好きって言ってみなよ?

葉月カイト

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『あぶない!』
『大丈夫だよ。俺は大丈夫だから』




これは俺?




『名前なんて言うの?』
『俺は火山瑠衣』
『ぼくは如月晶』



如月晶?
あの子と同じ名前。
…………違う。
あの子と初めて会った時だ。
なんとなくそう思った。




まるで映画を見ているみたいに頭に映像が流れてきた。
沙希に聞いていたから。
俺があの子を名前で呼んで可愛がっていたと。


あの子には両親がおらず兄弟だけ。
一番上のお兄さんの理事長。
そして。
その次がとおる。
あの子と双子の彼。




『晶くん、好きだよ』


思い出した。





そう。
俺は彼を"晶くん"。
そう呼んでいた。


そして、あの時。
俺は晶くんに好きって言って欲しかったけど。
我慢できなくなり俺から好きだと言ったんだっけ。



「え?」
「聞こえなかった?もう一回言うよ。俺はね?キミが好きなんだよ」



俺は何回も何回もささやくように言ったんだよね。
だって晶くんてば信じてくれなかったから。




「キミが好きだから、俺だけのモノになって?」
「あんた他に好きな奴いるんだろう?」
「違うよ。俺が好きなのは、昔から晶くんだけなんだよ」
「でもっ」
「じゃあ俺に下心ないのに親がいないってだけで面倒見るような奴じゃないんだよ。俺は」
「……」
「じゃあ誓うから。だから晶くんの番になりたい。嫌?」




疑われているのか晶くんはしばらく何も言わなかったっけ。



「俺と番になりたくないなら俺が嫌いって顔も見たくないって言って」



晶くんがそんなこと言えるわけないのにそう言った。



「晶くん?」
「言えるわけないじゃん」
「瑠衣さんが嫌いなんて言えるわけないじゃん」
「晶くん。俺さ由貴が羨ましくて仕方ないんだ」
「へ!?」



羨ましくて羨ましくて仕方ない。
いつも一緒で。


「だって由貴さ好きな人と結婚してるでしょ?毎日一緒でさ」
「瑠衣さんだって俺と一緒じゃん」
「俺はね好きな子とはずっと居たいんだ」
「もしかして俺が寮に入るの反対してたのって」
「そうだよ。ずっと居てほしかったから」
「それに晶くんが望むなら悠姫ちゃんも一緒でも良かったし」
「晶くん。晶くんが大学卒業したら結婚しよ?俺のそばにずっといてほしい」
「俺、ずっと瑠衣さんのそばにいる」



晶くんは微笑みながら抱きついてきたっけ。





***************



「沙希ちゃん」
「あっちゃん。あゆちゃんも」
「瑠衣さんは?」
「まだ目冷めない」
「ママ。だあれ?」
「え?」
「…………」
「ママ?」
「あゆちゃん。あゆちゃんのパパだよ」
「パパ、なんでねんね?」
「すぐに目覚ますから大丈夫だよ」
「步夏。そろそろ帰らないと」
「バーバイ」



ママ?
あの赤い髪の子は晶くんの子供?



その子が晶くんの子なら父親は誰?
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