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第18話 吸血姫の魅了
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「あら、目が覚めたみたいね。気分はどう?」
ボロスの体内にある毒を、すべて浄化しました。
これで情報を墓場に持っていくことはできなりましたよ。
「な、なぜ俺は生きている……? たしかに毒を飲んだはずなのに」
「毒くらい私にかかれば、どうとでもなるの」
「神聖魔法が使えるのは真実だったのか……御見それした。まさかヴァンパイアと聖女、両方の力を持っている者がいるなんて」
あれ、何か勘違いしていますよ。
別に私は、聖女の力なんてこれっぽっちも持っていないのだから。
「それで、今度はきちんと教えてくれるわよね?」
「…………これでも俺は、S級暗殺者ギルドのボスだ。雇い主のことは何があっても言わない」
そう宣言したボロスは、今度は自分の舌を噛み切りました。
──しつこい!
まさかまた自殺するなんて思わなかった。
何度やっても、絶対に死なせないんだから!
──《血肉再生》
これで千切れた舌は元通り!
さあ、早く起きなさい。
「ウグッ、お、俺の舌が……まさか俺は、死ぬことすらできないというのか?」
「喜びなさい。私が目の前にいる限り、あなたは死ぬことはないわ」
「つまり、いくら拷問しても俺は死なないというわけか。だが、俺は暗殺ギルドのボス、どんな拷問にも耐えるよう訓練している」
「そう…………じゃあ、これも大丈夫ってことよね?」
ボロスと目を合わせます。
──《魅了》
自慢じゃないけど、これで落ちなかった男はいません。
相手が私のことを格上だと思っていないと使えないけど、かなり便利な魔法です。
なにせ私のことしか、考えられなくなってしまうのだから……。
ボロスのだらりとした目が、私を見据える。
彼の瞳は輝きを放ち、そして狂おしいほどの興奮を放っています。
「テレネシア様……あぁ、なんて美しいんだ!」
寡黙だったはずのボロスが、再び饒舌になりました。
無事に《魅了》がかかったみたい。
「ボロス、あなたは私に何をしてくれる?」
「あなたは俺にとっての女神! すべてを捧げましょう」
これなら大丈夫そう。
ちょっと鬱陶しいのがしゃくだけど。
じゃあ、教えてもらいましょうか。
「あなたの雇い主の名前は?」
「ニコラス王子でございます」
「私を殺そうとした理由は?」
「先日、ニコラス王子がテレネシア様に叩きのめされました。その復讐でございます」
やはり、黒幕はニコラス王子だった。
想像通りです。
「なら、教えてちょうだい。なぜあなたは、この教会に潜伏していたの?」
「ニコラス王子の命令で、大神官ドルネディアスの監視をしておりました。いつでも殺せるようにと」
大神官ドルネディアス?
なぜニコラス王子がこの教会の責任者を殺そうとしてるの?
「ドルネディアスを殺そうとしている理由は?」
「大神官ドルネディアスはニコラス王子の兄君でございます。ゆえに、王位継承を争っているのでございます」
──大神官ドルネディアスとニコラス王子が兄弟!?
でも、言われてみれば腑に落ちる。
国王に謁見した時、ドルネディアスの顔が国王と似ていた。
もちろん、ニコラス王子とも。
「ドルネディアスは生まれた時から、呪われているのでございます。そのため、第一王子であるにもかかわらず、教会に入れられたのです」
王位継承問題はどこも争いが絶えません。
だからこそ汚点がある王子は、次期国王に指名されることはない。
呪われた王子など、王位継承権争いからすぐに外されてしまう。
「第一王子が呪われているのなら、ニコラス王子が次期国王になるのは間違いないはずよね。それなのに、なんで殺そうとしたの?」
「万が一のことがあってはならないからです。そしてテレネシア様が目覚められました……なので、万が一のことが起きたのです」
「私とドルネディアスの呪いに、何か関係があるようには思えないけど」
「大ありでございます。なぜならテレネシア様は『封印の聖女』様ですから、第一王子の呪いを解く手段をお持ちかもしれません」
なるほど、理解しました。
今回のことは、私が大神官ドルネディアスにかけられた呪いを解くかもと恐れたニコラス王子が、自分の復讐も兼ねて私を暗殺しようとしたのが真相のようです。
大神官ドルネディアスの呪いが解けた場合に備えていたとは、ニコラス王子も用心深い。
その人員に、S級暗殺者ギルドのボスを布陣させたのも、完璧な采配だったはず。
──私の正体が、吸血姫でなければの話だけど。
知りたい情報はすべて聞けた。
なら次にすることは、この場の後始末。
この騒ぎのせいで、そろそろ誰かやって来るだろうから。
「ボロスに命令します。この場を元通りにして、部下たちをさっさと連れ帰りなさい」
「まさか、配下の者たちを生かしてくださっていたのですか?」
「当たり前でしょう、私を誰だと思っているの」
私は高貴なるヴァンパイア、吸血姫のテレネシアです。
利用されていただけの人間を、むやみに殺すことはしない。
たとえ、自分を殺そうとした相手だとしても。
でも、ニコラス王子。
あなたには、またお仕置きが必要の用ですね。
せっせと掃除を始めたボロスに、次の命令を下します。
「片付けが終わったら、お願いがあります。城に潜入して、ニコラス王子を捕えなさい」
ボロスの体内にある毒を、すべて浄化しました。
これで情報を墓場に持っていくことはできなりましたよ。
「な、なぜ俺は生きている……? たしかに毒を飲んだはずなのに」
「毒くらい私にかかれば、どうとでもなるの」
「神聖魔法が使えるのは真実だったのか……御見それした。まさかヴァンパイアと聖女、両方の力を持っている者がいるなんて」
あれ、何か勘違いしていますよ。
別に私は、聖女の力なんてこれっぽっちも持っていないのだから。
「それで、今度はきちんと教えてくれるわよね?」
「…………これでも俺は、S級暗殺者ギルドのボスだ。雇い主のことは何があっても言わない」
そう宣言したボロスは、今度は自分の舌を噛み切りました。
──しつこい!
まさかまた自殺するなんて思わなかった。
何度やっても、絶対に死なせないんだから!
──《血肉再生》
これで千切れた舌は元通り!
さあ、早く起きなさい。
「ウグッ、お、俺の舌が……まさか俺は、死ぬことすらできないというのか?」
「喜びなさい。私が目の前にいる限り、あなたは死ぬことはないわ」
「つまり、いくら拷問しても俺は死なないというわけか。だが、俺は暗殺ギルドのボス、どんな拷問にも耐えるよう訓練している」
「そう…………じゃあ、これも大丈夫ってことよね?」
ボロスと目を合わせます。
──《魅了》
自慢じゃないけど、これで落ちなかった男はいません。
相手が私のことを格上だと思っていないと使えないけど、かなり便利な魔法です。
なにせ私のことしか、考えられなくなってしまうのだから……。
ボロスのだらりとした目が、私を見据える。
彼の瞳は輝きを放ち、そして狂おしいほどの興奮を放っています。
「テレネシア様……あぁ、なんて美しいんだ!」
寡黙だったはずのボロスが、再び饒舌になりました。
無事に《魅了》がかかったみたい。
「ボロス、あなたは私に何をしてくれる?」
「あなたは俺にとっての女神! すべてを捧げましょう」
これなら大丈夫そう。
ちょっと鬱陶しいのがしゃくだけど。
じゃあ、教えてもらいましょうか。
「あなたの雇い主の名前は?」
「ニコラス王子でございます」
「私を殺そうとした理由は?」
「先日、ニコラス王子がテレネシア様に叩きのめされました。その復讐でございます」
やはり、黒幕はニコラス王子だった。
想像通りです。
「なら、教えてちょうだい。なぜあなたは、この教会に潜伏していたの?」
「ニコラス王子の命令で、大神官ドルネディアスの監視をしておりました。いつでも殺せるようにと」
大神官ドルネディアス?
なぜニコラス王子がこの教会の責任者を殺そうとしてるの?
「ドルネディアスを殺そうとしている理由は?」
「大神官ドルネディアスはニコラス王子の兄君でございます。ゆえに、王位継承を争っているのでございます」
──大神官ドルネディアスとニコラス王子が兄弟!?
でも、言われてみれば腑に落ちる。
国王に謁見した時、ドルネディアスの顔が国王と似ていた。
もちろん、ニコラス王子とも。
「ドルネディアスは生まれた時から、呪われているのでございます。そのため、第一王子であるにもかかわらず、教会に入れられたのです」
王位継承問題はどこも争いが絶えません。
だからこそ汚点がある王子は、次期国王に指名されることはない。
呪われた王子など、王位継承権争いからすぐに外されてしまう。
「第一王子が呪われているのなら、ニコラス王子が次期国王になるのは間違いないはずよね。それなのに、なんで殺そうとしたの?」
「万が一のことがあってはならないからです。そしてテレネシア様が目覚められました……なので、万が一のことが起きたのです」
「私とドルネディアスの呪いに、何か関係があるようには思えないけど」
「大ありでございます。なぜならテレネシア様は『封印の聖女』様ですから、第一王子の呪いを解く手段をお持ちかもしれません」
なるほど、理解しました。
今回のことは、私が大神官ドルネディアスにかけられた呪いを解くかもと恐れたニコラス王子が、自分の復讐も兼ねて私を暗殺しようとしたのが真相のようです。
大神官ドルネディアスの呪いが解けた場合に備えていたとは、ニコラス王子も用心深い。
その人員に、S級暗殺者ギルドのボスを布陣させたのも、完璧な采配だったはず。
──私の正体が、吸血姫でなければの話だけど。
知りたい情報はすべて聞けた。
なら次にすることは、この場の後始末。
この騒ぎのせいで、そろそろ誰かやって来るだろうから。
「ボロスに命令します。この場を元通りにして、部下たちをさっさと連れ帰りなさい」
「まさか、配下の者たちを生かしてくださっていたのですか?」
「当たり前でしょう、私を誰だと思っているの」
私は高貴なるヴァンパイア、吸血姫のテレネシアです。
利用されていただけの人間を、むやみに殺すことはしない。
たとえ、自分を殺そうとした相手だとしても。
でも、ニコラス王子。
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