11 / 138
第一章 吸血鬼の王
根底にあるトラウマ
しおりを挟む
翌日
天気は生憎の雨だ。そういえばこの世界の雨は初めて見るな。窓の外を眺めると、雨粒がまるで銃弾のように降り注いでいる。それに雷が5秒に1回くらいのペースで落ちている。
「異世界の悪天候ぱねぇ……」
とてもじゃないが傘をさして外になんか出れるわけがない。昨日は途中で降られなくてよかった。
思いがけない異世界要素を感じつつ、俺は今、フリードの部屋の前に立っている。何でも、教師役が決まったらしい。
一体どんな人なのだろう。年の功を感じさせるような老人か、はたまた若くして教職を得るくらいに天才の子供だろうか。そんな予想をしながら俺は思いきってドアを開けた。
「おぉ、おめぇが例のニンゲンか!」
入るなり豪快な声が俺を歓待する。
年齢は50代くらいだろうか、黒髪で髭を生やしていて、いかにもオッサンって感じだ。
「紹介しよう。こいつは―――」
「待て待て!自己紹介くれぇ自分でさせろよ。オレの名前はソルヴァ・サルディッシュだ。今日からおめぇに勉強を教えてやる。よろしくな!」
「あっはい。よろしくお願いします」
「なんだなんだ、声がちっちぇなぁ!こんな奴がホントに使えんのかよ?」
「そこに関しては問題ない。お前は口を挟むな。ただ命令通り教えれば良い」
「はいはい、わぁってるって。与えられた仕事以外はしねぇよ。殺されたくねぇからな!」
あのフリードに物怖じせず話しているところを見るに、この男も相当強いのだろうか。
「じゃあ言われた通り、早速お勉強タイムといこうか。なぁ?」
「え、あ、はい。お願いします」
俺が自己紹介をする間もなく、勉強の部屋へと連れられたのだった。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「レイズ、ロイド。お前たちはあの男が不審な動きをしないか監視しろ。」
「理解。仰せのままに。」
「…………」
「殿下は何か気になることが?」
「あぁ、少しな。性格はアレだが、能力は申し分ない。しばらくは様子を見る。もし、何かあればあの男とそれを推薦した者を―――」
「わかりました。そうならないと良いのですがね」
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「うーんそうだなぁ。何から始めるか……」
「俺はほぼ何にも分からないんで任せます」
「おし、じゃあまずは実力が知りてぇ。簡単なテストからだ!」
そう言ってソルヴァは紙を5枚俺の目の前に置いた。
「1枚あたり大体10分ってとこか?」
「え、俺ほんと全然勉強してなくて―――」
「いや、それでも出来なくはないはずだ。何せお前にはフリード様の因子が入ってるんだからな!」
そういえば前にも同じようなことを言われたな。アイツの知識が適合率が上がる度にインプットされるみたいな。
「よし、じゃあ始めろ」
そう言われ、目の前のテストに向かう。
科目名は王国史、魔法理論、生物学、数学、音楽。
音楽?国語とかではなく音楽が入るのか。やはり異世界、不思議だな。
まずは手始めにその音楽から目を通す。
これは……。内容は簡単な記号暗記問題やコード進行だ。俺の元いた世界と遜色はない。
よし、これならできる。俺が唯一やっていた習い事はピアノなのだ。三つ上の姉に憧れ、3歳から始め、辞めたり始めたりを繰り返して合計10年以上はやっていたと思う。
つまづくことなく、音楽のテストを終え、次は数学に入る。
やっぱりあるのか……。内容は数ⅠAだろうか。遠い記憶を頼りに解き進める。だが、1番めんどくさい証明問題なんかが無いだけマシか。
一通り埋めたが、自信はない。切り替えて俺は次の科目に取り掛かった。
数十分後
「おし、終わったか。じゃあ採点するから見せてみろ」
ずっと静かだったからてっきり寝ているかと思っていたが、立ちっぱで俺の解く姿を見続けていたらしい。案外ちゃんとしてるんだな。
生物学、魔法理論、王国史は全く分からなかった。だが、フリードの知識なのだろうか、パッと言葉が浮かんでくる問題もあったので0点はない、と思う。思いたい。
「ほぉほぉ、なるほど。音楽は満点だ!数学はぼちぼちだが、問題は残り3つだな、正直小学生の方が全然マシってレベルだ」
「やっぱりか……」
分かってはいたのだが、小学生以下か。言われると結構傷つくな。
「まぁ最初はこんなもんだ、オレに教われば王国のテストなんざ簡単すぎて破りたくなるぜ??」
「おぉ、マジか……!」
1時間前の悪印象から一転、今はとても頼もしく見える。
「今日は王国史を教える、いいな?」
「はい!よろしくお願いします、先生」
こうして毎日の勉強がこの日からスタートした。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「そっちの調子はどうだ?」
「――――――――――――」
「へっ、相変わらずのポンコツか。ならさほど脅威じゃねぇな。」
「―――――――――」
「まだだ、もう少しで全ての段取りがいく。それまでは報告を続けろ、いいな?」
「―――」
「くくく、アイツはオレに注視しすぎている。俺は気長にその時を待つとしようか……」
――――――――――――――――――――
季節は変わらず、あれからもう1ヶ月。
午前は勉強、午後は訓練の毎日を過ごしてきた。勉強は我ながら才能を開花させていると思う。因子のお陰っていうのもあるかもしれないが、どの分野においても6~70%くらいは答えられるようになったのだ。もちろん先生の教えあってこそだが、想像以上に順調だ。
訓練は……まぁぼちぼちだ。フリードにガードの形をとらせるくらいにはなったのだが、それは相手に反撃する気がないからで、一度その気になれば情けないくらいに叩きのめされる。
それでも一個成長したことは魔法を補助なしで使えるようになったことだ。とはいっても、放電をしてそれを引っ込めるだけしか出来ないのだが、今はそれを塊にして放つ練習をしている。これが本当に難しく、未だに成功したことはない。
今日も練習で傷だらけになり、今は夕食前の風呂に入っている。
「はぁぁぁぁ、風呂だけが俺を癒してくれるよ……」
この風呂には何度お世話になったことか。フリード以外に誰も入らないし1人でのんびりできる。まぁシャロがたまに紛れてくるのだが、1週間に1度あるかないかくらいだ。
フリードと風呂の時間が被ったことがないのだが、アイツは一体いつ入ってるんだ?まさか入ってないなんてことは無いとは思うが。
「おお、こっちの風呂はめっちゃ広いな!」
「なっ、先生!?なんでこっちに……」
ソルヴァはズシズシとこちらへ歩いてきて、俺の入っている風呂に浸かる。
「まぁ、細かいことはいいじゃねぇか!それよりどうだ、魔法訓練は順調か?」
「いやぁ、まだ全然ですよ。ロクに発動出来なくて……」
「ふぅん、そう、か。なら良かった」
「よかった?」
「いんや、こっちの話だ。気にすんな。それより、ここの風呂は豪華すぎやしねぇか?使用人の方なんて2種類しかねぇぞ??」
「ここと結構差がありますよね」
「ホントだよ、まったく。使わねぇと勿体ねぇよなぁ!使用人達だってそう思ってるはずだぜ?」
「否定。私たちは衣食住が与えられているだけで満足です」
「うわぁっ!なんでお前もいるんだよ!」
ソルヴァと話していたらいつの間にかロイドも入ってきていた。初めて裸体を見たが、筋肉のつき方が俺とまるで違う。
「説明。特に理由はありません」
「入るんならせめてちゃんと体洗えよな……」
ロイドは何も言わず、そのままソルヴァのことを凝視している。
「……ふん。落ちぶれた王の狂信者が」
ソルヴァはそう、誰にも聞こえない声で呟いた。
2人は黙ったまま、しばらく睨み合い続けていたが、
「のぼせた、オレは先に出るぜ」
そう言ってソルヴァは早々に出ていってしまった。
俺は2人のこのやり取りにただならぬ雰囲気を感じたが、そこに踏み込みはしなかった。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「どうやら聞いてた通りだったみてぇだな。オレは役目が終わり次第接近出来ねぇから、不安要素が多くて困るよ。」
「―――――――――――――――」
「元よりそんな気にしてないけど一応な。どこでミスるか分かんねぇからよ。」
「―――――――――」
「白黒の奴らはどうとでもなる。1番ネックになるのはあいつだな。その為にここまで丁寧にやってきたんだ。」
「―――――――――」
「もうしばらく待て。あと少しで終わる。」
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
午前の勉強も終わり、また模擬戦なのだが……
「おいフリード、なんでそいつがここにいるんだ?」
俺はそう言いながら黒髪の男、ロイドを指さす。
「今日は俺の代わりにロイドと戦ってもらう」
「な、なんでコイツと!」
「ここ数日、適合率の伸びが著しく落ちている。それに関連して気づいたことがある」
「気づいたこと?」
「その原因……それは恐らくお前の中にある恐怖、敵に立ち向かう際に生じる、根底にある恐れだ」
「そ、そりゃ戦うのが怖くたって仕方がないじゃねぇか!」
「戦いに対する恐怖だけならまだいい。問題はそこじゃない。もっと別の、ある種のトラウマによるものだと、俺は感じた」
俺の……トラウマ……。
「その顔、、薄々考えてはいたようだな」
「…………」
「イスルギ、お前にはそのトラウマを払拭してもらいたい。その為にこの場を用意した」
フリードの言いたいことは分かる。だが、それでも俺は、
「無理に立ち向かえなどとは言わない。そんな事をしても無駄だからな。あくまでお前自身が奮起して、どうにかしようと思い、挑まなければならない。それは分かるな?」
「……ああ」
「もう一度言うが、これは強制ではない。嫌なら逃げるんだな。だがもし、今のままでも良いのなら、な」
「……今の……俺、か」
俺のトラウマ……あの時の恐怖は今も鮮明に思い出せる。大切な物が全て奪われ、俺は何も出来なかった。俺はあの瞬間、その全てを放り出して逃げたのだ。
出来ることならば永遠に逃げていたい。だが、今は違う。立ち向かうだけの力がある。あとは俺の心だけだ。
「わかった、やる。やってやるさ。立ち向かってやるよ」
「……それでいい。ロイド、位置につけ。剣は抜くな、あくまで素手だけだ」
「理解。剣は預けておきます」
そう言って剣をフリードに手渡すと、俺の正面に立った。
俺も覚悟を決めて向かい合う。
今一度、深く深呼吸をする。
「俺ならできる。大丈夫だ」
俺は意識を集中させ、いつも通りのルーティンを行う。体中に血が巡るのがわかる。準備万端だ。
「よし、いくぞ!」
俺は走り出す。相手にまだ動きは見られない。近づいて、洗練された右ストレートを繰り出す、が相手の手に受け止められた。
「チッ、このクソがぁ!」
すかさず、左脚で蹴りをお見舞いするが、またこれも腕で防がれる。
「くっ!」
急いで立て直し、状況を把握する。向こうに動きはまだ見られない。完全に舐められている。
蹴りはやはりまだ慣れない、ならば次は拳中心でいく。
再び走り出し、殴りかかる。だが、全て避けるかいなされて、空いた胴体に蹴りを入れられ、そのまま慣性に従って俺は吹き飛ぶ。
「がぁっ!」
壁に打ちつけられ、衝撃が内臓に響いているのが分かる。体中の血が沸騰しているかのように熱い。
ロイドは追撃をしてこない。俺は傷を治しつつ、次の動きを考える。
正攻法でやっても勝てない、ならば捨て身で一撃を入れるべきでは無いのだろうか。
そう思い立とうとした瞬間、体から力が抜ける。
「っっ?体がっ!?」
「……やはりそうなるか」
そこで初めて、自分の足が、手が震えていることに気づいた。
そう、この数回のやり取りで本能的に悟ってしまったのだ。決して勝てないと。
そして思い出される、あの夜の記憶。暗闇で赤い眼が段々と近づいてくる様子、それと今目の前の光景が重なる。
「くそっ!とまれっ!とまれって!」
震えが止まらない。ロイドはこちらの様子を見てだんだんと近づいてくる。
俺は震えた手足を無理に動かし、大声を上げながら飛びかかるが、顎に掌底を喰らい、浮いた体に肘を入れられた。
「ぐぁっ!がはっ!」
そこからはあまりに一方的だった。震えのせいか因子の力が上手く引き出せず、向こうの反撃に為す術なく打ち倒された。
途中からはもう立ち上がることも出来ず、馬乗りになられて、拳を何度も何度も打ち込まれた。口の中からは血の味がし、腕があがらない。
フリードがその姿を見て止めに入った。
「お、れは、まだ、」
「いや、これ以上は止めよう。ロイド、ご苦労だった。一旦下がってくれ」
「承知。仕事に戻ります」
「く、、そ、、」
やっと、、、終わった。
俺の心に残ったのは、負けた悔しさでも、歯が立たなかった不甲斐なさでもなく、終わったことに対する安心感だけだった。
そんな自分に嫌気がさす。
「やはり、そう簡単にはいかぬ、か。どうだ、明日からもやれそうか?」
冗談じゃない。あれだけ好き放題されて、またやりたいなんて思うわけがない。だが、そんな気持ちとは裏腹に別の言葉が自然と飛び出す。
「ああ、、今日は、、負けたけど、まだ、やれる、、大丈夫だ」
嘘だ。本当はもう戦いたくない。殴られ、蹴られる度に、傷が増える度に敗北を刻まれていく感覚を覚えた。逃げ出したい。
だが、俺のちっぽけなプライドがそれを邪魔する。
傷はフリードが治してくれた。体は平気だ。でも、心はもう―――
その日から3日間、また惨敗した。負け続けた。トラウマを克服するどころか、更に深く沼にハマっていっている。
「またこんなに怪我して、シャロの魔法も万能じゃないんですよぉ」
「悪いな……。」
戦いが終わる度、毎回シャロが俺の傷を治してくれている。かっこ悪い姿を見せてばっかだ。
今更やめたいなど言えず、かといって逆転出来ることもない。似たような毎日を繰り返している。先が暗くて見えない。
夕飯を食べ終えて、横になったがいまいち寝付けなかった。
「風呂でも……入りにいくか」
戦いの後入ったのだが、今は汚れを落とすというよりかは別の目的だ。
風呂の中でも一番お気に入りの風呂にゆっくり入る。
「そういや、浪人生のときも風呂であれこれ考えてたっけか」
あの時は紛れもなく、人生で最大の絶望を味わっていた。思えば今の状況はあの時と似ている。そして立ち向かうか、逃げるかで俺は逃げを選んだ。
「根っこの部分は変わらないってことか。はは、、、笑えねぇ」
俺はまた、同じ選択をするのだろうか。
何も変わらない。変わっていない。
俺の根底にあるのは、自分可愛さで自分の現状を誰かのせいにして、被害者ぶりたい。
そんな弱くて醜い心だ。
あの時のトラウマ、きっとあれは皆を殺されたことでも、脚を斬られたことに対することでもない。
そう、あれは―――
恩人が死んでも、自分が生き残ったことへの安堵感に溢れた俺自身の
皆を置いて逃げても、自分だけが助かればいいと考えた俺自身への
どうしようもない位の自己嫌悪だ
「……う、うぅ、ぐすっ、はぁ、ぐすっ」
静寂に包まれた風呂の中、自分から聞こえる、嗚咽のような何かだけが響いていた。
――――――――――――――――――――
スッキリはしてない。だが、のぼせてきたので風呂を出た。濡れた体をタオルで拭いて、持ってきていた服に着替える。鏡を見ると目が腫れている。
「なんて顔してるんだよ」
自分の目で見ても、目に光が宿っていないのが分かる。数ヶ月前に何度も、何度も何度も何度も見たあの顔そのものだ。
汗を流し過ぎたせいか喉がカラカラに乾いている。そんな喉を水道水で無理やり濡らし、更衣室の外に出た。
「え?」
俺が出たのと同タイミングで、横からピンク色の髪の女の子が出てきた。
あまりに急なことで、何も言葉が出ない。俺が固まっていると、向こうの方から話しかけてきた。
「あ、あのっ。よっ、良ければ、私の部屋、来ません、か?」
天気は生憎の雨だ。そういえばこの世界の雨は初めて見るな。窓の外を眺めると、雨粒がまるで銃弾のように降り注いでいる。それに雷が5秒に1回くらいのペースで落ちている。
「異世界の悪天候ぱねぇ……」
とてもじゃないが傘をさして外になんか出れるわけがない。昨日は途中で降られなくてよかった。
思いがけない異世界要素を感じつつ、俺は今、フリードの部屋の前に立っている。何でも、教師役が決まったらしい。
一体どんな人なのだろう。年の功を感じさせるような老人か、はたまた若くして教職を得るくらいに天才の子供だろうか。そんな予想をしながら俺は思いきってドアを開けた。
「おぉ、おめぇが例のニンゲンか!」
入るなり豪快な声が俺を歓待する。
年齢は50代くらいだろうか、黒髪で髭を生やしていて、いかにもオッサンって感じだ。
「紹介しよう。こいつは―――」
「待て待て!自己紹介くれぇ自分でさせろよ。オレの名前はソルヴァ・サルディッシュだ。今日からおめぇに勉強を教えてやる。よろしくな!」
「あっはい。よろしくお願いします」
「なんだなんだ、声がちっちぇなぁ!こんな奴がホントに使えんのかよ?」
「そこに関しては問題ない。お前は口を挟むな。ただ命令通り教えれば良い」
「はいはい、わぁってるって。与えられた仕事以外はしねぇよ。殺されたくねぇからな!」
あのフリードに物怖じせず話しているところを見るに、この男も相当強いのだろうか。
「じゃあ言われた通り、早速お勉強タイムといこうか。なぁ?」
「え、あ、はい。お願いします」
俺が自己紹介をする間もなく、勉強の部屋へと連れられたのだった。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「レイズ、ロイド。お前たちはあの男が不審な動きをしないか監視しろ。」
「理解。仰せのままに。」
「…………」
「殿下は何か気になることが?」
「あぁ、少しな。性格はアレだが、能力は申し分ない。しばらくは様子を見る。もし、何かあればあの男とそれを推薦した者を―――」
「わかりました。そうならないと良いのですがね」
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「うーんそうだなぁ。何から始めるか……」
「俺はほぼ何にも分からないんで任せます」
「おし、じゃあまずは実力が知りてぇ。簡単なテストからだ!」
そう言ってソルヴァは紙を5枚俺の目の前に置いた。
「1枚あたり大体10分ってとこか?」
「え、俺ほんと全然勉強してなくて―――」
「いや、それでも出来なくはないはずだ。何せお前にはフリード様の因子が入ってるんだからな!」
そういえば前にも同じようなことを言われたな。アイツの知識が適合率が上がる度にインプットされるみたいな。
「よし、じゃあ始めろ」
そう言われ、目の前のテストに向かう。
科目名は王国史、魔法理論、生物学、数学、音楽。
音楽?国語とかではなく音楽が入るのか。やはり異世界、不思議だな。
まずは手始めにその音楽から目を通す。
これは……。内容は簡単な記号暗記問題やコード進行だ。俺の元いた世界と遜色はない。
よし、これならできる。俺が唯一やっていた習い事はピアノなのだ。三つ上の姉に憧れ、3歳から始め、辞めたり始めたりを繰り返して合計10年以上はやっていたと思う。
つまづくことなく、音楽のテストを終え、次は数学に入る。
やっぱりあるのか……。内容は数ⅠAだろうか。遠い記憶を頼りに解き進める。だが、1番めんどくさい証明問題なんかが無いだけマシか。
一通り埋めたが、自信はない。切り替えて俺は次の科目に取り掛かった。
数十分後
「おし、終わったか。じゃあ採点するから見せてみろ」
ずっと静かだったからてっきり寝ているかと思っていたが、立ちっぱで俺の解く姿を見続けていたらしい。案外ちゃんとしてるんだな。
生物学、魔法理論、王国史は全く分からなかった。だが、フリードの知識なのだろうか、パッと言葉が浮かんでくる問題もあったので0点はない、と思う。思いたい。
「ほぉほぉ、なるほど。音楽は満点だ!数学はぼちぼちだが、問題は残り3つだな、正直小学生の方が全然マシってレベルだ」
「やっぱりか……」
分かってはいたのだが、小学生以下か。言われると結構傷つくな。
「まぁ最初はこんなもんだ、オレに教われば王国のテストなんざ簡単すぎて破りたくなるぜ??」
「おぉ、マジか……!」
1時間前の悪印象から一転、今はとても頼もしく見える。
「今日は王国史を教える、いいな?」
「はい!よろしくお願いします、先生」
こうして毎日の勉強がこの日からスタートした。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「そっちの調子はどうだ?」
「――――――――――――」
「へっ、相変わらずのポンコツか。ならさほど脅威じゃねぇな。」
「―――――――――」
「まだだ、もう少しで全ての段取りがいく。それまでは報告を続けろ、いいな?」
「―――」
「くくく、アイツはオレに注視しすぎている。俺は気長にその時を待つとしようか……」
――――――――――――――――――――
季節は変わらず、あれからもう1ヶ月。
午前は勉強、午後は訓練の毎日を過ごしてきた。勉強は我ながら才能を開花させていると思う。因子のお陰っていうのもあるかもしれないが、どの分野においても6~70%くらいは答えられるようになったのだ。もちろん先生の教えあってこそだが、想像以上に順調だ。
訓練は……まぁぼちぼちだ。フリードにガードの形をとらせるくらいにはなったのだが、それは相手に反撃する気がないからで、一度その気になれば情けないくらいに叩きのめされる。
それでも一個成長したことは魔法を補助なしで使えるようになったことだ。とはいっても、放電をしてそれを引っ込めるだけしか出来ないのだが、今はそれを塊にして放つ練習をしている。これが本当に難しく、未だに成功したことはない。
今日も練習で傷だらけになり、今は夕食前の風呂に入っている。
「はぁぁぁぁ、風呂だけが俺を癒してくれるよ……」
この風呂には何度お世話になったことか。フリード以外に誰も入らないし1人でのんびりできる。まぁシャロがたまに紛れてくるのだが、1週間に1度あるかないかくらいだ。
フリードと風呂の時間が被ったことがないのだが、アイツは一体いつ入ってるんだ?まさか入ってないなんてことは無いとは思うが。
「おお、こっちの風呂はめっちゃ広いな!」
「なっ、先生!?なんでこっちに……」
ソルヴァはズシズシとこちらへ歩いてきて、俺の入っている風呂に浸かる。
「まぁ、細かいことはいいじゃねぇか!それよりどうだ、魔法訓練は順調か?」
「いやぁ、まだ全然ですよ。ロクに発動出来なくて……」
「ふぅん、そう、か。なら良かった」
「よかった?」
「いんや、こっちの話だ。気にすんな。それより、ここの風呂は豪華すぎやしねぇか?使用人の方なんて2種類しかねぇぞ??」
「ここと結構差がありますよね」
「ホントだよ、まったく。使わねぇと勿体ねぇよなぁ!使用人達だってそう思ってるはずだぜ?」
「否定。私たちは衣食住が与えられているだけで満足です」
「うわぁっ!なんでお前もいるんだよ!」
ソルヴァと話していたらいつの間にかロイドも入ってきていた。初めて裸体を見たが、筋肉のつき方が俺とまるで違う。
「説明。特に理由はありません」
「入るんならせめてちゃんと体洗えよな……」
ロイドは何も言わず、そのままソルヴァのことを凝視している。
「……ふん。落ちぶれた王の狂信者が」
ソルヴァはそう、誰にも聞こえない声で呟いた。
2人は黙ったまま、しばらく睨み合い続けていたが、
「のぼせた、オレは先に出るぜ」
そう言ってソルヴァは早々に出ていってしまった。
俺は2人のこのやり取りにただならぬ雰囲気を感じたが、そこに踏み込みはしなかった。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「どうやら聞いてた通りだったみてぇだな。オレは役目が終わり次第接近出来ねぇから、不安要素が多くて困るよ。」
「―――――――――――――――」
「元よりそんな気にしてないけど一応な。どこでミスるか分かんねぇからよ。」
「―――――――――」
「白黒の奴らはどうとでもなる。1番ネックになるのはあいつだな。その為にここまで丁寧にやってきたんだ。」
「―――――――――」
「もうしばらく待て。あと少しで終わる。」
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
午前の勉強も終わり、また模擬戦なのだが……
「おいフリード、なんでそいつがここにいるんだ?」
俺はそう言いながら黒髪の男、ロイドを指さす。
「今日は俺の代わりにロイドと戦ってもらう」
「な、なんでコイツと!」
「ここ数日、適合率の伸びが著しく落ちている。それに関連して気づいたことがある」
「気づいたこと?」
「その原因……それは恐らくお前の中にある恐怖、敵に立ち向かう際に生じる、根底にある恐れだ」
「そ、そりゃ戦うのが怖くたって仕方がないじゃねぇか!」
「戦いに対する恐怖だけならまだいい。問題はそこじゃない。もっと別の、ある種のトラウマによるものだと、俺は感じた」
俺の……トラウマ……。
「その顔、、薄々考えてはいたようだな」
「…………」
「イスルギ、お前にはそのトラウマを払拭してもらいたい。その為にこの場を用意した」
フリードの言いたいことは分かる。だが、それでも俺は、
「無理に立ち向かえなどとは言わない。そんな事をしても無駄だからな。あくまでお前自身が奮起して、どうにかしようと思い、挑まなければならない。それは分かるな?」
「……ああ」
「もう一度言うが、これは強制ではない。嫌なら逃げるんだな。だがもし、今のままでも良いのなら、な」
「……今の……俺、か」
俺のトラウマ……あの時の恐怖は今も鮮明に思い出せる。大切な物が全て奪われ、俺は何も出来なかった。俺はあの瞬間、その全てを放り出して逃げたのだ。
出来ることならば永遠に逃げていたい。だが、今は違う。立ち向かうだけの力がある。あとは俺の心だけだ。
「わかった、やる。やってやるさ。立ち向かってやるよ」
「……それでいい。ロイド、位置につけ。剣は抜くな、あくまで素手だけだ」
「理解。剣は預けておきます」
そう言って剣をフリードに手渡すと、俺の正面に立った。
俺も覚悟を決めて向かい合う。
今一度、深く深呼吸をする。
「俺ならできる。大丈夫だ」
俺は意識を集中させ、いつも通りのルーティンを行う。体中に血が巡るのがわかる。準備万端だ。
「よし、いくぞ!」
俺は走り出す。相手にまだ動きは見られない。近づいて、洗練された右ストレートを繰り出す、が相手の手に受け止められた。
「チッ、このクソがぁ!」
すかさず、左脚で蹴りをお見舞いするが、またこれも腕で防がれる。
「くっ!」
急いで立て直し、状況を把握する。向こうに動きはまだ見られない。完全に舐められている。
蹴りはやはりまだ慣れない、ならば次は拳中心でいく。
再び走り出し、殴りかかる。だが、全て避けるかいなされて、空いた胴体に蹴りを入れられ、そのまま慣性に従って俺は吹き飛ぶ。
「がぁっ!」
壁に打ちつけられ、衝撃が内臓に響いているのが分かる。体中の血が沸騰しているかのように熱い。
ロイドは追撃をしてこない。俺は傷を治しつつ、次の動きを考える。
正攻法でやっても勝てない、ならば捨て身で一撃を入れるべきでは無いのだろうか。
そう思い立とうとした瞬間、体から力が抜ける。
「っっ?体がっ!?」
「……やはりそうなるか」
そこで初めて、自分の足が、手が震えていることに気づいた。
そう、この数回のやり取りで本能的に悟ってしまったのだ。決して勝てないと。
そして思い出される、あの夜の記憶。暗闇で赤い眼が段々と近づいてくる様子、それと今目の前の光景が重なる。
「くそっ!とまれっ!とまれって!」
震えが止まらない。ロイドはこちらの様子を見てだんだんと近づいてくる。
俺は震えた手足を無理に動かし、大声を上げながら飛びかかるが、顎に掌底を喰らい、浮いた体に肘を入れられた。
「ぐぁっ!がはっ!」
そこからはあまりに一方的だった。震えのせいか因子の力が上手く引き出せず、向こうの反撃に為す術なく打ち倒された。
途中からはもう立ち上がることも出来ず、馬乗りになられて、拳を何度も何度も打ち込まれた。口の中からは血の味がし、腕があがらない。
フリードがその姿を見て止めに入った。
「お、れは、まだ、」
「いや、これ以上は止めよう。ロイド、ご苦労だった。一旦下がってくれ」
「承知。仕事に戻ります」
「く、、そ、、」
やっと、、、終わった。
俺の心に残ったのは、負けた悔しさでも、歯が立たなかった不甲斐なさでもなく、終わったことに対する安心感だけだった。
そんな自分に嫌気がさす。
「やはり、そう簡単にはいかぬ、か。どうだ、明日からもやれそうか?」
冗談じゃない。あれだけ好き放題されて、またやりたいなんて思うわけがない。だが、そんな気持ちとは裏腹に別の言葉が自然と飛び出す。
「ああ、、今日は、、負けたけど、まだ、やれる、、大丈夫だ」
嘘だ。本当はもう戦いたくない。殴られ、蹴られる度に、傷が増える度に敗北を刻まれていく感覚を覚えた。逃げ出したい。
だが、俺のちっぽけなプライドがそれを邪魔する。
傷はフリードが治してくれた。体は平気だ。でも、心はもう―――
その日から3日間、また惨敗した。負け続けた。トラウマを克服するどころか、更に深く沼にハマっていっている。
「またこんなに怪我して、シャロの魔法も万能じゃないんですよぉ」
「悪いな……。」
戦いが終わる度、毎回シャロが俺の傷を治してくれている。かっこ悪い姿を見せてばっかだ。
今更やめたいなど言えず、かといって逆転出来ることもない。似たような毎日を繰り返している。先が暗くて見えない。
夕飯を食べ終えて、横になったがいまいち寝付けなかった。
「風呂でも……入りにいくか」
戦いの後入ったのだが、今は汚れを落とすというよりかは別の目的だ。
風呂の中でも一番お気に入りの風呂にゆっくり入る。
「そういや、浪人生のときも風呂であれこれ考えてたっけか」
あの時は紛れもなく、人生で最大の絶望を味わっていた。思えば今の状況はあの時と似ている。そして立ち向かうか、逃げるかで俺は逃げを選んだ。
「根っこの部分は変わらないってことか。はは、、、笑えねぇ」
俺はまた、同じ選択をするのだろうか。
何も変わらない。変わっていない。
俺の根底にあるのは、自分可愛さで自分の現状を誰かのせいにして、被害者ぶりたい。
そんな弱くて醜い心だ。
あの時のトラウマ、きっとあれは皆を殺されたことでも、脚を斬られたことに対することでもない。
そう、あれは―――
恩人が死んでも、自分が生き残ったことへの安堵感に溢れた俺自身の
皆を置いて逃げても、自分だけが助かればいいと考えた俺自身への
どうしようもない位の自己嫌悪だ
「……う、うぅ、ぐすっ、はぁ、ぐすっ」
静寂に包まれた風呂の中、自分から聞こえる、嗚咽のような何かだけが響いていた。
――――――――――――――――――――
スッキリはしてない。だが、のぼせてきたので風呂を出た。濡れた体をタオルで拭いて、持ってきていた服に着替える。鏡を見ると目が腫れている。
「なんて顔してるんだよ」
自分の目で見ても、目に光が宿っていないのが分かる。数ヶ月前に何度も、何度も何度も何度も見たあの顔そのものだ。
汗を流し過ぎたせいか喉がカラカラに乾いている。そんな喉を水道水で無理やり濡らし、更衣室の外に出た。
「え?」
俺が出たのと同タイミングで、横からピンク色の髪の女の子が出てきた。
あまりに急なことで、何も言葉が出ない。俺が固まっていると、向こうの方から話しかけてきた。
「あ、あのっ。よっ、良ければ、私の部屋、来ません、か?」
10
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~
トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。
旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。
この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。
こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる