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葉月カイト

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由貴と義久

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由貴と初めて会ったのは桜燐館学院高校の入学式の時。
ぼくと由貴は同じクラスで思わず声を声をかけたんだよね。


『猪熊由貴くん?』
『え?』
『ぼくは深月義久だよ。よろしくね』
『あ、あぁ』



純平からあとで聞いたんだけど。
由貴は人見知りなんだって。



で、純平は隣のクラスだった。



2人の友達・律とも顔見知りだけど。
学科が違ったし校舎も違ったからあまり話す機会がなかった。



ぼくたちが高校2年生の時。
何故か由貴のお兄さんが学校に出入りするようになった。



ちょうどその頃だった。
何故か由貴が男相手に売春しているそういう噂。


由貴はなんともないって。
平気って言って。
面白おかしく話す奴らを無視していた。


まるで慣れているみたいな。



それからしばらくして。
ぼくの前に由貴のお兄さんが現れた。


『お前が深月義久?』
『あなたは?』
『俺は猪熊夏輝。あのチビ……じゃない。由貴の兄だよ』



この日はこれだけで帰っていった。
由貴の兄貴は何が目的かわからないけど。



それからしばらくして。
由貴の兄貴にぼくは突き落とされた。



ぼくはそのケガが原因で車イスが必要となった。
でも。
リハビリを頑張ってなんとか日常生活を送れるようになった。



母さんから聞いたけど俺が入院している間に由貴が来たって。
で、泣きながら言ったんだって。
ぼくには近づかないからって。


由貴もケガしていたみたい。
母さんが由貴右腕を吊していたって。
ぼくはしばらく休学した。
由貴たちは先に高校を卒業した。
純平から桜燐館学院大にいるって聞いてそこへ進学を決めた。





「義久ー明日さ休みだろ?」
「うん」
「3人で遊びにいかないか?」
「由貴。明日デートじゃないの?」
「由貴たち毎週、いや、毎日デートしてんだからいいんだよ!なっ颯?」




由貴と久々再会して、由貴がお世話になっている陸也さんが鍋にするからって。
ぼくまで呼んでくれた。




由貴には橘さんて恋人がいた。
だから。
昔みたいに遊べないと思うとさびしく思った。




「なぁ、義久-」
「何?」
「由貴って熱あっても絶対休まなかっただろう?」
「理由も教えてくれなかったし」
「原因は母親だよ」
「母親って」



"猪熊由貴は母親に虐待されている"



そんな噂なら聞いたことあった。
由貴に聞いたことなかったし、確かめたいとも思わなかった。



「颯たちはみんな知ってるけど。由貴さ今の母親に毎日のように虐待されてたんだ。今は実家離れてるからそんなことないけどさ」
「だから?」
「由貴。どんなに具合悪くても休まない。休めば逆に傷を作ることになるから」



由貴。
そんなだったんだ。



「だから。由貴、女に興味がないんだ」



由貴は特に歳上の女性が怖くて仕方ないんだって。
そう、純平が言った。



「それ聞いてないけど?」
「だって言ってねぇし。由貴だって俺から聞かされたって聞くより自分からいつか話してくれるさ」



今日一日でわかったこと。
由貴がここにいるみんなに愛されてるってこと。



そして。
由貴の彼氏の橘さん。
彼が見た目と違って結構子供ぽいこと。




『え?颯太?見た目チャラいけど悪い奴じゃねぇぞ』




由貴がそう言ってたっけ。
橘さんは悪い人じゃないし。
優しい人だと思う。




由貴はいい人と巡り会えたな。
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