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大学最後の学園祭

9

「由貴くん。はい、あーん｣



店番を純平たちと代わってもらい、由貴くんと学園祭を堪能中なんだけど。



「…………｣
「これ嫌いだっけ？｣
「食べるなら普通に食べたい｣
「いや？｣
「嫌とかじゃないから｣
「キスしたいって言ってないんだし｣



恥ずかしがる由貴くんも可愛いんだけどね。



「チョコとバナナどれがいい？｣
「バナナアイス｣
「大丈夫？お腹壊しても知らないよ｣
「大丈夫だって｣
「ねぇ、うちの学部のお化け屋敷行かない？｣
「行かないっ｣
「えぇー｣
「俺がお化け屋敷嫌いなのわかって言ってるだろう？｣



わかってるよ。
泣いてる由貴くん可愛いんだもん。


「どうしても嫌？｣
「何でそんなに行きたいんだよ！｣
「手繋いでてあげるから｣
「…………絶対離さない？｣
「え？｣



由貴くん。
わかって…………いや、違う。
絶対わかってない！


というかその上目使いヤバイ。
可愛すぎなんだけど。



「うん。由貴くんの手ずっと繋いでるから｣
「わかった｣



＊＊＊＊＊＊＊＊＊



「由貴くんいらっしゃい｣
「げっ｣



莉音が今の時間いるんだっけ。
忘れてた。


「橘ーあんた何由貴くん連れて来てるのよ。女の子じゃあるまいし怖くないでしょ？｣
「うっ｣



そういや。
こいつ、お化け屋敷とか全く怖がらないつまらない奴だったな。



「由貴くん。お化け屋敷苦手なんだよね｣
「え！？そうなの？ならやめておいた方がいいわよ？橘ー。由貴くんがかわいそうでしょ？｣




さっきから言ってることがコロコロ変わってるし。



「そんなに怖い？｣




小動物みたいに微かに震えながら莉音に聞く由貴くん。




「たーちーばーな！｣




こんな顔されたら由貴くんがお化け屋敷嫌いてわかるか。




「大丈夫だよ。ずっと手繋いでてあげるから｣



莉音がややあきれ気味に言ってきた。
「どうなっても知らないから｣って。

「由貴くん？そんなにくっついてられると歩きにくいんだけど｣
「っ…………｣



お化け屋敷とか嫌いなのはわかってた。
まさかここまで嫌いとは。



でも、小動物みたいに震えてて可愛いんだけど。



＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊



「あー由貴くん？大丈夫？｣
「嫌だって言ったのに｣
「泣かないでよ？好きなもの買ってあげるから｣
「子ども扱いすんなよ！」
「そんなんじゃないから。機嫌直してよ？」




それからしばらく宥めてようやく由貴くんの機嫌が直った。
そして。
燐くんのところへ。



ピロン
通知音？
誰？


"橘。ごめん、みんな気合い入れすぎで由貴くん泣かせちゃったみたい"



そんなことだろうと思った。



「燐くんのとこ行こう｣



＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊



「兄ちゃん。いらっしゃい｣
「あ、先輩｣
「なんだ。お前たち燐と一緒だったのか？｣



燐くんのとこに行くとサークルの後輩たちがいた。



そして。
何故か純平も。
今年の1年生は仲良くて苦労しなかった。
由貴くんの時もそうだけどね。
由貴くんと純平のおかげでだけどね。




「うん。さっき兄ちゃんの高校時代の話聞いてた｣
「何の話だ？｣
「男子校なのに先輩ラブレターめっちゃもらってたとか｣



ラブレター？
由貴くん可愛いけどね。



「先輩が学園祭で女装してたとか、女装コンテストでずっと優勝してたとか｣
「あっバカっ｣
「みたいなぁ。その写真｣
「純平先輩ならデータ持ってるんじゃないんですか？｣



そして。
純平からデータを貰った。
由貴くんからは奪ったようにしか見えなかったみたいでブツブツ言ってたけどね。






中庭で食べながら純平からもらった由貴くんの女装のデータを見てるんだけど。




「何ニヤついてんだよ。颯太｣
「だって由貴くん可愛すぎて｣




猫耳とか最高。
洋服も。




「何でデータごともらってるんだよ！｣
「由貴くんのそんな写真が出回らないためだよ｣



俺の知らないとこでそんな写真が出回るとか冗談じゃない。




俺って独占欲が強いから。
由貴くんだって知ってるくせに。