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20. そうだ、どっか行こーう!!
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ラインハルトがカンラン宮に訪れた。きちんと前日までに行きますからねと連絡をしていたため、ソフィアももちろんいた。
「ソフィア、気晴らしにチェスしましょう。お願いします」
ラインハルトは少し疲れているように見えた。
「そういえば、タチアナさんは大丈夫?」
「なんとか落ち着いてもらいました。今はソフィアが呪ったとは言っていないようです」
「そう、なんかありがとう」
ソフィアはタチアナからあらぬ疑いをかけられ、呆れていた。そして、大変困っていたため、解消されてよかったと安心した。
「そういえば、皇太子妃殿下はなんて?」
「言ってないそうです」
「まあ、フツーに他の人から聞いた可能性もあるからね」
ラーラがソフィアを呪ったということは、皇太子妃だけが知っている事実ではない。ソフィアもドミトリーも他の人も少数ではあるが知っていることだ。
「タチアナが嘘をついているとも思えないですよね」
「勘違いしてる可能性もあるけどね」
タチアナは結構錯乱していたとソフィアは遠い目をした。
「皇太子妃と少し距離を置いて見ようかな」
「こういう時こそ傍にいた方が良くないかなー?」
「どう出るか、様子を見たいんです」
「試しすぎると相手は壊れるぞー」
「そんな変なことはしませんよ。そうだなぉ、ちょっとここを空けます。ちょうど、ハザマブルクの様子を見に行こうと思っていたので」
ハザマブルクは半年前、豪雨で湖の水位が上昇し、浸水発生した地域の一つだ。交通の要地であり、復興の要でもあった。
「じゃあ、私もどっか行こう!サーシャ、どこか行きたいとこある?山派?海派?」
サーシャは最近ふらふらしすぎじゃないかと心配になった。
「なら、一緒に行きませんか」
「行かないよ。何で正室は行かなくて側室は行くのさ」
「いーじゃないですかー。ちょっと出かけるだけですよ」
「行かない!行かないからね!」
ソフィアはハルが頑固ムーブしていると思ったが、懸命に拒否の姿勢を見せた。
「行きましょうよ。他の人は子どもがいるとか妊娠しているとかでちょっと出かけるのを避けるって理由になりますから大丈夫です!それに、皇太子妃の様子が見たいんです」
「はあ?」
「今回、皇太子妃がタチアナに言ったとしたら、それはソフィアを疎んで行動に移したということでしょう」
「うん」
「もう次はないみたいなことを言ったんで試したいんです」
ソフィアはマリアナの立場を思い、険しい顔をした。
「試されるのはいい気分しないと思うよ、やめときな」
「……そんなに一緒に行きたくないんですか?マリアナの方が大事?私とマリアナ、どっちが可愛い後輩ですか?」
「ハル」
「ですよね!!」
じゃあ行きましょうそうしましょうとラインハルトはウキウキしている。
「サーシャ、何とかして」
「一緒に行ってあげたらどうです?要は一緒に行きたいんですよ。この五年、随分避けてたじゃないですか?」
「うっ」
ソフィアは胸を押さえた。ラインハルトがいけないという思いもあったが、少しは自分も悪いかな、やりすぎたかなと思っていた。
「殿下、寂しそうでしたよ。哀愁漂う背中でこのカンラン宮に来てました。ソフィア様が訪れないとわかっているのに」
「うっ」
ソフィアは胸を押さえた。いーや、わ、私は悪くないし!と開き直りそうになった。
「少しは悪いと思っているなら、行った方がいいですよ」
「……でも、タイミングが良くないよ」
「それは、皇太子殿下より皇太子妃殿下を優先されるということですか?」
「なんで、行くか行かないかがどっちを優先するみたいな感じになってるのかな!!」
「そりゃあ、あれですよ。皇太子殿下のお願いを優先するか、それとも、皇太子妃殿下を思いやり、そっちを優先するかってことが判断基準になってるからですよ」
「……」
ソフィアはサーシャが言っていることが事実だと認めた。
「どっちです?」
「ハルです。行きます。行かせてもらいます」
「では、準備しますねー」
ラインハルトはソフィアを見て、にっこり嬉しそうに笑った。
「サーシャ、ありがとう。あのソフィアを説得できるなんてすごい!天才!」
「あの?」
「頑固で強情で意固地で身勝手なソフィア」
「……今日はもう寝るから帰って」
ソフィアはあーもういいしと拗ねそうになった。
「えー、チェスするって約束しましたよね」
「ドミトリーにしてもらいなさい!今呼ぶから!」
「だめです!ドミトリーにソフィアに勝ったら勝負してもらうって約束してるんです」
「それ、婉曲的に断られてないかな?」
ソフィアは意地の悪い顔で笑った。
「……私がソフィアに一生勝てないと?」
「ふふふ、勝ち筋が見えたことあるのかな?」
「うう……、今日こそは勝ちますからね!!!」
ラインハルトは負けず嫌いを発揮して、一晩中勝負を挑み続けた。その様子を見ていたサーシャはソフィアが煽るから皇太子は負けず嫌いに成長したと察した。
一週間後、ラインハルトはソフィアとサーシャ、ドミトリーなどの部下を連れて、ハザマブルクに出かけた。皇太子妃、タチアナは子どもがいること、ジュリアは妊娠をしていることを理由に後宮に残っていた。
「ソフィア、気晴らしにチェスしましょう。お願いします」
ラインハルトは少し疲れているように見えた。
「そういえば、タチアナさんは大丈夫?」
「なんとか落ち着いてもらいました。今はソフィアが呪ったとは言っていないようです」
「そう、なんかありがとう」
ソフィアはタチアナからあらぬ疑いをかけられ、呆れていた。そして、大変困っていたため、解消されてよかったと安心した。
「そういえば、皇太子妃殿下はなんて?」
「言ってないそうです」
「まあ、フツーに他の人から聞いた可能性もあるからね」
ラーラがソフィアを呪ったということは、皇太子妃だけが知っている事実ではない。ソフィアもドミトリーも他の人も少数ではあるが知っていることだ。
「タチアナが嘘をついているとも思えないですよね」
「勘違いしてる可能性もあるけどね」
タチアナは結構錯乱していたとソフィアは遠い目をした。
「皇太子妃と少し距離を置いて見ようかな」
「こういう時こそ傍にいた方が良くないかなー?」
「どう出るか、様子を見たいんです」
「試しすぎると相手は壊れるぞー」
「そんな変なことはしませんよ。そうだなぉ、ちょっとここを空けます。ちょうど、ハザマブルクの様子を見に行こうと思っていたので」
ハザマブルクは半年前、豪雨で湖の水位が上昇し、浸水発生した地域の一つだ。交通の要地であり、復興の要でもあった。
「じゃあ、私もどっか行こう!サーシャ、どこか行きたいとこある?山派?海派?」
サーシャは最近ふらふらしすぎじゃないかと心配になった。
「なら、一緒に行きませんか」
「行かないよ。何で正室は行かなくて側室は行くのさ」
「いーじゃないですかー。ちょっと出かけるだけですよ」
「行かない!行かないからね!」
ソフィアはハルが頑固ムーブしていると思ったが、懸命に拒否の姿勢を見せた。
「行きましょうよ。他の人は子どもがいるとか妊娠しているとかでちょっと出かけるのを避けるって理由になりますから大丈夫です!それに、皇太子妃の様子が見たいんです」
「はあ?」
「今回、皇太子妃がタチアナに言ったとしたら、それはソフィアを疎んで行動に移したということでしょう」
「うん」
「もう次はないみたいなことを言ったんで試したいんです」
ソフィアはマリアナの立場を思い、険しい顔をした。
「試されるのはいい気分しないと思うよ、やめときな」
「……そんなに一緒に行きたくないんですか?マリアナの方が大事?私とマリアナ、どっちが可愛い後輩ですか?」
「ハル」
「ですよね!!」
じゃあ行きましょうそうしましょうとラインハルトはウキウキしている。
「サーシャ、何とかして」
「一緒に行ってあげたらどうです?要は一緒に行きたいんですよ。この五年、随分避けてたじゃないですか?」
「うっ」
ソフィアは胸を押さえた。ラインハルトがいけないという思いもあったが、少しは自分も悪いかな、やりすぎたかなと思っていた。
「殿下、寂しそうでしたよ。哀愁漂う背中でこのカンラン宮に来てました。ソフィア様が訪れないとわかっているのに」
「うっ」
ソフィアは胸を押さえた。いーや、わ、私は悪くないし!と開き直りそうになった。
「少しは悪いと思っているなら、行った方がいいですよ」
「……でも、タイミングが良くないよ」
「それは、皇太子殿下より皇太子妃殿下を優先されるということですか?」
「なんで、行くか行かないかがどっちを優先するみたいな感じになってるのかな!!」
「そりゃあ、あれですよ。皇太子殿下のお願いを優先するか、それとも、皇太子妃殿下を思いやり、そっちを優先するかってことが判断基準になってるからですよ」
「……」
ソフィアはサーシャが言っていることが事実だと認めた。
「どっちです?」
「ハルです。行きます。行かせてもらいます」
「では、準備しますねー」
ラインハルトはソフィアを見て、にっこり嬉しそうに笑った。
「サーシャ、ありがとう。あのソフィアを説得できるなんてすごい!天才!」
「あの?」
「頑固で強情で意固地で身勝手なソフィア」
「……今日はもう寝るから帰って」
ソフィアはあーもういいしと拗ねそうになった。
「えー、チェスするって約束しましたよね」
「ドミトリーにしてもらいなさい!今呼ぶから!」
「だめです!ドミトリーにソフィアに勝ったら勝負してもらうって約束してるんです」
「それ、婉曲的に断られてないかな?」
ソフィアは意地の悪い顔で笑った。
「……私がソフィアに一生勝てないと?」
「ふふふ、勝ち筋が見えたことあるのかな?」
「うう……、今日こそは勝ちますからね!!!」
ラインハルトは負けず嫌いを発揮して、一晩中勝負を挑み続けた。その様子を見ていたサーシャはソフィアが煽るから皇太子は負けず嫌いに成長したと察した。
一週間後、ラインハルトはソフィアとサーシャ、ドミトリーなどの部下を連れて、ハザマブルクに出かけた。皇太子妃、タチアナは子どもがいること、ジュリアは妊娠をしていることを理由に後宮に残っていた。
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