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第7話 昨夜はお楽しみでしたね
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チュンチュン。
外から鳥のさえずりが聞こえる。
もう、朝になってしまった。
騒がしい夜になってしまったけど、おかげで魔力が少しだけ戻りました。
あの子には感謝しないとね。
すやすやと眠る公爵令嬢の髪を撫でていると、ゆっくりと彼女のまぶたが開きます。
「あれ、ここはどこ? わたくしはいったい……」
「目が覚めたようね」
私はベッドから起き上がると、事前に用意してあったコップを彼女に差し出します。
「二日酔いには水が効くわ」
「ふ、二日酔い? あれ、なんだかよく思い出せないけど、なんかわたくしお酒臭いかも?」
「浴びるようにワインを飲んでいたからね。ほら、空のボトルがあんなにあるでしょう」
テーブルの上で横になっているボトルを指さします。
それを見ても、公爵令嬢はまったく記憶にないという顔をしていました。
それもその通り。
なぜならこの子は、ワインを一滴も飲んでいないんだから。
じゃあ、なぜ公爵令嬢が二日酔いになっているのか。
それは、私が直接、ワインのアルコールを彼女の血に流し込んだからです。
本来であれば危険な行為だけど、血のスペシャリストである私にとっては問題ありません。
そうして酔っぱらった彼女は、酔い過ぎて私に血を吸われた記憶を忘れてしまう。
あの変な誤解も、これで一緒に消すことができた。
完璧な作戦ね!
「あなたが二日酔いになっているのは、私のせいなの。でも、昨日は付き合ってくれてありがとうね。おかげで良い夜を過ごせたわ」
昨夜、私はこの子の血を少しだけ分けてもらった。
ほんの、一口だけ。
この公爵令嬢は、魔物に半身を食べられたばかりの病み上がりです。
だから多くの血を飲むわけにはいかない。
とりあえず、体が動けるようになる程度だけ、飲ませてもらいました。
命を救ってあげたお礼だと思えば、少ないくらいでしょう。
血を飲んだことで、現在の魔力量はこれくらいになりました。
【魔力量 8/100%】
コウモリ化はそれなにり魔力を消費するので、まだ足りない。
規格外の神器を奪う途中での戦闘、そしてその後の逃走のことも考えると、半分以上は回復しておきたいところ。
そして変身ができないのなら、この姿のまま外に出る必要があります。
でも廊下では見張りの護衛騎士が、なぜか寝ずの番をしている。
なので今夜中に外出することを諦めた私は、長期計画に移行することにしました。
つまり、少しずつ人間たちから血を集めて、魔力が完全に回復するのを待つ作戦です。
そうして万全の態勢になったところで、城へ忍び込んで規格外の神器を奪取する!
そのために、私はこの子の血を吸った。
ただ問題は、このまま正体を隠すためには、血を吸った事実を彼女の記憶から消す必要がある。
そうして私は、この子を酒に酔わせた。
私が彼女の首筋に噛みついた後、アルコールを摂取して酔っぱらってしまった公爵令嬢はすぐに寝てしまったのけどね。
ベッドは一つしかないから、そのせいで一緒に寝ることになってしまったの計算外でしたが。
「テレネシア様がわたくしの首にキスをしたところまでは覚えていますが…………ということは、あの後わたくしは……!」
公爵令嬢は両手で顔を隠しながら、恥ずかしそうにうめき声をあげました。
お酒を飲んだのが、そんなに恥ずかしいことだったのかしら。
公爵家のご令嬢みたいだし、きっと箱入り娘だったのでしょう。
それでも、私が首筋にキスに噛みついた時のことをまだ覚えているのは想定していませんでした。
上手いこと言い訳をしておかないと。
「私も酔っていたから、あんなことをしてしまったの。ごめんなさいねシャーロット」
「あれ、なんでわたくしの名前を……本当に何も覚えていません。それなのに初めての経験をしてしまったなんて、お父様に何と言えば……」
初めての飲酒くらいで、大げさね。
まあ、もしもそのお父様とやらが怒鳴り込んできたら、私のせいだと助け舟くらいは出してあげましょう。
ねえ、シャーロット・ダルウィテッドさん。
血を飲ませてもらった相手の名前を覚える。
それは1000年前から続けている、私の決まり事のようなものです。
大切な血液を分けて奉仕してもらったのだから、そうやって名前を覚えることで感謝の気持ちを伝えることにしている。
なにせ私が血を飲めば、相手のことが名前だけでなく、すべてわかってしまうのだから。
「ありがとうシャーロット。あなたが私に奉仕してくれたことは、生涯忘れないわ」
「やっぱりわたくしは、テレネシア様に……し、失礼いましましたー!」
シャーロットはベッドから瞬時に起き上がり、部屋を駆けながら退室していきました。
寝起きだったから、まだ服が乱れたままだというのに……。
なんだかよくわからなかったけど、騒がしい子だったわね。
とはいえ、魔力が少しだけ戻った。
このまま聖女のフリをしながら、密かに血を集めるとしましょう。
「あら、こんなところにワインの染みが」
ベッドのシーツにワインを零していたみたい。
昨夜はシャーロットを酔わせた後、一人で深酒をしてしまったのよね。うっかりだわ。
汚してしまったし、どうすればいいか大神官に相談しないと。
ゆっくりと身支度を整えてから、部屋を後にします。
朝から行動するのはヴァンパイアとしては辛いのだけど、これが人間の習性だから仕方ありません。
正体を隠すため、我慢しないと。
「あら、おはよう。あなたはたしか、バルクでしたね」
廊下に出ると、人間の男と目が合った。
護衛騎士バルクだ。
寡黙そうな雰囲気の彼は、恥ずかしそうにうつむきながらこんなことを言ってくる。
「昨夜は、お楽しみだったようですね……」
頬を染めながら、護衛騎士バルクはスタスタと去っていきました。
──いったいどういう意味?
まさか私が公爵令嬢の血を吸っていたことがバレたんじゃ……。
いや、それだったら、あんなことは言わない。
ということは、バルクのあの言葉はそのままの意味なのでしょう。
私は昨夜、何かを楽しんでいたと思われている。
それは何か。
夜中に公爵令嬢が私の部屋に入ったきり、出ては来なかった。
部屋からは何か物音だけでなく、公爵令嬢のはしゃぐような甘い声も聞こえていたのでしょう。
そうして朝になったら、衣服が乱れたままの公爵令嬢が部屋から飛び出して来た。
もしかしたらシャーロット公爵令嬢は、バルクとのすれ違った時に、何か口に出していたかもしれない。
たとえば、「酔っぱらってテレネシア様と寝てしまった」みたいなことを。
一晩中、女子二人が同じ部屋で宴会をして、最後には一緒に寝落ちしてしまった。
つまり、女子会をしていたと勘違いされたのね!
かつて私は、ヴァンパイアの配下たちが女子会をしていたのを羨ましく思ったことがある。
孤高の王女である私は、みんなから一度も誘われたことがなかったから……。
──また今度、シャーロットを呼んで、一緒に女子会をするのも悪くはないわね。
後日、こんな噂が教会に流れました。
聖女テレネシアは、週に何度も女の子を部屋に連れ込むくらいの、女好きなのだと。
外から鳥のさえずりが聞こえる。
もう、朝になってしまった。
騒がしい夜になってしまったけど、おかげで魔力が少しだけ戻りました。
あの子には感謝しないとね。
すやすやと眠る公爵令嬢の髪を撫でていると、ゆっくりと彼女のまぶたが開きます。
「あれ、ここはどこ? わたくしはいったい……」
「目が覚めたようね」
私はベッドから起き上がると、事前に用意してあったコップを彼女に差し出します。
「二日酔いには水が効くわ」
「ふ、二日酔い? あれ、なんだかよく思い出せないけど、なんかわたくしお酒臭いかも?」
「浴びるようにワインを飲んでいたからね。ほら、空のボトルがあんなにあるでしょう」
テーブルの上で横になっているボトルを指さします。
それを見ても、公爵令嬢はまったく記憶にないという顔をしていました。
それもその通り。
なぜならこの子は、ワインを一滴も飲んでいないんだから。
じゃあ、なぜ公爵令嬢が二日酔いになっているのか。
それは、私が直接、ワインのアルコールを彼女の血に流し込んだからです。
本来であれば危険な行為だけど、血のスペシャリストである私にとっては問題ありません。
そうして酔っぱらった彼女は、酔い過ぎて私に血を吸われた記憶を忘れてしまう。
あの変な誤解も、これで一緒に消すことができた。
完璧な作戦ね!
「あなたが二日酔いになっているのは、私のせいなの。でも、昨日は付き合ってくれてありがとうね。おかげで良い夜を過ごせたわ」
昨夜、私はこの子の血を少しだけ分けてもらった。
ほんの、一口だけ。
この公爵令嬢は、魔物に半身を食べられたばかりの病み上がりです。
だから多くの血を飲むわけにはいかない。
とりあえず、体が動けるようになる程度だけ、飲ませてもらいました。
命を救ってあげたお礼だと思えば、少ないくらいでしょう。
血を飲んだことで、現在の魔力量はこれくらいになりました。
【魔力量 8/100%】
コウモリ化はそれなにり魔力を消費するので、まだ足りない。
規格外の神器を奪う途中での戦闘、そしてその後の逃走のことも考えると、半分以上は回復しておきたいところ。
そして変身ができないのなら、この姿のまま外に出る必要があります。
でも廊下では見張りの護衛騎士が、なぜか寝ずの番をしている。
なので今夜中に外出することを諦めた私は、長期計画に移行することにしました。
つまり、少しずつ人間たちから血を集めて、魔力が完全に回復するのを待つ作戦です。
そうして万全の態勢になったところで、城へ忍び込んで規格外の神器を奪取する!
そのために、私はこの子の血を吸った。
ただ問題は、このまま正体を隠すためには、血を吸った事実を彼女の記憶から消す必要がある。
そうして私は、この子を酒に酔わせた。
私が彼女の首筋に噛みついた後、アルコールを摂取して酔っぱらってしまった公爵令嬢はすぐに寝てしまったのけどね。
ベッドは一つしかないから、そのせいで一緒に寝ることになってしまったの計算外でしたが。
「テレネシア様がわたくしの首にキスをしたところまでは覚えていますが…………ということは、あの後わたくしは……!」
公爵令嬢は両手で顔を隠しながら、恥ずかしそうにうめき声をあげました。
お酒を飲んだのが、そんなに恥ずかしいことだったのかしら。
公爵家のご令嬢みたいだし、きっと箱入り娘だったのでしょう。
それでも、私が首筋にキスに噛みついた時のことをまだ覚えているのは想定していませんでした。
上手いこと言い訳をしておかないと。
「私も酔っていたから、あんなことをしてしまったの。ごめんなさいねシャーロット」
「あれ、なんでわたくしの名前を……本当に何も覚えていません。それなのに初めての経験をしてしまったなんて、お父様に何と言えば……」
初めての飲酒くらいで、大げさね。
まあ、もしもそのお父様とやらが怒鳴り込んできたら、私のせいだと助け舟くらいは出してあげましょう。
ねえ、シャーロット・ダルウィテッドさん。
血を飲ませてもらった相手の名前を覚える。
それは1000年前から続けている、私の決まり事のようなものです。
大切な血液を分けて奉仕してもらったのだから、そうやって名前を覚えることで感謝の気持ちを伝えることにしている。
なにせ私が血を飲めば、相手のことが名前だけでなく、すべてわかってしまうのだから。
「ありがとうシャーロット。あなたが私に奉仕してくれたことは、生涯忘れないわ」
「やっぱりわたくしは、テレネシア様に……し、失礼いましましたー!」
シャーロットはベッドから瞬時に起き上がり、部屋を駆けながら退室していきました。
寝起きだったから、まだ服が乱れたままだというのに……。
なんだかよくわからなかったけど、騒がしい子だったわね。
とはいえ、魔力が少しだけ戻った。
このまま聖女のフリをしながら、密かに血を集めるとしましょう。
「あら、こんなところにワインの染みが」
ベッドのシーツにワインを零していたみたい。
昨夜はシャーロットを酔わせた後、一人で深酒をしてしまったのよね。うっかりだわ。
汚してしまったし、どうすればいいか大神官に相談しないと。
ゆっくりと身支度を整えてから、部屋を後にします。
朝から行動するのはヴァンパイアとしては辛いのだけど、これが人間の習性だから仕方ありません。
正体を隠すため、我慢しないと。
「あら、おはよう。あなたはたしか、バルクでしたね」
廊下に出ると、人間の男と目が合った。
護衛騎士バルクだ。
寡黙そうな雰囲気の彼は、恥ずかしそうにうつむきながらこんなことを言ってくる。
「昨夜は、お楽しみだったようですね……」
頬を染めながら、護衛騎士バルクはスタスタと去っていきました。
──いったいどういう意味?
まさか私が公爵令嬢の血を吸っていたことがバレたんじゃ……。
いや、それだったら、あんなことは言わない。
ということは、バルクのあの言葉はそのままの意味なのでしょう。
私は昨夜、何かを楽しんでいたと思われている。
それは何か。
夜中に公爵令嬢が私の部屋に入ったきり、出ては来なかった。
部屋からは何か物音だけでなく、公爵令嬢のはしゃぐような甘い声も聞こえていたのでしょう。
そうして朝になったら、衣服が乱れたままの公爵令嬢が部屋から飛び出して来た。
もしかしたらシャーロット公爵令嬢は、バルクとのすれ違った時に、何か口に出していたかもしれない。
たとえば、「酔っぱらってテレネシア様と寝てしまった」みたいなことを。
一晩中、女子二人が同じ部屋で宴会をして、最後には一緒に寝落ちしてしまった。
つまり、女子会をしていたと勘違いされたのね!
かつて私は、ヴァンパイアの配下たちが女子会をしていたのを羨ましく思ったことがある。
孤高の王女である私は、みんなから一度も誘われたことがなかったから……。
──また今度、シャーロットを呼んで、一緒に女子会をするのも悪くはないわね。
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