恋愛小説2

七海美波

文字の大きさ
上 下
5 / 13

4

しおりを挟む
「中国は敵国の少数民族には、民族自決を叫ぶのに、自国内の少数民族はいじめるんだな。言行不一致もいいところだわ」
 実際、ウイグル自治区西部では、トルコ系民族の反乱も起きているのだ。
「そうだ。文化祭の展示のテーマは、『中国の少数民族』と『日本の防衛』にしませんか?」
「良いテーマやん。最近の日本は、歴史問題など、中国のなすがままやけど、それじゃあかんしな」
 こうして、テーマが決まったので、あたしたちの歴史研究は始まった。中国共産党が、ウイグルで遊牧民を村に定住させて、牧草を求めて移動し続ける生活をやめさせたために、どれだけの遊牧民が家畜を死なせてしまい、失業したか。
「漢民族って、はた迷惑な民族だよね。日本人のほうが、よほど良い民族だわ。そんななら、日本を盟主とした東アジア共同体を作らないと」
 こうして、あたしたちは生徒会に文化祭のテーマを申請し、受理された。ところが、事態はあたしたちの思ってもみなかった方向から、横槍が入ることになったのだ。
 生徒会に申請が受理されてから一週間ほどたち、あたしが歴史クラブの部室に顔を出すと、田井中部長と高橋さんが頭をかかえていた。
「深刻そうな顔をして、どうなさったんですか?」
「それがな、生徒会が今日になって、いきなり申請を受理できんとか言い出したんや。もう、わけわからん」
「はあ? 理由とか、ちゃんと説明してもらったんですか?」
「それがな、『政治にかかわるテーマだから、下手したら国際問題になる』の一点張りや」
「何ですか、それ? ボスが習近平だか何だか知りませんが、中国共産党が怖くて歴史を研究できますか! 日本政府なら怖くないからと言って、日本人には平気で自虐史観を押し付けてるのを見て見ぬふりをしておきながら、相手が中国だと、怖がって何もできない卑怯者が、うちの高校の生徒会ですか? あたし、情けなくて涙出てきますわ」
正直、あたしは三國志でいう「義」の思想で行動するほうだ。「義」とは、つまり正義。革命も結局、正義でなければならないはずだ。ところが、中国共産党は既に正義ではないにもかかわらず、生徒会はやつらにしっぽを振っている。となると、「義」は、あたしにこそある。
「部長、今こそ、うちの高校で革命を起こすときです。生徒会は堕落した高校生の幹部、つまり『ダラカン』です。劉備の言う『義』は、あたしたちにこそあります」
「そう簡単にいかへんのや。生徒会の顧問は、反動派教師の代表、六嶋道常やで。あいつはバリバリの極左の世界史・日本史教師で、『三國志の劉備は、皇帝を押し立てた反動派だから、劉備の義は認めない。劉備を賛美する生徒は絶対に留年させる』なんて言っとるクソ野郎や。まずは六嶋を倒さにゃならん」
「わかりました。ただ、相手が劉備を否定する反動派といえども、あたしは劉備を押し立てて戦います。あたしの階級闘争は劉備とともに戦うことにありますから」
かといって、相手は日教組の走狗の極左教師である。あたしも無為無策で勝てるとは思ってない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

完結【R―18】様々な情事 短編集

秋刀魚妹子
恋愛
 本作品は、過度な性的描写が有ります。 というか、性的描写しか有りません。  タイトルのお品書きにて、シチュエーションとジャンルが分かります。  好みで無いシチュエーションやジャンルを踏まないようご注意下さい。  基本的に、短編集なので登場人物やストーリーは繋がっておりません。  同じ名前、同じ容姿でも関係無い場合があります。  ※ このキャラの情事が読みたいと要望の感想を頂いた場合は、同じキャラが登場する可能性があります。  ※ 更新は不定期です。  それでは、楽しんで頂けたら幸いです。

r18短編集

ノノ
恋愛
R18系の短編集 過激なのもあるので読む際はご注意ください

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

人妻の日常

Rollman
恋愛
人妻の日常は危険がいっぱい

女の子がいろいろされる話

ききょきょん
恋愛
女の子がいじめらたり、いじられたり色々される話です。 私の気分であげるので、性癖とか方向性はぐちゃぐちゃです、よろしくお願いします。 思いついたら載せてくゆるいやつです。。

処理中です...