんだ。作りすぎた時とかは自分で食べてるぞ?」
「それって、例えば俺が一緒に食べたいとか命令したら食べてくれるのか?」
「あ、あぁ。そりゃ従うけど……」
なるほどな。正直自分1人だけで食べるのは少し寂しい。それにいつかメアと一緒に食べる時もきっと人数が多い方がいいだろう。ならば、
「じゃあ命令……というよりお願いだ。今度から夕飯はシャロもティアも俺と一緒に食べて欲しい。だから料理は3人分頼む。いつかもうちょい増えるかもだけど、ひとまずは、だ」
ティアは呆れた表情をしているが、「わかったわかった。」と言って了承してくれた。
明日が楽しみだ。せっかくだしメアも誘うか?なんて事を考えながらもう一度風呂に入って、眠りについた。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「明日だ。向こうの準備が整った。ったく、あの野郎の首を縦に振らすのにどんだけオレが苦労したことか……。なんで野郎を口説くのにこんな必死にならなきゃいけねぇんだよ」
「――――――――――――」
「誰かって?あの『山崩し』だよ、名前くれぇ聞いた事あんだろ」
「―――――――――――――――」
「正直あいつでも時間稼ぎにしかならねぇ。でも、おびき出すにはそれくらいの大物を投下するしかねぇんだ。終える前に帰って来られちゃ即終了だからな」
「―――――――――」
「他の奴らの布石は打った。あのニンゲンはどんな感じだ?」
「―――――――」
「はははっ!!そうか!まだロクに使えないのか!それなら良い。だが、一応は手を打ってある。少々過剰かもしれないがな」
「――――――」
「こっちも大物だぜ。最近巷で噂の『狂人』だ。1度会ったが人間のくせに大したものだ」
「―――――――――」
「あん?そんな事分かってる。だが、俺の合図一つで何時でも狙えるからな?」
「――――――」
「そうしろ。そうすれば助けてやる。決行は明日だ。いいな?」
「……クク、ようやく、だ」
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