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紫苑は、そのうちフォロワーも増えると期待していたが、なかなか思い通りに増えなかった
(どうして増えないの?他の人のフォロワーは順調に増えてるのに。私には、良いことがなかなかないのはなぜ?)
紫苑はすっかり自信をなくしていた。そんな折、紫苑のことが、インターネットで炎上し始めた。
「紫苑って中学生、You Tubeで見たか?」
「ああ、見た見た。あのリアル中学生って名乗ってるガキだろう。どうせ、援助交際の相手を探すためじゃないのか?」
「それは言える。リアル中学生と名乗ってるやつなんて、実はビッチでしたなんて、よくある話だしな」
そんな悪意に満ちた書き込みが見られるようになり、だんだんと拡散されていく。
(なぜ、そんなに悪意にとるの?私は皆で仲良く話せるようにしたくて、Vtuberになったのに。それに、私は援助交際するようなビッチじゃない。男の子と付き合ったことさえないのに)
紫苑がそう思っていても、インターネット上での炎上は止まらず、最後には自宅まで特定されて、怪しい中学生みたいな男子が自宅近くに出没するようになった。しかも、紫苑はスマホのメアドまで公開していたので、「援助交際してよ。五万円出すから」などという怪しい男からのメールが、毎日数百件も届くのだ。そのうち、自宅の玄関前に、高校生ぐらいのブレザーを着た男子が立っていたときには、紫苑は恐怖でひざがガクガク震えだした。男子は頭をリーゼントに固めており、見るからに不良っぽい感じだ。紫苑は買い物のために外出していたのだが、これでは自宅に入れない。
(ヤバい。警察に電話しないと)
もっとも、その必要はなかった。続いて自宅の玄関前に来た大学生ぐらいの筋肉質で背の高い男子が、
「おい、君はこのあたりじゃ有名な不良、羽田二郎だろう。ここは君の家じゃないのに、なぜ玄関前に立ってるんだ?家の人に迷惑じゃないか」
と言ったので、リーゼントがブチ切れたように、
「何だと、コラァ!俺様を誰だと思ってやがる?この界隈じゃ、泣く子も黙る羽田二郎様だぞ。口のきき方に気をつけたらどうだ?やんのか、やんねぇのか?」
と、すごんでくるが、大学生は全くひるんだ様子もない。
「口のきき方に気をつけるのはどっちだ?こう見えても、僕はケンカには自信あるんだぞ。おっと、自己紹介が遅れたな。僕は練馬大学一年の小日向仙蔵だ。大学では合気道をやっててな。腕には自信があるほうだぜ」
「へえ。なら、俺様とやり合ってみるか?勝てたら、俺様はこの家には近づかないが、負けたら慰謝料を二十万円いただくぜ」
「良いだろう」
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