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第93話 俺、超巨大天使と対峙する

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「はぇ~、すっごいおっきい」
「何を平然としてるんすか!? あんなのが相手だなんて聞いてないッスよ! どうするんすかあれ!」

 リンは俺の肩を揺らしながら喚き散らしてくる。

「どうするんすかって、ぶっ飛ばすに決まってんだろう。あー、でもあれだけの図体、どれ程のパワーを持ってるか気になる……。気にならない?」
「頭大丈夫ッスか!? 全ッ然気にならないし、それどころじゃ――ああああッ!」
「んだよ、うっさいなぁ。急に叫ぶなよ」
「腕振り上げてるッスよ! 間違いなく攻撃してくるつもりッスよ。あれ!」
「お~、願ったり叶ったりじゃん。おらぁ、どんとこい」

 雲を突き抜ける程のデカさを誇る白い天使的な何かは、振り上げた腕を俺とリンめがけて振り下ろしてきた。

「もうダメッス! あんなのくらったら一巻の終わりッス! あぁ、短い人生だった……。最後にアーサーきゅんの髪の毛クンカクンカしたかったッス……」

 日の光を遮る程の白い手が徐々に俺達へ迫りくる。
 何やらセクハラめいた辞世の句を言いながら、ひざと両手を地面に付いてうな垂れるリンを尻目で見つつ、俺は両腕をクロスさせガードの体制を取る。

「ハァ、こんなくだらん状況すら対処出来ないとは……リキッドアーマーを起動! リンに付属!」

 地中から無色透明の液体が湧き出し、リンに纏わり付く。

「な、なんすか!? 新手の攻撃ッスか!?」
「良いかよく聞け? それはロボットのスキルで一定時間当たり判定が消失するってスキルだ。
 お前がその液体に包まれている限り、どんな攻撃をくらったとしても平気な筈だ」
「マジっすか!? チョー強いじゃないっすか! って来てるッス!!」
「ああ、わかってる! おかげさんでMPが3割近く飛んだわ。――ぐッ!!」

 俺は白い手をクロスさせた両手で受けた瞬間、画面上の両手の色が青からオレンジへ変化した。

「両腕の外格にダメージあり。即時修復を開始します」
「ネメシス! そんなのは後で良い!! それより今受けた攻撃を数値化しろ!」
「承知しました。敵機のパンチ力は1200メガトンに相当します」
「フ、フフフフフ1200メガトン? そうか。そりゃあ凄い! 絶対強靭ゲキリンオーと同等、いやそれ以上か!」
「ビビった~、死ぬかと思ったッスよ……。文字通りおせんべいに――せ、先輩?」
「おらああああああ!!」

 潰れたリンを無視し、俺は渾身の力を込めた蹴りを白い手に御見舞した。俺の蹴りをくらった手は再び上空に舞い戻る。

「ちょっとだけ……本気……出すか」
「先輩? 一体何を?」
「俺の――いや、ヤルダバオトⅧ式の力の一端を見せてやろう。超絶弩級戦艦ムサシ改三千起動!」

 俺が声を張り上げると、地響きと共に大地が大きく揺れだした。

「なんすか!? 地震すか!?」
「静かにしてろ、舌噛むぞ?」

 地中から現れたそれはヤルダバオトⅧと同じく黒色の巨大な戦艦だ。俺達はその空を浮かぶムサシ改三千の甲板に立っていた。

「ハハハハハ! 嬉しいぞ! まさかムサシ改三千をぶっぱ出来る時が来るとは思っていなかった!」
「な、なんすか!? これぇ!?」
「だから言ってるだろう? 超絶弩級戦艦ムサシ改三千だ! こいつはな?
 ヤルダバオトⅧ式に搭載されているスキルの1つなんだが、達成条件がすこぶる面倒いのだ!」
「スキル? この戦艦が?」
「いや~まさかマジでこの異世界でこいつを出せる時が来るとは思っていなかった! 嬉しいぞ! ん?」

 見ると敵が魔法陣を展開させ、青いいかづちが戦艦に超高速で向かってきていた。

「馬鹿が、そんな攻撃大人しくくらうと思ってんのか。ネメシス、飛行型ブラックホール爆弾・桜火おうかを発進させろ」
「承知しました。桜火発進」

 桜の絵が機体にプリントされた黒色の零式艦上戦闘機が緑の魔法陣から現れ、そのまま雷にぶつかると空間を捻じ曲げながら黒い光と共に雷と桜火の姿は呆気なく消え去った。

「はい~、残念でした。じゃ、チャフミサイル発射」

 戦艦後部から3発のミサイルが発射され俺と超巨大天使の中間でミサイルが爆発、周りの空間に黄色い光を放つ粉状の物体が散布された。
 黄色い粉が超巨大天使に纏わり付くと魔法陣が完全に消え去ったのを俺は確認する。
 魔法陣が展開できなくなった超巨大天使は少しずつ俺の方へと近付いてくる。

「ハッ、頼みの魔法陣が使えなくなったから物理攻撃に切り替えたか」
「大丈夫なんすかアレ?」
「余裕だ。それどころか望む所よ。ネメシス、ムサシ改三千を動かせ。奴に神風特攻を仕掛ける」
「承知しました」
「は? カミカゼ特攻? それって自殺行為ッスよね!? 意味不明ッス!」
「俺があんな木偶の坊に負けるわけないだろうが。それよりリンお前にも協力してもらうぞ? 俺が合図を送ったらブレイク・ザ・ハートのポーカーのスキルを起動させろ」
「ショウダウンの事ッスか? いいすけど……あっ分かったス! ロイストでフルボッコにするんスね!?」
「良いから良いから、頼んだぞ! 行けー! ネメシス!!」

 ムサシ改三千と超巨大天使が真っ向からぶつかり合い、凄まじい轟音と火花を散らす。

「よし、今だ。リン! ポーカーの役で1番弱い奴を展開してくれ!」
「い、1番弱い奴!? 強いのじゃなくて!? ほんとに良いんッスか!? 倍率の低下エグいッスよ!?」
「良いから! やってくれ!」
「も、も~う何考えてんのかさっぱりッス! ショウダウン! ワンペア!」

 リンの目の前に2つのカードが現れた。
 どうやらハートの3のワンペアが出来ている様だ。

「よし、46cm六連装砲でど真ん中を狙え!」

 俺が叫ぶと右斜めにいる真っ白な巨大天使の胴体らしき部分に向かって、
 ムサシ改三千の2つある主砲の内、最も長い6つの砲身が付いている主砲が動きをピッタリと合わせた。

「粘着式腐食徹甲弾、零距離射撃!!」

 巨大な主砲から紫色の徹甲弾が超巨大天使の胴体にヒットすると、衝撃により巨大天使は大きくムサシ改三千から離される。

「流石のデカさだ。威力を極限まで弱めたとはいえ、零距離から主砲をくらっても倒れないとはな。図体の無駄なデカさに感謝するんだな」

 巨大天使の胴体は紫色の煙を発しながら、ドロドロに溶解し大きな穴が空いていた。

「ゲイン様、敵機の行動停止を確認しました」
「よし、作戦成功。今からあの巨大天使の内部へ突入するぞ。リンがいてくれて助かった。お前の能力のお陰であれこれ余計なことせずに済んだ」
「あれの胴体の中に入るために1番弱いのを出せって言ったんすか? でも、本気出すって……」
「あぁ、そうだよ? ムサシ改三千はヤルダバオトⅧに搭載されている元々のスキルだ。格好いいだろ? 言っとくけど、もっとやばいスキルごまんとあるからな?
 なんだ? あの巨大天使をぶっ壊すとでも思ったのか? 俺は一言も壊すなんて言った覚えないぞ。さぁ、あの悪趣味な真っ白木偶の坊の中を探検と行こうじゃないの」

 俺はリンを腰に手を回すとブースターを吹かし動かなくなった超巨大天使内部へと向かった。
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